「眠い…」
「ボケっと歩いていたら、また乙宗に怒られるよ」
綴理を起こして、一緒に学校に向かう途中。
目を擦って歩く綴理に僕はそう言う。
「こずに怒られるのやだ…」
「なら、ちゃんと起きて歩くことだね」
「ちゃんと歩く」
綴理はそう言って、僕よりも早く歩き始めた。
「出来るなら、最初からやって欲しかったなぁ…」
僕がそう呟くも、綴理本人には聞こえてないんだろうなぁ…
まぁ…今日は、入学式だから新入生勧誘頑張らないとなー
-中庭-
入学式を終えた僕と綴理は、中庭にブースを作った。
「綴理、こんな感じでいい?」
「うん、助かった」
「新入生勧誘頑張ってね」
「うん、頑張る」
元気よく返事を返した綴理に僕は手を振って、校舎内に入って行く。
行く先は、僕の居場所の美術室。
「やっときたわね、美術部のエースさん」
「その呼び方はどうにかならないんですか…沙知先輩…」
「なははは!スクールアイドルクラブを休部してるキミの事を思ってきてやったのになー」
美術室に向かい、中に入ると三年の先輩であり生徒会長の大賀美沙知先輩が居た。
「今日は何の用ですか…」
「あたしは、キミの作品が見たくてきただけだよ」
「生憎…先日、コンクールに出したばっかりなので今は何もないですよ」
僕はそう言って、近くにあった椅子に座る。
「あちゃ…遅かったかー」
「また、その内来てくれたら出来てると思いますよ」
「うむ、キミの場合、すぐに出来るからねぇい。次の作品も期待してるよ」
沙知先輩は、そう言って美術室を後にしようとした。
「そうだ、キミに聞きたい事があったんだ」
「何ですか?」
「キミは
「…そうですね…藤島が戻るのなら…戻るかもしれないです…」
「…そうか。キミもキミで色々と考えてるんだな」
「ええ、僕も色々と考えてるんで…それに、綴理とは今でも仲良いですし。僕も今の環境が好きなので…無理に環境を変えようとは思わないですね」
「…」
僕がそう言うと、沙知先輩は何か言いたげな感じだったが、何も言わずに笑顔になって去っていった。
「さてと…続きやっていくか…」
絵を描きながら、昔の事を思い出す。
僕は、丁度一年前の今頃、綴理と一緒にスクールアイドルクラブに入った。
アイドルではなく、クラブのみんなのサポートとして。世間的に言えばマネージャーみたいなポジションをしながら、今みたいにコンクールに出す絵を描くそんな日々を過ごしていた。
半年くらい前に、さっき名前を挙げた同級生の藤島の怪我だったり、沙知先輩が生徒会長になったりと色々とあってスクールアイドルクラブを休部する事にした。綴理や乙宗の二人は止めてくれたけど、結局休部状態になったという事。
「相変わらず良い絵を描くわね」
そんな思い出に浸っていると、僕に声を掛けてきた子が居たようだ。
「なんだ…乙宗か…今日はどうしたの?」
呼びに来たのは、スクールアイドルクラブの部長の乙宗梢だった。
僕が休部したとはいえ、彼女とはなんだかんだで関係は続いていた。
「そろそろライブが始まるから、呼びにきたのよ」
乙宗がそう言ったので、腕時計を確認するとライブまで数十分になっていた。
「ありがとう、片付けだけしてすぐに向かうよ」
「ええ、綴理。かなり頑張ってたみたいだからね」
「だろうね。乙宗も頑張ってね」
「ええ、もちろんよ。新入生頑張って取らないとだもの」
「そっか。魅力に溢れる新入生が来てくれたらいいね」
その後、片付けをすぐに終わらせて、乙宗と一緒に体育館に向かう。
「こずと一緒だったんだ」
体育館に着き、綴理の所に向かうと、そこには頬を膨らませている綴理の姿があった。
「呼びに来てくれたんだよ。ライブが始まるからって」
「む~…ボクが行きたかったのに…」
「綴理、あなたは寝てたでしょ」
「寝てたのか…」
ライブ前に寝るなんてと言いたい所だけど。綴理だからなぁ…
「だって早起きだった」
「あの時間に起きないと間に合ってない…」
「ええ~」
「綴理ったら…全く…」
綴理の言葉に頭を抱える乙宗。
僕だって頭が痛い。
「っていうか、そろそろじゃない?」
「そうね、結これ頼んでもいいかしら?」
乙宗はそう言って、CDを渡してきた。
曲を流してくれってことなんだろう。
「いいけど…僕、クラブのメンバーじゃないんだけど…」
