そして、こもごも囁く房たちがある。
それらはただ一つの感情「安堵」だけを繰り返す。
And the murmuring buds whispered altogether.
They repeated only one feeling. 'Relief.'
空(うろ)の甘藍
空の甘藍(O-04-21、「うろのかんらん」)は、人間の部位を一切用いず、純白の花蕾組織のみによって構成されたアブノーマリティである。
球状に密集した房が中心から渦を巻くように配列され、房のひとつひとつには脳のシワに似た溝が刻まれている。表面は乾いた粉質だが、房の隙間から覗く内部組織だけが湿った肉質を帯びる。個体は自力で移動する脚も器官も持たず、収容室の中央にただ静置され、房が呼吸するように緩やかに開閉する以外、目立った動作を見せない。
特殊能力
「もう、忘れてもいいのよ」
"It's alright to forget now."
空の甘藍は、以下のいずれかの条件を満たした職員に対し、緩やかで不可逆な精神汚染──通称「房化」──を進行させる。
① 房化進行の条件(いずれか、あるいは複数の重複により加速)
1.個体を10秒以上直視し続ける※洞察作業を行う
2.房の表面に素手で接触する※フレーバーイベントとして処理
3.同室に一定時間以上滞在する(直接的な観察・接触の有無を問わない)※継続作業時間30秒毎に付与
条件3は個体の常時放出する微量胞子によるものであり、視覚的・物理的接触を避けても曝露を完全に防ぐことはできない。
※=ゲーム内処理
② 房化進行段階
段階
名称
症状
第1段階
記憶の靄
直近の記憶・個人的な癖を一時的に忘却。数時間で自然回復
第2段階
感情鈍麻
感情の起伏が薄れ、多幸感に近い凪の状態を自覚するが苦痛は訴えない
第3段階
房芽の兆候
指先・耳の裏など身体の末端に微小な白い房状の突起が生じる。本人はこれを不快とせず、むしろ依存的な疼きとして受け入れる
第4段階(不可逆)
空洞化
自我の輪郭が失われ、対象は静かに立ったまま呼吸のみを続ける新たな「房」となる。以後、他者との意思疎通は一切不可能
第4段階に達した職員は「失踪」として処理されるが、実際には収容室内、あるいは個体本体の一部として物理的にその場に残存し続けることが確認されている。
③ 収容違反への移行条件
以下のいずれかでクリフォトカウンターが減少する。
1.正義ランク3以下の職員が単独で長時間作業を行う
2.第4段階に達した職員の存在を72時間以上未報告のまま放置する
3.作業結果が「良い」と判定される(※)
(※)本個体は、職員の思考をより深く、より安らかに刈り取ることに成功した場合ほど高いE-BOX生産量を示す。しかしこれは同時に、対象職員の房化がより一層進行したことの裏返しでもある。逆説的に「成果が優れているほど危険度が増す」という性質を持つため、担当者の選定・交代方針には特に注意を要する。
カウンターが0になると、個体は爆発的に増殖し収容違反状態へ移行する。
由来
空の甘藍の起源は判明していない。搬入時の記録には、個体の傍らに空の食器と、誰のものかも分からない書きかけの手紙が一通残されていたとのみ記されている。手紙の文面は判読不能なほど白く漂白されていた。
搬入経路についても記録が乏しい。当時の輸送伝票には「中身:観賞用植物(至急扱い)」とのみ記載され、依頼元の企業名は判読不能な状態で提出されていた。荷札には宛先が空欄のまま、「届けたい人へ」とだけ手書きで記されていたことが確認されている。搬入作業を担当した職員のうち一名は、後日の聞き取りで「荷物を開けた瞬間、何年も会っていない祖母の台所を思い出した」と証言しているが、当該職員に祖母が存在した記録は社内データベース上に見当たらなかった。
望み、疲れ果てた一人の女がいた。彼女はただ、何も考えずに済む場所を探していた。そして彼女は見つけた──あるいは、彼女自身がそれになった。
There was a woman who wanted and was weary. She only sought a place to stop thinking. And she found it ── or she herself became it.
