【ギルド】冒険者の登録やファミリアの管理、ダンジョンに関する情報の提供など、冒険者たちを様々な面から支える場所だ。建物の中には多くの冒険者が行き交い、受付には職員たちが忙しそうに働いている。俺たちはそんなギルドの入口をくぐり、初めての冒険者登録へとやってきた。
ちょうど1番すみ野受付が空いたようなのだ。
「すまない、冒険者登録を2人分頼みたいのだが」
「はい、ようこそギルドへ所属ファミリアとお名前、扱う武器をご記入ください。」
応対してくれたのはメガネのハーフエル、名前はエイナ・チュールと言うらしい。
必要書類を書き終えて渡すと次はダンジョンに入る前にダンジョンについての講習を進められた、こちらは任意で大手ファミリアは断ったりもするらしい。
まぁ俺たちは今日出来たばかりのファミリアだし受けて損は無い。
「講習も頼めるだろうか?講習費は今渡して問題ないか?」
「いえ、講習費用は頂いていませんから大丈夫ですよ、それと専属でアドバイザーを付けることもできますが如何なさいますか?」
「君さえ問題なければ弟と2人、君に頼みたいんだが」
承知しました、と言ってエイナ女史は分厚い本を2冊持って2階へ上がる。
まさかとは思うがあの鈍器の様な分厚い本の内容全てを1日で詰め込む訳ではあるまいな…もしそうなら覚悟を決めなくては。
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あれから3日、率直に言えば最初の懸念は杞憂で終わった、エイナ女史は優れたアドバイザーだったようで、俺もベルも思いのほかスムーズに講習が進んで今は10階層の予習だ。
「このように10階層からはネイチャーウエポンと呼ばれる自然武器を使うモンスターが出てきます、まだ駆け出しのフィルさんとベルくんには早いですが情報はあるに越したことはありませんから。」
「はい!エイナさん!10階層の予習が終わればダンジョンに潜ってもいいんでしたよね?と言うことは!ついに!」
元気よく手を挙げてエイナ女史に詰め寄るベル、しかし現実はそう甘くは出来ていないものである。
「待ってベルくん、潜るのは明日からにしなさい!そして最初は3階層までにすること、いいね?いくらお兄さんとパーティーを組んでの探索でも絶対に無理はしない事!いい?ベルくん冒険者は…」
「冒険したら行けない…もう耳タコですよエイナさん」
しおしおと萎れていくベルを見て思わず笑ってしまう。
「ベル、今日は明日に備えて装備品の買い出しなどにあてようダンジョンは逃げはしないからな」
は~いと未だにしょげているベルにこっそりヘスティア様に何かお土産でも買って帰ろうと耳打ちする。
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講習後、俺とベルは市場での買い出しを済ませ夜店を見てそれぞれヘスティア様へのお土産を探していた、ベルは白い花の髪飾りに決めたようだ。
ふと市場の片隅の武器屋に目が行く、そこに飾られているのは淡く青い光を放つ石のついた長剣……
「気になりますか?その剣が……」
いつの間にか後ろには女が立っていた、女はフードで顔が隠れていたが背格好と声色から女とわかる。
「あぁ…いやどこかで見たような気がしただけだ、おそらく気のせいだろう、俺はオラリオに来て日が浅いこのあたりも今日初めて来たんだ。君は?」
女はニコリと笑いながらこの店の店主代理だと答えた。
「その剣…お気に召したなら1000ヴァリスでお譲りしますよ?こちらのペンダントなどはユニコーンの角から作られていますから贈り物に最適です、他にも気になるものがあればぜひ…」
女の目が一瞬、紫色の光を帯びたような気がした…そんなわけないな疲れているのだろう。
「…そうだな…ならこの剣とナイフ…後そちらにあるペンダントを貰えるか?」
「お買上げありがとうございます、2500ヴァリスです。」
金を払い商品を受け取っていると後ろから俺を呼ぶ声が聞こえて振り返る心配そうなベルがこちらを見ていた、どうかしたのだろうか?
「兄さん?そんな何にもない路地見つめてどうしたの?」
何もない?そんなわけない今しがた買い物を…再度店があった場所に目をやるがそこには暗い路地しか存在していなかった。
しかし買ったものは確かにこの腕の中にある、白昼夢でも見たのだろうか?どこかの国には、狐に化かされるなんて言葉もあるらしいし気にしても始まらないな。
「なんでもない、買い出しも済んだし帰るか」
2人が去った路地裏の奥で女が笑う。
「あぁ…愛しき英雄よ…やはり貴方は帰ってきてくださったのですね…」
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「おかえり〜2人とも!随分遅かったじゃないか!」
「ただいま帰りました!神様!」
「すまない、すぐに夕飯の支度をするそれと…」
ベルに目配せをして頷き合う。
「「神様、日頃のお礼です受け取ってください!」」
それぞれが今日買った髪飾りとペンダントをヘスティア様に渡す、彼女は感極まった顔で大号泣してベルに抱きつきその豊満な胸を押し当てている、このままでは俺の弟は窒息死待ったなしだ。
「ほら、いつまでじゃれてるんだ飯だぞ2人とも」
ヘスティア様はベルに髪飾りをつけてもらいご機嫌に食卓についてお茶を飲んでいたが、俺が渡したペンダントがユニコーンの角だと知ってソファから転げ落ちた。
後から聞いたら目玉が飛び出る額で俺とベルまでひっくり返りそうだった。
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翌朝、ダンジョン前にやってきた俺たちはついにダンジョンに挑む。
「そうだ、ベルこれを」
ベルに先日武器屋で買ったナイフを渡す、青い刀身に白い柄のナイフ、間違いなく上物に分類されるだろう。
「わぁ!ありがとう兄さん大事にするよ」
「よし!じゃあ行こう、初日だし1階層から2階層で様子見だな」
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ダンジョン1階層、ここには基本ゴブリンが2~3体ずつしか出ないらしいが油断なく進まなくては行けない。
「ベル!右からゴブリン1!」
「うん!」
最後のゴブリンを倒し魔石を回収する。
魔石をざっと数えて4500ヴァリスほど、初日にしてはいい稼ぎだろう。
「どうする?ベル、ゴブリンの処理も慣れてきたしそろそろ2階層へ降りてみるか?」
ほんと!やった!とうきうきなベルを連れ2階層へ降りる、2階層からはゴブリンだけでなくコボルトも出現するようになるが手応えがないが、さすがに3階層まで行くのは早いか?
「結構稼げたね!これなら神様に美味しいもの食べて貰えそうだね!」
「今日は帰るぞ初日から飛ばす必要も無い」
その日の稼ぎは合計10200ヴァリス、一部を貯蓄に回しても豪華な食事ができるだろう。
こうして、確かな手応えと共に初めての冒険は幕を閉じる。