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豪快に打ち破られたリビングの窓から、冷たい夜風が室内に吹き込んでくる。
撒き散らされたガラス片が月光を反射して怪しく煌めく中、目の前に降臨したのは人の形を歪めた異形——漆黒の翼を生やし、鋭い爪をギラつかせる闇の獣だった。
「光輝の守護者、魔法少女ルミナスツムギ! ただいま参上です!」
ビシッとポーズを決める星野さん──いや、魔法少女ルミナスツムギ。
さっきまで俺の服の裾を握りしめて泣いていた少女と同一人物とは思えない堂々たる名乗りだった。
「…………は?……これマジ?」
俺は開いた口が塞がらないまま、完全に唖然と立ち尽くしていた。
まばゆい光の衣装を纏い、背中には光の粒子で描かれた小さな翼。右手には洗練された魔法の杖。どこからどう見ても、日曜の朝にテレビでやっていそうな「魔法少女」そのものである。
(マジかよ! 魔法ってあんなこともできるのか!?)
俺が心の中で叫んでいる間にも、状況は一刻の猶予も許さずに動き出していた。
「……フン、ナカナカ光ヲ感ジル。コノ半年、同胞ヲ倒シタノハ キサマカ!光輝世界ノ亡霊ガ邪魔ヲスルナ!」
翼を持つ人型の獣が、不快な掠れ声で吐き捨てるように叫ぶ。
獣は激しく翼を羽ばたかせると、鋭い鉤爪を低く構え、狙いをルミナスツムギ一点に絞って地面を蹴った。
「喰ライ尽くシテクレルッ!」
「そうはさせない……っ! 『ルミナス・レイ』!」
星野さんは臆することなく杖を前方へ一閃させた。
杖の先端から放たれたのは、細い帯状の純白色の光線だ。それが空気を引き裂き、突進してくる獣の軌道を正確に射抜く。
ズガガガガァァンッ!
「グオッ!?」
光の威力を受けて、獣の巨体が斜め後ろへと弾き飛ばされる。
間髪入れず星野さんはしなやかに宙を舞いながら間合いを詰め、床を滑るように進みながら杖を旋回させた。
「ハッ!」
「チッ……生意気ナ女メッ!」
獣は体勢を立て直そうと必死に爪を振るうが、星野さんの動きは驚くほど軽やかだった。
空中を舞いながら爪の軌道をすれすれでかわし、カウンターで杖の先端を獣の胴体へと叩き込む。光の衝撃波が弾け、獣は背後の壁に背中を激しく打ち付けた。
強い。圧倒的だった。
狭いリビングという劣悪な足場をものともせず、一歩も引かずに怪物を圧倒している。
(すげぇ……本当に魔法少女なんだな……。このまま勝っちまいそうだぜ!)
俺は怪我をした背中を押さえながら、その眩しい戦いに見とれていた。
すると星野さんの胸のリボン、その中心にある大きなダイヤモンドが光り輝き、その輝きに合わせ「その調子だルンツムギ!そのまま押し切るんだルン!」と声が響く。
どうやら融合したルルンはあそこにいるようだ。
「たぁ!」
「! シマッタ!」
星野さん持つの杖の一撃が相手の腕のガードをはじき、完全に無防備な状態を作り出す。
「これで……決める! 『ルミナス・——』」
星野さんが踏み込み、魔法の杖を頭上に掲げる。
先端に莫大な光の魔力が集束し、決着の必殺技が放たれようとした、まさにその一瞬だった。
(……え……?)
星野さんの動きがピタリと止まった。
杖を握り締めている彼女の右手が、ふっと輝きを失う。
それどころか、彼女の指先が、手首が——まるで水に溶ける絵の具のように半透明に透け始めていた。
「ツムギ!?」
ルルンが悲鳴のような声を上げる。
(魔力が……底を突きかけてる!?)
