ここでは都市に転移させられ、目の前に人差し指の子方がいた男について語られる 作:ケジメされた人差し指
細かい所をいちいち書き過ぎて延々話が進まないので平坦ながら少し飛ばしていく
食事の為に手枷は外したソラちゃんだが、普段からその状態で食べるのに慣れてしまっていたからか食べるペース自体はゆっくりしていた。俺は先に食べ終わったので、彼女がまくまくと箸を進めるのを眺めることしかできないが……ソラちゃんが年齢よりも幼く見えてしまうのはやはりこの細っこ過ぎるお身体も要因の一つだろう。胴回りと顔の横幅が同じくらいなのマジでありえない話!
こうしたご飯を毎食摂ってるなら栄養に偏りとか不足は無いだろうが、出先とかだったら食事をおやつとかアイスで済ませてたりしないだろうね、お父さんは心配です。最近はどうなんだ……人差し指の方は、上手く指令やれてるのか?
「ソラちゃんは好きな食べ物とかあるのかな、魚とかは好きみたいだけど……あ、アイスは無しね。ご飯のカテゴリーで頼むよ」
「もぐ……んくっ、そうですね。た、確かに魚は好きですし……貝とかエビ、海鮮の料理なんかは特に美味しいな〜って思います。フ、フォークでも食べやすいですし」
「いいね、いつか一緒に
代行者ドンちゃんがエビとニンニク食べたがってたけど、やっぱ人格元のソラちゃんもそういう系が好きか。プロムンのお国柄どの区域もうっすら韓国のエッセンスは散らばってるだろうから、焼き貝やってる店も探せば何処なりにでもあるだろう……あの不条理の塊みたいな大湖で獲れる水産物はちょっと怖いが。
「ああ……そ、そういうお店には……行った事無かったんですよね。ボ、ボクが外で食事をする時はほ、殆ど1人なので……」
「あー確かに一人前だけ頼めるような場所も少ないもんな。リアンさんも……ああいう雰囲気は似合わなさそうだ」
あのスーツを着たまま網で焼かれるホタテやタイラギを前にフォプーンを握り締めるリアンを想像する。カップ麺の時もそうだけど、このリアンのグルメを想像するシリーズは腹筋に悪いな、何してたってシュールになるじゃんお前。カドゥケウスも空気読んで貝柱切り離すナイフになったりしたら耐えられない。
しかしそうだよなぁ、人差し指の代行者は指令遂行の為に部隊を率いる事はあっても、基本的には戦闘を想定されてる時くらいで……都市の意思から下される指令は殆どの場合奇行といって差し支えなく、単身で行う場合が多い。必然的にソラちゃんもぼっち飯になるよな……
「あー、もしかしてだけど麺類とかもよく食べるんじゃないかな?」
「え、ええっ!? そ、そうなんですよ……凄いなぁ、なんでわかったんですか?」
「カルグクスなんかはフォークとかで食べやすいだろうと思ってね。海鮮出汁のやつも多いだろ? 外れてたら恥ずかしかったけどね。俺はアサリなんかが大量に入ってるやつが好きだよ。貝のツーンとした感じが……な!」
こうして食事の話を合わせられるの、何度も行った韓国旅行がこんな形で役に立つとは思わなかったが……こうやって手が使えるならソラちゃんもこれまで敬遠した食べ物を選択出来るようになるだろう。あの手枷も彼女がこれまで都市で生きていく為の拠り所だった訳だから一概に悪い物だけとも言えないけどね。
指令への傾倒を失い、普通の暮らしや人間性に関心を向ければ……人差し指の行う所業というものには苦しみも覚えるかもしれない。代行者ソラが手に掛けた人の数も、産んだ苦しみも消える事はないんだから。だから俺は……彼女に付き添う過程で、命を奪わなければならない時が来たとしても、背負う必要もあるよな。
「いいですね……ア、アンデルセンさんの好きな食べ物も知りたいです!」
