時の流れとは早いものだ、初めての冒険から半月。
ベルも俺も3階層までならばソロでも問題なく攻略できるまでになった、さすがに5階層以降になるとウォーシャドウやキラーアンドが出てくるため、ソロで潜るのは禁止にしている。
特にキラーアンドは傷を負うと仲間を呼ぶ厄介なモンスターだ。
「よし、今日は5階層を探索してあわよくば6階層を下見だなパーティー戦闘とはいえ油断はするなよ?」
「わかってるって!」
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5階層、何度か探索に来ていたが…前回来た時よりもモンスターがすくない?まるでなにかに怯えるように姿が見えない。
「何かがおかしい…今回は引き上げ…ベル!後ろだ!」
異変を感じ引き上げようとした矢先ベルの背後には二足歩行の牛型モンスターミノタウロスが立っていた。
「走れベル!」
弟の腕を無理やりつかみ走り出す、先程までいた場所は今やミノタウロスの突撃で粉々だ。
エイナ女史からは17階層辺りに出るモンスターだと聞いていたが…なぜこんな上層部に…いやそんな事は今はいい!足を動かせ!
「ぐっ…ベル!先にいけ!このまま二人で逃げても追いつかれる!」
「でも…それじゃ兄さんが!」
「大丈夫だ!俺には魔法もある、お前は先に地上に出て助けを呼ぶんだ…出来るな?」
泣きそうな顔をしながら俺を見つめるベル、しかし今はこれしか方法が無いと悟って俺とはべつの小道に入る。
そしてその小道に視線をやるミノタウロスに対して俺は魔法の詠唱に入る。
絶対に弟は追わせない!
《氷塊よ我に仇なす敵を撃て!》
「アイシクル・レイ!」
ミノタウロスの頭に命中した魔法は奴の注意を逸らすには十分な働きをしたようだ、ベルを見ていた目線が俺に移る。
それと同時に走り出しデタラメに通路を曲がり続ける、何とか時間を稼いで上位冒険者を待たなければ最悪死ぬ。
何番目かの通路を曲がるとそこは行き止まり…こんな時に運がない。
「やるしかないか…」
剣を抜いて相手との間合いを測る、ミノタウロスは追い込んだ獲物を前にニタニタと笑っている。
「タダで死ぬと思うなよこの牛やろう!」
覚悟を決めて切りかかる、しかしやはりと言うべきか刃がとうらない、武器はおそらく問題ではない。
問題があるとすれば使い手、つまりは俺が弱いからだ。
ミノタウロスの拳が襲いかかる、何とかガードしたが左肩がイカれた…出血も酷い、このままでは…再度振り下ろされる拳、やけにスローモーションに移るそれ…
あぁ…こんなところで死ぬわけには行かないのに…
…会いに行かなければ…誰に?
…謝らなければ…何を?
…償いを我が身が犯した愚行に罰を…
そこでプツリと何かが切れる。
感覚が何処か遠い。
ふらりと血塗れで立ち上がり剣を振るう。
所詮弱者の足掻きと侮ってミノタウロスは片手で受け止めようとしたその腕が…落ちた…まるでバターでも切るようにスッパリとミノタウロスの片腕は切り落とされる。
先程とは明らかに変わった獲物の動きにミノタウロスは危険を察知し逃走を図ろうとするが、そんな事は許さない。
敵に背中を向け逃走するなど、隙だらけもいいところだ。
逃げるミノタウロスの首を飛ばす。
「…弱い…俺はこんな所で立ち止まれないんだ…約束…そう約束がある…名前を…もう一度名前を呼ぶと約束した…俺と■■■だけの名前…」
少しずつ感覚が戻ってくる。
遠くで悲鳴が聞こえる…ベルの声だ…助けに行かなければ。
たった一人の俺の弟…あれ?俺には弟なんて…
目の前がくらい、誰かが走ってくる。
金髪の…少年と…長髪の少女。
ダメだ…意識が…もう…
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暗い暗い氷の城で女が笑う
「…貴方は戻っていく…あの栄光をその手に取り戻すその時まで…■■の祝福の元…あぁ早くかつての貴方を…■■■■■」
女は泣いているようにも見える。
何故君が泣くんだ…■■■■悪いのはきっと俺だ…
彼女との約束を守れず、あまつさえ忘れてしまった愚かで無力な■■■■■…
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なにか、夢を見ていたような気がする。
内容は…思い出せない。
目を覚ますとそこは見たことの無い天井だった。
何処か高級感のある内装に内心ビビりまくりだ。
「ここは…どこだ?俺は確かミノタウロス二殺されかけて…」
そこから先は覚えていない。
覚えている最後の記憶は、金髪の少年と緑髪のエルフ…
彼らが助けてくれたのだろうか?
