特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです 作:月待 紫雲
1ヶ月後。
オレは馬車と共に教会の入り口で、エルゼ王女を待っていた。
しばらく待っているとかなり上機嫌のエルゼ王女がやってくる。
両手に荷物を持っていた。
「ただいま」
「おかえりなさいませ。荷物多いっすね。持ちますよ」
「あぁ。もう終わったからな。帰るぞ」
……終わった?
「えっと何が」
「聖女修行」
「何やらかしたんです」
エルゼ王女は腰に手を当てた。
「何も。レベルが低すぎるから試験を試しに受けさせろと言った。ちゃんと一等聖女認定を受けたぞ?」
荷物の中から紙を1枚出す。額に収められたそれは教会の印が押され、一等聖女であることを認定する証書であった。
「…………は?」
待て。三等ですら3年かかるんだったよな? そんなすっ飛ばせるもん?
「ところでお主はどこまで行った? 1ヶ月あったのだ、
「いや
「…………は?」
顎が外れた猫みたいな顔で呆れられた。
「なぜだ!」
「なぜだも何もないですよ! そんなポンポン昇級できたら世の冒険者は苦労しません!」
「ワタシは一等聖女になったんだぞ」
「己の規格外さを恥じてください」
「恥じるわけ無いじゃろ!? アホか!」
フン、と鼻を鳴らしながら腕を組むエルゼ王女。
「だいたい規格外はお主もじゃろうが。何がどうなれば未だにブリーズでいられるのだ」
「
「アホか魔物討伐をしろ!」
えー……理不尽な。
「まぁいい。一等聖女の資格をぶらさげれば年齢制限なぞ取り払えるじゃろ。共に昇格するぞ、ストーム級に」
「いやストーム級は無茶ですって」
「挑んでから言え。というか荷物を入れろ早く」
「はいはい」
馬車の中に荷物を運んでから、王女サマを入れてやる。
オレ? オレは御者やんなきゃだから外。
オレ以外に護衛はいない。馬車もない。王女殿下のお迎えとしては貧相極まりないが、エルゼ王女の希望だし、たぶんトラブル招いて暴れたいだろうからこうなってる。
オレはごめんなんだけどなぁ。
空を見上げながら、馬を走らせる。
快晴だった。
○
しばらく馬車を進めていると、通行止めにあった。
2人の黒ローブの女性が、道の真ん中に立っている。オレは十分に距離がある状態で馬車を止めた。御者台から降りる。
馬車の扉が開き、エルゼ王女が顔を覗かせる。
「どうした」
「人の通せんぼです」
「ほぉ」
ぴょん、と馬車から降りてくる。オレはその体を受け止めて、着地させた。
「何人いる?」
今は森の公道を通過中だ。教会から王都へ行くには必須の道。
で、通行止めしているのは2人。森の中に潜んでるやつは――
「うーん、潜んでるのが8人。あいつらで10人ですね」
「ふむ探知に引っかかる人数と同じだな」
「探知の魔法使えるんですか」
「うん覚えた。お主は」
「気配でわかりますよ」
「気配を消してもか」
「基本わかりますね。気配を消すだなんて、企んでますよって言ってるようなもんですよ」
2人で歩きながら道を塞いでいるやつに歩み寄っていく。さっきから全員静かに傍観状態だ。話し合いはできなくもなさそうだ。
「ちょっとアンタら。道を塞がれると馬車が通れないんだけど」
オレから声をかけると、2人ともフードを取った。
2人とも女性だった。
姉妹みたいだな、と思った。といっても雰囲気で、でしかないんだけど。
1人は金髪で目を閉じている。顔立ちはやけに整っていて、綺麗だった。もう1人は青髪で、金髪の方と長さを揃えているようだった。かばうように立ち、腰の剣に腕を乗せている。顔は仮面で見えない。
「一等聖女、エルゼリーナ王女。迎えに参りました」
「ほう、で。誰だ」
「ウラリア。一等
「ニエべ、です」
特に敵対する理由はなさそうだった。
「迎えとはなんでしょうか」
笑顔を貼り付けて王女サマモードで対応するエルゼ王女。
「本部に来て頂きます。我らと同じ、致命者となっていただきたく」
「お断りします。ワタシは王女であって、神に命を捧げる身ではありません」
致命者。
魔物の討伐など、命を賭して神の教えを広める者たち。実際に命を落とした場合は真の致命者として称えられる。
「一等聖女はわたくしを含めても数える程度。それにあなたはなったのです。力には責任が伴う。ましてや、あなたは十分な教育を受けていない。であれば、教育を受けるというのも筋でしょう? 守り手もおりません」
「それはお断りしたはずです。
「えぇ。ですが、あなたほどの才となると話は別です」
オレに手を添えて、エルゼ王女はキッパリ断る。守り手のニエべとやらがオレを
「勇者サマ……? こんなのが……?」
おい、聞こえてるぞ。つうか――。
「監視下に入るか、監視役をつけろ、と。随分乱暴な聖職者どもだな」
周りに潜んでいたやつらの動きを見ながら、オレは話に割り込む。
空間に歪な光の反射がある。おそらく結界を張られた。
結界は一定の領域を外部の攻撃から遮断する魔法だ。そして方向性を変えれば、内から出られない牢獄にすることもできる。
「子どもは物事がわからないものです。教え導くのが、教会の使命でもあります。結果的にはきっと王家にとっても益になるでしょう」
「私は十分存じております。大事にするつもりはありませんわ。ですので、素直に帰って頂けると」
王家と教会は別に上下関係にあるわけではない。政治と宗教は分けられている。国は政治的権力であり、教会は宗教権力だ。
つまり、この場で成立するのは「一等聖女」という互いに持つ
というか王家側、オレとエルゼ王女しかいないし、数じゃこっちが負けてるし。
「では、こうしましょう」
一等聖女であるウラリアが手を叩く。
「互いに力を示し、問題ないことを示す。勝ったほうの要求を通す、というのは」
「具体的にお願いします」
「2対2での勝負です」
つまり。
周りの戦力を使わないでやるからこっちの要求に応じろ。ま、こっちが勝つから結果変わんないけどな、というやつだ。
「ロマ」
「はい」
「お願いします」
「……ハイ」
王女サマモードのエルゼ王女にあれこれ文句を言っても仕方ない。やるしかない。
「では
「はい、承知……ハァア!?」
今日1でかい声をだしてしまった。