「そうだなぁ……都市にあるもんかはわからないが、すき焼きって鍋物が好きでね」
「すきやき、ですか? 聞いた事ないですね……ど、どんな料理なんですか?」
「薄切りにした牛肉を葉物やキノコ、豆腐と一緒に甘じょっぱく味付けするんだ。それを卵と絡めてご飯と食べるんだよ。都市だとチョンゴルって言ったりするかな? 全く同じ物ではないけどね」
食べ終わった後の器はまた容器に入れて、専用の箱に入れれば自動で回収して貰えるらしい。洗い物もしなくていいし便利な事だ……ちょっと味気なさもありはするが。ゆくゆくはソラちゃんと自分でご飯作ったりしても良いと思う。
「……」
チラと壁に掛けてあったカレンダーを見る。西暦やら年号やらも違う訳で、都市の一年が現実のそれと同じ保証はないが……981-2、9章の始まる984-2まで丸3年と考えて良いだろうか。
自分で食事を作る事が出来るのに越した事はないし、想定通りに行くならこの生活が永遠に続く訳でもない。もし断ち切れないが終わって、その時に俺が居ないとしても彼女が健やかでいられますように……
「ど、どうしたんですか?」
「いいや……改めてこれからよろしくね、ソラちゃん」
「は、はい……! ボクの方こそ、お願いします……アンデルセンさん」
朝か……朝だ……朝! 朝! 朝朝アサアサアサ!! 朝になったってのに……この夢が覚めてくんない。という事で一晩が経ちましたが俺は相変わらず都市にいました俺の無遅刻無欠勤もこれでおしまいだ! 行方不明って事になんのかな……ひー湿っぽくなり過ぎるから親とか職場とかの事は考えんようにしとこ! 埋めます、過去を。
というか今ちゃんと朝だよな? 時計はついてるけど窓がねぇもんだから朝の日差しも入って来ないせいで実感出来ない。気も晴れないから慣れるのが先か滅入るのが先か……
ワイシャツのまま寝たもんで皺まみれだが着替えもねぇしな……このまま外に繰り出すのも憚られるが、無いもんは仕方ない。首と背中をボキボキ鳴らして洗面所に向かう。
ゲストルームに当たるのか、はたまたソラちゃんやリアンが寝ている部屋もこんな感じなのか……上等なホテルの一室って具合でそれぞれに簡易なキッチンから足も伸ばせる風呂にキングサイズのベッドにと中々快適な空間だ。冷たい水で顔を洗い、身嗜みを整えるがやはり服はどうしようもない。
昨日夕食を取ったリビング(仮)に出てくるが、当然ここも窓はなく明かりもついていないので真っ暗だ。空間の異質さもあってちょっと怖いくらいだな、ランプの紐を引いて隣のソファに座る。寝室にいたっていいがスマンホホも当然使えないしやる事もない、のでソラちゃんが出てきた時すぐにわかるようにこっちにいる事にした。
冷たい空気に静かな広間、中指のところとかは見る物色々ありそうで退屈しなさそうだがこっちは寂しげだな。一応テレビあるけど……どんな番組やってんだろ、都市でグルメリポートなんてやってたりするんだろうか?
バラエティーやって視聴率取れる程明るい世界でもない気がするが、鉄の軍勢みたいな推定ロボットアニメはやってるようだし。ガンダムっぽい感じかな〜、名前の咽せそうな雰囲気的にミリタリー色強いロボかもしれない。
「お早い目覚めだな」
「っぉ……おはようございます、リアンさん」
リモコンでも探そうかと思ったら横から突然現れたリアンに飛び跳ねそうになる、というか立ち上がった。お前いつからいたんだよぉ! 気配無さすぎてびっくりするわ〜、つまり気付かれる事もなくいつでも殺せるという事だ俺を。
にしてもこいつ朝っぱらから部屋着とかでもなくのっぺり黒スーツなのか……着替えなくてこの服な俺が言える事じゃないが、まさか寝る時もこのままとか言いませんよね?
