ここでは都市に転移したと思ったら目の前に指令を受けたソラがいた男について語られる 作:ケジメされた人差し指
お気に入りと評価うれし……早々色を授かりました
今回ソラちゃん視点、地の文を多めで送りますが何卒……
これまでに、き、きっとボクでは想像も出来ないくらいの指令を果たしてきた神託代行者である、あ、あのリアンさんに、蜘蛛の巣という組織に招いていただいて、畏れ多くも娘みたいな、人差し指の子方という役割を与えられてからもう3ヶ月が経ちました。
リアンさんはボクにとても親切にしてくださいます。ボクは親切な人が好きですから、そんなリアンさんの事も大好きで……だ、だけど同じように蜘蛛の巣へ子方として来ていた方や、それぞれの指の親方の人達は全然そうじゃなかったんです。
『親指……ちっ、元アンダーボス、ヴァレンチーナだ』
『おいルチオ! てめぇなんの身分も持たねぇ分際で、何を代行者相手にタメきいてやがる!?』
親指の親方であるヴァレンチーナさんは、丁寧に所属と階級まで添えた挨拶をしてくれたから親切な人だと思ったんですけど、子方のルチオさんとお話ししている時に、彼女がいきなり彼を殴りつけてしまって、ボ、ボクはお話しするのも好きなのに、そうするとルチオさんが殴られてしまうみたいで、そうする事が出来なくなっちゃいました。
『おー、お前が人差し指んとこの娘ちゃんか!』
『あー……もういいや、カリストん方行って来い』
中指のマティアスさんは、ボクに興味が無いみたいでした。普通に挨拶を返してはくれたんですけど、その後にプラモ? とかゲームの話題を振られて、ボクは詳しく無かったので話にならなかったんですよ。代わりに工房のお話しをしてみたかったんですけど、どうでも良かったみたいで……子方のキラさんとも最初は出来てたんですが、漫画の感想を言ってる間に、どうしてか嫌われてしまったみたいなんです。で、でもあのシーンで他の人が助けてくれそうな子どもをわざわざ自分で助けに行くのは、時間の無駄だったと思うんですよね。
『……はぁ、あの男の醜悪さは唾棄に値するものですが、あなたも中々に酷い』
『創作の邪魔ですのでこの辺りで。あなたが作品の一つになりたいと言うのなら話は変わりますが』
薬指のカリストさんはそもそもリアンさんと仲がよく無さそうに感じて、子方であるボクの事も……き、気に食わなさそうでした。ボクやリアンさんのことを指令に従うだけの人形達って言うなんて、く、薬指の偉い人だとしても流石に失礼ですよね? それに比べるとアルビナさんはそんな偏見が無かったんですけど、な、何を言ってるのかわかんなかったんですよ。脳みそまであのファシアっていう作品に使っちゃったらしくて、だから少し変だったんだと思います。好きな事とか趣味とかのお話しをしてたのに、何故か変な方向に進んでいっちゃって……
『……お前がか』
小指の2人は、不思議な人達でした。物静かで雰囲気がちょっとリアンさんに似てるような気がして、ボ、ボクは好きだったんですけど……塩見さんにはマティアスさんとは違う意味で興味を持たれなかったというか。心に決めた事だけに注視してるからボクにまで目を向けていられないって、それ自体はボクが指令に向き合ってる時に似ている気がして、そ、そこまで嫌な気分にはならなかったんですよ。
リアンさんとの暮らしはとても幸せです。だけど、ち、ちょっとだけ距離感があるようにも感じてしまうんです。それはきっと、前にリアンさんの元にいた娘のヨシヒデ姉さんの存在が大きいから、ボクはリアンさんの1番じゃないんだって思えてしまって。
そ、そもそもこの蜘蛛の巣という場所自体が、そのヨシヒデ姉さんの為に用意された場所とも教えてもらいました。あの人にしかまともに使えない遺物を、完全に扱えるように教育する施設だって。だから本当の意味では、ここがボクの居場所っていう風には言い切れないですよね? 勿論指令の言う事に間違いがあるとは思ってないんですけど、それが少しだけ寂しかったんですよ。
だ、だけどです。そんな事が頭に過ろうとした瞬間、指令はやっぱりボクの望みを考えていてくれたんだって、新しい指令が下されたんです。
