新エリー都 ヤヌス区
六分街『Random Play』
「『Random Play』よ! 僕は帰ってきた!!」
そんなことを言いながら、僕は店の中へ入っていく。
そんなはずはないのに、ひどく懐かしく思える。
「あっ! ○○、おかえり!!」
「おかえり、○○。師匠たちに会って何かわかったかい?」
店の中からリンとアキラが出迎えてくれる。
「う~ん、色々やったけど、あんまりかも?」
「なになに~? 色々って、何があったの~?」
うりうり~、とリンが右肘を僕の脇腹にぐりぐりと押しつけてくる。
「師匠に上脱がされたり、瞬光と街巡りしたり?」
その瞬間、空気が死んだ。
「……はっ?」
「ひぇ……!」
「わざわざ適当観に行って、そんなことしてたの……?」
「い、いや、それは……!」
「お兄ちゃん! 今日、何もなかったよね!?」
「……ああ。今日は特に依頼も入っていない」
「私、○○と出かけるから店番よろしくね!」
「えっ……ちょ……リン?」
「い く よ ね ?」
「はい! よろこんで!!!」
僕は急遽、リンと出かけることになった。
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新エリー都 ヤヌス区
ルミナスクエア
「ほらほら! ○○、次はあのお店いこ!」
僕はいま、リンと一緒にルミナスクエアに来ている。
新作のビデオを見たり、新しい服のお店を一緒に回ったりしていた。
来たときは不機嫌だったリンも、今はすっかり上機嫌だ。
「あっ! 見て○○。この前、先行上映で一緒に見た映画、今日から公開らしいよ」
リンに言われた方を見ると、大きなポスターで映画が宣伝されている。
「……? あんなポスターだっけ?」
そう言うと、リンはむぅ、と頬を膨らませた。
「そうだよ! ○○、ちゃんと見てなかったの!?」
「いや、映画は覚えてるけど……!」
「もう! 思い出の映画なんだから、ちゃんと覚えておいてよ」
「……ごめん!」
「も、もう! そんなに怒ってないから! あとで甘いものでもご馳走してね!」
その後、僕たちは『ティーミルク』のお店にやって来た。
「私はホイップ多めで! ○○は?」
そう言われて、僕も注文しようとするが――。
「久しぶりすぎて、ど忘れしちゃった……!」
「もう! 何やってるの○○! いつもこのカスタムで頼んでたでしょ!」
そう言って、リンは僕の代わりに注文してくれた。
「……ごめーん! 来るの久しぶりだから……!」
「ほんとにもう!」
リンは腰に手を当てて、いかにも『怒ってます』という顔をしている。
「最近、ホロウに入ったりもしたし、適当観から帰ってきたばっかりだから疲れてるのかな?」
僕はハハッと笑う。
けれど、リンは少しだけ不安そうな顔をしていた。
「○○。もしまた身体とか記憶に違和感があったら、すぐ言ってね。私でも、お兄ちゃんでも!」
「うん、ありがとう」
注文した『ティーミルク』を飲みながら、僕たちは街中を歩く。
そこで僕は、リンに気になっていたことを聞いてみた。
「リン。師匠から聞いたんだけど、僕って記憶を失う前から忘れっぽい感じだったの?」
それを聞いたリンは、少し悲しそうな顔をしながら僕を振り返った。
「……師匠から聞いたんだ」
リンは少し間を置いてから、ゆっくりと話し始める。
「うん。最初は、ちょっと忘れっぽいところがあるなってくらいだったよ」
「話したことを忘れたり、約束を忘れてたり……本当にちっちゃなことだったの」
「でも、私たちが適当観でみんなと始まりの主を倒してからは、忘れっぽいってレベルじゃなかった」
「一度こっちに戻ってきたとき、君から聞いたの。『記憶がなくなってきてる』って……」
「最初は質の悪い冗談だと思ったよ。でも、それまでの色んな出来事を考えたら、冗談じゃないってわかって……」
「それで君は、結局全部忘れちゃって……」
話しているリンの目から、ぽろぽろと涙がこぼれていく。
「私……君が目を覚まして、私やお兄ちゃんのことを覚えてないって言われて……」