激しい戦闘で光の魔力を急激に消費したためか、あるいは変身の反動か。
身体が消えかけていることに気づいた星野さんの表情に、瞬時に動揺と恐怖が走った。
集中が途切れ、杖の先端に溜まっていた眩い光が、儚く雲散霧消してしまう。
「ッ……や……あぁ……っ!」
必殺の一撃がキャンセルされ、無防備な隙が生まれる。
そして、その一瞬の隙を、死線をくぐり抜けてきた怪物が逃すはずはなかった。
「ハハハッ! 愚カ者メ! シネッ!!」
跳ね返るようにして体勢を立て直した獣が、邪悪な狂笑を上げながら迫ってくる。
形勢は一瞬で逆転した。
体がうまく動かず、体勢を崩した星野さんに対して、獣は暴風のような鉤爪の連撃を繰り出す。
ザシュッ! ガキィン!
「きゃああっ!?」
かろうじて杖で受け止めるものの、威力を殺しきれずに星野さんの体は後方へと吹き飛ばされた。
背中が床を転がり、壁際に追い詰められる。
肩口の魔法衣が切り裂かれ、彼女の肌に痛々しい赤が滲んだ。消えかける手足のせいで、もう立ち上がる力すら残っていないようだった。
「死ネェッ! 光輝世界ノ亡霊ヨッ!」
獣が高々と右腕を掲げる。
鋭利な5本の鉤爪が、月光を受けてギラりと殺意の輝きを放った。
ターゲットは無防備に横たわる星野さんの喉元。一滴の慈悲もない必殺の刺突。
(ダメ……動いて……私の……身体……っ)
死が眼前に迫った星野さんは、恐怖に思わず目を瞑る。
(嫌だ……っ、私、消えたくな……)
迫り来る死の影。風を切る凶爪の音。
しかし──死の衝撃は、彼女に訪れなかった。
ズゴォォォンッ!!
代わりに響いたのは、肉と骨が激突する重苦しい鈍音と、激しい部屋の鳴動だった。
「……ガハッ!?」
生臭い風と、温かい液体の飛沫が彼女の頬を濡らす。
恐る恐る目を開けた彼女の視界に入ってきたのは──背中から鮮血を撒き散らしながら、目の前で仁王立ちになる一人の男の背中だった。
「蛇森……くん……!?」
(へへへっ……いってぇ……!)
蛇森は、自分でも頭がおかしいと思った。
しかし思考よりも早く足が動いていた。
獣の振り下ろされた凶悪な腕を強引に抱きとめ、己の胸と肩でその爪を受け止めていたのだ。
ズブリと肉にめり込む食い込む感触。激痛が全身の神経を焼き尽くす。
「なんで……っ、蛇森くん、どうしてっ!」
「く、勲章がまた……増えたぜ!」
口の端から垂れる血を拭うこともせず、彼は背後の彼女に向かって、歪んだ笑みを向けた。
本心では怖いさ。
必死にカッコつけたが、眼前の光景を見て、戦いを見て、恐怖している。
この笑みだって本当はただの虚勢でしかない。
だが、それでも──
「お、俺はいつも……カッコいい道を進むと、決めている!今だってそうさ!」
──男ならカッコつけるべきだ。
そんな彼を見て彼女は叫んだ。
「そんなの……っ、カッコつける場面じゃないよ!!」
「カッコつけさせてくれよ……。俺はさ、こういうのに……最高に弱いんだからさぁ……ッ!」
激痛で意識が飛びそうになる彼は、歯を喰い散らかすほどの噛み締め、気合いで意識を繋ぎ止める。
恐怖も薄れたが、併せて何もかもが薄れてゆく。
血を失いすぎた。
もはやカッコつけてもいられない。
(カッコつけといて……ここまでか……よ…………)
どうやら敵は待ってくれないらしい。
彼の目の前で、再度大きな爪が俺に振り下ろされようとしていた。
その瞬間だった。
ドックン……!
