□2043年7月16日 加藤蓮
「……それで、この<Infinite Dendrogram>に“一族”は関わってるのか幹也」
『答えはノウ! ウチの会社で研究してるVRもあそこまでのリアリティにはならんよ。まあ本当にVRかどうかはかなり怪しいけど。……少なくとも“一族”はデンドロに関わってないし、“一族”としてデンドロに関わる気もないってのが本家の総意だそうだ』
<Infinite Dendrogram>に初めてログインした次の日、俺は同じ“一族”の中で比較的信用出来て伝手があり立場も高い男……日本最大クラスの複合企業グループ<九条グループ>の御曹司であり、その傘下企業オモイカネ・インテリジェンスの現社長を勤める九条幹也に電話を掛けていた。
この<Infinite Dendrogram>に世界規模で様々な分野で優力な人物を輩出している“一族”が関わっているかを確認する目的だったが、
『“一族”の中でも政治に関わってる連中、と言うか世界各国の政府も<Infinite Dendrogram>には関わらない方針みたいだしな。なので長老たちも一族全体ってしては不干渉案件ってことになってるんだとさ』
「つまりデンドロは“ジャンルが違う”案件って事か、分かってたけど。各国政府もって事は管理AI技術などの先進技術や
『デンドロの運営側が何かしら各国と取引した可能性は高いかねぇ。長老様や政治畑の“一族“ならもう少し何か知ってるだろうが、そもそも俺らは“そっちの分野”には大っぴらに手を出さない方針だから』
とりあえず<Infinite Dendrogram>に“一族”は無関係・不干渉と分かっただけ良しとするか。今は穏健派主流だけど割と“一族”は世界の裏に潜む悪の組織的な所もあるから確認はしとかんと面倒な事になるかもしれんし。
まあ“一族”の日本代表である九条家所属のコイツが言うならそういう動きはしないのだろう。まだ隠している事ぐらいはあるだろうがな。
「それで“一族”ではなく個人として<Infinite Dendrogram>をプレイする分には問題ないのか?」
『それなら好きにすれば良いと長老達も言ってた。俺も昨日からレジェンダリア生活初めてみたし。特に3倍時間が良いよね、俺って現実では忙しいから遊ぶ時間が3倍になるのは超ありがたい』
「自分が遊ぶ時間が欲しくてVRによる体感時間加速技術を研究させてたからなお前。上手くは行かなかったが」
『ああ研究で思い出したけどデンドロの運営には関わらんがゲーム内から何かしらの情報を得る計画がウチのチームで発案されてる。他の“一族”にもそういう目的で個人的にデンドロ始める連中もいるだろうな。ウチらに限った話じゃないだろうけど』
<Infinite Dendrogram>は本物のVRMMO、或いはそうでないとしてもオーバーテクノロジーである事には変わりないから、そこから何らかの利益を得ようとする者達は当然出て来るだろうな。
そも九条グループも“ジャンルが違う”技術を彼方側のやべー奴らに関わらないギリギリを見極めつつ手に入れて、参加企業の研究に回して業績を上げてるらしいしな。
『まあ俺はそういった事はせずに普通に遊ぶだけだけどな! ゲームの中でまで仕事なんてしてられん。……それにデンドロ内部なら思う存分ロリショタをクンカクンカしながら見守って愛でまくっても大丈夫だからな! リアルだと対外イメージを考えて猫被んなきゃいけねーしなぁ!』
「良い加減にしろこのロリショタコン」
『お前だってシスコンじゃん。それよりも美希ちゃん祐美ちゃんと一緒にレジェンダリアに遊びに来ない? 特にマイスイートフィアンセの祐美ちゃんとデンドロ一緒に遊びたいなー!』
「少なくとも妹達をレジェンダリアに近付けない事はたった今決定された」
