第零話 才能
□■Regret three siblings
俺は生まれつき“才能”があった……そう聞くと自意識過剰で痛いヤツだと思われるだろうし、実際幼い頃は自分の才能が他の子供より遥かに優れていると分かっていたので無自覚に他を見下す今思い返すと悶え死ぬぐらい痛いヤツではあったが。
それは兎も角として俺が凡ゆる方面で普通の人間を上回る才能を持って生まれた一般的に“天才”と言える人間であり、そして俺の生まれた“家系の特性”からその事を自覚するのも早かった。
俺の実家は様々な“才能”を持った人間を迎え入れて婚姻を結び、より優れた子孫を残していずれは“あるべきではない程の規格外な才能を持つ人間”を生み出す事を目的として一千年以上の長い時間を掛けて社会の裏で暗躍していた“一族”の末裔だったのだ。
どっかの漫画の設定だと思われるかもしれないし、実際友人の1人からは『テ◯フォー◯ーズの◯ュートン一族みたいな連中ね』とか言われたし大体それであってる。
最も“一族”は世界征服とか現代社会の転覆みたいな事は考えておらず優れた人間を生み出すのがライフワークになってるのが殆どなのだが、実際に“一族”には多くの“天才”が生まれており、その中でも俺の才能は総合値においてはトップクラスだったので一族の目標が達成されたのではと話題にもなった。
実際、様々な才能を持つ一族の者達と比べても大抵の分野での才能は俺の方が上だと“見れば分かった”し、一部の特化型の才能の持ち主には勝てない事もあったが当時の俺は一族の目標は自分であると根拠もなく確信していた。
……まあ、暫くした後に“一族”とは関係ない所に生まれた俺を優に超える才能の総合値を持つ人物を見てしまって、自分の才能は規格外には一歩及ばないと分かってしまった当時の俺の自信は木っ端微塵に砕け散ったんだけどな!
当時の俺は自分の才能が規格外の域ではない事にもショックを受けたんだが、それに対して“一族”の者達が『まあこの調子なら後百年もあれば規格外に届くかもな』と自分の才能にさっさと見切りを付けてしまった事により強いショックを受けた。
後で両親から言われたがそもそも“一族”は最終的に規格外の才を持つ人間を生み出して人類のレベルを次のステージに上げられれば良いと言う思想なので、自分の世代で目標が達成させられずとも自らの子孫がそれに届けば良いという遠大な思想の持ち主が大半で、見切りを付けたと言うより俺の子孫なら期待出来るかもぐらいに評価の方向性を変えただけだそうだ。
大学生になった今なら子供の頃は万能感に満ちて自分が他者より優れていると思っていても、社会に触れて多くの失敗と反省を得て大人になるのは“一族”云々関係なく普通の事ではあると分かっているが、当時の俺は自分の才能ならもっと先に行けると思いこんで心に空いた“穴“に気付かないまま努力をする事にした。
幸いと言うか“一族”は才能を伸ばす努力をする事を推奨していたので、両親が表向きは警備会社である“一族”の私設軍隊の職員から古今東西凡ゆる戦闘技術を学ぶ事が出来たし、勉学も“一族”から色々な専門家を招いて家庭教師になって様々な事を学び、その多くで“一族”の中でもトップクラスの成績を収める事は出来た。
後は歳の離れた妹が生まれて良い兄であろうと決めて外面を取り繕う事も覚えた。少なくとも“心の穴”は変わらなかったが良い家族に囲まれて少しずつ前には進んでいた感覚があった……ある日、両親が死ぬまでは。
下手人は“一族”の過激派、才能がある自分達の手で世界を支配するべきだと考えた一派が起こした“一族”の穏健派の重要人物を狙ったテロに、その護衛としての仕事に就いていた両親は巻き込まれて狙われた上層部こそ逃したものの殺されてしまったのだ。
当然ながら俺はキレてその過激派をこの手で抹殺してやると意気込んだがそれ以上に妹が嘆き悲しんでいたので、妹が落ち着くまでは復讐よりもそっちの面倒を見る事にしたのだが……その間に過激派は俺とは一切関係ない場所で殲滅されてしまった。
