ズガガガガガァァァンッ!!!!
天と地を同時に引き裂くような激突音が、焦土と化した関西の街に轟き渡った。
空を切り裂き、大気を焼き焦がしながら放たれた魔王ゼノヴァルグの必殺の一撃──『暗黒剛覇絶滅拳』。
世界を滅ぼすほどの凄まじい質量を持った漆黒の超質量魔力塊に対し、セイヴァールミナリエは逃げることも防御の魔法陣を展開することすらもしなかった。
ただ一歩、深く踏み出す。
黒銀の装甲に走る純白の光ラインが、心臓の鼓動と完全に同調するように激しく明滅する。背中に広がった黄金の光と漆黒の炎が織りなす「光闇の翼」が大きく羽ばたき、空間そのものを凝縮していく。
『ハァァァァッ!』
セイヴァールミナリエの放った右拳が、迫り来る壊滅の暗黒拳と真っ向から正面衝突した。
拮抗はわずか数瞬。相反する力が反発し合い、周囲数キロメートルの空間が歪む。
瓦礫や打ち捨てられた戦車の残骸が、重力を無視して宙へと浮き上がり、次の瞬間に粉々に粉砕されて散っていく。
「なにィっ!?」
ゼノヴァルグが歪んだ驚愕の声を上げた。
自誇する必殺拳の威力が押し戻されていく。
セイヴァールミナリエの右拳から放たれるのは、単なる闇の破壊力ではない。聖なる光の浄化と貫通、そして漆黒の闇の侵食と破壊、
──二つの相反する概念が完璧な陰陽の渦を描き、ゼノヴァルグの魔力を相殺していた。
「ぬオォォォォッ!!」
ズザザザザッ!
地煙を上げながら弾き飛ばされるゼノヴァルグの巨体。数画のビルを突き破りながら体勢を整えた魔王は、信じられないものを見る目で睨みつけた。
「バカな……バカなことがあってたまるか! 何だそのデタラメな力は! 光の魔力と、闇の魔力が混ざり合っているというのかッ!?」
ゼノヴァルグの咆哮に対し、セイヴァールミナリエは静かに、だが一歩も退かない揺るぎない足取りで前に踏み出した。
その視線には、かつて復讐に囚われていた頃の狂気も、絶望に打ちひしがれていた弱さもない。
男としてカッコつける那津男の意地、手を握り締めてくれる紡の優しさ、誇らしげに胸を張るルルンの誇りがある。
『俺たちは一人じゃない!お前が踏みにじった繋がり!そして諦めない心が、この力を生み出したんだ』
セイヴァールミナリエの低い声が、静かに焦土へ渡る。
『お前はただ力を求め、破壊することしか知らない。……そんな奴に、俺たちの未来を渡すわけにはいかねぇぜッ!』
「おのれぇぇッ! 戯れ言を吐くなぁぁぁッ!!」
怒り狂ったゼノヴァルグが爆発的な速度で踏み込んでくる。
その巨体からは想像もつかない俊敏さで、両腕の爪から巨大な闇の刃を展開する。
空を断ち切り、十数条の斬撃の光線となってセイヴァールミナリエへ襲いかった。
「くらえぇいッ!」
ゼノヴァルグの咆哮が響く。
対するセイヴァールミナリエは、両手に黄金の聖光と漆黒の闇炎を収束させ、一振りの巨大な大剣を成す。
『ハアアアアッ!』
踏み込み一閃。
空間を切り裂くような薙ぎ払いが放たれた。
バァァァァァァァンッ!!