尚、一般的には天才若社長と看做されていて実際に“一族”の中では商業や情報処理に関して最高位の才覚を有する幹也だが、その性癖は小学生以下の少年少女が大好物なHENTAIである。
しかも俺と同年代なのに小学生の祐美ちゃんとの婚約話まで出て来てるからな。“一族”は才能のある人間同士を掛け合わせてより優秀な人間を生み出すのが目的の集まりだから、こういう話が結構あるんだが……妹達に近付いたら全身の関節を逆方向に曲げるか。
『なんか今物凄くグロテスクな事考えなかった!? フィアンセって言ったけど実家の方で持ち上がった婚約話は祐美ちゃんが幼いから保留って形で誤魔化したし、そもそも俺の主義はイエス!ロリショタ!ノータッチ! 子供は愛でて見守り導くもので決して手を出してはいけないんだよ!』
「こんなのが天才経営者で私財で孤児院経営してる篤志家って周りからは思われてるんだよなぁ」
『全部事実だから間違ってはいないだろう? 孤児院の子供達の前では夢を壊さない様にちゃんと他所行き用の態度にしてるしな。子供達のスメル溢れる空気をクンカクンカしてちょっとトイレしてるだけだ!』
「マジで気持ち悪いなこのロリショタコン」
こんなのだが俺が伝手のある“一族”の中では信用出来る方なんだよなぁ(遠い目)
性癖はアレだが真っ当な倫理観はあるから外道な事はせず、孤児院経営とかも一切の裏はなくむしろ腐敗した孤児院経営とかを強制的に是正するとかしてるし。
『別に普段の外面は取り繕ってるんだからいいだろ。それにデンドロの中でなら性癖フルオープンでも問題はないからな! 蓮もデンドロ内部ではシスコン全開で……ああそれじゃあリアルと変わらないな!』
「ブチ殺すぞ。デンドロでも<監獄>に送られれば良いのに」
『そこは良い感じに上手くやるさ。……後、今後デンドロ内でもリアルでも世間が結構動くと思うから何かあったら言ってくれ。君達のご両親には返しきれない程の恩義があるからな』
「親父とお袋の事は自分達の仕事を全うしただけだからそこまで気にするな」
俺の両親が死ぬきっかけになった“一族”過激派の重要人物を狙ったテロで狙われたのが幹也で、それを両親が命と引き換えに阻止した事があって以来、幹也含めた九条家の人は俺達兄妹に色々と便宜を図ってくれる様になった。
確か幹也の兄であり九条家時期当主が“謎の神隠し”で地球上から消えたから、慌てて幹也を時期当主にして色々調整してた矢先のテロだったから両親には返しきれない程の貸しがあると言っていたな。
まあ偶にお見合いの勧め所してくる事があったりコイツのHENTAIトークに付き合わされる事もあるが、色々と助けられた事の方が多いから信用は出来る。
『蓮ってリアルでも色々と変な事件に巻き込まれるタイプだしな。美希ちゃんの“未来視”もあるからデンドロでも変な事に巻き込まれそう』
「巻き込まれても騒動の本質には蚊帳の外だったりするがな。そも未来が見えるのはお前も同じだろう。例の“水晶”から作った最新型AIと組み合わせれば……」
『俺のは単なる情報処理とコンピューター演算からの予測だから、本物の未来視が出来るオカルト系と比べれば大した事はないって。……将来的に必要になりそうな気がするからマイスイートフィアンセに会いに王国に行くか』
「来たらキルするぞテメー」
聞きたい事は聞けたしこれ以上幹也のの戯言を聞く気もないのでさっさと電話を切った。アイツの事だからレジェンダリアではロリショタHENTAIとしてのプレイを満喫するだろうなぁ。
「あ、お兄ちゃん。デンドロのニュースがテレビでやってるよ」
「開発責任者のルイス・キャロルと言う人が出てます」
「へぇ」
居間に降りて来た俺に妹達がそんな事を言いながらテレビ画面を指差すので見てみると、そこにはルイス・キャロルと言うらしい<Infinite Dendrogram>の開発責任者が発表のプレゼンターをしている映像が映し出されていた。
