セブルス・スネイプの悔恨記(短期連載) 作:テーラ・クレプスクリー
二十四、因縁の地
新学期の始め、
平穏を遮るように届いた報せは、
あの子がホグワーツ特急に
乗り損ねたという愚かしいものだった、
私の胸を騒がせる焦燥により、
城の周辺を巡っていれば、
とても現実とは思えぬ光景があった、
月光が射す暴れ柳、
かつて私が死の危険と
屈辱を受けた場所、
その同じ場所で
あの残滓がボロボロにされている、
今年度始まってまだ初日だというに、
しかし、それだけではなかった、
さらなる凶報が届き、
私の絶望と眉間の皺は深まるばかりであった、
マグルにあの子達の乗った
空飛ぶ車が見られたという報せ、
私はあの子達を地下牢へと連行し、
自らの行いをその身に叩き込んだ、
しかしダンブルドアとマクゴナガルにより
私は引き離され、
光の者達による不条理に
私はあの子が
ジェームズ・ポッターの息子で
あることを痛感する、
されどあの子の無事に安堵する
私の存在にも否定は出来なかった、
二十五、静寂の喪失
翌朝、大広間の朝食の席、
赤と金のテーブルでは
あの子がグレンジャーにあしらわれ、
身を縮めていた、
その光景に私は少々の
痛快さを感じていた、
しかし、その直後
私の頭痛を増やしてくれる騒劇が起きた、
ウィーズリーの元に届けられた紅い報せ、
その騒音だった、
私は掴んでいたゴブレットを置き、
眉間に指を当てた、
ウィーズリー、開封する場所を
選ぶこともできぬのか、
己の行いと恥を晒すに収まらず、
周囲の迷惑まで考えられんとは、
しかし、それを理解できるのならば
空飛ぶ車で騒ぎを起こすなどするわけがないな、
それに今年度の騒劇は
あの子たちだけではない、
すぐ近くの席で騒ぐあの道化者だ、
ダンブルドア何故あのような愚か者を
神聖なる学び舎に招聘したのか、
校長の深い意図を
私には理解できそうもない、
二十六、道化と無能
あの道化者は私の予想より
無能であった、
噂によればあの子の受けた
防衛術の授業で自らの放った騒ぎの元を
回収すらできず、
その後始末を生徒に
押し付けるなどという、
己の無能さを知ろうともせぬ
愚か者だ、
学び舎という親から預けられた
子供達を守れぬような者には、
憐憫すら感じる、
ダンブルドア私にあなたの深い考えは
理解できそうにない、
あの虚飾にまみれた妄想日記を
あなたが信じているとは思いたくないが
矜持を持たぬあの男の魔の手が
あの子に迫る様を
私の立場では見守ることしかできない、
二十七、消えぬ呪言
ある日私が耳にした風説に拠れば、
私が寮監を務めるスリザリンと
あの子のいるグリフィンドールが
また諍いを起こしたらしい、
しかもその中心が
ドラコとウィーズリーだという、
ウィーズリー貴様は
あれだけの騒ぎを起こし、
まだ足らぬと言うのか!
しかし己の呪文を失敗し、
すぐに罰を喰らったようだ、
だがあのドラコがグレンジャーに
私の鼓膜を疼かせる呪言を放ったと言う、
ドラコの立ち位置ならば
あり得るだろうが
私には届いてほしくはなかった。
二十八、嘲笑
ある土曜日、
ようやくあの空飛ぶ車の罰則を
あの子達が受けたそうだ、
あの子はあの道化者の手伝い
という名であるが、
拷問のようなものであろう、
ウィーズリーはフィルチの手伝いで
銀磨きだという、
あの子の罰則よりは
ウィーズリーのほうがマシであろう、
しかし、それではあれだけの
騒ぎによる罰則には手緩いと
あの子の『保護者達』による
免罪符には怒りすら感じる
二十九:再来
あの子が入学し、まだ二年目だ。
これが偶然だとは思うが、
昨年と同じ万聖節の前夜に、
あの子はまた騒ぎの核になった。
秘密の部屋が開かれたと、
常軌を逸した血文字と、
フィルチの飼い猫が石化するという
悍ましい事件の中心であった。
教員達による聴取の最中、
私は少々あの子らに苦言を呈すことにした。
無駄ではあろうが、
少しでも不審な行動を抑えてくれることを、
今はただ、願うこととしよう。
三十、重なる警鐘
呆れた親馬鹿の盲目により、
ドラコをシーカーに据えるため、
ルシウスの手により
最新のほうきがチームへと
贈呈されたという。
あの男は妙な動きも見せている、
警戒は緩められん、
城内の秘密の部屋の巷説が広まり
騒がしいなか、
あの愚かな道化者が
あの子の負傷を悪化させ、
医務室送りにしたという、
探るべき謎と守護の対象、
排除するべき無能、
私の脆い双腕には
どれほどの重荷が重なるのだろうか
三十一:苦悩と疑念
クリスマスが近づく頃、
あの子の傷は回復した。
しかし同じ日に、
新たな石化の被害に一年生が遭遇し、
医務室に運び込まれたという報せを受けた。
確たる証拠も情報もなく、
被害は増えるばかり。
そんな焦燥に駆られる
私に追い打ちをかけるように、
さらなる問題が起きた。
魔法薬学の授業中、
低俗な玩具の暴発で調合の中断が起き、
生徒達の治療に追われる中、
私の研究室の薬棚から素材が盗まれたのだ。
これは計算し尽くされた計画であろう。
騒ぎの渦中にあった、
あの子の怯えたような表情を見るに、
おそらくは関わったのだろう。