「ソラは大体8時頃に起きてくる。コーヒーなんかが飲みたければ好きにしてくれて構わない」
「ありがとうございます。人差し指……この蜘蛛の巣に滞在している中でのスケジュールなどは決まっていたりしますか?」
「無いな。ソラにつくお前はあの子に指令が来るまで何をする必要もない、お前自身に指令が来た場合は別だが」
何時に始業、何時で終業ってもんもないよな。指令さえ来なければ丸一日する事無かったりするかもしれないし、逆に指令が入り続ける限りは休めないかもしれない。現にリアンはあの時間からまた出掛けてたしな……何してたんだろ。
「なにぶん普通の企業勤めだったものですから、明確にこうと決まっていないのも落ち着きませんね」
「……ますます不思議だな。外郭にそれだけ発展した区域は無かった筈だが」
「都市も、都市の意思も、あなたも全てを知っている訳ではありませんから」
会話の一つ一つがピリつく。怖いぞ、だいぶな! と思いはしつつも受け答えに難は無いんだよな。ヴァレンチーナは言わずもがな、マティアスはマティアスでわりと破綻してるし……とついでに牽制弾も投げ込んでおく。
俺が都市に来た事で振動の内に一つに数えられてはいるかもしれんが、俺もあっちを知っている訳だし。ソラちゃんを助けたいって思ったりとか、ほんのりとあるかもしれないな、上の次元から来てるんだぞっていう……傲慢大罪っ。しかし転移本当なんなんだろうな〜、アークナイツコラボで別世界へ接続された例はあるが前提が違い過ぎる。
「まるで自分は知ってるような口ぶりだな?」
「まさか。ただ偏りがあるくらいで……そうですね、都市を作った人なんてどうです」
「……はっ、中々怖い話をしてくれるな。朝から聞かされるには、重過ぎる」
足音も無く去っていくリアンの姿を見送り、時計を確認すると8時を少し越えた頃……それと同時にドアが開く音がして目を向けるとぽしょぽしょと寝ぼけ眼のソラちゃんが……パジョマを着ながら手枷を!? 朝からスーツでキメてるリアンといいファッションセンスが尖ってるなぁ。
「おはようソラちゃん」
「……?」
ぽけっとした顔のソラちゃんは大変可愛らしく、俺の顔をじっと見て長いロード時間に入ったようだ。しかしこう、あれだな……女性のパジャマ姿初めて見た! キャッキャ、これ本当に俺が見て大丈夫なものだったか……? プライベート的なもんだし色々いかんのでは、というか髪が普段より20%くらいモファッとしてるな、あれでも整えようとしてる方だったのかもしれない……かわいいね。
「あ、アンデルセンさん……おはようございます……」
「おはよう、朝は弱めなタイプかな」
朝食は昨夜のようなセットではなく、普通にパンとソーセージ、卵を焼いてコーヒーを淹れた。コンビニに置いてあるバリスタマシンみたいにその場で挽いてくれるのいいな、ソラちゃんは甘めな方が好きということで砂糖とミルクを入れる。朝食も手枷無しで食べてもらっているので良いかもしれないが、良かれと思って無理させすぎてないかな……隣で食べてくれたら良い? そっか〜。
「すん……そ、そういえばお着替えが無かったんですね」
「だらしない先生ですまない……服の匂いとか気になっちゃうかな? あれだったら離れるけど」
「い、いえ、大丈夫ですよ。それに……あ、なんでもないです」
2人してシャッと食べ終え、支度をしてから早速お出かけだ。昨日から都市に来たとはいえほぼ蜘蛛の巣に移動するだけだったし、世界をまじまじと見るのは今からが初になる。巣の中を動くだけならそこまでの危険は押し寄せて来ないだろうし、先に着替えだけ買わせて貰ってからロジックアトリエを見にいく事にした。実際に銃扱ってる工房は他にもあるのかもしれないけど……その、原作にないのを……
しかし、自分より歳下で小さい女の子に服を買うお金を出してもらうのを想像してみろ。エグいなんてもんじゃない。オカネガヒツヨウデス……指令から纏まった眼貰えたらウェイフェアラー社の株とか買おうかな。今のうちから手出しとけば上がってくじゃろ。
「あ、あの、そんなに気にしないでくださいね? 困った時はお互い様ですし」
「ほんとありがとうね……くそ〜円なんて使えないからな〜。違う文化圏の紙幣なんつったって好き者でも唆られるか分かれそうだし」
「ボ、ボクは興味ありますよ……そ、そうだ! ボクがそれを買い取るって事で……」
「惨めさが加速するからやめてね」
アンデルセン
都市で使用できる金品の一切を持たず歳下の気弱な女の子の財布に頼る可哀想な友達。スマホは圏外で使えないが中に入ってるリンバスのデータとかって存在して大丈夫なのかと思っている
ソラ
普段使うアテも無いので純粋な好意でお金を出そうとしている、優しいね。強化施術とかも、してくださっていいんですよ? 工房の事なんかは教える側になるのでとてもタノシイ
リアン
「あの事件が起きてから……表向きでは忌避されるものの売り上げ自体は上向きでして……」
「そういうことも、あるだろうな」