「新しい装備、さまになってるなベル」
「兄さんこそ何処かの騎士様みたいだよ!」
騎士か…俺はそんな大層なものじゃないが、褒められて悪い気はしないな。
「「それじゃ行ってきます神様」」
未だに寝ているヘスティア様に声をかけ、今日もダンジョンに向かう俺たち、エイナ女史からサポーターの件を考えるよう言われたが、確かに周りを見ると大きなバックパックを背負った人々がかなりの数いる。
あれがサポーターなのだろう。
本格的にエイナ女史に仲介を頼むかと考える中、後ろから声を掛けられ振り返る。
「お兄さん方お兄さん方、突然ですがサポーターを探していませんか?」
「あれ?君は確か昨日の…」
声をかけてきたのは、昨日路地裏で冒険者に追われていたパルウムの少女に見えるが、なぜ俺たちに声を掛けた?冒険者なら周りに掃いて捨てるほどいるのに。
「…?もしかしてこんらんしてるんですか?でも今の状態は簡単ですよ?冒険者さんのおこぼれに預かりたい貧乏なサポーターが自分を売り込みに来ているんです!」
「そうじゃなくて、君…昨日のパルウムの女の子だよね?」
パルウム?リリは獣人シアンスロープなのですがと言ってフードを外す、そこには犬耳腰にはしっぽも見える。
ベルが無遠慮に耳を触って感触を確かめている、動いているし本物な様だ。
1度きちんと話し合ってから決めるということで脇のベンチに3人で座る。
「それで、リリルカさんはどうして僕たちに声をかけたの?」
「はい、見た所…冒険者さん自信がバックパックをお持ちでしたし、白髪のお兄さんはサポーターを目で追っていらしたので、おそらくは…と」
それで!お兄さん方!サポーター入りませんか?とみを乗り出す彼女の勢いにタジタジのベル。
「あ…えっと…出来れば欲しいかなとちょうど思ってた所で」
「本当ですか!ならリリを連れて行ってくれませんか!…リリは貧乏で手持ちのお金も心許なくて」
それに…と前置きをしてから自身の耳を触るアーデ嬢、男性の方にリリの大切なものををあんなにされてしまいましたし…責任を取ってもらいませんと!と頬を赤らめている。
赤面するベルに変わりひとまず今日1日雇う旨を俺が伝えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ダンジョン8階層、キラーアントの群れに囲まれたが難なく突破出来た、仲間を呼ばれる前に処理出来れば問題ないな、1匹ベルが生まれた端から殺したおかげで壁にめり込んでいる。
「…おっ…お二人ともお強い!」
ぱちぱちと拍手してくれているアーデ嬢はいつの間にか魔石を拾っていてくれたらしい。確かにサポーターがいると戦闘に専念できて大変楽だと実感できる。
「リリのおかげだよ戦闘に専念できて助かったよリリ」
「これだけのモンスターを全て片付けてしまえるおふたりの方が全然すごいです!まぁ武器の性能も確かにあるのかもしれませんが…その武器はどうやって入手されたのですか?」
「あぁ、これは僕たちのファミリアの神様から頂いたものだよ、そういえばリリは?どこのファミリア所属なの?」
「はい、ソーマファミリアに…あぁそうだ!その埋まってしまったモンスターの魔石も取っちゃいましょ!その間にリリは残りの落ちた魔石を拾います、今日はそれであがりましょ」
「そうだな、ベルが埋めたキラーアントは俺がやろうベルのナイフじゃ届かないだろ?ベルはアーデ嬢の手伝いを頼む」
兄さん!僕だって好きで埋めたわけじゃ…とぶうたれるベルの抗議を聞き流しキラーアントの胴体を切り落とす、すると魔石だけ残してキラーアントは消滅した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ギルドにアーデ嬢のことを報告したがエイナ女史の顔が渋い…何かあるのだろうか?
