セブルス・スネイプの悔恨記(短期連載)   作:テーラ・クレプスクリー

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賢者の石(後)

 

 

十七:聖夜の懐古

 

もうすぐクリスマスがやってくる。

 

この時期になると、

私は妙に昔のことを

思い出してしまうのだ。

 

大広間は煌びやかに装飾され、

子供たちは帰宅の喜びと、

プレゼントへの期待で一様に騒がしい。

 

その浮き足立った喧騒に当てられ、

私はかつて、

リリーと共に混じり気のない

笑顔で過ごしていた、

遠い日の冬を懐古する。

 

いつしかクリスマス当日となり、

大広間では居残った生徒や教師たちが、

賑やかに騒いでいるようだった。

 

私は一人、

薄暗い私室に籠もり、

胸の奥に残されたその甘い思い出に浸りながら、

静かに時を過ごしていた。

 

どうせ、

今夜は深夜の城内の見回りがあるのだ。

 

それまでの僅かな時間くらい、

こうして過去の光を眺めることくらいは、

許されるだろう。

 

 

十八:警戒と警告、

 

休暇明けに行われる、

あの子の次のクィディッチの試合は、

ハッフルパフ戦だ。

 

前回の『炎の妨害』を踏まえ、

私が自ら志願して主審を務め、

さらにダンブルドアが観客席から見守る

布陣を敷くことに決まった。

 

しかし、

私はクィディッチの複雑なルールを

すべて完璧に

把握できているわけではない。

 

職務の合間の僅かな時間を見つけては、

教本を開き、

ルールの確認を重ねる日々。

 

 

試合当日、

私は箒に跨り、

宙からあの子の周囲に全神経を

張り巡らせていた。

 

戦況が進む中、

一瞬、あの怯える愚か者が位置する方角から、

肌を刺すような妙な

呪詛の気配を感じ取った。

 

――だが、次の瞬間、

あの子が電光石火の速さで

スニッチを捕らえ、

試合は幕を閉じた。

 

これでひとまずは安心、などと

気は抜けん。

あの影の動きを止めるためには、

直接釘を刺す必要がある。

 

私は誰も立ち入らぬ

人気のない場所へと、

あの愚か者を呼び出し、

私の刃のような警告を

少し念押ししておく方が良さそうだ。

 

 

十九、深まる諦念

 

ハッフルパフ戦のあと、

あの愚か者を森の奥へ追い詰め、

詰問したあの日から、

時間は砂のようにあっと言う間に

過ぎ去っていった。

 

気がつけば

イースター休暇も終わり、

進級試験まで

残り二月というところか。

 

石の防衛に神経を尖らせる

私を嘲笑うかのように、

問題を起こすのは、

何もあの残滓だけではなかったらしい。

 

私が目をかけていたドラコまでが、

何やら裏で動いていたようだ。

 

ある日曜日、

日付が変わったばかりの深夜帯。

 

厳しい顔をしたマクゴナガルに連れられ、

ドラコが私の元へとやってきた。

 

私は思わず胃の奥が疼くのを感じた。

 

ドラコ、

お前はもう少しまともな頭をしていると

思っていたのだが。

 

マクゴナガルから

冷徹に告げられたのは、

スリザリンからの二十点減点と、

夜間の説教、そして罰則。

 

我が寮の失点に、

眉間の皺が増える。

 

しかし、

その夜の獲物はドラコだけではなかった。

ポッターとその仲間たちも、

同じく何やら盛大にしでかしたらしい。

 

あの子たちが

グリフィンドールから引いた点数は、

あまりにも莫大だった。

 

翌朝から、

大広間でのあの子たちの扱いは一変していた。

 

英雄から一転し、

身内であるグリフィンドール内で

『村八分』の如く

孤立しているあの子たちの姿を、

 

私はただ、

深まる諦念を抱きながら、

冷ややかに見つめることしか

できなかった。

 

 

二十:危険な罰則

 

進級試験まで

残り一週間を切ったその日、

先日の夜の徘徊で捕まった者たちが、

ついに罰則を受けるそうだ。

 

課された

罰則の内容に関しては、

他教員である

マクゴナガルの決定であり、

 

我がスリザリンの

ドラコが含まれていようとも、

私ではどうすることも出来ん。

 

だが、

よりによって、

あの危険極まりない

禁じられた森へ、

 

