エルザ・ウィンドベルの場合
□王都アルテア・戦象職人ギルド 【
「コネコネ、コネコネ、粘土をコネコネ〜」
『コネコネ』
私はエルザ・ウインドベル、この<Infinite Dendrogram>をプレイしているごく普通の<マスター>の1人であり、今は戦象職人ギルドのゴーレム作成用の貸し出し工房で自分の<エンブリオ>である作業着を来た女性型ゴーレム【ワルキューレ】と一緒に粘土を捏ねている。
リアルではゲームとフィギュア集めが趣味のオタク系女子大生な私なので粘土を捏ねたのは小学生のとき以来だけど、このゲームの中なら【戦象職人】のジョブスキルと【ワルキューレ】の手伝いもあって中々様になる職人ムーブが出来てるかな。
「リアルだとフィギュアを買うのは許されてるけど自分で作るのは臭いとかでダメって言われるからなぁ。前から自作フィギュアとか作ってみたかったし、VRだけどこうして作れるのは良いかも。ワルキューレも手伝ってくれるし」
『エルザのそんな望みから生まれたのがこの私、スキルも人形作りの補助に特化。……そこはもう少し力を込めて捏ねる事を推奨。魔力とリソースが浸透しにくい』
「はーい」
まあ、戦象職人になって一カ月ぐらいだからベテラン職人とはとても言えないよね〜。私が上手くゴーレムを創れる理由の8割ぐらいは【ワルキューレ】がゴーレム生産に特化した<エンブリオ>だからだし。
私の<エンブリオ>【乙女戦象 ワルキューレ】は女性型の人型ゴーレムのTYPE:ガードナーであり、スキル《ヴァルハラ・ガイド》により生物殺害によって自分が獲得する経験値の半分、及び周囲で死んだ生物のリソースの一部を自身に収集・蓄積する。
そして蓄積したリソースを使ってゴーレムを作成するもう一つのスキル《エインヘリヤル・リビルド》により、単に自然魔力を込めるよりも強力なゴーレムを生産出来るのである。
「ゴーレムは自然魔力を込めて作られるけど、私達はそこに集めたリソースを追加で込める事でゴーレムの性能を上げられると」
『収集したリソースで必要自然魔力の代替を行い、同時に素材自体の性能や蓄積魔力量などの向上効果があるのが固有スキル《エインヘリヤル・リビルド》の効果』
「自然魔力を込めれば込める程にゴーレムの性能が上がるからね。私が【戦象職人】に就いたらワルキューレが1人で作るよりも性能が上がったし」
『私が可能なのはリソースを込めてゴーレムを作る事まで、自然魔力を込める工程や各種機能設置などはジョブのスキルの方が優れている。故に協力すれば更なる性能のゴーレムが作成可能』
私が【ワルキューレ】と相性が良いかなと【戦象職人】に就いたら、その後の第二形態への進化の時に《エインヘリヤル・リビルド》に“マスターのゴーレム作成を保助することにも使用可能”って効果が追加されたからね。
元ネタのワルキューレは北欧神話における戦場で死んだ戦士をヴァルハラに連れて不死の戦士エインヘリヤルにする女性の事だけど、そんなモチーフだから集めた死者のリソースで
「……よし、出来たね。デザインも鎧を着た戦士っぽく出来たし。……ただ、やっぱりプロが作った物と比べれば素人作品感があるよね。仕方ないけど」
『作品名【エインヘリヤル・クレイゴーレム】の性能はギルドに販売されていた通常の【クレイゴーレム】の倍以上。……デザインについては今後の研鑽が必要と判断』
そうして暫くの作業の後に出来上がったのは成人男性ぐらいのサイズで、鎧を着た戦士の様にも見える【エインヘリヤル・クレイゴーレム】だった。
元の【クレイゴーレム】は王都周辺のモンスター程度の性能しかない初心者【戦象職人】用のゴーレムであり、ギルドで買ったその【レシピ】通りにゴーレム作成用粘土で作っただけのゴーレムだけど【ワルキューレ】のスキルのお陰で性能は上がってデザインもちょっと弄れた。
