特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです 作:月待 紫雲
ゴブリンは好洞穴性の魔物だ。簡単に言うと洞窟を住処にするが、活動する場は外の魔物ってこと。
体色は洞窟や外である森に擬態しやすいようになっている。
レッドゴブリンはゴブリンの中でも特に戦闘能力が高く、かつ、ゴブリンをまとめ上げる知能も持っている。
外に散っているゴブリン討伐であれば、ブリーズ級でもできなくはないが、ボス個体込みのゴブリン退治となると難易度はガスト級に跳ね上がる。
巣に近づけば近づくほど、ゴブリンの集団に奇襲され、殺される確率が上がるからだ。
洞窟に足を踏み入れる。湿気が多く、真っ暗闇だ。ちょろちょろと、どこかで水の流れる音がする。
入口付近はまだ見えたものの、奥に入れば入るほど目の頼りが効かなくなる。
「確認だが」
「はい」
「暗闇でも問題なく戦えるな?」
静かな洞窟の中で声が反響する。オレは腰の剣に手を乗せた。
「えぇ、問題ないですよ」
「では、頼みがある」
空中に弱々しい火が浮かぶ。その気になれば洞窟を照らせるはずだが、自分の周りしか照らさない。エルゼ王女はゆっくりと鋼の剣を引き抜く。
その視線の先にはゴブリンがいた。
「まずいときは助けてくれ」
剣を振り下ろす。ゴブリンに反応させずに1匹倒した。
「グギャギャ」
「グギィイ!」
あちこちから声が響く。
暗闇からゴブリンが数匹飛んできた。それぞれが武器を構えている。エルゼ王女は剣を後ろに引くと、突きの姿勢に入る。
そして1匹のゴブリンの胸を刺し貫いた。剣を蹴り抜いて薙ぎ払う。それで横並びになっていた2匹のうなじを斬り裂く。
片目を瞑っていた。
残り2匹。跳躍して襲いかかっていたゴブリンが空振りし、体勢を崩しながら着地する。
「すぅ……」
上段に構え、二撃。それで仕留めた。
短時間で5匹。
「お見事」
オレは前に出る。エルゼ王女とすれ違い、飛んできた矢を掴む。
「む。矢か……?」
「木を削った粗末なもんですけど、ね」
「反応できなかった」
「上々ですよ」
どうせ加護で無傷だろうし。
「改善点は?」
「慣れっす」
「あほう」
そんなこと言われても慣れは慣れだし。
オレは矢を持ち変えると、感覚で投げる。短い悲鳴と共に、何かが倒れる音がした。
「外にも結構いたはずだが……多いな」
「ちゃっちゃとボスを仕留めましょう。敵のテリトリーにいる時間は短い方が良い」
「うむ」
小さな火を頼りにしつつ、ゴブリンを蹴散らしながら狭き道へ進んでいった。
主にエルゼ王女が。
しばらく進んでいくと拓けた場所に出た。比較的、なので狭いことに変わりはないのだが。
「……あれがレッドゴブリンか」
薄暗い中に赤く、通常よりも大きいゴブリンがいた。肉をかじり、残った骨を投げ捨てた。
その手には
「……冒険者パーティーか」
「の、ようですね」
罠にハマる。油断する。予定外の魔物で対処できない。原因は様々だ。そこそこ強くなった冒険者はゴブリンにとっていい餌になるだろう。何せ、強い=魔力が多い、だからな。
「倒す」
笑みはなかった。
エルゼ王女は剣を構え、レッドゴブリンと対峙する。体格的には負けている。
「ギギ……ギャアあぁああ!」
レッドゴブリンが咆哮を上げる。ピリピリと肌に痛みが走った。ただの咆哮じゃないな、魔法だ。
「くっ」
エルゼ王女には効いたのか、構えに綻びが生じる。そこへレッドゴブリンが肉薄し、斧を振り下ろしてきた。
剣でそれを弾く。
「この、強いな」
片目を閉じたまま、相手の動きを窺う。だが、それを簡単に許すゴブリン
「キキっ」
後ろで待機していたゴブリンが剣を振る。
「っ!」
剣で受け、弾き上げ、斬る。ゴブリン程度に剣技で劣るわけがない。しかし、集団戦だ。魔法も飛んでくる。
ゴブリンマジシャンだ。
エルゼ王女は指先を向ける。魔法弾が当たる直前に火の矢を生成し、撃ち抜いた。魔法弾が弾け、ゴブリンマジシャンの胸に刺さる。そして爆発した。衝撃で壁に頭をぶつけ、潰れる。
「クギャア!」
「……っ! こいつ!」
エルゼ王女が剣を構え直すが、レッドゴブリンがエルゼ王女よりも早く攻撃してくる。
「ちっ」
エルゼ王女は斬られる前に潜り込んだ。背中の上を斧が通り抜ける。
お、ナイス。
「せいっ!」
体重を乗せて斬り上げる。体勢が十分でなかったのと、レッドゴブリンが後ろに跳んだので回避された。
しかし状況のリセットはできただろう。
「エルゼ王女」
「なんだ!? 今集中しておる」
「全部切ってます?」
加護も身体強化も、何もかも。
「……しなければ、わからないではないか。お主は何もしていないのだろう!?」
「まぁそうですけど」
王族がやるなっつうの。
「グギャッ」
何もしていないオレを雑魚だと思ったのか、ゴブリンが襲ってくる。それをサクッと斬り捨てる。
これで取り巻きはゼロだ。
「存外、苦戦するものだな」
「そりゃ本来の力使ってなければそうなりますよ」
オレが火属性の魔法メインで戦ってるようなもんだ。まぁ、エルゼ王女は剣帝のセンスもあるからガスト級並みの実力が発揮できてるのだろうが。
レッドゴブリンは孤立したのと、オレが逃走経路を塞いでいるので考え込んでいるようだった。オレとエルゼ王女の出方を見ている「待ち」の状態だ。
「――なぁ」
「なんです」
「人の死体が目の前にあるが、それでも戦いで興奮してる子どもはどう思う」
その顔は笑っていた。
「……化け物だなって」
「嫌か……?」
「であればここにいませんが」
「そうか」
エルゼ王女はレッドゴブリンに突撃する。一時的に身体強化をかけたようで、一息で距離を縮めた。
いきなりエルゼ王女が迫ってきたので、レッドゴブリンは対応できない。
そして、その生命を終えることとなった。
◯
外に出る。
「んーっ、日の光が心地よいのう」
背伸びしながらいつもの調子のエルゼ王女が言う。そして手に持っている4枚のカードを見た。
死体にあった、冒険者カードだった。ギルドに提出するためにオレが持とうと思ったのだが、本人が持つと聞かなかったので任せることにした。
「お主はこれになるなよ」
「なりませんよ」
「ずっとそばにおれ。で、ワタシを楽しませろ」
「それはそれでやだな」
「王女のお気に入りだぞ? 自慢に思うのだな」
エルゼ王女は手を振りながら帰路につく。オレはいつもの通り、エルゼ王女の後をついていった。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。最近投稿時間ばらしていますが、固定の方が良かったりしますか
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固定しなくてもいい
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01時15分
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07時15分
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12時15分
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17時15分