ゼノヴァルグの解き放った斬撃の群れがセイヴァールミナリエの一撃によって全て正面から叩き落とされ、光の粒子となって雲散霧消する。
刃の余波はそのままゼノヴァルグの胸甲を深く切り裂き、禍々しい紫色の血を撒き散らす。
「グアァァァァッ!?」
悲鳴を上げる魔王ゼノヴァルグ。
しかしセイヴァールミナリエは攻撃の手を緩めない。
背中の光闇の翼を爆発させ、光速の踏み込みでゼノヴァルグの懐へと滑り込む。
『『ルミナリエ・セイヴァー・スラッシュ』ッ!!』
光の速度で繰り出される大剣の連撃。
一撃ごとに光の魔力がゼノヴァルグの内部へと侵入し彼の闇の魔力を爆砕、闇の魔力が邪悪な外甲を叩き割る。
完璧な連撃がゼノヴァルグの巨体を宙へと浮き上がらせ、そのまま容赦なく叩き込まれていく。
「ガハッ……ごふっ!? な、なんだこの連撃は……! 隙がない……光と闇が、互いの弱点を補い合って、無限の循環を生み出したのか……!?」
誰も成し得なかった「光と闇の完全融合」。
それは単に二つの力を合わせた以上の相乗効果を生み出していた。
光が闇の暴走を抑え、闇が光に絶対的な破壊の重みを与える。
二つの極致が結びつき、セイヴァールミナリエに一つの生命体を超えた「事象」のような強固さをもたらした。
「おのれ……おのれぇぇぇッ!! 真の魔王となったこの我が、貴様らごときに圧されるだとぉぉぉッ!?」
無数の穿ち穴を身体に穿たれ、焦土へと叩きつけられたゼノヴァルグが、狂乱の様相で立ち上がった。
その瞳は赤く血走り、もはやプライドも理性のカケラもない。
目の前の敵を殺す、ただそれだけのために、魔王は最悪の禁忌へと手を伸ばした。
「認めん……認めんぞぉぉッ! 力だ……圧倒的な闇の魔力をォッ!!」
ゼノヴァルグが両腕の爪を突き立てたのは、目の前のセイヴァールミナリエでも、大地でもなかった。
何もない「空間の裂け目」──現実世界の次元の壁である。
ズシャァァァァァッ!!
メリメリと音を立てて、現実世界の空がガラスのように裂けていく。
その歪んだ裂け目の向こう側に広がっていたのは、禍々しい紫の雲が立ち込め、幾重もの暗黒城がそびえ立つ場所、かつて魔王が統治し、ゼノヴァルグの生まれ故郷でもある『暗黒世界』の光景だった。
『な……何をするつもりだ!?』
セイヴァールミナリエが思わず動きを止める。
ゼノヴァルグは裂け目に向かって両手を広げ、悪魔のような狂気の笑みを浮かべた。
「見よ! 我が故郷! 我を生み出した暗黒の世界よ! 今こそ我が肉体の一部となり、我に絶対の勝利をもたらす糧となれぇぇぇッ!!」
次の瞬間、次元の裂け目を通じて、暗黒世界全体を覆っていた膨大な『闇の魔力』が、巨大な暴風の渦となってゼノヴァルグの身体へと吸い込まれ始めた。
ゴォォォォォォォォォォッ!!!!
凄まじい引力だった。
暗黒世界が破砕され、そこにあるすべてが純粋なエネルギーへと還元されてゼノヴァルグの肉体へと集約されていく。
「グワアハハハ! これぞ力だあああああァッ!」
世界一つ分という膨大な質量の魔力を呑み込んだゼノヴァルグの巨体が、メキメキと音を立ててさらに巨大化していく。
身長は十メートルを超え、全身の鎧は禍々しい死者の顔が浮き出る悪夢の装甲へと変貌。その背中からは数条の暗黒触手が伸び、放たれる存在感だけで周囲の大気が高熱で蒸発していく。
ドバァァァァァァンッ!!
『グッ……あぁぁぁっ!?』
ゼノヴァルグがただ咆哮を上げただけで、凄まじい衝撃波がセイヴァールミナリエを襲った。
先ほどまで互角以上に渡り合っていた甲冑が、溢れ出る暗黒の力によってギチギチと悲鳴を上げる。
だが、絶望はそれだけにとどまらなかった。
バリバリバリバリバリッ!!