「おっと、もう工房のレンタル時間が終わるね。ゴーレム素材も尽きたし今日の作業必要ここまでかな。……やっぱり本格的な生産をするとなるとお金も資材も足りない」
『ゴーレム制作用の【ミスリル粘土】を必要量購入する為の値段は現在の所持金の約三倍。暫くは粘土性ゴーレムと私を使っての資金稼ぎを推奨』
「そうだねー。デンドロは初心者生産職に厳しいよ」
そうぼやきつつ私は待機状態にした【エインヘリヤル・クレイゴーレム】をアイテムボックスにしまって工房を出て、ギルドの受付で工房のレンタル料を残金が心許ない財布からどうにか支払った。
デンドロ発売日からプレイしている私だけど内部時間で一カ月も経ってるのに初心者用ゴーレムの生産でやりくりしてるからなぁ。戦象職人ギルドも初心者支援を行なってるけど、この調子だとオリジナルゴーレムをとか創れる様になるのはいつになるのか。
◇
「……エルザ、このデンドロの生産系<マスター>に足りない物は何だと思う? ヒントは金」
「それが答えじゃない?」
ゴーレムを作り終えた私はリアルからの友人、及びデンドロ内で知り合った何人かの<マスター>と共に王都西部の<ウェズ海道>でモンスター狩りによる資金稼ぎを行っていた。
その理由は隣にいるリアフレである【
「デンドロの生産には兎に角金が掛かる。ギルドで日々の稼ぎを得るぐらいならどうにかなるが、本格的な生産活動をするには多くの素材と時間が必要だからな」
「後は技術とジョブレベルとスキルレベルと生産場所とティアンとのコネ……」
「生産に必要な物多すぎぃ」
「ネトゲの生産職は凝り出すと金が飛ぶからねぇ。デンドロ始めたばかりの私達じゃ準備もままならない」
私達の雑談に答えたのはメガネの男性【
次は大柄な男性【
その次は気怠げな表情の女性【
最後は小柄な少女に見える<マスター>【
「サブに戦闘系ジョブを取ってこうしてチマチマ狩りをしながら資金と素材を稼いでいるが、俺達はエルザやターニャの様に<エンブリオ>が戦闘も出来るタイプじゃないから狩り効率は悪い。商売で稼ぐのも今の<マスター>には難しいからな」
「ギルドの初心者生産職用雑用クエストはあるけど本当に雑用で報酬も僅かだしねぇ。作った物をギルドに降ろして稼いだお金も生産をやると直ぐに吹き飛ぶし」
「日銭を稼ぐぐらいは出来るが本格的な生産は今は難しい。ティアンなら何処かの工房とかに弟子入りしてる下積みをする事もある様だが、俺達<マスター>はいきなりこの世界に現れた根無し草」
「コネも信用もありませーんってね。各生産ギルドの指導サービスや支援には本当に助かってまーす。……いきなり現れた<マスター>を雇うかどうかってのはリスキーではあるよね。いつ消えるか分からない人間を社員にしたくないのは経営者として当然と言うか」
そんな4人だが総じて生産をやりたいのに環境的な問題で難しくて四苦八苦している<マスター>同士として知り合い、1人だとモンスター狩りも難しいのでパーティーを組んで協力しながらどうにか生産が出来ないかと試行錯誤しているらしい。
そんな時に2人でパーティーを組んで狩りをしていた私とターニャに出会い、私達も<エンブリオ>が多少戦闘を出来ると言っても特化型じゃないので苦戦していた事もあって一緒にパーティーを組んで協力する事になったのだ。
「私もエルザも亜竜級相手にしたらまず勝てない程度だしねぇ。ネットの掲示板とかで調べても戦闘系の攻略情報はかなり出てきたけど、<マスター>の効率的な生産方法とかはまだまだ手探りみたい」
「ジョブによるサポートがあるにしても生産って難しいからね。この前見た掲示板では<マスター>の万能ジョブ適正を活かして戦闘系と生産系ジョブを取り、外で狩りをしつつ空き時間に街中でジョブクエストをこなして効率的レベルアップとか言ってたけど」
