記憶のない僕と、みんなが知ってる俺   作:からあげマヨネーズ

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第8話 僕とリンの約束

新エリー都 ヤヌス区

 

六分街『Random Play』

 

「『Random Play』よ! 僕は帰ってきた!!」

 

そんなことを言いながら、僕は店の中へ入っていく。

 

そんなはずはないのに、ひどく懐かしく思える。

 

「あっ! ○○、おかえり!!」

 

「おかえり、○○。師匠たちに会って何かわかったかい?」

 

店の中からリンとアキラが出迎えてくれる。

 

「う~ん、色々やったけど、あんまりかも?」

 

「なになに~? 色々って、何があったの~?」

 

うりうり~、とリンが右肘を僕の脇腹にぐりぐりと押しつけてくる。

 

「師匠に上脱がされたり、瞬光と街巡りしたり?」

 

その瞬間、空気が死んだ。

 

「……はっ?」

 

「ひぇ……!」

 

「わざわざ適当観に行って、そんなことしてたの……?」

 

「い、いや、それは……!」

 

「お兄ちゃん! 今日、何もなかったよね!?」

 

「……ああ。今日は特に依頼も入っていない」

 

「私、○○と出かけるから店番よろしくね!」

 

「えっ……ちょ……リン?」

 

「い く よ ね ?」

 

「はい! よろこんで!!!」

 

僕は急遽、リンと出かけることになった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

新エリー都 ヤヌス区

 

ルミナスクエア

 

「ほらほら! ○○、次はあのお店いこ!」

 

僕はいま、リンと一緒にルミナスクエアに来ている。

 

新作のビデオを見たり、新しい服のお店を一緒に回ったりしていた。

 

来たときは不機嫌だったリンも、今はすっかり上機嫌だ。

 

「あっ! 見て○○。この前、先行上映で一緒に見た映画、今日から公開らしいよ」

 

リンに言われた方を見ると、大きなポスターで映画が宣伝されている。

 

「……? あんなポスターだっけ?」

 

そう言うと、リンはむぅ、と頬を膨らませた。

 

「そうだよ! ○○、ちゃんと見てなかったの!?」

 

「いや、映画は覚えてるけど……!」

 

「もう! 思い出の映画なんだから、ちゃんと覚えておいてよ」

 

「……ごめん!」

 

「も、もう! そんなに怒ってないから! あとで甘いものでもご馳走してね!」

 

その後、僕たちは『ティーミルク』のお店にやって来た。

 

「私はホイップ多めで! ○○は?」

 

そう言われて、僕も注文しようとするが――。

 

「久しぶりすぎて、ど忘れしちゃった……!」

 

「もう! 何やってるの○○! いつもこのカスタムで頼んでたでしょ!」

 

そう言って、リンは僕の代わりに注文してくれた。

 

「……ごめーん! 来るの久しぶりだから……!」

 

「ほんとにもう!」

 

リンは腰に手を当てて、いかにも『怒ってます』という顔をしている。

 

「最近、ホロウに入ったりもしたし、適当観から帰ってきたばっかりだから疲れてるのかな?」

 

僕はハハッと笑う。

 

けれど、リンは少しだけ不安そうな顔をしていた。

 

「○○。もしまた身体とか記憶に違和感があったら、すぐ言ってね。私でも、お兄ちゃんでも!」

 

「うん、ありがとう」

 

注文した『ティーミルク』を飲みながら、僕たちは街中を歩く。

 

そこで僕は、リンに気になっていたことを聞いてみた。

 

「リン。師匠から聞いたんだけど、僕って記憶を失う前から忘れっぽい感じだったの?」

 

それを聞いたリンは、少し悲しそうな顔をしながら僕を振り返った。

 

「……師匠から聞いたんだ」

 

リンは少し間を置いてから、ゆっくりと話し始める。

 

「うん。最初は、ちょっと忘れっぽいところがあるなってくらいだったよ」

 

「話したことを忘れたり、約束を忘れてたり……本当にちっちゃなことだったの」

 

「でも、私たちが適当観でみんなと始まりの主を倒してからは、忘れっぽいってレベルじゃなかった」

 

「一度こっちに戻ってきたとき、君から聞いたの。『記憶がなくなってきてる』って……」

 

「最初は質の悪い冗談だと思ったよ。でも、それまでの色んな出来事を考えたら、冗談じゃないってわかって……」

 

「それで君は、結局全部忘れちゃって……」

 