『既にプレイを始められた方はお気づきと思われますが、<Infinite Dendrogram>にはある特徴があります。それは真の意味で無限の可能性とオンリーワンを提供するというものです』
『数千を超えるジョブの組み合わせ、スキル構成、そしてそれらよりもなお明確なオンリーワン。<Infinite Dendrogram>では、プレイヤーの皆様それぞれに<エンブリオ>がプレゼントされます』
『<エンブリオ>は皆様の行動パターンや得られた経験値、バイオリズム、人格に応じ、無限のパターンに進化いたします。色違いでもパーツ違いでもなく、固有スキルも含めて真の意味で無限のパターンに』
『それこそが<Infinite Dendrogram>です。……そう、<Infinite Dendrogram>は新世界とあなただけの
……そんな発表内容を俺達は一言も喋らずに真剣な表情で聞いていた。或いは俺達にとっても“自分だけの可能性”と言う言葉に惹かれるモノがあったのかもしれない。
「とりあえずゲームシステムのほうも初日に説明して欲しかったなー」
「ジョブ無しでモンスターに襲われて死亡する事故も減らせたかもしれませんし」
「まあな。……それで2人は<Infinite Dendrogram>を今後も続けるのか?」
「どういう事? せっかく良い感じにスタートダッシュを切れたのに」
どうもこうも<Infinite Dendrogram>は単なるオーバーテクノロジーゲームじゃない可能性が大きいからな。あのダッチェスと言う管理AIの言葉やこうして普通に販売されている辺り、リアル側の俺達に直接危害が加えられないと言うのは事実であるのだろうが。
「そうであってもデンドロの中で厄介事が起きるかもしれんしな。ゲームのイベントとして割り切れるならそれでも良いかもしれんが、精神的なショックを受けるかもしれない」
「それはリアルでも変わらないでしょ。……あの
「そうですね、私も少しあの世界が“怖い”とは思いました。デンドロのティアンがただのAIだとは私の“才能”が感じさせてくれませんし、そんな世界で戦い続けて私自身がどうなるかぐらい不安ではあります。……ですが同時に自分の“才能”を存分に使えるあの世界に惹かれるモノもあるのです」
俺を含めたこの3人が<Infinite Dendrogram>に求めるのは大まかには“自分の心に抱えたモノに踏ん切りを付ける為のきっかけ”だからな。あの
まあ、デンドロでの経験がその人の心にプラスになるかマイナスになるかは分からんが、どちらにしても現実の命を危険に晒さず“経験を積める”とも言えるだろう。
「そうだな、俺自身自分の才能を存分に使えるあの世界には惹かれる所はある。……ただ、特に祐美ちゃんには言っておくが“才能”そのものには良いも悪いもない、その持ち得た力で何を成したかで他者からの評価が変わるだけだ。才があっても何も成せなかったなら他人からは評価されんしな」
「では、私は自分の才能をどう振るえば良いのですか?」
「君の才能は君が“なりたいと思う自分”と“辿り着きたい未来”の為に振るえば良い。或いは自分に必要ないと思うなら才能を振るわなくてもいい。……まあ自分に出来る事を存分にやって、ついでにそれで他人からチヤホヤされたいと思うのも人間として自然な事だ。俺だって常々そう思っているぞ」
俺の<エンブリオ>とかモロにそういう願望が出てるもんな。自分の才能を他人に良い感じに評価された上で、その能力を気持ちよく使ってヒャッハーしたいからデンドロ続けようと思ってるのもまた俺なのは事実だし。
「では思うままに力を振るって他者から排斥されたならどうすればいいのですか?」
