ここでは都市に転移したと思ったら目の前に指令を受けたソラがいた男について語られる 作:ケジメされた人差し指
アナウンサーチケットでリアン&ソラをいただいたがリアンお前ほんまそういうとこやぞ……(できない理由はないだろうな)
「え、っとそれじゃあ……い、行きますか? ボ、ボクに着いてきてもらえたら……」
「そうだな、よろしく頼むよ。どれが廊下に繋がる扉までは知らないからね……折角だからお話しでもしながら行こうか」
蜘蛛の巣とか行きたくねぇ〜。リアンシとかは理由もなくぶち殺しに来られたりはしないだろうが、その他の親方達はお会いするのも心情的によろしくない。
貴方は都市の人間ではありませんね、みたいな反応で素材としてカリストの興味を惹いたら芸術にされかねない。外野から見る分には人体使ったグロテスクアートなんてオタクの必修科目みたいなところあるが、自分がそうなるのはマジ勘弁なので……
ヴァレンチーナとかは沸点がわからないよね。あのヒステリックな気質に親指としての序列まで考慮しないといけない訳だから、無惨様にでも接する気持ちで頭を垂れて蹲い平伏する……のも正解って言いきれなさそうだ。普通の親指ならそこまでしてりゃ弁えてるなって判断してくれそうだが、あの人の場合はウジウジしてるのがみっともなくて苛つくってグーが飛んできそうだもん。痛いで済めばいいな、というか普通に即死するんじゃないか?
マティアスはそこそこ、都市の商品はわからないがプラモ関連の話はそれなりに出来るから即刻処刑になるような事はなかろう。アラヤはまぁ安全枠と考えてもいいが……向こうが俺をどう思うかなんてわからないからな。ソラちゃんに下った指令の事を他の指が考慮する筋合いは無いし……
「蜘蛛の巣に召集されたのはいつ頃?」
「えっ、と……それがまだ3ヶ月前の事なんです。ボ、ボクもまだそこに馴染めてるって訳でもなくて……あ、いや他の人達と折り合いが良くないから、もしかしたらずっとそうかも……」
「大変だねぇ、でもこれからのソラちゃんには俺がいるから安心だよ」
「え、えへへ……そ、そうですかぁ……!」
だが行かないと行けないんだよな指令だから。そもそも指令に強制されなかったとしても、蜘蛛の巣には着いて行かせてもらう予定だった。ソラちゃんがまだ蜘蛛の巣に召集されてない時期だったら彼女の家に……いや初対面の女性相手にそれ言い出すのは流石に終わり散らかしてるからアレだな。
兎に角、蜘蛛の巣に滞在させてもらうなりしないと都市ニュービーで見るからに鴨な俺とか一晩で骨も残されない自信と確信がある。蜘蛛の巣はそこら辺に地雷が散らばっているキルゾーンそのものみたいな場所だが、なんの庇護も持たないままいきなりポップした人間が路地裏で過ごすなんてそれ以前の問題なんだよね。
そんな訳でソラちゃんに連れられて蜘蛛の巣へ向かう。先導してくれる彼女を後ろから見ていて思う事だが……彼女はかなりちびっこい。リアンと並んだ立ち絵なんかはまさに父娘と言うのに違和感を覚えさせない身長差だったし、俺もリアン程身長は高くないがそれでも頭頂部は見えそうなくらいだ。
手枷をつけてるせいか、ぽてぽてと小さな歩幅で歩く姿には黒柴的な愛嬌がある。髪の毛もふわもこしていることであるし大変お可愛いのだが……このナリでおそらく、いや間違いなく俺が全身全霊でタックルした所で身動ぎ一つしないんだろうから格が違う生物だよなあ。
「ア、アンデルセンさんには、な、なにか趣味はお有りですか?」
「特別これだけにのめり込んでるって物は無いなぁ、けど浅く広く……アウトドアでもインドアでも楽しめる方ではあるかな。学生の時分には色んな種類のスポーツを習ってもいたし、強いて言うなら凝った料理をしてみようと思って買い物に行って、そのついでに現地の物を見るとか……そんなもんだよ」
「わぁ……いいですね、そういうの。ボ、ボクも指令で向かった先にどんな物があるのかが気になるので、遂行した後に現地の工芸やお、お菓子を見るのが好きなんですよ」
「U社のシーフード系アイスなんか凄い気になってるんだよな。正直素直に美味しい物とは思えないが……怖いもの見たさってとこもあるし、そういうのが醍醐味でもあるよね」