胸の奥底で、何かが目覚めた。
心臓の跳動ではない。俺の胸元に埋め込まれた『魔王の結晶』が、脈を打ち始めたのだ。
それはまるで、命の危機に瀕した宿主の覚悟に呼応するかのように、暴虐で、圧倒的な冷たさを孕んだ闇の鼓動だった。
ドックン!! ドックン!!
「ガッ……アァァァァッ!?」
全身の血管を氷水が駆け巡るような感覚。
俺の胸元から、粘度の高いドロリとした黒紫色の霧が溢れ出し、渦を巻いて俺の全身を飲み込んでいく。
獣の爪が、俺の身体から放たれた闇の魔力によって弾き飛ばされた。
「ナッ、闇ノ魔力……!? 死ニカケノ人間ニッ、ナゼ闇ノ魔力ガッ!?」
恐れをなした獣が翼を広げ、バックステップで距離を取ろうとする。
しかし、溢れ出した闇の渦は逃がさないように黒い暴風がリビングに吹き荒れ、獣をはじき飛ばす。
──やり方は、魂が教えてくれた。
「闇の、魔法ッ!潰えぬ希望の、ドミナス・チャージッッッ!」
俺の身体が、闇の魔力によって包まれていく。
擦り切れた服は漆黒のアーマーへと変貌し、首元から背中にかけて暗黒に光るマント。顔には、漆黒の仮面が怪しく覆い被さっていた。
やがて闇の暴風が収まり、静寂が戻る。
俺は深く溜息を吐き出した。口からゆらりと黒い煙が漏れ出す。
怪我の痛みは消えていなかったが、それ以上に全身に満ち満ちる「力」の感覚が、俺のアドレナリンを限界まで跳ね上げていた。
俺は右手でアーマーについた埃を払うと、ポーズを決めてニヒルに言い放った。
「暗黒の破壊者、魔法戦士ダークドミナス! ただいま参上!」
「…………え?」
変身した俺を見て星野さんが驚愕する。
「へ、蛇森くんが変身した!」
「へへへっ、やればできるもんだなぁ!」
床に座り込んでいた星野さんが、目を見開いて叫ぶ。その声には、彼女自身が変身した時以上の驚きと困惑が混ざり合っていた。
「まぁ名乗りとかヒーロー名は思いつかなかったから、星野さんのをパクったんだがね〜」
自分の顔を覆う冷たい漆黒の仮面を撫でながら、俺は苦笑いをもらす。
だが、ふざけたやり取りとは裏腹に、全身を駆け巡る重厚な闇の魔力は本物だった。
はじき飛ばした獣がこちらへ襲いかかってくるが、その動きは驚くほどスローに見える。
何度かそれをひらりとかわすと、獣は少し距離をとって立ち止まる。
「グオオオオッ! フザケルナ人間ッ!」
間合いを取っていた闇の獣が、激しい怒りに全身の毛を逆立てて咆哮した。
爪をぎらつかせ、天井を削る勢いで翼を羽ばたかせながら、俺を睨みつけた。
「キサマノソノ魔力ハ、紛レモナク我ラガ偉大ナル魔王様が持ッテオラレタ闇ノ魔力ッ! 」
「へぇ〜これがそうなの?」
「暗黒世界ヲ作リシ崇高ナ力ハ、キサマゴトキが使ッテヨイ物デハナイノダ!」
「あん?」
今コイツなんて言った?
俺のちょっとした気づきを無視して、獣は狂信的な眼光を爛々と輝かせながら、空中へ躍り出た。
「魔王様ノ魔力ヲ横取リシタ不遜ナ人間メ! 魔王様ノ偉大ナル御名ニオイテ、殺シテクレルワッ!」
上空から一直線に放たれる、殺意に満ちた急降下攻撃。
鋭利な鉤爪が空気を引き裂き、凶悪な衝撃波を伴って俺の首元へと迫る。
だが──俺は驚くほど冷静だった。
「魔王様だか何なんだかは知らねぇがな……」
俺は右手に闇の魔力を集中させ、拳を固く握り締めた。
「女の子泣かせるような奴は……俺が絶対許さねぇッ!」
迫る獣の爪に対し、俺は逃げるどころか一歩前へ踏み出し、黒いオーラを纏わせた右拳を一直線に突き出した。
ゴキィィィンッ!!!