思考の海に沈みかけたそやの時、ベッドの向かいにある扉が開くき、誰かが入ってくる。
「起きたのかい?体に問題はないかな?一応エリクサーで治療したからキズは無いはずだけど。」
「あんた、団長に感謝しなさいよ?わざわざ倒れてたあんたを担いで運んでくださったのは団長よ?」
入って来たのは団長と呼ばれた金髪のパルウムと長髪のアマゾネスの2人、どうやら俺を助けてくれたパーティーのメンバーのようだ。
「迷惑をかけてしまったようですまない、体の方は問題ない本当に助かったありがとう。ところで、俺以外に怪我で保護された冒険者はいるか?」
「いや、そんな報告は受けていないね…誰かまだあの場にいたのかい?」
「いや、大丈夫だあんたらの所に報告が無いなら上手く逃げれたんだろう。」
さて、俺はどれくらい眠っていたのだろう?日の陰りを見る限りでは長く見積って1~2時間程度だろうか…
「礼もそこそこに申し訳ないがはぐれたパーティーメンバーを探したいので俺はこれで失礼させてもらう、治療費の請求は後日だとありがたい。」
「わかった、治療費の事は気にしないでくれ、元々が我々の不始末が招いた事だ、むしろこちらからお詫びをしたいから、後日またここに来てもらえると助かるよ。」
金髪のパルウムはフィン・ディムナ、長髪のアマゾネスはティオネ・ヒリュテと名乗った。
まさかオラリオの最強派閥のひとつに保護されるとは、人生何が起こるか分からないものだ。
とりあえずロキファミリアのホームを出てギルドへ向かう。
おそらくベルはそこに居るかホームに戻っているはずだ。
それはそうと、メインストリートに点々と落ちている赤い血痕のような物はいったいなんだ?
「あの駆け出し、あんな返り血塗れな格好でダンジョンから出てくるなんてどうかしてるぜ」
「ウチの商品に血がついちまった!どうしてくれるんだあのガキ!」
走りながら耳を傾ければ騒動の原因が見えてきた。
どうやら、駆け出しの冒険者がモンスターの返り血を撒き散らしながらメインストリートを爆走して行ったようだ。
ギルドについてちょうどエイナ女史に説教されている弟を発見して事情を聞けば、俺と別れたあともう1匹出たミノタウロスからロキファミリアのアイズ・ヴァレンシュタインに命を助けられ、お礼も言えず逃げ出しギルドに俺の救援要請とアイズ・ヴァレンシュタインの情報を聞いていたらしい。
「まさか件の冒険者がお前だったとわな…ベル」
「うっ…ごめんなさい」
「まあ、お互い無事だったならいいさ…所で想い人についてはなにかわかったのか?」
ベルは、あぁ…とかうぅ…とか唸っているがどうやら想い人に特別な異性はいないようだ、良かったな弟よ…たとえ派閥違いで今は結婚できなくても夢を諦める必要はまだ無さそうだぞ。
帰り際エイナ女史から何かを呟かれたベルはエイナ女史に大好きと叫びながらギルドから飛び出してきた。
拝啓おじいちゃん、ベルはあなたの教育通りに育ちつつあります、兄としては複雑です…敬具。
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ホームに帰るとヘスティア様が今日は随分早かったね?と笑顔で出迎えてくれる、詳細を話せばロキファミリアに憤慨し俺たちの体をペタペタ触りながら怪我がないか確認しているようだ。
「怪我が無いようで本当に良かった、君たちに死なれたら僕はショックで死にそうだよ!」
一通り傷がないか確認が終わり安心したのかヘスティア様はふぅと一息をついた。
「そうだ!今日は2人に美味しいお土産があるんだよ!」
ジャジャーンと見せられたのはじゃが丸くん、子供から大人まで人気のスナックフード、そう言えば最近屋台でバイトを始めたと言っていた。
お客が増えたご褒美に貰ったらしい。
「いやーそれにしても中々いないねウチのファミリアに入りたいってこは…僕が無名な神なのがいけないのかな〜せめて神の力…アルカナムを使えたらいいんだけど、下界では使わないってルールがあるし。ごめんねこんなヘッポコな神と契約させちゃって」