— 収容記録係・M
最終観測
房が、静かに開く。
匂いがする。ずっと昔に嗅いだ、誰かの台所の匂い。
思い出せない。誰の台所だったか。
でも、いい匂いだ。
「もう、いいよね……」
その声は自分のものだったか、それとも房の奥から聞こえたものだったか、もう分からない。
膝から力が抜ける。怖くはない。むしろ、ずっとこうしていたかった気がする。
意識が霞む。指先が白く粉を吹いている。ああ、そうか。
私は、ここに――
詳細
空の甘藍は洞察のみを許容する。他の作業属性(本能・愛着・抑圧)による接触は、個体からの反応が確認されず、作業自体が成立しない。
作業終了時のE-BOX数によって結果が3段階に分岐する。
・0〜8個:悪い
・9〜18個:普通
・19〜24個:良い
E-BOX容量:24
初期クリフォトカウンター:2
作業終了後の待機時間:約20秒
開放可能な情報/アップグレード
基本情報(Cost: 30 PE Boxes)
名前、オブジェクト分類、危険レベル(WAW)、肖像、攻撃タイプ(WHITE 4〜7)、E-BOX容量(24)と気分状態、クリフォトカウンターをアンロックする。
洞察 作業方法リスト(Cost: 10 PE Boxes)
洞察のレベルごとの成功確率をアンロックする。
作業 Lv.1 Lv.2 Lv.3 Lv.4 Lv.5
洞察 普通 普通 高い 高い 最高
本能 作業不可 作業不可 作業不可 作業不可 作業不可
愛着 作業不可 作業不可 作業不可 作業不可 作業不可
抑圧 作業不可 作業不可 作業不可 作業不可 作業不可
管理方法 1〜5(Cost: 6 PE Boxes each)
・管理方法1:単独かつ長時間の担当を続けた職員は、作業終了後も自発的に収容室へ戻ろうとする行動が確認された。
・管理方法2:正義ランク3以下の職員が作業を行った際、クリフォトカウンターの減少が観測された。
・管理方法3:職員の指先に白い房状の突起が確認された。本人はこれを報告せず、カウンセラーによる面談で偶然発覚した。
・管理方法4:「房化」第4段階に達した職員が収容室内に直立したまま発見された。呼吸のみが確認され、以後の意思疎通は不可能であった。
・管理方法5:第4段階の職員を隔離しようとした際、当該職員本人による激しい精神的抵抗が観測された。強制的な引き離しは対象の自我崩壊を招く恐れがあるため、慎重な対応が必要である。
脱走情報(Cost: 30 PE Boxes)
脱走可能であるかの情報、属性耐性、クリフォトカウンター最大値(2)をアンロックする。
収容違反時、個体は3段階の形態変化を行う。各形態は固有のHPを持ち、形態移行時にHPが全回復する。
・第一形態(静止房):HP 無し。個体本体は移動しないが、収容違反発生と同時にランダムな廊下に小型の分体(房の芽)を4つ生成する。分体はそれぞれ独立したHP(各300)を持ち、範囲内に胞子煙を断続的に放出する(範囲内に居る場合、継続してWHITEダメージ5〜9)。分体は全て同時に鎮圧されている状態にならなければ一定時間が経過すると再生成されるため、根本的な解決にはならない。
耐性:RED 弱点(1.3) / WHITE 抵抗(0.7) / BLACK 普通(1.0) / PALE 抵抗(0.8)
・第二形態(擬態体):HP 600。施設内の何処かに出現。房化第4段階に達した職員の姿を模倣し、施設内を徘徊する。直接攻撃は行わず、接触した職員に房化を急速に進行させる。発見・鎮圧が最も困難な形態。
耐性:RED 普通(1.0) / WHITE 免疫(0.0) / BLACK 普通(1.0) / PALE 弱点(1.2)
・第三形態(全開花):HP 2400。巨大化した房塊が蔓状の根を伸ばし、施設内の他存在(アブノーマリティを含む)へ攻撃を行う。蔓を伸ばして対象を拘束し、継続的にWHITEダメージ(1秒毎5〜8)を与える。房から一斉に胞子弾を放出し、範囲内の全対象にWHITEダメージ20〜25を与える
擬態体を複数体分離させ、同時多発的に行動させる。
耐性:RED 抵抗(0.5) / WHITE 免疫(0.0) / BLACK 抵抗(0.6) / PALE 普通(1.0)
収容違反は、鎮圧されるか一日を終了するまで継続する。
抽出可能なE.G.O
