生きているうちにやりたいと思っていたダークディケイドネタです。
皆様に合うかわからないですが、お送りさせていただきます。
無限広がる並行世界。
同じ国々、同じ街、同じ人々が鏡写しのように存在し、様々な人生を送っていた。
出来事の違いの差はあれど基本的には平穏な一時を過ごしている人類。
その裏で、激しい戦いに巻き込まれている一つの世界があった。
そこは、【異質な異世界】だった。
いくつもの廃墟と化した建物の光景が広がる荒廃した世界であり、文明の礎となった人類の気配は何処にもない。
代わりに息づくのはこの終末世界を生き抜こうとする異形の怪物達だった。
廃墟に蠢く木の幹のような体表を白い体躯を有する怪物――インベス。
とある世界では『初級インベス』と呼称されるそれは必死に走っている様子だ。
本来なら宇宙を超えて侵蝕する『未知の植物が支配する森』の恵みから齎される木の実を食した者が変貌する怪人なのだが、この場にいるインベスは何者かによって命からがら逃げていた。
『■■■■ッ!!』
必死に逃げているインベスを追って一匹の怪物が姿を現す。
それは、巨大なトンボの姿をした怪物――鏡の中の世界・ミラーワールドに生息しているはずの巨大生物ミラーモンスターの一種である『レイドラグーン』。
ミラーモンスターの中でも巨体を誇るソレは初級インベスを目標に定めると一瞬の間に急降下。
瞬く間に初級インベスまで接敵すると、大きな顎を明けてインベスへ襲い掛かる。
――ゴキャリ
硬いものが砕けるような音と共に初級インベスは動かなくなり、その場で投げ出される。
代わりに存在するのは仕留めた獲物を貪り食らうレイドラグーン一体だけであった。
そのすぐそばでは巨躯を誇る怪物達が同じ巨躯を誇る怪人達と取っ組み合い、お互いに食らおうと激しく死闘を繰り広げている。
怪人ですら安易に生きられない弱肉強食の掟が強いられたこの世界。
この先行きさえ見えない終末世界を【外部から観測した者達】は『ロストワールド』と呼んでいた。
本来なら人が住める状況ではないはずのこの世界。
だが、このロストワールドでも足を踏み入れてまで【とある者を探す人】がいた。
ロストワールドのとある場所。
そこに一人の人影が舞い降りるように姿を見せた。
「ここも終わってるわね」
そう言いながらこのロストワールドの枯れた大地を歩くのは、一人のローブを被った人物。
高い声音を有するこのローブの人物は瓦礫が鎮座している荒道を軽い足取りで進んでいく。
この人物が目指しているのは、前方にて遠く見えている何らかの朽ちた大きな建物。
何等かの壊れたエンブレムが目立っているそれを見て、ローブの人物はぽつりと呟いた。
「こんなところに放っておくなんて、『彼ら』も切羽詰まっていたのかな」
『彼ら』なる謎の言葉を口にしながら、ローブの人物は大きな建物に近づく。
そこに飾られていたエンブレムは『世界を掴む双頭の鷲』というシンボルの内容が伺え、これが何なのか理解しているローブの人物はその名を口にする。
「大ショッカー……すべての世界を支配しようとしたかの悪の大組織も見る影もないね」
ローブの人物はこの建物の持ち主だった組織の名を口にしながら内部へと入っていく。
――大ショッカー。
それは他の世界を渡る架け橋・オーロラカーテンを使い、世界を跨いですべての世界を支配する野望を持った大組織。
様々な異形の怪人達と組織を統合し、巨大組織にまで成長を遂げた……だが、とある『大自然の戦士達』によってその野望がものの見事に打ち砕かれた。
今となってはもはや見る影もなく、時代と共に忘れ去られた……。
そんな組織崩壊のときに放置されてこのロストワールドへ漂流してきた大ショッカーの基地。
基地内を進んでいくと、ローブの人物はとある場所を見つける。
――そこは、厳重な鋼鉄の扉で封じられた何らかの部屋。
壁には『D.D.S』と書かれており、それを見たローブの人物はニヤリと笑った。
「ようやく見つけた。いわばこれが大ショッカーの遺産か」
そう言いながら、ローブの人物は鋼鉄の扉へ手を翳した。
本来なら常人では開けられるものではないが、それらを無視するかのように手を翳した後に重厚な音が響く。
するとあれほど重そうだった扉が手で触れられることもなく一人勝手に動き、開かれていった。
扉が完全に開き切り、内部に入ったローブの人物。
そこにあったのは、ガラスで作られたような透明な棺の装置。
比較的透けているガラスから覗くと、中には一人の青年が眠るように凍っていた。
SF作品でよく見るコールドスリープを彷彿とさせるその光景を見て、ローブの人物は笑みを浮かべる。
「よく眠っているね。もうすでにキミをこの場所で縛り付ける存在はいないのに」
意味深な事を言いながらローブの人物は先程と同じように手を翳す。
今度はその棺の装置が一人勝手に起動すると、けたたましいほどの機械音と共に棺が開いた。