「それに関しては力を振るった結果として受け止めるしかないな。望む様に力を振るうと言ってもその結果が他者からどう評価されるかは別の話だ。良かれと思ってやった事が他人から思った様に評価されないのはよくある事でもあるし。俺も小学校の頃に才能パワーで色々やっちまったが、一応良い事をしたつもりだったがクラスメイトには引かれたからな」
「理不尽な理由で排斥されるなら反論するべきだと思うけど。そりゃあ他所に被害を出したら反省したり償う必要があるかもしれないけどさ。私も昔小学校のイジメを止めたら色んな所からヘイト買ったけど知った事かで押し通した。やった事が良い事だったなら自信を持つべきだよ、例え思った様な結果にならなくても祐美ちゃんが友達を助けた事だって誰にも否定出来ない事実なんだから」
祐美ちゃんの場所は助ける為に力を振るったんlに友人に怖がられた事がトラウマになってる上で、持ち得た規格外の才能を使いたい衝動に振り回されると言う過大な才能に心が付いていけてない部分もあるからな。
だから時間を掛けれて精神的に清澄すれば解決出来る問題ではあるし、デンドロで経験を積む事がその一助になるかもしれない……と、デンドロが只のゲームならそれでも良かったが、そうじゃなさそうだからつい確認してしまった訳だが。
「ところでお兄ちゃん、悩める私に何かアドバイスとかは?」
「美希はある程度自分のやりたい事を定めてるから俺から言う事はないな」
「えー? ……まあそこまで重く考えなくても良いんじゃない? デンドロで現実に出来ない事をやってキチゲ発散! ぐらいに考えてプレイするぐらいで良いと思うよ。あの世界なら派手に暴れてもモンスターを倒すとかならそこまで何か言われないだろうし」
「まあゲームを目的の為の苦行と思ってプレイするのは不毛だからな。どうせやるなら出来るだけ楽しむべきだろうさ。暫くやってみてダメなら辞めればいいし。あの世界での<マスター>はログインするのも引退するするのも“自由”らしいからな」
「……分かりました、私もデンドロを楽しんでみようと思いますのです。戦うのもそうでない事の」
……とは言えちょっとシリアスに言い過ぎたかな。これまで俺が経験して来た“ジャンルが違う”事件は色々と大変で、命の危機もあったから大分神経質になっていると自覚はしてる。
「よし、シリアスな話はおしまい! これ以上考えても今は答えが出ない問題だから置いておこう! これからはデンドロ初日勢としてのアドを活かしてスタートダッシュだよ! 多分あの世界力があるに越した事はなさそうだし」
「今後も<マスター>は増え続けるだろうからな。ネットでも<Infinite Dendrogram>がトレンドになってるし」
「もうすぐ夏休みですからね。学生とか増えそうです」
まあ、デンドロだろうが現実だろうが妹達が失敗したならそれをフォローするのも兄の役目だろうよ。最もデンドロの“レント”は下手すると2人よりもまだ弱いからまずはレベリングだが。
◇◇◇
□王都アルテア 【
夢のゲーム<Infinite Dendrogram>が発売されてから数日が経った。多くの人が待ち望んだ本物のVRMMOが遂に発売されたて知った世間は大騒ぎであり、ネットでは連日デンドロがトレンド入りで世界各国のゲームショプでもデンドロが売り切れると言った具合だ。
実際にこの数日、デンドロ内部では一週間程経ったのだが文字通り数多の<マスター>がこの世界に現れて、アルター王国の初期地点であるこの王都でも左手に卵や紋章を付けた人達を数多く見かける様になった。
「つまり世はまさに大デンドロ時代!……さて、初心者<マスター>が大量にログインした場合、初期地点である王都周辺ではどんな事が起こるでしょーか?」