どうも過激派の連中は在野の才能がある者達を無理矢理自分達の身内にしようとして、そこで“ジャンルが違う”化け物達の逆鱗を踏み抜いてしまい大打撃を受けてその隙に穏健派達によって速やかに殲滅されたのだ。
後に知る事だがこの世界には普通の人間が送る日常とは“違うジャンル”の存在がいて、あくまで最高の
ともあれ両親の死と、何よりそれに対して自分が何も出来なかった事に当時の俺は人生で2度目となるショック……挫折を経験して、同時に『才能があってもどうしようもない事、諦めるしかない事が世の中には幾らでもある』と学んだ。
それからの俺は自分の才能について過度な期待をする事を辞めた。同時期に叔父夫婦の元に妹共々引き取られ、彼等に従姉妹……俺にとってのもう1人の妹と呼べる子がいた事もあって余り叔父夫婦に迷惑を掛けない様に“心の穴”に蓋をして真っ当な生き方を選ぼうとした。
まあ妹達が一部俺を上回る“規格外”な才能を持ち、尚且つその才能を得た事で俺以上に苦悩しているのを見た事や、中学高校時代に“ジャンル違い”のトラブルに何度か巻き込まれて『俺じゃああっちの世界でやってくのは無理だな』と分かってしまった事も性格が丸くなった原因ではあるだろう。
そうして『十で神童、十五で才子、二十歳過ぎれば只の人』と言わんばかりにちょっと優秀な人物程度で収まった俺だが、未だに“心の穴”はそのままで自分でもなぜ欠けている何かがある気がするのか分からず高校卒業が近付いていき……その“心の穴”の正体に気が付いたのは大学受験の進路希望の時、俺には
要するに自分の才能にあれだけ拘っていた割に、その才能を伸ばす事はしてもその才能で何を成すのか……俗に言う“夢”や“野望”と言った才能を使う目的を持った事が俺は今まで一度もなかったのだ。
昔から感じていた“心の穴”とやらの真相も、幾ら才能を鍛えようがそれを使ってやりたい事が何も無い“空虚さ”だったというオチである。将来やりたい事が見つからないという今時の若者ならよくある悩みでしかなかったのだ。
俺の能力であれば大抵の仕事で成果を出せるだろうし“一族”の伝手があれば好きな
妹達の面倒を見る“やらなければならない事”や“一族”が勧める“やって欲しい事”ではなく、己の才能を活かせる……いや、そうでなくても“自分が心からやりたい事”を自分自身で見つけなかればならないのだ。
正直言って側から見れば贅沢な悩みなのだろうが、これまで自分の才能を高める為に色々やって来てどれもしっくり来なかったので“やりたい事”原作見つかるか我ながら少し不安になっている。
気付いてしまった以上は大学に入ってからも『やりたい事探し』は続けていくつもりだが、どうせなら自分がやりたいと思える“何か”が何処かから降って来ればとかいう下らない事を考えてしまうのだ。
◇◆◇
私には生まれつき人とは違う“才能”があった。未だに自分でもよく分かってはいないけど凄く“勘”が良いんだ。自分に降り掛かる危険が“何となく”分かるし、それを回避する方法も“何となく”分かってしまう。
それ以外はごく普通の子供でお兄ちゃんみたいに何でもできる才能はなかったけど、この“直感”についてはお兄ちゃんにも無い力だから小さい頃は内心で少し自慢になってたっけ……まあ、直ぐにこんな才能なんて要らなかったって思う様になったけど。
その原因はとある日、いつもの通りにSPとしての仕事に向かう両親に良いしれない不安を覚え、それにも関わらず『両親をそのまま行かせた方がいい』と何となく思ってしまったのだ。
まだ幼かった私はその感覚に気持ち悪くなって泣き喚いてしまったが、それを見たお母さんが私を抱きしめながら『この仕事を務めると決めたのは私達であって貴女が責任を感じる事はないわ。例え未来が見えたとしてもその未来を選び取るのはそこに生きる人間自身なのだから。未来が見えてもそこで起こる悲劇は貴女の責任じゃない。もしこれから辛い事があっても前を向いて貴女が望んだ未来に進み為に生きていきなさい』と言ってくれたお陰で泣き止んで両親を見送ってしまった。