話しているリンの目から、ぽろぽろと涙がこぼれていく。

 

「私……君が目を覚まして、私やお兄ちゃんのことを覚えてないって言われて……」

 

「すごくつらかった。でも……一番つらいのは○○だから、私たちはちゃんと○○を支えようって、お兄ちゃんと話したの」

 

「それから○○が『Random Play』に住むようになって、結構経つでしょ?」

 

「昔みたいに呼び捨てで呼んでくれるようになって……やっとまた、前みたいに過ごせるんじゃないかって思ってるの」

 

「でも、私ね……」

 

そう言って、リンは僕の手を掴んだ。

 

「怖いの。前みたいに○○が急に記憶をなくして、また私のことを忘れちゃうんじゃないかって……」

 

「○○……今度は一人で抱え込まないでね……?」

 

リンの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。

 

それでも、まっすぐ僕を見ながら返事を待っている。

 

「うん、約束する」

 

僕はリンの手を握り返す。

 

「今度って言っていいのかわからないけど……何かあったら、今度はすぐリンたちに伝えるよ」

 

「……ほんとう……?」

 

「本当だよ。絶対に」

 

そう言うと、リンは涙を拭い、目を赤くしながら笑ってみせた。

 

「うん! 今回の約束、絶対守ってもらうからね!」

 

「よし!」とリンは自分の頬をパシッと叩く。

 

「それじゃあ、お店巡り再開しよう! まだまだ行きたいところあるんだから!」

 

「まだあるの!?」

 

僕はリンと手を繋いだまま、再びお店巡りを始めた。

 

ルミナスクエアを満喫したあと、僕たちは『Random Play』へ戻ってきた。

 

「ただいまー! あー、楽しかった!!」

 

「ただいま~……リン、後半ちょっとハードすぎない?」

 

「おかえり、二人とも。○○はなんだか疲れてるね?」

 

アキラが戻ってきた僕たちを出迎えてくれる。

 

「色々あって疲れたんだよ……!」

 

「あれは○○が体力ないだけだよ!」

 

「ともあれ、楽しめたみたいならよかったよ」

 

そう言って、アキラが笑う。

 

「ちょっとソファー借りるよ……」

 

僕は「うへー……」と声を漏らしながらソファーにどさっと座り、右手で胸の辺りをぐりぐりと押す。

 

すると、リンが笑いながら近づいてきた。

 

「そのぐりぐりやってるの、昔からだね」

 

「そうなの?」

 

「うん。○○、疲れるとよくやってたんだ」

 

リンは懐かしむようにつぶやいた。

 

「そういえば、ホロウ帰りなんかはよくやっていたね」

 

アキラまでそんなことを言う。

 

「えっ、そんな昔からなの?」

 

「本人は気づいてなかったみたいだけどね」

 

「へぇ……」

 

僕はもう一度、なんとなく胸元をぐりぐりする。

 

別に痛いわけじゃない。

 

ただ、こうしていると妙に落ち着く気がする。

 

「でも、そんな細かいことまでよく覚えてるね」

 

「えっ!? そ、それは……!」

 

リンが急に慌て始めた。

 

「リンは昔から○○のこと、よく見てたからね」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「へぇ~?」

 

「○○もその顔やめて!」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

「ふあ~……」

 

ソファーの上で、○○が大きなあくびをする。

 

「○○、疲れたならもう寝ちゃえば?」

 

「そうしたいのは山々なんだけど、もう一歩も動けない……」

 

「じゃあソファーでちょっと仮眠してから、ベッドでちゃんと寝なよ~!」

 

「は~い……」

 

そんな話をしているうちに、○○は眠ってしまった。

 

私はその横に座って、そっと寝顔を覗き込む。

 

「ふふっ! かわいー!」

 

しばらく眺めていると、○○の身体が急に私の方へ倒れてきた。

 

「わっ……!」

 

なんとか受け止めると、○○の頭がそのまま私の膝の上に乗る。

 

「……っ!?」

 

自分の顔が熱くなるのがわかる。

 

一度起こそうとも思った。

 

でも、気持ちよさそうに眠っている顔を見て、やめることにした。

 

「……今くらい、いいよね」

 

膝の上で眠っている○○とこっそりツーショットを撮ってから、私は静かにその髪を撫でる。

 

「○○……約束、守ってね」

 

 




最近重めな気がしますね

追記 サブタイトルを追加しました。内容に変更はありません!

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