「王都周辺の初心者狩場に居るモンスターの多くが狩り尽くされたな。デンドロのモンスターはシステム的にポップする訳じゃなくてちゃんとした生態系があるからな」
「初心者プレイヤーが真っ先にやるのは適正狩場でのモンスター狩りですからねぇ。デンドロが発売されて世界中で多くの人が購入しましたから、初期国家は七カ国あるとはいえ一国につき何百人以上も人が一気に増えて一斉にモンスター狩りをすればそうなりますよ」
「モンスターの取り合いで言い争ってる<マスター>も居たねぇ。その間にモンスターにやられてデスペナしてたけど」
王都の喫茶店で一緒に寛いでいるミュウちゃんやミメーシスちゃんの言う通り、今の王都周辺はモンスターを探す<マスター>が多数彷徨いていて、モンスターを見つけ次第<マスター>が群がると言う光景がよく見られる有り様になってる。
私達はそれを嫌って初心者狩場よりも遠くにあるモンスターのレベルが高く始めたばかりの<マスター>が少ない狩場で活動していたが、同じ考えの<マスター>も来始めてるし、逆に強くなったモンスターにデスペナに追い込まれてたなんて事もあったね。
「このモンスターは俺んだとフィールドで言い合う<マスター>とか、初心者狩場の奥に行ってデスペナして運営にもっとモンスターをポップさせろとかの書き込みが多い掲示板とか実にカオスな事になってるね」
「王国には<墓標迷宮>と言う神造ダンジョンがあるみたいだがな。そこならモンスターが自動で沸くらしいが、入るには王国所属かつ【
「ゲーム的にダンジョンにはいつか行ってみたいですけどね。……レベルを上げる手段としては街中でジョブクエストを受けるというのもありますけど」
ジョブクエストは冒険者ギルドでのクエストとは違い特定のジョブの専門ギルドとかで受けられて、クリアすると対応ジョブに経験値が入るってヤツだね。生産系のジョブクエストなど王都内で受けられる代物ならそっちでもレベリングは出来るけど。
「私の【
「良いんじゃないか? 俺も【
「僕はミュウについて行くよ。戦闘以外だと出来る事はあんまりないけど」
「今日は別行動かー。私は<マリィの雑貨屋>でアイテム補充してから戦士ギルドに行ってくるかな」
2人とも王都内で受けられるクエストがあって良いよね。戦士ギルドもあるみたいだけど基本的に討伐や護衛みたいな戦闘系クエストしかないって話だけど一応見に行ってみようか。
私達はそれぞれお兄ちゃんは自分のやりたい事探しでミュウちゃんは自分の“戦いの才能”をどう扱うか決める為だけど、私は“直感”で示された悲劇を覆す力が欲しいって考えでデンドロやってるからどうしてもジョブが戦闘特化になるんだよね。
◇◆◇
□◾️<ノズ森林>
「……戦士ギルドにも討伐クエストがあって良かったよ。冒険者ギルドの初心者用クエストは他の<マスター>達によってほぼ持っていかれてたから、マリィさんのお店で幾つか使えそうなアイテムを買っっちゃったからお金稼がないとねー」
兄達と別れたミカは<マリィの雑貨屋>に寄って良さげな消費アイテムを買った後で戦士ギルドに行ってギルドに登録、それから初心者戦士用の討伐クエストを紹介されたので<ノズ森林>のモンスターを討伐するクエストを受けて<ノズ森林>までやって来ていた。
ただ<マスター>達に狩られたのかモンスターの数は減っており、初日に様に歩けば【ティール・ウルフ】が出て来るみたいにはならず、散発的にモンスターが出て来るのでそれを一蹴しながら歩みを進めていた。
「大分静かになったというか<マスター>達が狩ったお陰で一週間程度でめっちゃモンスター減ったね。あくまで一時的で<マスター>の行動範囲が広まれば王都の周辺へ元に戻るだろうってお兄ちゃんは言ってたけど……ん?」