【◯日の18時から11区のグソマルセ通りを南下しろ。歩き続けて18時24分を過ぎた後に二つ目の曲がり角を進み、目の前に現れた人間と交際する事】
「…………?」
さ、最初に指令を見た時はその意味を一度で理解しきれなかったと言いますか。交際? 交際っていうのは、男女が2人で幸せになるっていう、あの? 流石にちょっとその時ばかりは不思議に思う事が沢山だったんですが……でも指令なんですよ。
ボクが交際する事になる相手って言うことは、きっとその人もボクを好きになってくれる、親切な人の筈なんです。ボ、ボクには今までにそんな人居なかったんですけど、それは今こうして指令が出るからって事だったんですかね? リアンさんだけじゃ満足出来ないみたいな言い方になっちゃいますけど、そんな人がいるならボクの生活ももっと良くなると思いました。
「そ、そういう事なので、夕方から廊下を使ってK社に行ってこようと……リアンさん?」
「…………あ、あぁ。すまない、少し、昔の事を思い出してしまったんだ。行ってくると……良い。俺にはお前に下された指令に対して、とやかく言う権利もないからな……」
リアンさんにそうした指令が来た旨をお伝えしてから向かおうと思ったんですけど、それを聞くとどうしてか遠い目をされてしまったんです。胸元もぎゅっと掴んだりして、も、もしかしてビックリさせちゃったんでしょうか。確かにボク自身もこの指令には驚いたのでリアンさんにとっても衝撃を感じたのかもしれませんけど、ボクに関する事でそうした反応をしてくれるのは嬉しくもあります。
そうしてK社に繰り出した訳ですけど、少しだけ指令の内容に気になった部分があったんです。今回みたいに誰かと会う事を指定される時……例えば【この目の前に現れた人間と】っていう部分は違う言葉遣いがされる筈なんです。もしその時に出逢った人が2人だとしたらどっちがボクの運命の相手なのかもわからないですし、もしかしたら2人ともそうなのかもしれないってなるじゃないですか。だから普通は最初に出逢った人間とか、2人目とかって書かれ方をします。昨日の指令なんかでも、待合室で3番目に席を立った相手のくるぶしを蹴り砕く事って、ちゃんと教えてくれたんですよね。
指令は文言の解釈が難しい事もたまにはあるんですが、どうにもこれは意味合いが少し違うような気がして。それでもきっと指令の通りにしていれば問題は無いですから、そうしました。だ、だけどビックリしましたよね、まさか指令に書かれていた【目の前に現れた】って言葉通り、その人は前触れもなく突然何も無い場所からポンと出て来たんです。
「わぁ……」
「えっ」
何かの工房装備や遺物を使って気配や姿を消していたって様子もありませんでした。そ、その人自身がどうして今ここにいるのわからないって様子でしたから、意図せずボクの目の前に現れた事になるんでしょうけど……
さ、最初に思った事は、『匂い』が違うなって事でした。代行者としての指令を完遂する為に、ボ、ボクは色んな区に行ったことがあります。勿論管轄が分かれてはいますから、大体は都市の北西部にあたる区なんですけど……それぞれの巣が生活様式から言葉の使い方まで違ってくる中でも、や、やっぱり大元はこの都市という場所に属しているっていう、染み付いて抜けないような空気感があるみたいなんです。
そういうものがあるって事に、今気がついたんです。じ、自分の匂いに自分で気が付かないみたいに、それが当たり前でありふれているから……どんなものであっても無色透明な物として認識出来ないものだったんですよ。そ、それでなにが言いたいかというと、その人には『それ』がありませんでした。
ただそ、その次には匂いだけじゃなく……色んな物が違うんだなとも思いました。服も靴も持っていた鞄もデザインはありふれている物に見えて、でもそれが都市のどこの技術で作られたものでもないって事がわかったのは、そうした製品に興味を持っていたからかもしれません。
「終わりぃ!!!」
「え、ええっ!?」