「似た様に事は俺達がやっているが特に効率的とも感じないがな。リリース直後で初心者狩場が<マスター>で溢れていた時には有効だったかもしれんが」
「レベルが上がってスキルレベルとステータスが上がれば生産効率も少しはマシになるかと言った所だね。それと生産保助<エンブリオ>を組み合わせれば高品質のアイテムを作って商売が出来るかも」
「<エンブリオ>を活かしての生産がどうにか起動に乗ればいいんだけどねー」
「……シッ、探知スキルに反応技術あった。モンスターだ」
そんな雑談をしていると戦闘を歩いていたゲンジが【狩人】のスキルでモンスターを感知したのでそれぞれ武器を構える。私はワルキューレを前衛に出しつつ作った【エインヘリヤル・クレイゴーレム】をアイテムボックスから急いで出した。
アイテムボックスには《即時放出》って中のアイテムを瞬時に出す機能が付いた物もあるらしいけど、今の私では到底買えないので手作業でゴーレムを出して起動させる。
『『『BURUAAAAAA!!!』』』
「来たぞ! 敵は【ファングボア】、数は三体!」
「まずは弓で牽制! 俺も魔法の準備をする!」
現れたのは巨大な牙を持つ猪型のモンスター【ファングボア】、亜竜級には満たない程度のモンスターだが高いSTRとAGI、そして自慢の牙を合わせた突進攻撃が強力なモンスターだ。
そんな相手に対してエドワードの指示の元でゲンジ・マキア・ドワガールの3人が装備した弓を使って【ファングボア】に矢を浴びせ掛ける。【
『『『BURUAAAAAAaaaaaa!!!』』』
「聞いてないし更にキレて突っ込んで来た」
「ちょっとーこの弓性能低いんじゃない?」
「店売りの奴よりは性能高いんだけどー。まあ使い手の私らのレベルが低いから威力はお察しー」
「まあいい所詮は牽制、本命はこちらだ。《マッドクラップ》」
最も矢が突き刺さっても単純に威力不足で【ファングボア】を倒す事は出来なかったが、ダメージに怒って更に速度を上げて突っ込んで来た猪達にエドワードが地属性魔法を使用、戦闘にいた一体の猪の足元を泥に変える。
いきなり足を取られた【ファングボア】はそのまま泥の中に倒れ込んで動きを止め、後続の2体も慌てて進路を変えた事で動きが鈍った所で私がワルキューレと【クレイゴーレム】を前に出します。
「お願いねワルキューレ!」
『了解マスター』
『BUGOO!?』
速度を落とした【ファングボア】の一体に対してワルキューレは装備した鎧と槍を構えて突撃、その脳天に槍を突き込んで大ダメージを与えて相手が怯んだ所で追撃を仕掛けて圧倒していく。
第三形態まで進化した【ワルキューレ】のスキル《戦乙女の着甲》はマスターである私と同じ装備が出来ると言うもので、ゴーレムだから装備出来るアイテムが少ないワルキューレに人間用の装備を自由に付けて強化する事が出来る強化スキル。
進化により亜竜級程度の性能を得たワルキューレに装備の強化、更に【戦象職人】のゴーレム強化スキルを合わせれば下級モンスターならステータスだけでも圧倒出来る能力を得る事が出来るのです。
「お願いね【クロートー】、鉄性素材を使って《命糸縛り》!」
『KYU!』
『BOAA!?』
そしてもう一体の【ファングボア】はターニャに向かって突進するが、その隣にいる巨大な芋虫もとい蚕型のTYPE:ガードナー【命糸紡蚕 クロートー】の吐いた“鋼鉄の糸”に絡め取られて【拘束】状態になり地面に転がった。
ターニャの【クロートー】は素材を捕食し、それを糸に加工して吐き出す“紡績”に特化したガードナーであり、本職は【