不快な破砕音が、空全体から響き渡る。
ふと見上げると、人間世界の空に巨大なひび割れが縦横無尽に走り始めていた。
『 そ、空が……空が壊れていく!』
そう、『世界』とは元来、光輝世界・暗黒世界・人間世界の三つが絶妙な魔力の引き合いによって均衡を保っていたのだ。
既に光輝世界が崩壊し、更に暗黒世界今が消滅させられたことで、存在のバランスが更に崩壊。
その歪みがダイレクトに人間世界へと波及し始めたのだ。
大地が地鳴りを上げて裂け、遠くの山々が根底から崩れ落ちていく。ビル群が崩れ、海が干上がり、空からは謎の空間の欠片が漆黒の虚無となって落ちてくる。
「ハハハハハ! 見よ! 崩壊だ! 世界の破滅だ!」
絶対的な神のごとき存在となったゼノヴァルグが、高笑いを上げながら人間世界を見下ろす。
「暗黒世界は我が手中に収めた! 人間どもも……全ては我が糧となり、消え去るのだぁぁッ!」
完璧な詰み。
どんなに強力な力を手に入れても、戦う「世界」そのものが消滅してしまえば、勝つことも守ることも不可能。
ゼノヴァルグが巨大な手を掲げる。その掌には、暗黒世界丸ごとの破壊力を集約した、直鎖径数百メートルの超極太の滅亡魔法が形成されつつあった。
「消え去れ、虫ケラども! 貴様らのあがきもここまでだ!」
迫り来る絶対の死。
崩れゆく天空。
誰もが絶望し、膝を折るであろうその光景の中で、
──セイヴァールミナリエは、ゆっくりと立ち上がった。
『まだだッ!』
兜の奥で、その瞳が強い意志の炎を宿して燃え上がる。
『まだだッ!ゼノヴァルグッ!!』
セイヴァールミナリエは力強く大地を踏みしめた。
崩れゆく足場を、自らの魔力で強引に固定する。
『俺たちが生きていくこの世界を……お前に壊されてたまるかぁぁぁぁぁッ!!』
魂の底からの叫び。
絶望を跳ね返す、人間の「生きたい」という絶対の渇望。
ピキィィィィィィンッ!!
その思いに応えたのか、世界全体から、かすかに無数の優しい温かな「光の粒子」が立ち上り始めた。
「ッ!? これは……!?」
ゼノヴァルグは目を見張った。
この世界に存在する「想い」のエネルギーが、光の帯となってセイヴァールミナリエへと集まってくる。
光輝世界には『光の魔力』がある。
暗黒世界には『闇の魔力』がある。
ならば、この人間世界にだって存在する。
そこに生きる人々の『生きようとする想い』『誰かを愛する心』『平和を願う意志』
それこそが、この世界に満ちる第三の魔力──人間の魔力』。
シュゥゥゥゥゥ!
無数の光が、セイヴァールミナリエの胸の中央へと吸い込まれていく。
【光の魔力】、【闇の魔力】、そして新たに流れ込んできた【人間の魔力】。
三つの異なる概念が、完璧な三位一体を描いて融合を始めた。
セイヴァールミナリエの鎧が変貌を遂げる。
黒銀の装甲の上に、虹色に輝く聖なる紋様が刻まれ、背中の翼は光と闇だけでなく、七色の希望の光芒を解き放つ「三極の翼」へと昇華した。
「ぬ……ぬおおおっ!? なんだその力は!? 」
ゼノヴァルグが本能的な恐怖に全身を戦慄させた。
眼前の存在が纏う力は、もはや魔力の領域を超えている。世界そのものの「存在理由」そのものを力に変えた圧倒的な神聖さ。
「ヌオオオ!絶滅しろぉぉぉぉッ! 余計な力を宿す前に、微塵も残さず消してくれるわぁぁぁッ!!」
ゼノヴァルグが全存在を賭けて、掌の滅亡光線を解き放った!