そうして色んな事を考えてると、その人がいきなり叫んでび、びっくりしました。ボクがその人を見ているように、その人もボクを見ていたんでしょう。隠す事もないですから今の格好は見る人が見れば人差し指だってわかるもので、指令の対象からもそうでない人からも避けられる事はそれなりにありました。
だからこうしたリアクションをされる事もおかしくは無いんですけど……不思議な事に、その人は人差し指の構成員である事を見ていると言うよりも、ボク自身を見ているって、そんな気がしたんですよね。指令の内容を思い出して、その事がなんだか胸の奥に響いてくるような感じがしました。
リ、リアンさん以外にボクの内面を見てくれる人とは最近、いやずっと関われていないですから、この人はボクとちゃんと仲良くしてくれるかもしれないなぁ、なんて思ってたら。
『ソラちゃんでしょ? わかっちゃうよ俺エスパーだから、インデックスエスパー』
『まぁ挨拶も済んだところで本題だけど、なんか指令来たんでしょ? 俺に出来る事ならなんでもお手伝いします!』
『いやソラちゃんは可愛いよ。俺の方が釣り合ってないからああいう言葉が出ただけで、睫毛バッシバシで目とかくりくりしててチャーミングだし眼鏡っ娘は属性としてだいぶ好きなんだよな?』
『いいね、俺バニラ信者だから。ソラちゃんもバニラアイスが好きだったよね、同じものが好きな相手ってのは気が合いやすくていいもんだよ』
人差し指は仕事柄不特定多数の人と接しますから、そ、その中には『人差し指の代行者』ではなく『代行者ソラ』を知っている人もたまにはいました。ですけどそれは代行者としてのボクであって、この人みたいに……ボクの内面を知っている訳では無いんです。
それなのにこの人はボクがバニラアイスが好きな事を知っていました。そ、そんな情報なんて出回る筈も意味も無いですから、本当にどうしてこの人が知ってるのか、経緯が予想も出来ないです。
話している事もなんだか掴みどころがなくて、それなのにボクの事をよく理解してくれている……そんな雰囲気が、なんだか指令みたいな人だなって思いました。
(なんか今ありえんくらい失礼な事考えられた気がするな?)
そ、そっ、そそ、れに、かっ、可愛いなんて言われたのも、は、初めての事で……し、指令の事もあって、この人を意識する気持ちが強くなっちゃったんです。掴みどころがない、何を考えてるかわからないって言うのも……リアンさんみたいで格好いいと思いましたし。
(なんか今クッソ失礼な事考えられた気がするな?)
それからお名前を教えてもらいました……アンデルセンさんというみたいです。アンデルセンさん……アンデルセンさんかぁ、どんな人なのかもっと知ってみたい……い、いや、指令の内容通りにしていくんなら、これからたくさん知っていけるんですよね?
【ピピピピピピ】
【交際する事になった男を連れて蜘蛛の巣に帰還し、親方へ紹介しろ。期限は今日中】
そ、そんなボクの気持ちを指令は汲んでくれたみたいです。アンデルセンさんを蜘蛛の巣に……リアンさんに……ここにいるよりも落ち着いてお話出来そうですし、もしかしたらアンデルセンさんも蜘蛛の巣に滞在してくれるかもしれません。も、もしそうなったらあそこでの暮らしも、もっと良くなるんだろうなぁ……!
「ご、ゴミ箱……」
そう思いながらアンデルセンさんに今来たばかりの指令をお伝えして……な、なんでそんな顔するんですか?
ソラ
蜘蛛の巣暮らしはリアンがいるから良いけどそれ以外はあんまり上手くいっていない子方。本人の価値観的にベストマッチな人に出会えてやっぱり指令が一番だと思った。な、なんでゴミ箱なんて言うんですか?
リアン
血の繋がった娘や産まれた頃から育てた娘と比べると最近出来た(推定)成人女性の娘との距離感に困っている。どちらかと言うとちょっと気がない、がそれはそれとして身に覚えがありすぎる指令がソラに下った事により動悸がしている。ソラ、お前は指令に疑心なく心酔しているが……お前もこうなってしまうのか……?
アンデルセン(仮)
指令やリアン呼ばわりされて大変不服な男。交際1日目でお義父さんに挨拶させられる事が確定した可哀想な友達。