よし、楽しく話せたな。話を合わせてご機嫌取りをするなんてつもりは無いが、ニコニコとしているソラちゃんを見るに俺への印象は悪くなさそうで安心する。K社と蜘蛛の巣を繋いでいる廊下まではまだちょっと歩くようだし、彼女の話も聞きつつ今後の立ち回りのことを考えておこう。
前提として俺はソラちゃんに来た指令である彼女との交際に全力で乗っかるしかない。都市の中で身分も、転移して特典のチートパワーなんてものも付与されなかった俺はちょっとした小遣い稼ぎに何処かへ連れていかれるのが必定なクソザコナメクジなのである。ソラちゃんの理解ある彼氏くんをやって彼女に守ってもらうしか無い。
ぶっちゃけその内容だけを言うなら役得なようにさえ思えてしまうが、当然それを鵜呑みにしてソラちゃんウフフとしていれば良いだけな訳もなく。いつ指令がリアンにやったみたいな事をするかわからないし、直球で俺を嬲るような内容が来たとしてもおかしくない。そしてソラという人物はどれだけ好感度を稼いでいようが、そうした指令が出た時点でそれを実行するのに遂行するだろうから……そうなるかどうかは運ゲーってもんだ。
マジであの機織り機なりヘルメスなりは俺の事どういう風に扱おうとしてるんだろう。原作においてソラちゃんにそんな運命云々の指令は出されていないだろう事を鑑みるに、この出逢いからして俺への決め打ちがあったと考えられるが……都市がぶるんぶるんして乱数的に発生する指令の意図なんて考えるだけ無駄とか言われたらそれはそう。でもヘルメスと糸車はカテゴリーが別っぽく感じるんだよな。糸車はアレ、無限の猿定理に似た物を感じるけどヘルメスからはリアンへの指令からして明確な意思を感じるし。
「一応聞いとくんだけど、そのリアンっていうのは人差し指が神託代行者にして単身で都市の星にもされたことのあるリアンで間違いないよね?」
「そ、そうです。アンデルセンさんは何でも知ってるんですね……ボクみたいに人差し指にいる訳でもないのに、指令の事も詳しいみたいですし」
「ちょっとだけ特別な知識があってね。それがあるから君の事も知ってた訳だけど……あの人が俺をどう思うかは不安だな」
しかし……話しかけられた時はワンチャンまだ単身で代行者してる時期だったりしないかとも願っていたが、ヨシヒデがダイナミック家出を敢行してから子方制度が採られるくらいの時間は経ってると。それから何時『Limbus Company』が始まって9章までにどれくらい経ってる、みたいな時系列が正式に判明してないからわかんないけど、ソラちゃんが俺・消・お・消されるまでのタイムリミットはそう長く無いって事ね。
こう言ってはなんだけど……俺のリンバスにおけるイチオシキャラはクソアマことクローマーだった。自分がクローマーとどうこうなりたいとかじゃなく、シンクレアとのクロシンCP込みでってところなんだけど、こう転生なり転移ってほら、原作で死んだ自分の推しを生存させる! みたいなモチベあるやつがやるべきじゃんか。ソラも子方の中で好きな方だし死んだのだいぶダメージ喰らったけど、なんで俺がチョイスされたんだろうなぁ……位に思っていた。
だけど、今俺の目の前に確たる存在として居るソラという人物を見ると色々思わされる事がある。都市の意思が何のつもりでソラちゃんを俺のとこにやったのかなんてわからん、わかるようになることもないだろう。
ソラ……彼女を死ぬべきではなかった善人みたいに思う事は間違ってもない。人差し指の代行者として、その仕組みの刃として彼女はなんの咎もないような人々を傷つけ、殺す事もしているだろう……描写されてる範囲だけでもラヴィを手に掛けている訳だし。だから現代の日本で生きてきた人間の倫理観としては、最終的に阿頼耶識に刻まれて消失するって最期も、妥当くらいには思うべきなんだろうが……このたった幾らかにも満たないような短いやり取りで、俺はそれを何とかしたいと思ってしまっている。
やれるだけの事はしてみようと思う。ソラちゃんが指令に逆らってみようとする……のは無理にしても、リアンに入れ込み過ぎず良秀さんと対峙しないようにとか。転移転生物でよくやる死亡キャラの生存、可能ならばルチオとかも生かせられたらいいよな……勝手に憐れむのも失礼だけど、あの最期はどう考えても無いし、子方組では一番身綺麗な人だとも思っている。アルビナは助けたくないとかじゃなく、本人が身体派の芸術を追求し続けるだろうし……レンはアラヤに殉ずるだろうから無理だろう。