静かになった森をぶらぶら歩いていたらミカだったがふと“嫌な感じ”がしたので足を止めた。それが生まれた時から付き合っている“直感”からの警鐘であり、自身に迫る危険ではなく周りに襲い来る危険を告げるモノであると感じて眉を顰めた。
……彼女が生まれつき持っている“直感”は自分に迫る危険を感知するパターンと周りで起きる危険を感知するパターンがあり、後者の場合はその危険による
「自分に対する危険を感じ取る事はデンドロでも出来るけど、他に起きる悲劇も感じ取れるんだね。……うん、リアルと違ってこっちでは無力じゃないから悲劇を覆しに行こうか」
そして感じ取ってしまった悲劇を覆す事が彼女がデンドロを行う理由の一つであり、早速その機会が来たと意気込みながら嫌な感じがする森の奥に進んで行った彼女が見たものは……。
「……フォルテスラさん。あの、助けてくれてありがとうございます!」
「こっちこそ薬をありがとう。……あー」
「す、すみません! わたしはエーリカです。【
「そうか。ありがとう、エーリカ。俺はフォー、じゃなくて……フォルテスラだ」
なんか凄く良い雰囲気になっている男女の姿であった。それを見てミカは『ヤッベこれじゃデバガメじゃん』と思いつつも2人の邪魔にならない様にこっそり《看破》を使用、2人の名前と左手の紋章から男性がジョブにも就いてない<マスター>で女性が生産職のティアンだと把握した。
尚、流石に隠れもせずに接近したので2人──初心者<マスター>のフォルテスラとティアンの薬師であるエーリカには気付かれた上、両手に鉈とメイスを持った蛮族スタイルだったので凄くビビられたが。
「あ、お構いなく。通りすがりの<マスター>ですので、私の事は気にせずイチャコラしてて下さい」
「イ、イチャコラはしていないが! 彼女とは今日初めて会ったばかりであるし……」
「そ、そうです!」
そんなミカの言葉に対して顔を少し赤くしながら反論するフォルテスラとエーリカだったが、そんな2人をミカは半ば無視しながら厳しい表情で森の奥を見つめていた。
「このままイチャいてて良いですよって言いたいけど、出来れば2人共今すぐに王都に逃げた方がいいよ。この世界はジョブに付かないと基本戦えないずレベルも上がらないし、NPC……ティアンは死んだらそれまでだから」
「君は一体……なんだ?」
その言葉がプレイヤーである自分に言われたであろう事は察したフォルテスラだったが、無表情で剣呑な雰囲気のまま森の奥を見つめるミカが何を考えているかまでは流石に分からず思わず同じ方向を見てしまう。
すると森の奥から何かが近付いて来る音と気配がして茂みの奥からエーリカを守る為に先程必死で退けた【ティールウルフ】……の喉元に牙を突き立てて血を啜る真っ赤な模様を持った巨大な虎が現れて凍り付いた。
『JURURURURU……GA!』
「【ブラッディ・デミドラグタイガー】……確か“ブラッディ”は吸血能力がある個体に付く単語だったっけ?」
「あ、亜竜級のモンスター!? どうしてこんな所に!」
今日ログインしたばかりのフォルテスラには“亜竜級”の意味は分からなかったが、それでも【ティールウルフ】の血を吸い尽くしてから噛み砕いて光の塵にした目の前の虎が今の自分では手に負えない化け物であるとは理解した。
それでも先程の“
「2人共、アイツは私が相手をするから早く王都まで逃げて欲しいかな。……せっかく良い雰囲気になった初々しいカップルが、人喰い虎の餌食になるなんて三流のシナリオを受け入れるのは信条的に無理なんで」
「だが君1人で……」
「いやジョブに就いてない<マスター>と生産職ティアンが居ても邪魔なだけと言うか、流石に私1人で非戦闘員を庇いながら亜竜級と戦うのは厳しいから出来ればさっさと逃げて欲しいんだけど」
「ッ!?……分かった、すまない!」