後に聞いた話だがお母さんは由緒ある巫女の家系の生まれだったらしく私程ではないが“勘”は言い方で、お母さんの実家には定期的な未来が見える程の“直感”持ちが生まれる事があるらしく私の“勘”についても気づいていたのだろう。
そして翌日、両親の訃報を聞いた私は心の底から絶望して、あの時に死の未来へと向かう両親を見送るだけで手を伸ばせなかった事が私の一生の後悔となった。
だが、その絶望の理由は“勘”に示された通りに両親に危険が迫っている事を知らせる事が出来なかったのではなく、私の“直感”は『両親があの日に死ぬ事こそが私が生き残る最善手である事』を示しており、私はそれに従って両親を見殺しにしてしまったと気付いてしまったからだった。
そう、私の直感はそれが私にとって、或いは
それからは自分自身とその才能が嫌いになって塞ぎ込む毎日ではあり、正直言ってお兄ちゃんや私を引き取ってくれた叔父さん達が支えて励ましてくれなければそのまま死んでしまっていたかも知れない。
でも暫くすれば徐々にだけど私の精神は回復に向かっていった辺り人間の心は思ったよりも強いみたい。そして叔父さん達に子供が出来た事が転機となり、私にとっても妹と言えるその子のお姉ちゃんとして頑張ろうと思えてようやく立ち直れた。
そして同時に母さんの最後の言葉を思い出して自分の“直感”に向き合い、何となくの未来に振り回されるのではなく私にとっての最善の未来を掴もうと努力し始めたんだけど……正直中々上手くは行かなかった。
何せ私はまだ小学生、生まれ持つ“直感”を除けば出来る事に限りがあり、叔父さん達に頼んで武術や勉強も頑張ったけど何でも出来るお兄ちゃんと比べれば勘以外は才能がなかったので大した成果は出ず、未来に挑むにはこの手に宿す力は余りにもか弱いモノだったから。
出来た事と言えば“直感”を駆使しても小学校でイジメの問題を解決するするなど些細な事であり、お兄ちゃんが巻き込まれた事件についても電話で嫌な予感がすると曖昧に伝える程度で大した事は出来ず、何より従姉妹が巻き込まれた事件についても気付くのが遅れる体たらく。
そもそも“直感”に従う方が大概の場合で良い未来になるので、私がどれだけ事件を解決するしても“直感”のお陰であって自分自身の力で望む未来を掴めたとはとても思えなかったのだ。
お兄ちゃんは『直感とそれを良い方向に活かそうとする事含めてお前の力だろう』と言ってくれたけど、それでも私は自分が“直感”の奴隷になっているだけの様な気がして納得出来なかった。
どうせなら趣味のレトロゲームのキャラみたいに世界を救える様な自分に“直感”以外の力とか能力、望んだ未来を掴める“力”があればと望まずにはいられなかった。
◇◆◇
私には生まれつき人よりも優れている“才能”がありました。その才能とは“戦い”に関する才能、特に武術などの己の肉体を動かして敵と戦うことに関しては異常と言える才能がありました。
才がある人を多く排出する“一族”の中でも武術に秀でた才覚を持ちその私設軍隊にも勤めている父様よりも、古流武術の流派の一つ『樹廻流』を伝える家に生まれて自身もそれを修めている母様よりも私の才能は規格外だったそうです。
実際、父様から教わった“一族”が長い年月を掛けて様々な武術や武器術を混合させて総合戦闘術も、母様から教わった回転運動を特徴的する樹廻流も一度見れば大体の理合い含めて理解出来て多少の練習で大凡使える様になりましたし。
まあまだ幼い体なので武芸の実演に関しては問題のある部分もありましたし、樹廻流に関してはそもそも普通の人間が使う事を想定してない部分もあったので表向きの部分だけ身に付けたんですけど、それでも覚えた技を今の体でも使える様にアレンジして会得出来るので。
私の才能について父様と母様は褒めてくれましたし2人が喜んでくれた事は嬉しかったのですが、私自身は武術については
まあ別に戦う事や武術が嫌いな訳ではなく兄様や姉様と武術をする事自体は楽しかったのですが、どちらと言えば2人と普通に遊ぶ事の方が好きではあったので姉様と兄様って趣味のレトロゲームを一緒にした記憶の方が印象に残ってます。
