特任騎士のオレの仕事は、暴れる王女サマを見ていることです 作:月待 紫雲
はい、
実力がある方が指南役になるということで。冒険者の方は打診を出す前段階で、立候補者じゃなかったらしい。
ま、騎士団長が国の戦力だと一番だろうし、オレが倒せるんであれば、ま、文句はなくなるだろ。
というわけで城の訓練場で、こっそりオレと騎士団長のジョストが行われることになった。
団長と向かい合う。
顔以外堅牢な鎧を身にまとい、ジョスト用の刃の潰れた剣を持っている。
オレの手にも同じように剣がある。ちなみに鎧は着ていない。自由と言われたし、着たことないから。
「――ずっと疑問であった」
剣を向けられ、睨まれる。いかつい顔のベテラン剣士に凄まれると中々迫力がある。
「あの
「アハハ……」
「エルゼ王女殿下は純粋なお方だ。貴様を信頼している」
嘘……だろ? あの凶悪脳筋王女が純粋……?
いや待て、この人は猫かぶったきれーなエルゼ王女しか知らないんだ。
「しかしだ、貴様がエルゼリーナ王女殿下に仕えるべき者か、まだ見定められていない」
まぁ、戦果上げてませんからね。というかよく今まで放置してくださったもので。
「ここで見定めさせてもらう。貴様の忠義の程をな」
すまん、それはない。王女様の財力に尻尾振っているだけです。
「それではこれより、火の聖女エルゼリーナ王女殿下の剣術指南役を賭けた決闘を行います」
審判が大声で宣言する。
手を空に向けて上げる。視線だけそちらに向けた。
「はじめ!」
手が振り下ろされたと同時に騎士団長が動いた。
「ぬぅん!」
剣が振り下ろされる。
どれ、一旦受けてみるか。
右半身を前に出し、右肩に担ぐように剣を構えて、上段の一撃を受け流す。そしてすぐさま後退した。
――――いったぁ!?
年齢的に全盛期ってわけじゃないだろ。どんな腕力してやがる!? 岩を真っ二つにできるぞ、この威力は!?
魔力での身体強化とかなしって話だったよな?
剣帝に迫る実力だから身体能力の桁外れなのはわかるが、それにしたってやばすぎるだろ! オレを殺す気か!?
「受けるか」
いや受けきれてないです。めっちゃ腕に響いてます。
「ならば!」
休む暇もなく、横薙ぎの一撃が来る。が、オレは飛び上がって回避する。相手の一撃を軸に半円を描く。同時に剣を振るい、通り過ぎた横薙ぎの一撃を弾くことによって切り返しの追撃を潰した。
まともに打ち合いしてたら剣がひん曲がるだろう。
「ぬぅん!」
剣が弾かれたのを気にすることなく、拳を握りしめた団長が殴ってくる。
顔面をもろ殴られた。
地面を転がる。
「あたっ、いでっ」
「ロマ!」
即席でつくられた観客席からエルゼ王女の悲鳴が聞こえる。猫かぶってるからヒロインっぽくしてるだけだ。たぶん心配されてない。
……心配する姿が想像できねー。
「……ほう」
感心したような、そんな声が漏れる。声の主は団長だ。
「まともに入ったはず、あまり効いた様子はないな」
立ち上がったオレを見て、団長は笑った。
口元を拭う。
「空中でモノをへし折るのは難しいもんですよ?」
あと加減されてるし。殺し合いの場じゃないからね。
「気に入らんな」
「何がです」
「貴様には本気が見えん。遊んでいるのか?」
「いえ、勝つつもりではいますよ」
「勝つ……? わたしにか?」
指南役の分の給与アップのために。指南役のフリ、でしかないけど。
だって、指導いらないもん。あの王女サマ。
いくら高熱で切断力を高めた魔法のファイアーソードだからって、ゲイル級の
考えてもみろ? 12歳の体で自分の数十倍の巨体を誇る化け物をバラッバラにして勝つ手段を
さすが剣帝のセンスというべきか。いらないんだよ、そんな指南だなんて。エルゼ王女は勝手に学んでるし、学べる。
まぁしかし、あれだ。
――どうやって勝とう?
あんまいつもの戦い方したくないんだよな。バレそうで。
団長、修羅場くぐってるでしょ? オレの剣技を知ってる可能性も高いわけで。
団長じゃなくとも、才定の儀式のときの重鎮や王はいるからどうせそいつらも情報通でしょ? 知ってるかもしれないじゃん。
「どうした、来ないのか? 待ってやるぞ」
煽られる。
オレは剣を一回転させ、片手で前に構えた。
「すぅ――」
そして、前に踏み出す。
「――――!」
団長の顔が驚愕に染まる。しかし防御の構えは取っており、突きは防がれた。
鍔の部分で刃を止められ、剣先は首の真横を通り過ぎた。
右に重心を移しながら両手で持ち、鍔迫り合いに持ち込む。
「ぐ、ぬ」
徐々に剣を引き込み、柄を握っている拳で相手の拳を叩き上げた。オレも団長も剣が頭上に弾き上げられたために、胴ががら空きになる。
「ぬぉ!」
蹴りを入れる。
相手はバランスを崩して後退するが、鎧も相まってダメージはない。
こっちも無理に押し通したので追撃はできない。
無言で構え直し、睨み合う。
「…………貴様、今まで何をしていた」
「あーえーっと……研鑽を重ねていたというか」
「これほどの者が無名だったとは」
難しい顔をし始める団長。
「正直に言おう。てっきり貴様は、暗部の者かと思っていた」
「なぜ」
「誘拐事件から王女殿下を救ったという都合の良い手柄。通りすがりで得られるものではあるまい? 知っていなければ、な」
ふぅ、と息を吐く。
「しかし杞憂であったな。これほどの剣の技術を持つものが暗部に身を潜めていたなど考えられん」
…………。
……………………。
………………………………………………………………そうです。
団長、大当たりです。