武器E.G.O:「揺り籠」
属性 WHITE
射程 普通(5)
正義補正 ◯
表示ダメージ 10〜14
房を寄せ集めたような白い鎌状の刃を持つ武器。柄は乾いた粉質の質感で、振るうたびに白い胞子状の粒子が舞い散る。
特殊効果①:命中時25%の確率で対象に「鈍麻」状態を付与する(4秒間、WHITE被ダメージ低下、移動速度-15%、重複可)
特殊効果②:同一対象への攻撃3連続ヒットごとに、職員のMP(精神力)が5回復
空の甘藍本体が同施設内に生存・収容されている間、武器は本体との共鳴により以下のように変更され、特殊攻撃と反動が追加される。
変更項目 (個体収容中 / 非収容)
表示ダメージ 18〜24/10〜14
「鈍麻」付与確率 45%/25%
「鈍麻」持続時間 6秒/4秒
SP回復量 +5/+10
特殊攻撃 発生率40%、的中時PALE属性ダメージが発生
「鈍麻」付与時反動 15%の確率で装備者自身にも軽微な鈍麻が逆流(自身の移動速度-15%、1秒間)
「馴染みの匂いが増す度に、切れ味は増していく。ただ、何を刈り取っているのかが、だんだん分からなくなる。」
防具E.G.O:「揺り籠」
白い花蕾状の房が幾重にも重なった、繭のような外套。表面は乾いているが内側は湿り気を帯び、着用すると微かに甘い匂いが漂う。長時間の連続着用は社内通達により非推奨とされている。
属性耐性(個体収容中 / 非収容)
RED 脆弱(1.6)/弱点(1.2)
WHITE 免疫(-2.0)/抵抗(0.2)
BLACK 脆弱(1.4)/普通(1.0)
PALE 抵抗(0.7)/弱点(1.2)
収容中はWHITE属性に免疫を持ちPALE属性への抵抗を持つ一方、それ以外の2属性では脆弱化が進む。個体本体との共鳴が深いほど、装備者は精神的苦痛を感じなくなるが、房の組織構造そのものに引きずられる形で物理攻撃への防御が疎かになる。
特殊効果:被弾時50%の確率で、被ダメージの一部(8%)をWHITE属性のダメージへ変換する。この効果の発動後は2秒間移動速度-10%。
収容時特殊効果:鎮圧指示後、接敵時に胞子を撒き同室内の存在全てに「鈍麻」を2秒間付与
「着ているうちに、何も考えなくてよくなった。それが安心なのか、恐ろしいことなのか、もう判断がつかない。」
観測レベル
レベル1(1セクション開放):作業速度 +3
レベル2(2セクション開放):作業成功率 +3%
レベル3(3セクション開放):作業速度 +3
レベル4(すべての詳細の開放):作業成功率 +3%
ギフト「馴染みの匂い」をアンロックする。作業終了時に1%の確率で付与される、懐かしい匂いをまとう装飾。
E.G.Oギフト:「馴染みの匂い」装着効果
自制+5
被WHITE属性ダメージを10%軽減
防具E.G.O:「揺り籠」と同時装着時、効果が以下の様に変更される。
自制+10
被WHITE属性ダメージを10%増加
副作用 一定確率で、装着者自身に房化第1段階(記憶の靄)相当の軽微な記憶欠落が発生する(作業・戦闘能力への影響はなく、フレーバーイベントとして処理される)
ストーリー
・白く丸い房が幾重にも折り重なった、静かで無害に見える姿をしている。しかし房の奥を覗き込んだ職員は一様に言葉を失う。
それは誰も攻撃しない。誰も傷つけない。ただそこにあるだけで、少しずつ人を「軽く」していく。
・房化が進んだ職員は皆、幸福そうに見える。それが何よりも恐ろしいと、古参の職員たちは口を揃える。
・<インタビューログ抜粋>
職員F3391:
最初は良い幻想体だと思っていました。攻撃してこないし、暴れないし。
でも、担当が長い職員ほど、だんだん喋らなくなるんです。
笑ってはいるんですけど、何を聞いても「うん」としか言わない。
(中略)
ある日、担当だった同僚の指先を見たら、白い粒みたいなものがついていて。
本人に聞いたら「痒くて気持ちいい」って笑うんです。
それを聞いた時、初めて怖いと思いました。
・<安全チーム 緊急対応記録・抜粋>
職員T2214:
ここは空の甘藍の収容室前です。廊下に……何か増えてます。
安全チーム:
状況を具体的にお願いします。
職員T2214:
房です。壁際に、いくつも。さっきまで無かったのに。
安全チーム:
収容室内の本体に動きはありますか?