「何言ってるんですか!神様!僕達のファミリアはまだ始まったばかりです!ここを乗り切ればきっと生活も楽になりますから!」
「そうですよヘスティア様、どの神の庇護だろうと受ける恩恵は同じ、まだまだこれからですよ!」
「ありがとう君達みたいな眷属に会えて僕は幸せ者だよ!それじゃ!僕らの未来のために2人ともステータスを更新しようか!」
「はい!神様!」
まずはベルのステータス更新いつものようにうつ伏せでベッドに横になる。
「それにしてもベルくん、君はダンジョンに夢を見すぐだと思うよ?あんな物騒な場所に君の望む出会いなんてあるもんか!そのバレン何某だってそんなに強くて美しいなら他の男がほっとかないさ、お気に入りの男の一人や二人は囲ってるに決まってる!」
「なんだか神様怒ってません?」
「怒ってない!そんな事よりベルくんどうせ結婚できっこない他派閥のバレン何某よりもすぐ側にある幸せを探したまえよ」
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STATUS
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名前:ベル・クラネル
種族:ヒューマン
Lv.:1
力(STR):I 77→I 82
耐久(END):I 13→
器用(DEX):I 93→I 96
敏捷(AGI):H 148→H 172
魔力(MAG):I 0→
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発展アビリティ
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・
・
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スキル
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魔法
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【】
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「酷いですよ…神様、敏捷結構上がりましたね」
「うん、ミノタウロスに追いかけられたせいだろうね」
「魔力はまだ0か…僕魔法使えるようになりますかね?…あれ?神様このスキルのところって」
期待の眼差しを向けるベルだがヘスティア様は無常にも手が滑っただけで空欄だと微笑んだ。
「さ!次はフィルくんの番だね、君もミノタウロスに追われて死にかけたそうだし敏捷結構上がってるんじゃ…これは…」
「ヘスティア様?どうかしましたか?」
「いや!また手が滑ってしまってね黒塗りが増えてしまったんだ空欄だから安心したまえ!フィルくんも順当に伸びてる感じだね!いやー我がヘスティアファミリアの未来は明るいな〜ははは!」
その後疲れているだろうという事で俺たちは早々に就寝することになった。
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深夜、ヘスティアは2人のステータス用紙に目をやる
ベルくんに発現した新しいスキル英雄願望…早熟する思いが続く限り効果は持続し思いの丈で効果は向上する。
「おめでとうベルくんついに念願のスキルを手に入れたね」
下界の子供達は本当に変わりやすいんだな、不変の僕たちとは大きく違う、他人の手で君が変わってしまうのは悔しいけど、彼のためになるなら…今は我慢しよう。
問題は…ヘスティアはもう1枚の紙を見る、英雄回帰…回帰する、かつて至った高みまで至るまで効果は持続し■■によって効果は向上する。
「未知のスキルが2人ともだなんて、君達兄弟はいったいどうなっているんだい…」
でも、2人とも可愛い眷属に変わりない。
応援しよう2人の道行を。