まあ、蚕型だからなのかガードナーとしては物理ステータスが低いので直接戦闘には向いておらず、戦闘では今の様に敵を拘束するなどのサポートぐらいしか出来ないらしいので私の【クレイゴーレム】を壁役に配置しているけど。
「エドワードの所にも出しておきますか。
「助かる!」
最初に泥に囚われた【ファングボア】が拘束から抜けようとしていたので私はもう一体の【クレイゴーレム】を取り出して起動、エドワード達の壁になる様に配置。
直後に【ファングボア】は泥から抜け出してエドワードに突っ込みますが、普通の物よりも性能が高い私のゴーレムはその突進を受け止めて弾き返し、そこにエドワード達が魔法と矢を撃ち込んでダメージを与えます。
「うおー!《捕縛糸》!《斬糸》! ……ちょっと火力が足りてないんだけど!? こっちにも攻撃プリーズ!」
「すまんがこっちも猪が思ったよりタフで倒しきれない。もう少し待ってくれ」
「やっぱり生産職だけだと火力不足だよね」
糸で絡め取られた【ファングボア】にターニャは【糸士】の攻撃スキルを使ってダメージを与えていくが、糸攻撃自体が火力が高い系統じゃないので【クロートー】が作った攻撃力高めの糸でも【ファングボア】を倒しきれない。
エドワード達も【クレイゴーレム】が抑えている隙に4人がかりで火力を集中させてどうにか【ファングボア】を仕留めてるけど、戦闘特化の<マスター>と比べて戦闘系ジョブのレベルが低いからどうしても手間取ってしまう。
『マスター、こちらは終わった』
「じゃあターニャの手伝いをしに行こうか」
なので一番早く【ファングボア】を倒せたのは亜竜級のステータスを持つ私のワルキューレとなり、次にターニャと【クロートー】が糸で拘束している【ファングボア】を狙う様にワルキューレに指示。
糸で絡め取られて動けない相手を殴り倒すのでさして時間もかからず2体目の【ファングボア】も討伐され、その頃には集中攻撃を受けた最後の【ファングボア】も倒されて戦いは終わったのだった。
……初日に私を助けてくれた<マスター>みたいにカッコよく戦闘が出来ればいいんだけど、そもそも戦闘がそんなに得意じゃないから私達は生産職をやってる訳なんだよね。ままならないなぁ。
◇◇◇
□王都アルテア・賃貸工房
「おお! この工房中々いい感じじゃない?」
「ギルドの貸し出し個室とはやっぱり違いますね」
あれからエルザ達は気の合う生産系<マスター>同士でパーティーを組みながら地道に生産系クエストをこなしたり、王都周辺で狩りをしつつスタートダッシュイベントにも参加したりで資金稼ぎを行い、ある程度の資金を手に入れたので王都の端にある工房を賃貸で借りる事に成功するしていた。
王都にあるにしては小さな工房だが6人で使う分ならむしろ広いぐらいであり、中の設備も初心者用レンタル工房と比べれば優れているので、パーティーで資金を出し合い共用すればこのままレンタル工房を使い続けるより安いと考えて借りる事にしたのだ。
「これで月に3万リルは安いね。王都の端にあるから利便性は低いけど」
「ああ、何せここは以前とある錬金術組織が使っていたが、その組織がカルディナからの違法マジックアイテム密輸に関わっていて騎士団に逮捕。その後で錬金術師ギルドが引き取ったが評判のせいで買い手が付かず、取り壊しや建て直しにも経費が掛かるんで安い賃貸物件として売りに出していた場所らしいからな。お陰で施設のレベルに比べて安かった」
「うーん、見事な事故物件」
「まあ評判があるならティアンの工房からは敬遠されるか。評判もクソもない私達<マスター>なら悪い買い物じゃないけど」
まあその賃貸工房は大分事故物件ではあったが、それでも生産拠点として内部で行う生産への補正はレンタル工房を上回り、以前の所有していた違法組織が使っていたのか錬金術の保助や簡易式だがゴーレム生産の為の自然魔力収集部屋まで備わっていたので彼等とも相性がいい物件だった。