職員T2214:
本体は動いてません。でも廊下のやつが、じわじわ広がってて……
(中略)
安全チーム:
応援を向かわせます。廊下の房を優先して排除し、本体の鎮圧を試みてください。
職員T2214:
排除しても、またすぐ生えてくるんです。意味あるんですか、これ。
安全チーム:
……本体を止めない限り、根本的な解決にはなりません。急いでください。
この通話を最後に、職員T2214からの応答は途絶えた。後日の捜索で、廊下の房の一部からT2214のものと思われる制服の繊維が発見されている。
<管理人への提言書・抜粋>
当該個体は物理的な脅威度こそ低いが、被害の進行が極めて緩慢かつ自覚症状を伴わないため、通常の危険度評価基準では実態を測りきれない。
房化第4段階に至った職員の"消失"は、外部的には単なる離職・失踪として処理されうる。
さらに、作業結果が良好であるほど房化が進行するという逆説的な性質は、担当者の評価制度そのものと矛盾するため、人事考課上の運用にも見直しが必要である。
管理人は当該個体の担当職員に対し、定期的な第三者面談と、同一担当者による連続作業の制限を義務付けることを強く推奨する。
フレーバーテキスト
・"空の甘藍は、<name>が近づいても威嚇するそぶりを見せません。"
・"房の隙間からは、ごくかすかに甘い匂いが漂っています。"
・"<name>は、この匂いを昔どこかで嗅いだ気がしますが、思い出せません。"
・"房が緩やかに開閉するのを見ていると、<name>は妙に落ち着いた気分になります。"
・<name>"は、なぜか今日あった嫌なことを、もう思い出せません。"
・"指先が少し白く乾いている気がしますが、<name>は気に留めません。"
・"この部屋にいると、時間の感覚が曖昧になります。"
・"<name>は、この個体の担当を外れたくないと感じている自分に気づきます。"
・"房の奥から、聞き覚えのある声がした気がしますが、気のせいでしょう。"
・"<name>は、なぜか涙が出そうになりますが、悲しくはありません。"
要検証
房化第4段階に至った職員の"意識"が完全に消失しているのか、あるいは何らかの形で存続しているのかは現状未確認である。
擬態体(第二形態)が模倣する記憶及び言動の再現精度と、その情報源(収穫された記憶)との相関については追加検証が必要とされる。
E.G.Oギフト「馴染みの匂い」の副作用(軽微な記憶欠落)と、房化進行速度そのものとの直接的な関係性は未検証
感情記録
管理人が空の甘藍に対して抱く感情は、主に以下の傾向に分類されている。
安堵・懐かしさ(最多)
哀れみ
静かな恐怖
無関心
以上の内、『安堵』の感情が突出して示される場合、管理人自身の精神汚染が進行している可能性がある。定期的な精神診断を推奨する。
余談
・空の甘藍の名は、モチーフとなったカリフラワーの和名「花甘藍(はなかんらん)」に由来する。カリフラワーの花言葉には「慈愛」「祝福」「お祭り騒ぎ」等があり、いずれも本個体の実態とは対照的な、皮肉な符合である。
・カリフラワーの房の再生・配列パターンにはフィボナッチ数列的な規則性が確認されており、管理番号のシリアル部分(21)もこれに合わせて選定。
・現場職員の間では非公式に「白い忘れ形見」という通称が用いられているが、公式記録には未採用である。(という設定)
・弟に「何かテーマ頂戴」と唐突に振ったら短く「…カリフラワー」と答えられたので製作。植物幻想体はカスである規則性に則り今回の幻想体が誕生した。ほんまにWAWか?