「何を言ってるの、今はそうだけど、私は結の事はクラブのメンバーだと思っているわ」
「…はぁ…分かったよ。どのタイミングで流せばいい?」
「ここのタイミングで_」
そして、二人はステージに立ち、ライブを行った。
相変わらず。乙宗の歌声は綺麗だし、綴理のダンスは惹かれるものだった。
そして、新入生二人を連れて、
「梢センパイ?この人って」
「そうね」
僕は、梢に目を合わせて余計な事は言うなと目で伝えた。
「朝日結。美術部のエースって呼ばれてるわ」
「美術部のエース!?かっこいいですね!!」
沙知先輩も言ってたけど、僕は美術室に入り浸ってるだけで、美術部には入ってないのだが、その異名が知らぬ合間に広まってしまい、訂正するのが面倒だと思って、無視していたら、もっと面倒な事になってしまってる訳だけど…
「乙宗も言ってくれた通り、美術部のエースこと二年生の
僕はそう言って挨拶をする。
そして、二人は自己紹介をしてくれた。オレンジ髪の子は日野下花帆ちゃん。青髪の子は村野さやかちゃん。
日野下さんは乙宗が、村野さんは綴理が見つけてきたのこと。
なんだ、二人とも良い子見つけてきてるじゃん
「それで、二人ともどうだったかしら?」
「梢先輩…あの…なんだが、凄くて…」
「楽しんでもらえたら良かったよ」
「あっ、えっと」
「僕は夕霧綴理、こずとゆいと同じスクールアイドルクラブの2年生だ、因みに好きな教科は数学だよ、答えが決まっているっていいね」
「あっ、はい、えっ?」
綴理の言葉に、日野下さんは困惑の表情を浮かべていた。
「ごめんね…綴理って言葉足らずな事あるし…距離感独特だから…」
僕が日野下さんにそう言うと、日野下さんは納得してくれたぽい?
「お誘いいただいてありがとうございました!夕霧先輩の舞台、本当に綺麗で」
「ありがとう、褒められて嬉しい。うん、ここまでとは思わなかったけど」
「じゃあ、例の件は考えくれた?」
「はい、私、夕霧先輩にご指導お願いしたいです!どうか、スクールアイドルクラブに入れてください!」
おーやったじゃん。綴理。後輩が出来て。
「えええええ!?そうなの!さやかちゃん!」
「はい、花帆さん、私。決めたんです、せっかく、自分を変える為にこの蓮ノ空にやってきたんですから、この学校で新しい事を始めてみようって」
なるほど、村野さんは自分を変えたくてここにやってきたのか。
そういう子もいるよね。うんうん
「それがスクールアイドルクラブ?」
「はい!」
「という訳で、今日からよろしくねさや、僕と一緒に、スクールアイドルになれるよう頑張ろう」
「は、はい!よろしくお願いします!」
「ふふ、良かったわ、綴理。あなたの後輩が出来て、これで少しは上級生としての自覚が芽生えるかしら」
「そうなって欲しい所だよ僕は」
「そうだといいね~」
綴理…自覚して本当に…
「貴方の事でしょう貴方の」
「頑張る」
「という訳で、日野下さん、今は私たち二人でスクールアイドル活動をしているの」
「今日から三人、嬉しいなぁ。よしよしよしよし」
綴理はそう言って、村野さんの頭を撫でる。
この調子だと、なんとかなりそうで良かった。今はだけど…
「ちょ、ちょっと、夕霧先輩…恥ずかしいです…」
撫でられている村野さんは、顔を真っ赤にしていた。
「ねえ、日野下さん、貴方がもし良かったなんだけれど」
「えっ、あっ、あの、はい」
「…また来週にもライブがあるの。だけど、未来だけじゃ手が足りてないの。良かったら手伝ってもらえないかしら?」
「あ…はい、それぐらいなら、あたしでよかったら」
乙宗、立ち回りが上手だなぁ…日野下さんを将来的にはスクールアイドルにしたいんだろうけど、日野下さんが渋ってる感じなのかな。知らないけど。
「そう、嬉しいわ」
「あの!」
「?」
「ら、ライブ素敵でした!それだけは言いたくて!それじゃあ、さようなら!」
日野下さんはそう言って、走っていってしまった。
「まだ、決めかねてるというか…自信がないのかもしれないな、日野下さんは」
「朝日…」
「それじゃあ、僕もそろそろ戻るね」
「ええ、ありがとう。手伝ってもらって」
「いいって、また次のライブも頑張って。さやかちゃん」
「はい」
「綴理の事よろしくね」
僕は村野さんにそう言って、体育館を後にするのだった。