なんて、そもそもの話をすると……俺にはどうしようもないのはわかっている。原作知識があるから、だから何だ? という話でしかない。この都市はどれだけ力があろうが知恵があろうがそれ以上の理不尽を以って踏み潰してくるような場所で。力があるだけではどうしようもない、みたいな語り草に当て嵌まるような作品群なのだ、プロムンのそれらは。
ソラちゃんに守ってもらわなければ明日も無いような身で何を思い上がった考えをしているのか。だから、俺は……やれるだけのことはやる、やれるだけのことしかやれないだろう……俺程度がこんな世界の生死の運命をどうこうしようなんて烏滸がましい話だからな。
「リ、リアンさんはですね……ボクと一緒にお出掛けしてくれたり、い、一緒に指令の解釈を考えてくれたり、身の回りの準備もしてくれて……気に掛けてくれる、優しく、あったかい、とても大切な人なんですよ。だ、だからアンデルセンさんの事も……きっと受け入れてくれると思います」
「そうか……そう言ってくれると安心するね」
それに、あんまりだろ。都市の人間の、そうしないと生きていけないからそうする生き方を恵まれた俺の視点で裁定するというのも。会ったばかりで信用も信頼もないだろうに、それが単に指令が定めた相手だからにしても、こうして振る舞えるというのは……純粋な娘なんだなと思わされる。
敵対して殺そうとして尚、LCBの面々を親切な人達だから螺旋のパスを教えてあげたいと言うような子なのだ。都市の中でもズレている扱いはされるんだろうが、これが彼女の生き方なんだ。もうこの段階でソラちゃんが原作通りに死ぬってなるとだいぶ、かなりキツい……あまりにもチョロ過ぎるだろうか。
「えっと……こ、ここですね。この先が蜘蛛の巣で、入り組んでもいますから、ち、ちゃんと着いてきてくださいね?」
「ありがとう、はー緊張する……」
「ア、アンデルセンさんも緊張とかす、するんですね」
「そりゃ勿論するよ。することの方が多い、リアンシはいいだろうが……他の親方にも会うかもしれないしね」
「あー……」
「あー、なんだ」
そうして遂に辿り着いてしまった蜘蛛の巣直通の扉。流石に脳天気でもいられず心臓がバクバクし始めるが、俺の言葉に同調したソラちゃんのリアクションに笑いが込み上げて少し緊張もほぐれた。
しかしリアンなぁ……指令に言われるがまま妻子を設け、指令に言われるがまま妻子を見殺しにした……だけども全く気にする事なく割り切っているのかと思えばそんな事は全然無くて、その事をうじうじと引き摺っている矛盾を抱えた男。まぁそういうところが魅力的でもあるし良いところは良いところであるんだが……だからって別に性根は善人って訳でもないのがどうしようもないところだ、普通にサディストだし。
そんな事を考えながらソラちゃんの開けた扉に続くようにして入っていく。そういえばこの技術って薬指の領分だったよな……人差し指エリアに直通してる訳じゃないんだっけ……謎に込み上げてきた『予感』。あれ編み笠みたいな帽子を被った怪人の姿が見えるんだけどなんでだろう薬指のマエストロじゃないよなまさか入った途端カリストとバッティングするなんて事はないだろうし。
「ほぉ」
「あっ」
「あ、カ、カリストさん……」
死んだんじゃないか?
ソラ
ここ最近で一番喋った。指令によって繋がった人が悪い人な訳が無いという確信からお出しされる信用。まだそういう意識にまでは繋がっていないが好感度自体はかなり高くなっている。仮に指令が出たらどうして……と戸惑いつつ遂行する
アンデルセン(仮)
ちょろい男。ソラの死を回避させたいが結局自分自身に物語をひっくり返すようなパワーは無いとわかっているのでちまちまと少しずつゴールをズラそうと考えている。蜘蛛の巣に入って秒でカリストとデスエンカした可哀想な友達
カリスト
知らない毛髪、知らない皮膚、知らない目、知らない歯、知らない骨格、知らない爪、都市のそれではなく外郭に僅かに住まう人間のそれでもない。人差し指の子方に不本意ながら感謝