特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです 作:月待 紫雲
守り手のニエべと向かい合う。後ろでは聖女のウラリアが控えていた。オレの後ろの王女サマと言うと……馬車に結界を張って、馬を撫でている。
いつも戦いたがるエルゼ王女だが、今回は相手が相手だから遠慮したのか、なんか別の意図があるのかわからないが――ひとつだけわかってることがある。
オレがむちゃくちゃ苦労するってことだ。
「あなたも大変ですね」
ウラリアが同情してくれたのか、そんなことを言ってくれる。
「えぇ。本当に」
「あなたもどうですか? 教会に仕えるというのは」
「王女サマがそっちに行くなら行きますよ」
だって絶対ありえないからな。
「ま、始めましょうや」
審判も何もいないからスタートがわからんな。名乗るか。
「我は特任騎士ロマ。そちらの名を聞こう」
「一等聖女の守り手ニエべ」
名乗り合う。そして、相手に任せることにした。
「行きます」
お、来てくれた。
相手が剣を抜いて斬り掛かってくる。中々早いな。この間戦った冒険者のジンジャーくらいはありそうだ。彼女ゲイル級だっけ。
守り手っていうくらいだから聖女を守れるだけの戦闘能力があるのだろう。
ひょいと避ける。避けて、すり抜けた。
聖女一直線。
「あ、オマエ!」
後ろから抗議の声が上がるが、遅い。オレは剣を抜き、一等聖女に向ける。真面目に付き合ってられないからね、さっさと終わらせよう。
「失礼」
「いえ、お気になさらず――
目が見えないはずの聖女が手をオレに向ける。瞬間、光の剣が発生し、オレを貫きに来た。
「なっ――」
魔法の発動速度が異常だった。剣で防ぐが、勢いを殺し切れない。そのままオレの体が押し出される。
「ぐっ、なんだこの魔法……おらっ!」
上に弾き上げてどうにかやり過ごす。
――が。
後方で剣先が転がる。
半ばで折れた。一撃で。
最近オレの剣、壊されすぎな件について。
「――裁定魔法。文字通り、相手を裁定し、決定。裁きを下す魔法です」
「オレのどこに裁きを受ける要素があるんだ!」
魔法の名称からして重い魔法のはずだ。魔法は概念事象の具現化。裁定となれば裁判級、死罪だのそれ相当の判定が下されないと高威力にはならないはずだ。
それを――。
「神に背き、決闘を汚す――十分
「なっ――?」
決闘を汚すって、そもそも2対2の戦いで決闘も何もあるか!?
「そして、今罪から逃れた……
「な――!?」
光の剣が生成される。そして射出された。
「むちゃくちゃ――ガバガバ判定だぁーー!?」
魔法剣を生成し、ぶった斬る。光が弾けて無に帰った。
「いえ、そうでもないですよ。人は
「やっぱガバガバ判定じゃねえか!」
「それより、後ろ」
指をさされる。
「オマエえぇええ!」
剣を振り下ろされる。オレは振り返らずにその剣を魔法剣で受け止めた。
「こっちを、見ろぉおお!」
仮面越しなのにコワイ。いや、聖女サマ一直線に襲われたらそうもなるよね。
――てか。
「あの、聖女サマ。つかぬことを聞きますが」
「はい。なんでしょう」
「この守り手サマの剣はどういった代物で」
「魔法を切断できる、エクトプラリウムで作成された剣です」
エクトプラリウム。空気中の魔力を結晶化させ、魔鉱石を生成する原因となる希少な鉱物。それでつくられた武器は魔力を物質化し、物理的な破壊可能とする。
つまり何が言いたいかというと、
オレの魔法剣がただの結晶になって砕けるってこと。
「最悪!」
魔法剣はまだ耐えていたが、魔法を解除して逃げる。そこを、ニエべが追いかけてくる。
「逃げるな」
「ちぃ!」
半分だけになった剣で攻撃を弾く。こちとら上物といっても鋼なので、希少鉱物サマに敵う武器ではない。
横目でウラリアを確認するが、裁定魔法を撃ってくる様子はない。正々堂々やれと、にこやかに訴えているようだ。
おっかねえ。
連続で繰り出される剣を、全て避けていく。
「この、ちょこまかと」
「どうあったって打ち合える武器と魔法じゃないだろ!?」
武器は劣る。魔法は物質化される。まともに斬り合いに応じたら終わりだ。
納刀する。
「また逃げる気か!?」
「逆だよ!」
片手で振られた一撃を狙い、懐に潜り込む。そして手首を掴んだ。
そして頭突きを食らわせる。咄嗟に腕で防がれたが、有効打にはできただろう。怯んでいるうちに鳩尾に拳を当てる。
そこに魔力の
「ぐふっ」
手首を掴んでいた手を離したので派手にふっ飛ばされてくれた。地面を転がり、そしてうつ伏せに倒れる。
剣から手を離さなかったのは意地だろう。
「ふぅー」
息を吐く。
意図的に
成功して良かったぜ……。
「ぐ、うぅ……」
拳を握りしめながら、ニエべが立ち上がる。足がふらついていた。
「素晴らしい魔力のコントロールですね。さすが特任騎士サマです」
「相手褒めてる場合かよ。味方の心配してやりな」
「心配? 優しいのですね、あなたは。大丈夫、彼女は無傷です」
ウラリアが手をかざす。それだけでニエべのダメージがなかったかのようにふらつきが収まった。
回復魔法だ。
「わたくしたちには神がいますので」
「その神は目を治してくれないのか?」
「えぇ。これは試練で――そして、目よりももっと素晴らしいものをくださいましたから」
恍惚とした表情で祈るウラリア。
そして、
「残念です。教会の守り手であれば、とても素晴らしい方になれたというのに――神を疑うだなんて……
裁定魔法がオレに飛んできた。今までで一番でかい――ゲイル級の魔物なら貫けそうな――光の剣だった。
魔法剣を生成し、斬ろうとしたところで――
「
炎が全てを焼いた。