「すごくつらかった。でも……一番つらいのは○○だから、私たちはちゃんと○○を支えようって、お兄ちゃんと話したの」
「それから○○が『Random Play』に住むようになって、結構経つでしょ?」
「昔みたいに呼び捨てで呼んでくれるようになって……やっとまた、前みたいに過ごせるんじゃないかって思ってるの」
「でも、私ね……」
そう言って、リンは僕の手を掴んだ。
「怖いの。前みたいに○○が急に記憶をなくして、また私のことを忘れちゃうんじゃないかって……」
「○○……今度は一人で抱え込まないでね……?」
リンの顔は涙でぐしゃぐしゃだった。
それでも、まっすぐ僕を見ながら返事を待っている。
「うん、約束する」
僕はリンの手を握り返す。
「今度って言っていいのかわからないけど……何かあったら、今度はすぐリンたちに伝えるよ」
「……ほんとう……?」
「本当だよ。絶対に」
そう言うと、リンは涙を拭い、目を赤くしながら笑ってみせた。
「うん! 今回の約束、絶対守ってもらうからね!」
「よし!」とリンは自分の頬をパシッと叩く。
「それじゃあ、お店巡り再開しよう! まだまだ行きたいところあるんだから!」
「まだあるの!?」
僕はリンと手を繋いだまま、再びお店巡りを始めた。
ルミナスクエアを満喫したあと、僕たちは『Random Play』へ戻ってきた。
「ただいまー! あー、楽しかった!!」
「ただいま~……リン、後半ちょっとハードすぎない?」
「おかえり、二人とも。○○はなんだか疲れてるね?」
アキラが戻ってきた僕たちを出迎えてくれる。
「色々あって疲れたんだよ……!」
「あれは○○が体力ないだけだよ!」
「ともあれ、楽しめたみたいならよかったよ」
そう言って、アキラが笑う。
「ちょっとソファー借りるよ……」
僕は「うへー……」と声を漏らしながらソファーにどさっと座り、右手で胸の辺りをぐりぐりと押す。
すると、リンが笑いながら近づいてきた。
「そのぐりぐりやってるの、昔からだね」
「そうなの?」
「うん。○○、疲れるとよくやってたんだ」
リンは懐かしむようにつぶやいた。
「そういえば、ホロウ帰りなんかはよくやっていたね」
アキラまでそんなことを言う。
「えっ、そんな昔からなの?」
「本人は気づいてなかったみたいだけどね」
「へぇ……」
僕はもう一度、なんとなく胸元をぐりぐりする。
別に痛いわけじゃない。
ただ、こうしていると妙に落ち着く気がする。
「でも、そんな細かいことまでよく覚えてるね」
「えっ!? そ、それは……!」
リンが急に慌て始めた。
「リンは昔から○○のこと、よく見てたからね」
「お兄ちゃん!?」
「へぇ~?」
「○○もその顔やめて!」
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「ふあ~……」
ソファーの上で、○○が大きなあくびをする。
「○○、疲れたならもう寝ちゃえば?」
「そうしたいのは山々なんだけど、もう一歩も動けない……」
「じゃあソファーでちょっと仮眠してから、ベッドでちゃんと寝なよ~!」
「は~い……」
そんな話をしているうちに、○○は眠ってしまった。
私はその横に座って、そっと寝顔を覗き込む。
「ふふっ! かわいー!」
しばらく眺めていると、○○の身体が急に私の方へ倒れてきた。
「わっ……!」
なんとか受け止めると、○○の頭がそのまま私の膝の上に乗る。
「……っ!?」
自分の顔が熱くなるのがわかる。
一度起こそうとも思った。
でも、気持ちよさそうに眠っている顔を見て、やめることにした。
「……今くらい、いいよね」
膝の上で眠っている○○とこっそりツーショットを撮ってから、私は静かにその髪を撫でる。
「○○……約束、守ってね」
最近重めな気がしますね
追記 サブタイトルを追加しました。内容に変更はありません!
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