開かれた中から冷気が漏れ出て、そして露になるのは青年の姿……。
短く切られた白に近い銀髪、端麗な顔立ち、ガッシリとした肉体。
見た感じは若い青年といったかんじだが、そんな彼はゆっくりと冷たい息を吐きだしながら目を開ける。
夜のように黒い瞳がまずローブの人物を捉えると、眉をひそめて口を開く。
「キミは、一体……」
「やぁ、おはよう。麗しの騎士様。お目覚めはどうだい?」
そう言いながらローブの人物は目深に被っていたローブを外し、その素顔を露にする。
桃色を基調とした耀げな長髪、小顔で愛らしい顔立ち、金色の瞳。
彼女は青年を見てうれしそうな笑みを浮かべる。
「キミを開放しに来たものだ。大ショッカーという巨悪と戦い、そして眠りについた人」
「……大ショッカー……そうだ、大ショッカー!」
青年は思い出し、棺の装置から思いっきり飛び出す。
勢いよくできて部屋の外へ出ていこうとする彼だったが、それを止めるように彼女は声をかける。
「ちょっと待って!」
「なっなんだい……?」
「ココは廃れて人がいないとはいえ、その姿で行くつもりなんですか?」
彼女の言葉を聞いて青年は自分の姿を思い出す。
自分の首から下の見れば、下着のパンツ以外を身に着けておらず、鍛え抜かれた身体が露になっている。
このままでは自分は変質者だな……青年は顔をしかめながらいったんその場で止まるのであった。
「……コレ、服どこにあるんだ」
「さすがに羞恥心はあるみたいですね。よかったよかった」
思いとどまった彼の姿を見て、少女は纏っているローブの隙間からとあるものを取り出す。
それは、何らかの男物の衣服であり、にこやかな笑みで青年へと渡した。
「これを着てください。採寸は合うと思うので」
「ああ、ありがとう……えっと」
青年は受け渡された衣服を纏いながら、少女へ訊ねた。
少女は蠱惑的な笑みを浮かべつつ、自分の名前を名乗った。
「アマミ。私の名前はアマミだよ。」
少女——『アマミ』はそう言ってニコリと笑いかけた。
そんな彼女に対し、着替えを終えた青年は感謝の言葉を述べる。
「色々ありがとう……オレは、そう、ガム。オレの名前はガムだ」
青年——『ガム』はアマミへ感謝を述べて、お返しにこちらもニコリと笑う。
何故自分を助けてくれたのか、何故囚われた自分をここまでしてくれるのか。
それは今のガムにとっては今はわからないし、気になるところだが……。
とにもかくにも。これがガムとアマミの最初の出会いであった。
これから起きる旅路へと導く、ほんのちょっとなきっかけであった。
~~~~
数分後。
ガムは自分を助けに来た少女・アマミと共にこの基地……元大ショッカー基地を探っていた。
どうやらアマミによると、どうやらこの場所にはかつて隠された遺産があるというのだ。
彼女曰く……。
「ここに来る前、いくつか調べてわかったことがあったんだよね。もしも大ショッカー復活の時に備えて封じられた遺産があるって」
アマミはそう言いながら、基地内部をどんどん進んでいく。
なんでそんなことを知ってるんだ、と思ったガムは思わず訊ねる。
「よく知ってるな」
「関係者さんにちょっとお願いしてね? ちょっと長くなるけど聞きたい?」
「あー……今度お願いするよ。今遠慮しておく」
アマミが体をくるりと振り向いた後に見せたキラキラとした瞳がこちらに突き刺さり、何か面倒ごとを悟ったガムはそっぽ向いて拒否した。
そんなやりとりをここまでに二度三度したところで、ふいにガムは彼女へと訊ねた。
「というか、お前。オレが何をしたヤツなのかわかってるのか?」
「うん、知ってるよ。大ショッカーにとっての大罪人であり、力を持たない無辜の人々にとっては正義の味方ってこと」
「よく知っててそりゃどうも……もっとも、どちらかといえば義憤の方が正しいがな」
アマミのはしゃぐような態度で口にした言葉を聞いて、苦笑を浮かべるガム。
そうして思い出すのは、自分の今までの経緯。
コールドスリープ装置に押し込められて封じられていたまでの過去はそう難しいものでもなかった。
元々ガムこと『
剣の腕っぷしが他より秀でていただけの剣客であり、その世界ではいたって普通の住民だった。
時折他の人間達といった住民らと腕試しをしながらも平凡に生きていた……。
だが、そんな生活も大ショッカーが攻めてきた時までだった。
ガムが住んでいた地域は人間離れをした力を有した怪人達の侵攻を受け、被害を大いに受けてしまった。
力を持たない住民達が犠牲にあい、ガムをはじめとした勇気ある住民達は大ショッカーに抵抗をつづけた。
半年近くの反抗し続けていたとある日、ガムとその戦友達は敵の策略によって絶体絶命の危機に陥った。
絶体絶命のその時、ガムが決死の行動をして何とか他の仲間を逃がしたものの、ガムは大ショッカーに囚われてしまう。