『暗黒終焉絶滅波ッ!!!!』
暗黒世界の全てを乗せた、世界を数十回以上崩壊させかねない漆黒の奔流が、天空を埋め尽くしながら押し寄せる。
だが、セイヴァールミナリエは一歩も引かない。
右脚を強く引き、腰を深く落とす。
左手を天に掲げ、三つの力を一撃の拳へと集約していく。
「紡……ルルン……! これが俺たちの……全てだ!!」
「うんっ! みんなの未来を守る!!!」
「奇跡の力を叩き込むルン!!」
那津男の魂の叫びとともに、三極の融合魔力が爆発した。
『三極融合・天地創造──トリニティ・セイヴァー・ブレイカーッ!!!!』
ズドォォォォォォォォォォォンッ!!!
七色の光を纏ったセイヴァールミナリエの突きが、迫り来る漆黒の滅亡光線と真っ向から激滅した。
空間が蒸発する。
だが、拮抗しなかった。
人々の想いを乗せた七色の光の拳は、ゼノヴァルグの放った暗黒の奔流をまるで紙のように容易く破砕し、まっすぐに押し返していく!
「な……なにぃぃぃっ!?」
七色の光線が、ゼノヴァルグの十メートルを超える巨体を真っ向から穿ち抜いた。
バババババババババッ!!
ゼノヴァルグの全身から、眩い七色の光が溢れ出す。
闇を喰らい尽くした不快な巨体が、内側から浄化され、崩壊していく。
「ぐあぁぁぁぁぁぁっ! 馬鹿なあああぁぁぁぁぁぁぁッ────!!」
ドォォォォォォォォォンッ!!!!
魔王ゼノヴァルグは、消滅した。
静寂が訪れた。
ゼノヴァルグが消滅し、その中心にぽつんと一つ、眩い輝きを放つ『巨大な魔王の結晶』が浮遊していた。
ゼノヴァルグが取り込んだ魔王の結晶に、暗黒世界を喰らったことで生成されたすべての魔力と、かつて奪われた光輝世界の最後の聖魔力が凝縮された結晶である。
シュゥゥゥ……
セイヴァールミナリエの変身が解け、那津男、紡、そしてルルンが焦土へと降り立った。
「やった……勝ったんだね、那津男くん!」
「ああ……勝ったぞ、紡!」
二人は抱き合おうとした。……だが、喜びも束の間、周囲の空間が再び激しく揺れ始めた。
グラグラグラグラッ!!!
「きゃっ!?」
「まだ崩壊が止まっていないルン! 暗黒世界が消えたことによる世界の歪みが、人間世界を壊し続けているルン!」
ゼノヴァルグは倒したものの、一度狂った世界のパワーバランスは戻らない。大地は今も裂け続け、空の虚無は広がっている。あと数分もすれば、この人間世界も完全に崩れ去り、宇宙の塵となってしまうだろう。
その時、那津男の目が宙に浮く『魔王の結晶』に留まった。
「なら元々の目的通りやるしかないぜ!」
「うん!世界の創造だね!」
「ルンっ!」
那津男は振り返り、優しい笑みを紡に向けた。
「三人で力を合わせるんだ。闇と光の神となって……この崩れゆく世界を、もう一度創り直す!」
三人は躊躇なく『魔王の結晶』へと手を触れた。
ズバァァァァァァンッ!!
結晶から溢れ出る無量の『闇の魔力』が、怒涛の勢いで那津男の体内へと流れ込んでいく。そして圧倒的で絶対的な闇の威厳が那津男に宿る。
同時に、ルルンが結晶に残されていた光の魔力をすべて抽出させ、紡の身体へと流し込んだ。
聖なる純白の光芒が紡を包み込む。
紡の身体に、光輝世界を統括していた先代女王すら超える、神聖で温かな光の力が満ちていく。
暗黒世界の魔王と同等の力を手に入れた蛇森那津男。
光輝世界の女王と同等の力を手に入れた星野紡。
壊れゆく世界の中心で、二人はしっかりと互いの手を繋ぎ合った。
「行くぞ、紡! 」
「うん! 私たちの手で!」
二人は繋いだ手を天へと高く掲げ、内に秘めた『極限の闇』と『極限の光』を同時に全放出した!
ズズズズズズッ────────────!!!!
世界は、新たなバランスを手に入れた!