「まあとにかく“生産活動を保持する施設”を手に入れた事実こそが重要だからな。特にゲンジには」
「ああ、工房さえあれば俺の<エンブリオ>が漸く使えるからな」
「何それ、観葉植物?」
そう言ったゲンジは自らの紋章から“植木鉢に入った小さな木”を取り出して工房の隅に設置する。殺風景だった工房内に緑が増えたのはいいけど一体どういう<エンブリオ>なのかとターニャは疑問に思った。
「この木が俺のTYPE:キャッスルの<エンブリオ>【職人王国 ニザヴェッリル】だ。唯一の固有スキル《職人達の隠れ家》の効果は【ニザヴェッリル】を設置した建造物の生産保助効果を
「ファッ?」
「俺以外が拠点で強化された生産保助効果を受けるには事前に【ニザヴェッリル】に使用者登録をしておかなければならないとか、自分か登録者が所有している拠点でないと効果が落ちるなど幾つか制限もあるがな。レンタル工房では本来の性能を発揮出来なかったが、賃貸であれば問題ない様だ」
ニザヴェッリルとは北欧神話における九つの世界の一つであり様々なアイテムを生み出したドヴェルグ達が住まう世界、そんなモチーフらしく【ニザヴェッリル】は生産を行う“環境”を強化する効果になっている。
「それにしてもその強化倍率はちょっと設定間違ってない?」
「ゲームバランスは大丈夫なの?」
「でもスキル欄にはそう書かれているしな」
「まあ俺も初めて聞いた時はこれヤバいなと思ったが。なのでマキアやドワガールの<エンブリオ>と合わせて他人には余り知られない方が良いと口止めしてた。……これは提案なんだが、いずれ俺達で生産<マスター>によるクランを作らないか?」
唐突にエドワードがそんな事を言ってどう言う意味かを疑問に思うエルザとターニャだったが、エドワードは続けてそんな考えに至った理由を説明する。
「こんな事を言う理由に関してだがまずゲンジ達の<エンブリオ>の効果を知った時に『これは組み合わせれば凄い物が作れるんじゃないか』と思ったのがキッカケだったな。それぞれの<マスター>がユニークな<エンブリオ>を持ち寄って協力して生産を行うクランを作れればと。……後はデンドロの生産は<マスター>技術ソロでやるには難易度が高いから、<マスター>複数名で力を合わせて生産効率を上げる互助組織があった方がいいかなと」
「「「「「それはわかる」」」」」
未だに多くの<マスター>が手探りでデンドロをプレイしている状況で、特に試行錯誤が上手くいっていないのが彼等生産系<マスター>達であり、これまでで散々苦労した彼等ってしてはエドワードの言葉に頷ける部分があった。
「まあこの工房を借りるだけでも全員で金を出し合う必要がある訳だし」
「協力した方が生産に関しては効率がいいかもしれませんね」
「流石に今すぐクランを作る訳じゃなくて、このまま工房をパーティーで使ってみていけそうなら作りたい人で作るって感じだけどな。作るなら目標はこの騎士の国らしく“ファンタジー系の伝説の武器クラスのアイテムを作る”みたいなのになるか。……まずは一回今の俺達が協力してどのくらいの物が作れるか確かめてみたいが」
そんなエドワードの提案に他の者達も『面白そうだからやろうぜ』『毎日ギルドの雑用クエストは流石に飽きた』『うおー伝説の武器!』とやる気を見せたので、早速高いの<エンブリオ>の能力やジョブや手持ち素材を見せ合って何を作るのか話し合う小太郎になった。
まあ、工房を借りるのに資金を使ってしまったので碌な素材が残っていないと言う現実に直面したりもしたが、それでも彼等は生産が好きで生産職を志した<マスター>、それぞれの能力を上手く使ってデンドロを始めた初の協力オリジナル生産を楽しみながら計画していった。