「ガハッ!?」
金属同士が激突したかのような重雷音が響き渡る。
獣の必殺の鉤爪と、俺の闇を纏った拳が正面から真っ向勝負で激突し──弾き飛ばされたのは、巨体を持つ獣の方だった。
「グ、オ……ッ!? 力デ……負ケ……ッ!?」
「へッ、これがカッコいい男の力だ!『ドミナス・スピア』ッ! 」
体勢を崩して宙に浮いた獣に向け、俺が床を蹴ると、マントの影から数本の漆黒の棘が槍のように跳ね上がり、逃げようとする獣の翼と四肢に穿ち、そのまま空中に縫い止める。
「な……ッ!? 身体ガ……動か……ッ!」
「行くぜっ!」
俺は獣を固定したまま飛び上がり叫んだ。
足元には闇の魔力が集中し、漆黒に光り輝いた。
「『ドミナス・キィイーック』ッ!!!」
「グオオオオオオオオッ!? マ、魔王様ァァァァァァァァッ!!」
ドッガアアァァァァァァン!!!
絶叫を残し、獣の身体は爆発に包まれながら、跡形もなく消滅していった。
しんと静まり返るリビング。
光の余韻が収まると同時に、俺と星野さんの変身がふっと解けた。
漆黒のアーマーも仮面も消え去り、元の姿へと戻る。
「へへ……なんとかなったな……」
俺はその場にヘタリ込み、荒い息を吐き出した。
変身が解けた途端、激痛と疲労感が襲ってきたが、それでも生きて勝利できた安堵感の方が大きかった。
カラン
その時、獣が消滅した跡の床に綺麗な音が響いた。
見ると、そこには拳ほどの大きさの、紫黒くにぶく輝く鉱石が転がっていた。
「これは……『魔王の結晶』……!」
星野さんは膝で這いながらそれを拾い上げる。
「変身した時になんとなく感じたんだけど、アイツ自分の腹の中に結晶入れてたっぽいぜ。……早速使いなよ」
「あ、うん……!ルルン!」
「ルン!」
ルルンは拾った結晶を持って光の魔力を抜き出し、星野さんの胸に押し当てた。
胸元がピカーッと輝き、ルルンが手に持っていた光の魔力は吸い込まれるように星野さんの胸の中へと吸い込まれていく。
「あ……温かい……!」
星野さんは感涙にむせびながら自分の両手を見つめた。
半透明になりかけていた指先や腕は、完全に元の健康的な肌へと戻り、頬にも綺麗な朱色が差していた。
身体の消失が止まり、完全に実体を取り戻したのだ。
「ふぅ……とりあえず何とかなったな……」
「うん……! ありがとう、蛇森くん! 私……本当に助かっ……」
星野さんが感極まって俺の手を握りしめようとした——まさにその瞬間だった。
ピキィン!