エイナ女史の話では、ソーマファミリア…彼らは探索が中心のファミリアで、少しだけお酒も売っている、だが皆何処か必死で死に物狂いで、ギルドの換金場でのトラブルも多いという。
「それより、どうなの?そのリリルカさんって子は」
「はい!とてもいい子でした!お陰で今日は何時もの倍です!」
まぁ最後に決めるのはベルくん達の判断だから反対はしないよ、と言うエイナ女史に別れを告げてギルドを後にしようとする…
「ちょっと待って!ベルくん!きみナイフどうしたの?」
え?とベルが腰のホルスターを探るが感触が無い、サーと血の気が引く音が聞こえそうだ。
「お……落としたー!?」
「探すぞベル!あれを無くす訳には行かない!!お前はここまで歩いた場所を探せ!俺は別の道も一応探してくる!」
俺達は夕暮れのオラリオに駆け出した。
結局、ナイフはどこかのパルウムが所持していたのをリオン嬢が発見して取り返してくれたらしい…本当に良かった。
今度改めて礼を言わなければ。
ベルはナイフを探す過程でアーデ嬢にも会ったようで、正式に雇用契約を結んだらしい、別にいいのだが一言欲しかったぞ…弟よ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「改めてリリを正式に雇っていただきありがとうございます!……所でベル様、あのナイフが見当たりませんが?」
「あぁ、今度は落とさないようにプロテクターに格納したんだ。それより、本当に契約金とかいいの?」
「えぇ、お2人に頑張って頂けたらなんの問題もありませから、それにその方が都合がよろしいでしょう?さて、今日はどれくらいまでいきましょうかね?」
本日の合計69000ヴァリス!今までにない稼ぎだ。
「あ!あ!夢じゃないよね!こんなにお金が入るなんて!」
「お二人とも凄ーい!Lv1冒険者5人組パーティの3倍は稼いでますよこれ!」
ベルが、ほら兎もおだてりゃ木に登るって言うじゃない?それだよ!それ!とか訳分からんことを言ってアーデ嬢がそれに便乗して凄ーいと笑っている。
…では、そろそろ今日の分前を、と言うアーデ嬢にベルが23000ヴァリスずつに分けアーデ嬢に袋を渡す。
それに対して、なんで山分けなんですか!?と驚き叫ぶ彼女に便乗して俺もベルに言いたいことを言う。
「ベル…確かに山分けはおかしい、今日の稼ぎがアーデ嬢のお陰なのは明白だ…つまり、追加報酬があってしかるべきだろう?契約金なしでいいなんて高待遇で雇われて貰ってるんだ、それくらいしないとだろう」
「そっか!ごめんねリリ…気ずかなくて」
それぞれの袋からアーデ嬢の袋にヴァリスを入れるが、そうじゃなくて!独り占めしたいとか考えないんですか!?と言われてしまった。
「なぜだ?俺たちだけではこんなに稼げはしなかっただろう、アーデ嬢のサポートあってこそだ」
なぁ?とベルに顔を向けるが、何を当たり前のことを?と首を傾げている。
「全部リリのお陰だよ、ありがとう!明日もよろしくね!」
ポソリ「変なの……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
バベル上層階、神々の住居として使われる一室で1人の女神がダンジョンから出てくる2人の冒険者を見下ろす。
「あぁ…ダメね…しばらくは見守るつもりだったのに、つい手を出したくなってしまう…あなたもなのでしょう?姿なきお客様?」
フレイアが見つめる先、誰もいないはずの部屋の片隅にその女はいた、ローブを目深に被る女はフレイアを睨みつけている。
「…邪魔をしないで…女神…彼は貴女のオーズじゃない…」
「あら…貴女のものでもないでしょう?それに、別に私は邪魔なんてしていないわ…彼らの輝きが見たいだけ…これは貴女の願いとも合致するとおもうけれど?」
女はしばしの沈黙の後霧のように姿を消した。
「哀れね…細くは邪魔されて見られなかったけれど、それでもあの執念…一体、何が彼女を歪めてしまったのかしら…少し妬けてしまうわ…」
フレイアは本棚から2冊の本を取り出す。
「さぁ、みせてもらうわね?あなた達の中に眠っている力を……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メインストリートを1人の女神がとぼとぼと歩いている。
ヘスティアはバベルでの仕事を終えやっとこさ帰路に就いているさなかだった。
「き…今日も乗り切った〜ローン返済の為とはいえ…神の僕を遠慮なく顎で使いおって!はぁ…早くベルくんとフィルくんに会いたい…」
「…………。」
そう遠くない場所から聞こえた声!間違いないベルくんの声だ!振り返り人混みを見渡せば、見覚えのある白髪と銀髪!間違いない、ぼくの大事な子供たちが帰ってきたのだ。
駆け寄ろうとしたその時、小さな手がベルくんと手を繋いでいるのがわかる…微笑ましく笑う二人を見てショックを受けるヘスティアは思わず叫ばずにはいられ無かった。
「ベルくんの浮気者ーーー!!!」