「……よし、じゃあまずはエルザ用の高性能ゴーレムを作るって事でいいな」
「私用のでいいの? 強い武器を作って売ったりとかは……」
「オリジナル武器とか作っても売るのは伝手がまだない俺達には厳しい。自分達で使うのも当然無理だしな。そしてエルザは俺達の中で最大戦力、その戦力を向上させて安定した亜竜クラス討伐が出来れば資金不足解決の目処が立つかもしれん」
「亜竜級以上になるとドロップするアイテムが【宝櫃】に入る高品質な物になるらしいからね。私は見た事ないけど」
そうして方針を決めた彼等はまずゴーレム用の素材としてエルザが【ゴーレム用粘土】を、エドワードが【錬金術師】のスキルで作り溜めていた作っていた【ミスリル鉱石】を持ち出す。
だが、未だにカンストに届かない【戦象職人】でしかないエルザでは【ミスリルインゴット】でゴーレムを作るのは難しく、そこでエドワードは自らの<エンブリオ>の力でまず加工し易い素材を作り出す事にした。
「先程も言ったが俺の<エンブリオ>はこの手袋型のアームズ【幻創合金 オレイカルコス】、能力は“合金作成”であり金属同士を合成して合金を作り出せる。そして第三形態になってからは金属と鉱物を混ぜる事も出来る様になった。……つまりミスリルと粘土を混ぜて加工しやすいミスリル素材にする事も出来る。《アロイ・クリエイター》!」
オレイカルコスとは幻の大陸アトランティスに存在するとされる伝説の合金、それをモチーフとするエドワードの魔法陣が描かれる両手の手袋は金属・鉱物を合成して未知の金属を創り出す。
そうして彼が【ミスリルインゴット】と【ゴーレム用粘土】に触れてスキルを使うと、その2種類の素材がリソースに分解され混ぜ合わされて一つの物体が生み出される。
「……よし【ミスリル粘土】が出来たな。素材の質や俺自身のステータスで合成素材の質と量は変動するが、ゲンジの【ニザヴェッリル】の補正を受けた工房のお陰か思ったよりも質がいい」
「この量なら人間大のゴーレム一体は作れそうですね。ただ【ミスリル粘土】を使うレシピは持ってないんですけど」
「そこは私の出番になるかね」
続いてそう言ったのはドワガールであり、彼女は自らの紋章から据え置き型のパソコンかコピー機にも見える機材を取り出した。
「これが私の<エンブリオ>【設計奇構 ヴィシュヴァカルマン】、固有スキル《巧程改竄》の効果は既存の【レシピ】の改造。セットした【レシピ】の生産物の設定を書き換えて入力すれば、それに必要な生産過程や素材を記す形で内容が書き換わった【レシピ】を作成出来るのさ」
「つまりオリジナルアイテムの【レシピ】だって自由に作れるって事?」
「ところがどっこいそう便利なモノでもなくてね。作られる生産物の設定が余りにも荒唐無稽であれば【レシピ】の作成自体が失敗するし、処理落ちでもするのか【ヴィシュヴァカルマン】自体が暫くフリーズするオマケ付き。だから超強い設定の武器【レシピ】なんて無茶は出来ないさ。……だが、ある程度現実的な目標を設定して、更に生産過程や必要な素材の情報を追加入力して改竄する場合は成功率が上がったりもする」
まだ<エンブリオ>の使用回数自体が少なくて検証は済んでないけどと言いつつ、ドワガールはセットした【クレイゴーレムのレシピ】の完成形を【ミスリルクレイゴーレム】に変更、必要素材に【ミスリル粘土】及び生産工程に<エンブリオ>である【ワルキューレ】のスキル情報を入力する。
本来オリジナルの【レシピ】を作成するには【レシピ】無しでアイテムの生産を成功させた上で製法を確立する必要があるが、インド神話で凡ゆるモノを設計した職人の神の名を関する【ヴィシュヴァカルマン】は実際に生産を行なわずともマスターが望んだ物を作れる道筋を入力された情報から演算して導き出す。