最もまだ幼く身体が出来上がっていない以上は厳しい訓練などする必要はなく、父様も『技術は教えるが武芸者としての道を選ぶかはもっと大きくなってから自分の意思で選べばいい』と言ってくれたので私は普通の子供として小学校に通ったのですが。
それからは家で少し特殊な教育を受けていましたし、体育の授業は上手く手加減する必要方がありましたが概ね普通の子供と変わらない日々を送り、仲の良い友人が出来たりと充実した日々を送っていました……己の“宿痾”を自覚するまでは。
きっかけは友人と一緒に家まで帰る途中、脇道に逸れて近道をしようとした時でした。その道は警備ロボットも配置されていないので通学路にはなっていませんでしたが、早く家に帰りたかった私達は軽い気持ちでその道を通ってしまい……そこで異様な雰囲気をして手にナイフを持った不審者って遭遇してしまいました。
その男は奇声を上げながらこちらに襲い掛かってきたので私は咄嗟に友達を突き飛ばしながらナイフを躱し、更に取り出していたボールペンを男のナイフを持った手首に突き刺した。そうして取り落としたナイフで男の足を指して腱を断ち、倒れ込んだ男に対して手足にナイフを突き刺してこれ以上暴れられない様にしました。
私の“戦い”に対する才能は小学校低学年の身体でも大人を倒せてしまう程で、相手を殺さなかった事から理性で最低限のブレーキが掛かっていたのでしょうが、当時の私は初めての実戦で加減が分からず相手を確実に戦闘不能にするまでナイフを振るい続けました。
そして男が血の海に沈んで虫の息になった辺りで漸く我を取り戻した私は友人が無事かどうかを確認したのですが、そこで目にしたのは腰を抜かしながらも男ではなくナイフを持った私の方を怯えた目で見ていた友人、そしてその瞳の中に映っていた全身が返り血まみれな上で
そう、私は自分や友人を守る為に戦ったつもりでしたが実の所は他者を暴力でもって破壊するのが、自らの“戦い”の才能を存分に振るえる事がとてもとても愉しかったのです。これまで仲が良かった友人が途端にそんな“化け物”の様な姿を見せれば怯えるのは至極当然の事でした。
それからは姉様と兄様が駆け付けてくれて呼ばれた警察によって男は病院に運ばれて一命を取り留め、兄様曰く『2度とシャバには出られないように“しておいた”』そうですが、友人とは一年近く経った今でも疎遠になったままです。
この事件がキッカケになって私は自分が“普通”とは掛け離れた存在であると自覚しました。そして同時に“普通”になりたいと思う心と自ら“才能”を振るいたいと思う衝動の両方が私を苛む様になったのです。
母様や父様、兄様や姉様が支えてくれたお陰で少なくとも日常生活に支障が出る事はありませんでしたが、それでも私は心の何処かで自分が普通で居られる、或いは才能を自由に振るえる“場所”を求める様になったのです……そうすればこのモヤモヤも少しはマシになると信じて。
◯三兄妹
(@_@)<全方面に才能があるがハイエンドには一歩届かなかった兄
(@_@)<未来が見える直感があるが大切なものは救えなかった妹
(@_@)<戦闘方面には規格外な才能があるが内面は普通の善良な子供な末妹
(@_@)<そんな三兄妹(実の兄妹な兄・妹と従姉妹の末妹)
(@_@)<本編は上から兄、妹、末妹の独白
(@_@)<類まれな才能を持ちながらそれに振り回される天災児達(天才だけど災難が多いと言う意味で)
(@_@)<今回は内面の掘り下げを重視
◯“一族”
(@_@)<ハイエンド作りたいで集まった連中が千年以上頑張った
(@_@)<結果色んな才能持ちが生まれて世界で活躍して影響力を持つ様に
(@_@)<メタ的には三兄妹が才能を持っている理由の舞台装置なので本編には然程関わらない
(@_@)<一般家庭の生まれで異常な資質持ちな三姉弟が原作主人公達だって?
(@_@)<まあ原作がふつうに野良の天才がいっぱい居る世界でもあるからね