特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです   作:月待 紫雲

26 / 26
26話 自由計画

「いや、大いに関係あるぞ」

 

 薄い胸を張って、エルゼ王女が言う。

 

「ワタシが冒険者になれば民の悩みを直接解決しに行ける。無論、お主は連れて行く」

「じゃあアンタが冒険者になるタイミングでいいじゃないですか」

「3年も後の話かもしれんのに?」

 

 冒険者の仕事が許されるのは、15歳。オレら一般人においての成人だ。貴族らは18歳。請け負う仕事の責が違うからだろう。

 

 つまり12歳のエルゼ王女は冒険者の仕事はできない。

 

 冒険者そのものに登録はできるが、依頼は単独で受けられないし、誰かに付き添って薬草採取とかそんな程度だ。小遣い稼ぎだな。

 

「先にストーム級になっておけ。それでワタシを釣り上げろ。上位の冒険者の推薦があれば昇格は容易なはずだ」

「つまり、自分がさっさと上のランクになって凶暴な魔物と戦いたいから、ズルできるように先に上にあがっておけ、と」

「そうじゃ」

「めんどくせー」

「言うほど面倒ではなかろう? お主はファイアードレイクを倒した男だぞ」

「冗談キツいっす」

 

 ファイアードレイクを倒したのは、ア・ン・タ。

 

「別に王族や騎士が冒険者になってはいけないなどという法律はない。依頼を受けて危険に飛び込む冒険者。名を上げられるし、王族のイメージアップにも繋がる」

「それはエルゼ王女が民にとって良い冒険者になれたらの話でしょ」

「なれるさ。この見た目だぞ」

 

 髪をかき上げるエルゼ王女。見てくれの話をしてるんじゃねーよ。

 

「今回の聖女修行で回復魔法もしっかり覚えれば多くの民の悩みを解決できるじゃろう。魔力は心配なし。冒険者に舞い込む依頼は民が何に困っているか事情の把握もできるし、予兆も感じられるだろう。魔物討伐なぞ、お主とおれば負けるほうが難しい」

 

 魔物に関しては、確かにエルゼ王女に任せておけば全部終わる。

 

「しかし民の悩みも魔物倒してハイ終わり、ばっかりじゃないですよ」

「わかっておる。が、この城で書類とにらめっこしたり、愛想振りまきながらあちこち視察に行くよりよっぽど良い。ワタシは好き勝手したい。常々思っていたが、冒険者はぴったりだ。ファイアードレイクの一件で騎士と姫みたいに扱われたし、いいじゃろ? 旅する騎士と姫」

 

 この王女、欲望に忠実すぎるだろ。

 

「政治は姉上たちがおるのだ。任せれば良かろう」

 

 この姿を他の誰かが見たらあまりに嘆かわしくて涙がでてくるかもしれない。オレは貴族でもなんでもないから気にしないが。

 

「ま、ストーム級は無理でもゲイル級までは余裕だろう? 用意しておけ、ワタシが冒険者として動きやすいように」

 

 あと、と。

 エルゼ王女はニッコニコでこう言ってきた。

 

「絶対にワタシ以外とパーティーを組むなよ?」

「なんで? 一時的にならいいんじゃないか?」

 

 だって少なくとも修行に出てる間はいないんだろ?

 

「ダメだ、ソロでやれ」

「んな無茶な」

「無茶ではない。やれ」

 

 ニッコリしたまま、強く言われる。

 

「理由は?」

「必要か」

「できれば」

 

 エルゼ王女は立ち上がり、オレの腕を掴んできた。

 

「共犯以外、邪魔だろうが。強さ的にも、事情的にも。それとも何か? ワタシ以外と組みたいと?」

 

 なんでこんな詰められてんのオレ。

 

「まぁやるだけやりますけど、あんま期待しないでください。ゲイル級行けるかなんてわからないんですから」

「うむ。期待はしない。行けて当たり前だからな」

 

 ハードルを上げるな。

 

 

 

◯

 

 

 

 翌日。

 城の前で、オレたちは王女サマの見送りに出ていた。

 早朝。教会への莫大な持参金などを乗せた馬車数台と共に、エルゼ王女は旅立つ。他の従者と共に、オレはお見送りだ。

 

 今回教会までの護衛はオーレリア王の近衛騎士団が引き受けてくれる。つまりマイロス騎士団長。今、お見送りされているエルゼ王女の近くで控えている。

 

「この度はよろしくお願いします。マイロス騎士団長」

 

 一応形式上頼んでおく。

 たぶんエルゼ王女はこんな護衛いらないと思ってるかもしれないが。今回は金品もあるしな。

 

