「綴理は、蓮ノ空に行くんだね」
「うん。ゆうは?」
「僕?僕は、関西の芸術学校の推薦貰って行く予定にしてる」
「おー流石ゆう」
中3の夏。幼馴染である
綴理は、僕達の家から割と近い蓮ノ空に行くらしい。
女子校だったのが、10年ほど前に共学化したみたいだが。
「綴理も、蓮ノ空に行って変な男に捕まるなよ」
「大丈夫だよ。ボクはゆう以外に興味ないから」
「本当か疑う所なんだけど」
「ボクは、嘘をついた事がない。だから、安心していい」
綴理の目は真剣そのものだった。
ていうか、
「ん?どうしたの?ボクの顔をじっと見て」
「いやぁ…綴理って可愛い顔してるなぁって思ってさ」
「//ゆうの馬鹿っ!!//」
綴理は、顔を赤くして俺の胸をポカポカと叩いてくる。
力が入っていないので、ただ衝撃がやってくるだけ。
なんて会話をしたその日の夜_
「結君、ちょっといいかい?」
「はい、良いですけど…」
綴理のお父さん(今後は叔父さん)と偶然にも遭遇し、そう話しかけられた。
なんだが不穏な始まり方だし、めちゃくちゃ緊張する。
「結君、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
「そうですか」
叔父さんにそう言われて、一気に身体から力が抜けていった。
それにしても、なんだろう。
「結君の両親とも話したんだが…」
「?」
「結君、綴理と一緒に蓮ノ空に行く気はないかい?」
叔父さんの口から飛び出した言葉に、びっくりして声にならない言葉が口から出た。
「あなた…いきなり過ぎて結君固まってるわよ」
「あはは…すまん。本題をいきなり言ってしまって」
「いえ、思ってもない事を言われてしまって…」
綴理のお母さんもとい叔母さんに、横から口を挟まれて叔父さんは謝ってくれたが、そういう問題じゃない。
「で…なんで、僕に蓮ノ空の話をしたんです?」
「綴理って身の回りのことが出来ないでしょ?」
「まぁ…確かに…」
綴理の部屋に行くと散らかっていたり、綴理の両親が仕事で家に帰ってこない時には、俺が料理を作りに行ったりと…率直に言うと生活が出来ないのだ。
「それで、蓮ノ空って寮制なの。寮母さんが居るけど、その生活面で心配で…」
「あーなるほど…」
綴理が貰ったパンフにも寮制って書いてあった。
食事とかは寮が作ってくれるみたいだけど、洗濯も寮の中に洗濯機があるのでそっちの面でも問題はない。
だとなると_
「朝、起こしに行けと…」
「そうなんだよ」
「結君がもし蓮ノ空に行ってくれたら私達としても助かるんだよね」
「その言い方はずるいですって」
本当にずるい…そういう言い方をされると断りにくくなるに決まってるじゃん。
「もちろん、結君の意思で決めて貰っていいわよ」
「……もうちょっとだけ考える時間を貰っても…?」
『もちろん』
叔母さん達にそう伝えてたものの、答えとしては案外とすぐに決まった。
******
「綴理、大丈夫か?」
「うん。ボクは大丈夫」
年を超えて4月。荷物は既に学校に送ったので、最低限の荷物を持って、僕達は金沢市内の蓮ノ空学院に向かうバス停に居た。
つまりはそうである。僕は蓮ノ空に行く事に決めた。
「バスが来るまで暇だねぇ」
「うん。でも、ボクはこの時間もすき」
「ふふ、そっか」
僕の方に頭を乗っけてくる綴理の頭を撫でながら僕はそう言う。
バスが来るまでこんな時間を過ごし、蓮ノ空の寮までやってきていた。
「そんなぁ…」
「仕方ないって…女子と男子で寮が別々なのって」
「む〜後で講義してくる…」
「辞めて」
寮について簡単な説明を受けた。
当たり前なんだけど、男子と女子の寮は別々だった。
でも、話を通しておけば自由に行き来はできるとの事。
それで、綴理の叔父さんと叔母さんが話を通していたらしく、僕が綴理の部屋に行くのは良いらしい。寮母さんに必ず会って。一言を言う事を条件にだけどね。何かあったら遅いからね。
「やいやい、キミたちかい?話題の一年生カップルっていうのは」
「えっと……どこから突っ込んだらいいですか…」
なんかいきなり、僕達に話しかけてきたかと思ったら変な事を言ってくる先輩が現れた。
っていうか小さくて可愛い…って痛っ…!
「むぅ~!」
綴理の方を向くと、頬を膨らませていた綴理が居た。
「あはは、本当にカップルみたいだ。でも、校内で変な事だけはしないでくれよ」
「違いますって!僕達幼馴染なので距離が近いんですって」
「そうなのかい?でも、そっちの彼女はそうでもないみたいだけど」
「ゆいのばかっ!」
何故か、心にグサッと槍が刺さったような痛みが来た。
「そうだ!要件を忘れていた。キミたち、スクールアイドルに興味はあるかい?」
あれから1年。僕達はというと_
「おーい、綴理起きろー」
「うん…結、起こしてー」
「いや…今、起こしてるんだけど…」
関係も変わらない高校二年生になっていた。強いて言うならば、綴理はスクールアイドルをやっている事くらいか。
今作の主人公の紹介を
名前は、朝日結(あさひゆう)君です。
後にも触れますが『美術部のエース』なんて異名が付けられるほどに、美術センスは高いです。