俺の頭の中に何かが強く共鳴し、甲高い鈴のような音を鳴らした。
「これって!?」
「ルンッ!?」
どうやらそれは俺だけでなく、星野さんやルルンも同じだったようで、俺たちは窓の外、夜の街の特定の方角を見つめた。
俺は破れた半壊した家から夜空を見上げ、頭の中でおおよその場所にアタリをつける。
その後に床に落ちていた魔王の結晶を見た。
「……どういうわけか、コイツが別の結晶の在り処を教えてくれたようだな」
理由は分からないが近場の結晶同士が共鳴したように感じた。
俺の言葉を聞いて、ルルンと星野さんはゆっくりと立ち上がった。
しかし瓦礫に足を取られたのか、星野さんはよろめいてしまう。
「うおっと!」
それを俺は何とか腕を伸ばし抱きとめた。
抱きしめられていることに気付いた星野さんは、腕のなかで慌てたようにワタワタしている。
「へへへっ、役得だな」
「あ、うぅ……」
「……っと、冗談はさておき。怪我はないかい?」
真っ赤になって照れる星野さんを優しく引き起こすと、俺は彼女の目線をじっと見つめ、小さく息を吐き、口を開く。
「この半年間……星野さんはルルンとずっと二人で戦ってきたのかい? 」
「え?……うん」
「よく頑張ったな」
「あ、……蛇森……くん……」
「俺なんか最初さっきの奴にビビリっぱなしだったぜ?だってのに星野さんはずっと戦ってたんだろ?そいつはよ……滅茶苦茶凄いことだぜ、星野さん」
「〜〜っ! ……ううん、私なんか……っ」
「だからよ!これからは俺も手伝うぜ!」
謙遜の言葉を口にしようとする星野さんの言葉を遮り、無理やりに協力を申し出る。
急な申し出に言葉を失う二人に俺は笑みを浮かべて視線を外す。
少し気恥ずかしい事をした。キザ過ぎると自分でも思ったのだ。
でも間違いなく本心だった。
「蛇森くん……」
「へへへっ……あぁそれに!今後の方針についてなんだが……星野さんの問題に光が見えたぜ」
「ルン?」
「それって……?」
俺は顎に手を当て、気恥ずかしさから会話の流れを無理やり変える。
そして、さっきの異形が口にした言葉を思い返す。
「さっきのアイツ、魔王が暗黒世界を創ったとか言ってたよな? つまり、魔王ってのは一から世界一つを作り上げるほどの途方もない力を持ってたわけだ」
「ルン? そうだルン。魔王はそれくらい怖いやつだルン!」
「で、その魔王を封印したのが……ルルンたちの故郷にいた『光輝世界の女王様』なんだろ?」
「そうだルン!女王様はすごく頑張ったんだルン!」
「だからまぁ、女王様も魔王とタイマンで引き分けるくらいの凄い力があったわけだ」
俺はニッと口角を上げて笑ってみせる。
「つまりよ、魔王に世界を作る力があったなら、女王様だって同じように『光輝世界』を作り出せるだけの力があったんじゃねぇかい?」
「……! それって!」
「ああ。世界のバランスが光輝世界の消滅で引き起こされたなら……片っ端から結晶を集めて、その結晶から光の魔力をたっぷり吸い上げて、その力で光輝世界を作っちまえば全部解決だぜ!」
「新しく光輝世界を作る……!?」
突飛すぎる俺のアイデアに、星野さんもルルンも驚きで目を丸くしている。
だが、単に場当たり的に魔力を補給し続けるだけじゃない、明確で根本的なゴールの提示に、二人の瞳がパッと輝きを取り戻していくのが分かった。
「そうだルン……! 確かにそれなら全部解決だルン!」
「だろ? 専門的な知識はねぇが、案外筋は通ってるんじゃねぇか!」
「凄い!凄いよ蛇森くん!」
俺は星野さんに向かってカッと右手の拳差し出した。
「星野さんの身体を元通りにするため、そしてみんなに星野さんを思い出してもらうため!……一人じゃ途方もない作業かもしれねぇが、これからはこの俺が隣にいるぜ!」
「あっ……」
星野さんは一瞬目を見開き再度驚愕の表情を浮かべるが、すぐに照れくさそうに、けれどしっかりと決意を固めた顔をして、同じく右手の拳を俺の拳に突き返す。
突き返されたその拳は、もう透けてなんてなどいない。
驚くほど温かく、力強い拳だった。
「……うん! よろしくね、蛇森くん! 」
「おうよ! 一緒に、最高にカッコよく頑張ろうぜ!」
壊れた家の隙間から差し込む満月の光が、俺たちを力強く照らしていた。
今夜からお前と俺でダブルヒーローだからな!
って感じで。
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