これ以上、あの子が問題に関わらないことを、
今はただ、切望するしかないだろう。
三十二:舞台
私の頭の痛みと怒りが最高潮に達したのは
おそらくこの日であろう、
あの無能な道化者が私を助手などど呼び
己の舞台に担ぎ上げたのだ。
だが、良かろう、
そんなに視線の的になりたいと
願うのならば叶えてやろう、
私の呪文で道化が舞い醜態を晒す様が滑稽であった、
そのあと二人一組に分け、実戦をさせるそうだが、
馴れ合いでは意味がなかろう、
犬猿の仲であるあの子とドラコならば
意味のある戦いをなせると断じた、
しかしあの道化は生徒達にも
無能さが晒されているようだ、
あの道化の指示に従わんだけではなく
言葉尻をあげつらうとは、
その後の騒動には頭が痛む、
よりにもよって蛇語を大衆の面前で晒すとは、
闇の帝王の残滓が
あの子を蝕んでいるとは
ダンブルドアあなたはどこまで
承知しているのか、
あの深謀遠慮には恐ろしさすら感じる、
三十三、重なる面影
あの日、
あの子が晒した帝王の残滓を巡る噂は、
光よりも早く城内を駆け巡り
生徒達を騒がせた、
事実と真実の違いも分からぬ
無知な子供達による
影での邪推した言葉があの子を苦しめる、
その姿はかつてあの子の父親を
筆頭とした愚者達に追い回され
必死に抵抗していた己が重なる、
愚かな男の息子の苦しみと
嘲笑することも出来るが
あのリリーの目と
同じ翡翠が曇るのを
私は遠くから見守るしかあるまい
三十四、重なる重圧
あの日の被害者はあの子を
最も避けていた生徒であったようだ、
さらにはゴーストまで、
あの石化は一朝一夕に
できるようなものではないはず、
そのような簡単なことも
分からぬ蒙昧な子供達による
騒ぎとあの子への風評、
昨年と違い温かいかつての記憶に
身を任す余裕もなく
聖夜も過ぎて行く、
三十五、吉報と動乱
年が明け、以降の被害は途絶えている、
さらには被害者達を治せる
薬の原料も目処がついたという
吉報もあった。
しかし一安心する間もなく
今度はあの道化者が騒ぎを起こす、
大広間を狂乱な色に飾り立て
巫山戯た喜劇を起こしたのだ、
他の教員達も呆れているのが分かる、
あの道化者につき合わされる
あの子には憐れみを感じる
三十六、盾の喪失
グリフィンドールとハッフルパフの
クィディッチが始まる時、
新たな被害者が現れた、
同時に二人、片方はあの子の友であり、
あの知恵者であるグレンジャーだった、
あの子とウィーズリーでは
またとんでもない騒ぎを起こすかも知れぬ、
これ以上の惨劇を防ぐため、
生徒達の授業間の移動に付き添うという
現状出来うる対策もなった、
しかし、新たな問題が起きた、
ルシウスの手回しであろう
理事達の連名により
ダンブルドアが停職となった、
己の子も通っているというのに
学び舎から盾を奪うとは
愚かな真似をしてくれたものだ、
三十七章、雌伏の時
ダンブルドアの停職は
やはり多数の生徒達だけでなく
一部を除いて教員達にも不安感を与えた、
ドラコは愚かなことを言っていたが、
あのダンブルドアがこのまま退くはずもない、
すぐに戻る。
焦燥に呑まれている余裕などない、
今はただ、私に出来ることをするしかあるまい、
三十八章、暗中模索
耐えるしかない時間の中、
ある日、それは起こった。
突然のマクゴナガルによる
非常招集により職員室に向かうと、
顔色を失った彼女から
新たな被害が告げられた、
生徒が一人、さらわれた、
あの子の友である、
ウィーズリーの妹だと言う。
最悪の形で訪れた逼迫した状況の最中、
何も知らぬあの道化者が、
呑気に職員室へと現れた。
これ以上、あの無能の戯言に
付き合っている時間はない。
私はあえて奴の自尊心を適当に持ち上げ、
他の教員達と共謀し奴を追い払った。
闇の全貌は見えぬ状態ではあるが
私達はただ、それぞれの持ち場へと散らばった、
三十九章、終幕
さらわれた被害者の寮監であり、
代理の責任者であるマクゴナガルにより
被害者の両親が呼び出されたそうだ、
石化ではない新たな被害者により、
ルシウス以外の理事が
ダンブルドアの停職を撤回し、校長は戻った。
あの男は自らの画策により、
理事の地位すら失うという
自業自得の末路を迎えたようだ、
己の傲慢が招いた当然の報いだ。
あの道化者もまた、
自らの記憶をすべて失うという
哀れな末路を遂げたそうだ。
虚飾に満ちた男にふさわしい幕引きだ。
のちにダンブルドアに聞いた話では
やはりあの子とウィーズリーが動き
すべてを解決したと言う、
それはいい、
しかしあの子らのしたことは
褒めて良いことではあるまい!
退学を撤回するのはまだ良い!
しかし自分達の身を危険に晒したことを
褒めるなど愚かしい真似を、
あの子が在学中は私の胃痛を抑えるのは、
到底無理なのだろう。
秘密の部屋編(終了)
あの子の回りの動乱はいつまで続くのだろう
リリー、
君の遺したあの子を守る力を
どうか私に、
秘密の部屋編終わりました。
最後のモノローグでかなり迷いました。
次はアズカバンの囚人
またいつになるか
分かりませんが
できたら公開します。
よろしくお願いします。