──それから、6年の歳月が流れた。
夕方、17時30分。
都心のオフィス街に、定時を告げる澄んだチャイムの音が響き渡る。
「お疲れ様でしたー!」
「蛇森さん、お先に失礼します! 今日の資料まとめてくれて助かりました!」
「ふふ、お疲れ様です! お互い様ですよ、また明日よろしくお願いしますね」
デスクの周りを手際よく片付け、上司や同僚たちに爽やかな笑顔で挨拶を交わしながら退勤していく一人の女性。
すっかり大人びた雰囲気を纏い、綺麗なスーツを着こなす彼女──蛇森紡であった。
大学を無事に卒業し、大手企業で働き始めた彼女の左手薬指には、夕日に反射して美しく輝く『本物の結婚指輪』が光っていた。
「ふぅ……今日も頑張ったなぁ。那津男くん、今日の夕飯何作ってくれてるかな」
紡は嬉しそうに口元を緩めると、駅に向かって軽やかな足取りで歩き出した。
途中でスーパーに寄り、買い物を済ませて辿り着いたのは、閑静な住宅街に佇むごく普通の小さなマンション。
エントランスを抜け、エレベーターで目的の階へと上がる。
角部屋のドアの前に立つ。
表札には、シンプルで綺麗な文字で『蛇森』と刻まれていた。
鞄から鍵を取り出し、カチャリと解錠してドアノブを回す。
だが、玄関の扉を押し開けた先に広がっていたのは、マンションの外観からは到底考えられないほど、どこまでも広大で幻想的な世界だった。
頭上には、澄み渡るやわらかな太陽と、美しく輝く満天の星々が同時に浮かんでいる。
見渡す限りの地平線には、黄金の聖光と漆黒の闇線が美しく交差し、見たこともない幻想的な花々が咲き乱れる地平線。
そこは、かつて消滅した暗黒世界と光輝世界の要素を併せ持ち、世界のバランスを永久に保つために那津男と紡の二人が創り上げた、
──【対照世界】
二人はマンションの自室の扉に特別な空間接続魔法をかけ、玄関を開けるといつでもこの神秘的な世界へと繋がるようにしていたのだ。
「ふふ、相変わらず綺麗だなぁ」
買い物の袋を抱え、紡は対照世界の小道を嬉しそうに進んでいく。
風が吹き抜け、綺麗な花びらが舞い散る。その小道の先、なだらかな丘の上に、ポツンと暖かな明かりの灯る一軒家があった。
一軒家の玄関のドアを開ける。
「ただいまー!」
すると、奥からパタパタと忙しない足音が響き、二人が出迎えてくれた。
「おかえり、紡。今日も仕事お疲れさん」
「おかえりだルン紡! 今日の夕飯は那津男特製のハンバーグだルン!」
エプロン姿で少し照れくさそうに笑う那津男と、その肩の上で元気いっぱいに手を振るルルン。
那津男の左手薬指にも、紡とお揃いの結婚指輪が誇らしげに光っていた。
「ルルンっ!那津男くんっ!」
紡は愛おしそうにルルンを抱きしめると、その勢いのまま、大好きな那津男の広い胸の中へと一気に飛び込んだ。
「わっと……! こら紡、危ないだろ。買い物袋潰れるぞ」
「だって、早く2人に会いたかったんだもん!」
苦笑しながらも、那津男は愛おしそうに腕を回し、抱きついてきた妻の体を力強く、温かく抱き返し返した。
かつての恐ろしい戦いも、残酷な運命も、すべては乗り越えた。
二人の神としての力は、世界の平和を裏から支え、こうして二人と一匹の穏やかな日常を守り続けている。
那津男の胸の温もりを感じながら、紡は幸せそうに目を細めた。
那津男は抱きしめたまま、優しく紡の耳元で囁く。
その言葉に、紡は最高の笑顔を咲かせ、心からの声で答えるのだった。
「おかえり、紡!」
「ただいま、那津男くん!」
おわり
最終話を読んでくださりありがとうございます。
こちらで本作は完結です。
皆様ありがとうございました。