最終的に怪人すら退けたその戦闘力を目につけられ、こう告げられた。
『お前はいずれ大ショッカー首領の器となりえよう』
『ゆえに、お前を来るべき時のために封印する』
『喜べ、お前は選ばれたのだ。偉大なる大ショッカーの大首領の器となる栄誉をな』
大ショッカーの誰かの言葉を最後に、ガムは凍結されて長い間眠りについた。
――そして、今。
解放されたガムはアマミと共にとある部屋へとたどり着き、その中へ入った。
そこは一見何もない殺風景な部屋であり、内部には一つだけ柱のようなガラスケースがあった。
厳重そうに鎮座しているそのガラスケースの中には2つで1セットのアイテムがあった。
黒を基調としたカメラのようなベルトバックルと、本型の四角い武器だった。
それを見て、ガムは眉を潜める。
まるで何か心当たりがあるかのような表情だ。
「アレって、確か……」
「ディケイドドライバーとライドブッカー。大首領が対仮面ライダー用に作らせたっていうバックルね」
そう言いながらアマミはガムと共にバックル一式が収められたガラスケースへと近づこうとする。
一歩、二歩……そう歩いていたその時だった。
カチリッ、何かの仕掛けが発動するような音が聞こえると、ガム達が入ってきた入口が閉まってしまう。
突然の出来事にガムは驚く。
「なんだ!?」
「やばっ、まだここの仕掛け動いていたのね」
どうやら想定外だったらしく、アマミはうっかりしていたと言わんばかりに気まずそうな表情を浮かべた。
すると一同がいた壁がスライドし、そこから何らかの異形の怪人達が這い出てきた。
――武器の記憶を宿した赤い怪人、アームズ・ドーパント。
――イカとジャガーの異なる属性を有した怪人、イカジャガーヤミー。
――4つの腕を有するクモ怪人、スペースクモ男。
三体の怪人達がガム達目がけて襲い掛かる。
アームズドーパントが片腕を変化させた刀剣で切りかかり、イカジャガーヤミーは自慢の身軽さで接敵し鍵爪で攻撃しようとする。
ガムはアームズドーパントの切りかかりを咄嗟に避け、イカジャガーヤミーを容赦なく回し蹴りを叩き込む。
少しだけ退いたイカジャガーヤミーを見て後方へ距離をとると、ガムはアマミへ質問する。
「アマミさん、これどうするんだい?」
「さんづけいらない。私が何とかする!」
アマミはそう言いながら、後方にて静観していたスペースクモ男へ突貫する。
スペースクモ男はその4本の両腕を大きく振り回し、その鍵爪でアマミの身体を引き裂こうとする。
「シャッ!」
奇声を上げながら迫るスペースクモ男の鍵爪がアマミのローブを一瞬で引き裂いた。
まるで紙の如く切り裂かれたローブの切れ端……が、そこで鋭い一撃がスペースクモ男の顔面へと突き刺さる。
ローブを盾に攻撃を躱した後、アマミが繰り出した蹴りが炸裂したのだ。
「とんでけっ!」
スペースクモ男を蹴り飛ばした先にあるのは、ディケイドライバー一式が収められたガラスケース一式。
それに触れた瞬間、強烈なバリアが発生し、スペースクモ男とぶつかりあい、強烈な光が生み出される。
その隙を見過ごさず、アマミは手を伸ばす。
「バックルとカード、いただきます!」
まるでスペースクモ男を押し付けるように周囲から斥力が発生し、そのままバリアへ無理やり押し込む。
瞬間、スペースクモ男ごと爆発し、舞い上がる黒煙からディケイドライバー一式が飛び出てくる。
アマミはそれを見逃さず、咄嗟に叫ぶ。
「ガム! それを受け取って変身して!」
アマミが叫んだ言葉を聞いて、ガムは地面を蹴り上げる。
途中でアームズドーパントとイカジャガーヤミーが襲い掛かられるが、構わず掻い潜って攻撃を避ける。
そして、床を蹴り上げて飛び上がって、ディケイドライバーとライドブッカーへ手を伸ばす。
そして上手くキャッチすると、ガムはその目を見開いた。
「こいつは……!」
ガムは手にしたそのディケイドライバー一式を受け取った後、何かが閃くように情報が流れ込んだ。
まるで手にしたこのバックルの使い方がわかるように、手に取るようにわかる。
変身ベルト・ディケイドライバーを腰に装着し、ライドブッカーから一枚のライダーカードを取り出す。
ライダーカードを敵に向けて翳しながら、ガムは言葉を紡ぐ。
「変身」
サイドハンドルを引き、露になったカード挿入口にライダーカードを装填し、サイドハンドルを閉める。
ディケイドライバーから鳴り響いた電子音と共に、ガムの周囲にいくつものシルエットが出現。
シルエットがガムの姿に重なってアーマー姿に、ディケイドライバーから出てきたライドプレートが頭部に突き刺さると、灰色部分のアーマーが漆黒の色に染まる。
そこ立っていたのは、青い複眼を宿した仮面の戦士。
【KAMEN RIDE…DECADE!】
そこに現れたのは漆黒の戦士。
――ダークディケイド。
異界の戦士・ガムが変身を遂げて姿を現したのであった。