「……よし、出来た。【ミスリルクレイゴーレムのレシピ】お待ち。エルザの要望通りに攻撃力重視設定で片腕がミスリル製ブレードになるデザインにしておいた。このぐらいのゴーレムの【レシピ】なら普通に売ってそうではあるけど」
「でも製法に私の<エンブリオ>のスキルまで詳細に書かれてるのは流石に売ってないと思いますけど」
「他人の<エンブリオ>のスキル情報まで入力するのは初めてだったけど上手くいってよかった。……じゃあ最後はマキアの出番だねぇ」
「あーはいはい。いつもの奴ね」
そうして出来上がった【レシピ】をドワガールはマキアに渡し、それを受け取った彼女は自らの紋章から一振りの小槌を呼び出してまるで判子でも押すかの様に【レシピ】へ振り下ろした。
「はい出来上がり〜。どうぞ〜」
「えっと、マキアさんこれは?」
「ああ、私の<エンブリオ>【巧印証 ゴブニュ】は【レシピ】にスタンプするとその【レシピ】を使った生産行動にバフ補正が掛かるんだよ。維持時間は数時間って所で一回【レシピ】を使ったら効果は切れるけどね」
「それって【レシピ】を他人が使っても効果が適用されるんですか?」
「うん、ドワガールとエドワードとゲンジが使っても効果が発揮されたからいけるんじゃない?」
ケルト神話の魔法の槌を三振りするだけで武器を作る工芸神をモチーフとする小槌型のTYPE:アームズ【巧印章 ゴブニュ】、その固有スキル《魔法の小槌》は判子の様になっている小槌の頭部を【レシピ】に押印する事で生産スキルの効果上昇バフ効果を【レシピ】使用者に齎す。
スキル条件に【レシピ】が必要なので既に製法が確立された生産物作成時にしか使えないが、オリジナル【レシピ】を作り上げる【ヴィシュヴァカルマン】と組み合わせればオリジナルアイテム作成を補助する事も可能になる。
「……エドワード、あんたがクラン作ろうとしてるのはあの3人の<エンブリオ>が他人の生産も支援出来るからだったりする?」
「あの3人の<エンブリオ>の能力を知った事がクランを作ろうと思い立った理由であるのは否定しない。生産素材を作る俺やお前も含めて“他者に直接恩恵を与えられる生産系<エンブリオ>”持ちだからクランを作ればメリットも大きいと踏んだ。……後はここにいるメンバーが比較的話が分かる程度には気が合いそうだったから、クランを組んでも大丈夫だと思ったのもあるが」
「まあクラン作った方が色々と安心出来る所もあるかもね」
色々と納得したターニャの前では早速エルザがバフ付き【レシピ】を使って【ミスリル粘土】を加工しようとしている所であり、【ワルキューレ】の補助と【ニザヴェッリル】の強化を受けた工房の生産補助効果も合わせてこれまでより遥かにスムーズに作業が進んでいった。
少なくとも素材の質も生産難易度もずっと高い筈なのにレンタル工房での【クレイゴーレム】作成よりも楽に進んでいる程であり、エルザ自身も複数<マスター>同士の協力による生産がここまで効果を発揮する事に驚いていた。
「……ふぅ、出来ました。【エインヘリヤル・ミスリルクレイゴーレム】です! 長いので【ミスリルクレイゴーレム】で良いですね。生産補助重ね掛けのお陰かかなり高品質な性能なので、これなら亜竜クラスとも戦えそうです」
「おお、パーティーの主戦力のエルザがそう言うなら期待出来るね」
そうして出来上がったのはミスリルの光沢を持ち右手がブレード状になった騎士の如きゴーレム、そのスペックは下級職一つ目の【戦象職人】が作った物とは思えない程の性能であり、複数の<マスター>が協力する合作アイテムの可能性を感じさせる物であった。