そうしてフォルテスラはエーリカの手を引いて王都まで駆け出していったが、それを【ブラッディ・デミドラグタイガー】が見逃す事はなくAGI型の亜竜吸血モンスターの速度でもって背を向けて逃げる人間達を食い殺そうと地を蹴った。
数値に換算して2000以上のAGIを持つ【デミドラグタイガー】の速度は戦闘系のジョブに就いていない人間に追い付き食い殺すのも容易く、逃げる2人は即座に血吸い虎に食い殺される。
「だからさせないって」
『GA!?』
その悲劇に割り込んだのはミカが持ち前の“直感”によって【デミドラグタイガー】の進行方向を先読みして投げ放った一本の鉈であり、装備と<エンブリオ>の補正によって1000以上のSTRを持つ彼女が投擲した鉈は走っている最中の血吸い虎の肉体に突き刺さった。
その攻撃で疾走を止めた【デミドラグタイガー】に向けてミカは高いSTRで地を蹴り、同時に《瞬間装備》によって【グレートソード】と言う大剣を両手に持って血吸い虎へと振り下ろす。
『GAW!!!』
「チッ、掠っただけか。やっぱAGI差が大きいね。第二形態になってステータス補正もCまで上がったんだけど」
だが、単純なAGI差と獣故の俊敏さもあって【ブラッディ・デミドラグタイガー】はその攻撃を飛び退いて回避、それに対してミカも反撃を受けない様に距離を取りつつ大剣を構える。
この時点で【デミドラグタイガー】の目的は自らを傷付けた目の前の人間を喰い殺す事に変わっており、それに気付いているミカは少なくともフォルテスラ達を追わせない言葉には正常したと内心で安堵する。
「じゃあ後はシンプルに戦うだけだね。……亜竜級のボスモンスターはお兄ちゃん達と一緒に一回倒したぐらいだけど、タイマンでやるのは初めてかな」
『GAAAAAAAU!!!』
そうして森の中で目の前の敵を喰らい血を啜らんとする【ブラッディ・デミドラグタイガー】と、起こり得る悲劇を覆そうと力を振るう未来を何となく感じてしまう少女による殺し合いが始まったのであった。
◯九条幹也
(@_@)<“一族”に連なる家である九条家の御曹司で兄の友人枠その1
(@_@)<九条グループとかは舞台装置なので本編に関わる事はそんなにない
(@_@)<表向きは好青年な天才若社長だが性癖がロリショタコンでデンドロでは現地で見つけた同士と共に性癖を解放してキチゲ発散してる
(@_@)<性癖があれなので妹達には近付けないようにしてる兄だが個人としては彼の事を信用している
(@_@)<事件に兄が巻き込まれた時には財力と権力で強力な味方になるが兄をトラブルに巻き込む事もある
(@_@)<デンドロ内での登場はレジェンダリア編予定でその時は何処かのクランに所属している模様
◯兄
(@_@)<シスコンなので妹達が心配故に色々と手を回している
(@_@)<割と“ジャンル違い”な事件に巻き込まれるタイプでありどっかの王子様と違って命の危険も何度もあった
(@_@)<故にデンドロに対しても慎重になっているが同時にその経験からリアルには無害とも察している
(@_@)<何より自分自身が<Infinite Dendrogram>の世界に強くて惹かれているので妹達を止められない模様
◯妹
(@_@)<原作ブレイクを阻止しに行ったオリ主
(@_@)<第二形態に進化した【ギガース】だがスキルは増えず《神意を砕く巨人の腕》のレベルが上がっただけ
(@_@)<だがHP・STR・END・AGIのステータス補正がCまで上がり装備補正もSTR+800まで上昇
(@_@)<新しく買った中古武器の【グレートソード】はSTRが500異常ないと装備出来ないが攻撃力の高い大剣
(@_@)<STRと武器攻撃力を合わせればSTR上書きの末妹と合わせて亜竜級相手のメインアタッカーになる事も出来た
◯フォルテスラとエーリカ
(@_@)<詳しくは原作のグローリア編を見てね(ダイマ)