 ちなみにエルゼ王女が城に戻るときはオレが送り迎えをする。王女の身一つ守るだけなので。いや、戦闘になったらオレは見てるだけなんだろうけどね。

 

「何。貴殿ほどの騎士と比べれば心許ないかもしれないが、命に替えてでもお守りしよう」

 

 いや、そこまでしなくてもいいけど。オーレリア王が困るだろうから命賭けなくてもいい。

 

「頼もしいです」

 

 本当。

 王の近衛騎士団長だぞ。これ以上の護衛いないだろ。

 

 オーレリア王が近衛を動かすほど、エルゼ王女のセンスは価値があるってわけだ。

 

「ところで、王女サマが戦いに参加できます?」

 

 マイロスが眉を上げる。

 

「なぜだ」

「適当な魔物程度なら無効化できるでしょうから。本人のためにも戦わせてあげてほしいんです。もちろん、できればで」

 

 本人暴れたいだろうから。

 

「ロマ」

 

 名前を呼ばれ、振り向く。エルゼ王女だった。両手で手を握られる。上目遣いで、寂しげにこちらを見てきた。

 

「私(わたくし)の勇者サマ。離れるのは寂しいですが、立派になって帰ってきます。待っていてくださいね」

「楽しみにしております」

 

 跪く。

 ほら、王女サマモード入ってるから付き合わないと。なんか他の従者が涙ぐんでて感動的なシーンっぽいから。うん。正解とか全く知らんけど。

 

「では、皆様。行ってまいります」

 

 オレから離れて、エルゼ王女は優雅にお辞儀をする。

 

 そうして、エルゼ王女は教会へ向けて出発した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ED傭兵、清純幼淫魔を誑かす 〜行き倒れ淫魔を哀れに思い、ED治療も兼ねて拾ったが――勃たんし、それを硬派で誠実と勘違いされるし〜(作者:ぞうきん)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

 過去の出来事から不能になったオッサン傭兵クレバーは、ある日淫魔の少女を拾う。あわよくばED治せないかななんて軽い気持ちで考えていたが、彼は淫魔という生物のことを全く分かっていなかった。淫魔は幼かろうがなんだろうが、好いた男のためならば――――人外の執着心を以って、あらゆる手段でその精を搾り尽くさんとするのだ。


総合評価:1784/評価:7.96/連載:10話/更新日時:2026年08月09日(日) 17:59 小説情報

『大切な人を救うために死に戻る能力』(作者:破れ綴じ)(オリジナル:現代/日常)

「ま、アンタは『大切な人』じゃないんだけど」▼ *▼ クラスの堅物委員長マコトがめちゃくちゃ仲の悪いギャルのセイラと共に、なんとか死に戻りループを攻略し、『大切な人』達を命の危機から救い続けるお話です。ちなみに、能力を持っているのもループするのも主人公じゃないです。


総合評価:6224/評価:9.21/連載:83話/更新日時:2026年09月26日(土) 07:15 小説情報

異世界転生したのに前の転生者にやり尽くされていた件(作者:berunarudo)(オリジナル:ファンタジー/冒険・バトル)

ライトノベル好きの大学生・荒川琉生は、通学中にトラックに轢かれかけた少女を助け、命を落としてしまう。▼次に目を覚ました時、彼は異世界でルークスという平民の子に転生していた。▼前世では何者にもなれなかった琉生は、二度目の人生こそ物語の主人公になりたいと願う。現代知識を使い、幼い頃から鍛え、誰よりも強くなって、この世界で自分だけの物語を掴むのだと。▼しかし、ルー…


総合評価:108/評価:6.67/連載:64話/更新日時:2026年09月06日(日) 08:00 小説情報

処女の女冒険者に気をつけろ(作者:三つ眼の荒木)(オリジナル:ファンタジー/恋愛)

冒険者は命がけの仕事だ。▼だからパーティを組めば、いつの間にか誰かと誰かがくっつく。▼フリーでやっていて弱い女には、体目当ての依頼しか回ってこない。▼つまり、フリーで長く続いていて、下世話な噂が一つも聞こえてこない女冒険者。▼そういう相手は、体を売らずに済むほど強く、それでいて誰ともパーティを組めなかった人間ということになる。▼強くて訳アリの女。▼「処女の女…


総合評価:3507/評価:8.55/連載:7話/更新日時:2026年09月25日(金) 20:00 小説情報

転生先のゲーム世界でアバズレヒロインが清楚堕ちしてる件(作者:図画工作で使うトイレットペーパーの芯)(オリジナル:ファンタジー/コメディ)

※なお、主人公は最早あり得ない寝取られルートにずっと怯えている模様。


総合評価:8931/評価:8.81/連載:11話/更新日時:2026年09月26日(土) 11:33 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>