あのウスノロの半巨人と

共に見回りに行かせるなど――。

マクゴナガルの、

あの頑なな思考だけは、

私には到底理解できそうにない。

 

夜の森の危険さも分からぬ、

まだ幼い子供たちなのだぞ。

 

五体満足で、

全員が戻ると良いのだが。

 

あの子が、

そしてドラコまでもが

問題を起こしてからというもの、

 

私の頭痛と溜め息は、

一体いつになったら

止んでくれるのだろうか。

 

 

二十一:凶報・警告・願望

 

進級試験が始まった。

 

室内に籠もる

うだるような暑さに眉をしかめつつ、

私が監督を務める「忘れ薬」の

実技試験を見回りながら、

 

私はただ、

あの子の様子を盗み見ていた。

 

先日の、

禁じられた森での罰則の夜。

暗闇の奥で何者か

――ユニコーンの血をすする者に直面し、

 

ケンタウルスに

命を救われたのだと

ダンブルドアに聞いた時には、

本当に肝が冷えたものだ。

 

私のこの双腕の届かぬ場所で、

あの子が危うく

散るところだったのだから。

 

あのマクゴナガルの

無謀な罰則への怒りは、

未だに収まらない。

 

やがて

最後の試験が終わり、

生徒たちが解放感に誘われて

校庭で騒ぎ出すのを、

私は大広間の窓から

冷ややかに眺めていた。

 

だが、

私の視線は再び止まる。

喧騒の隅で、あの子とその友らが、

妙に顔色を悪くして

身を潜めるように話し込んでいたのだ。

 

(また……何かを企んでいるのか)

 

私は冷たい怒りと

焦燥に突き動かされ、

黒いローブを翻して

あの子たちの背後に滑り込んだ。

 

これ以上、

私の目の届かぬ死地へ

飛び込ませるわけにはいかない。

 

私はあえて

冷酷な仮面を張り付け、

あの子たちへ少々の苦言と、

夜歩きを禁ずる

厳格な警告を与えた。

 

これで、

少しは分を弁えて

おとなしくしてくれることを、

今はただ、願うしかなかった。

 

 

二十二:疑惑、

 

そのまま職員室に戻った私は、

他の教員からダンブルドアが

魔法省に呼び出され、

ロンドンに向かったという

間の悪い凶報を聞いた。

 

クィレルへの

警戒を強めていたこのタイミングで、

ホグワーツの絶対的な盾が失われたのだ。

 

少しして私が職員室を出ると、

そこにはあの子の友の一人である

グレンジャーがいた。

 

明らかに不自然な様子で佇む

少女を詰問すると、

フリットウィックを

待っているというので、

私は冷ややかに声をかけた。

 

それから少しして、

マクゴナガルが本を

両手に持ち戻ってきた。

 

だが、

彼女の口から告げられたのは、

あの子とその友らが

血相を変えて怪しい動きを

しているという事実だった。

 

……先ほど

私が与えたあの警告は、

あの子には一切届かなかったのか。

 

ただ平穏に

大人しくしていてくれという、

私のささやかな『願望』は、

この先も永遠に

叶うことはないのだろうか。

 

 

二十三:悲嘆

 

その日は

どうしても心が落ち着かず、

私はダンブルドアが戻るまで、

 

ただじっと職員室に待機していた。

何が起きても、

即座に動けるように。

 

すると、

どれほどの時間が流れただろうか。

ロンドンから急ぎ戻ったダンブルドアが

地下へ急行し、

あの子を救い出したという凶報が

私のもとに届いた。

 

あの子は

そのまま医務室へと運び込まれ、

それから三日もの間、

昏々と眠り続け、

目を覚まさなかった。

 

あの白いベッドで

横たわる小さな姿を見つめながら、

私は己の無力さを呪う。

 

すべては、

あの日交わした誓いのため。

この命を賭して、

傷一つつけずに守り抜くと

決めたはずだったのに。

 

かつてのあの日も、そして今日も。

 

私が守ろうとするものは、

どうしても、

私では守れないのだな。

 

 

賢者の石編(終了)

 

 

私にとっての、光の残滓はあの子だ。

 

名を呼べば、愛着が湧く。

それが恐ろしい。

 

名を呼ぶのは、あの誓いの時のみ。

 

ポッターと呼ぶのは、己への戒めだ。

 

 

ゆえに、あの子だ。

 

 

 

 





一応、ここで一旦終わります、
続きが思いついたら、続けますが

いつになるかは
不明です、

ご了承ください

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