「ふむ、高い金を払って工房を借りた甲斐はありそうだなエドワード」
「クランの結成はいつするの?」
「すっかり乗り気だなターニャにゲンジ。暫くはパーティーのままで資金稼ぎとレベル上げ、生産職としてのスキルアップだ。このデンドロで生産クランを立ち上げてどんな方針で運営するか、どうやって商売生産をやっていくかも調べないとな。クラン名やオーナーも決めないと」
「クラン名はともかくオーナーはエドワードでいいんじゃ? 言い出しっぺだし」
「俺としてはゲンジかドワガールかマキアにオーナーをやって欲しいんだがな。<エンブリオ>のクランにおける有用性的に」
「「「クラン率いるとか面倒だからヤダ」」」
こうして今は賃貸の工房で騒ぐ生産の道を志す<マスター>達、後に王国有数の生産系クラス<プロデュース・ビルド>を立ち上げる初期メンバーとなる彼女達の<Infinite Dendrogram>はまだまだ続いていくのであった。
◯エルザ・ウインドベル
(@_@)<初日に試しにデンドロを買った一般<マスター>で自分で戦闘するのが苦手だったから<エンブリオ>に合わせた生産職を選んだ
(@_@)<【ワルキューレ】の周辺死者リソース収集は生物死亡時に自然界に流れる一部を吸収するので獲得経験値やドロップアイテムに影響はない
(@_@)<コストとして重い経験値リソースを使っているのでゴーレムの性能は同じ条件でレジェンダリアの自然魔力環境で作った物にも匹敵する
(@_@)<《戦乙女の着甲》は合計レベルなどエルザが装備条件を満たしているアイテムが装備可能になるスキルで装備枠も人間範疇生物と同じになる
◯ターニャ・メリアム
(@_@)<エルザにデンドロに誘われたリアフレで趣味はゲームと裁縫
(@_@)<【クロートー】は素材を捕食して生産用や戦闘用などの糸に変えて吐き出す能力を持ちコスト前提なので系の質は高い
(@_@)<但し素材の質次第で捕食に時間が掛かりストックしておける素材の種類数にも制限があるので戦闘だと事前の準備が必要
(@_@)<他にも自らが作った糸をマスターが使う場合にスキル効果を強化する補正を掛けるスキルもある
◯エドワード
(@_@)<錬金術師志望な生産パーティーの纏め役なリアル大学生
(@_@)<【オレイカルコス】は金属と金属、金属と鉱物の合成は可能だが合成素材には金属を必ず含まなければならない縛り
(@_@)<他にも同種の金属同士を合成して質量の低下と引き換えに品質を向上させるスキルもあり金属素材納品クエストに活躍している
◯ゲンジ
(@_@)<鍛治師志望でエドワードとはリア友なリアル大学生その二
(@_@)<【ニザヴェッリル】は某シルキーと比べる建造物の生産補助能力のみ向上させるので戦闘効果や建物の強度は変わらない
(@_@)<効果があるのは通常の建造物のみで<エンブリオ>や特典武具などには効果がない縛りもある
(@_@)<その分設置すれば即効果を発揮して効果倍率も高い設置型オブジェクトの<エンブリオ>
◯マキア・マジカ
(@_@)<面倒くさがり屋だがそれはブラック企業を辞めて暇になったからまったりゲームしたいと言う考えから
(@_@)<普段は【ゴブニュ】のバフにより【レシピ】がある楽な生産系ジョブクエストを選んでこなしている
(@_@)<その為に下級職は幾つかの生産職を既に取って使い分けている
◯ドワガール
(@_@)<ファンタジー世界で伝説の武器が作りたいと思っている系リアル小学生
(@_@)<騎士物語とかゲーム好きでレジェンダリアは少しファンタジー過ぎると思ってアルター王国を選んだ
(@_@)<【ヴィシュヴァカルマン】は凡ゆるレシピを作り得るがマスターの知識を基準に演算するので素材や工程の知識量が少ないと高度な設計は出来ない