サキュバス編集さんと馬鹿作家 〜そのパンティが動かぬ証拠です〜 作:ガイコツ番付
●検査
「不特定多数と関係を持つ!」
「編集さんは性感染症の」
「リスクが高いです!」
「検査を受ける必要があります!」
編集さんはサキュバスです。
「サキュバスの捕食方法に対して」
「偏った偏見です」
編集さんが鋭い目を向けて言い返す。
偏見ではないはずだ。
「では」
「そこを使わないということですか?」
そんなはずない。
「そうは言っていません」
やはりな。
「では否定できていません!」
馬鹿みたいにデカい乳を見る。
「なるほど」
「では試してみますか?」
「命の保証はしません」
馬鹿みたいに大きな尻をしている。
「嫌です!死にたいわけじゃないです!」
私は何度か生命力を吸われている。
まだなんとか殺されずに済んでいる。
「それにあなたも」
「私から何度も」
「寿命を吸われているでしょう」
「記憶を遡ってみなさい」
それはそうだが。
恐ろしいことに。
「記憶がないんです」
「怖いんですよ!」
「何してるんですか!?」
なぜか肝心な記憶がない。
刺激が強すぎてなのだろうか。
「では」
「記憶を失わないようにしてあげます」
「その後」
「二度と言葉を喋れなくなったり」
「まぁ」
「殺さずにおいたオスの中には」
「色々な後遺症に苦しんだ方もいらっしゃいますが」
「私はあなたが文字を書ければ困りませんので」
倫理観もぶっ飛んでいる。
「いやです!」
「怖いこと言わないでください!」
編集さんが呆れた顔をする。
「本当は試したいのでしょう?」
上から目線に腹が立つ。
「う!」
「いや!」
「その話を聞いたら余計いやです!」
私は死にたい訳ではない。
その上。
廃人になりたい訳でもない。
「今の間はなんですか」
「それにそれを言うなら」
「まずあなたが」
「検査を受ければいいのでは?」
なるほど。
冒頭の問題に議論を戻すのだな。
「異議あり!」
「性感染症の感染率が100%」
「という前提が間違っています!」
私相手にそういう話を。
するつもりなのだな。
「感染率が100%でなければ」
「検査を受ける必要はないと?」
「でしたら」
「私に検査を要求する根拠もなくなりますね」
「あなたが問題にしたのは」
「感染しているという確定した事実ではなく」
「不特定多数を捕食したことによる危険性でしょう」
「そして」
「その危険性が高いと」
「あなた自身が主張する私から」
「あなたは何度も生命力を吸われている」
「同じ理屈なら」
「先に検査を受けるべきなのは」
「あなたなのでは?」
今日も今日とて。
自分の屁理屈を通す気のようだ。
「いや」
「そこは少し待ってください!」
「私の生命力を吸う際に」
「あなたがどこを使用したのか!」
「あなたは知っているはずです!」
「それが解決すればその議論は必要ない!」
私は編集さん含め。
サキュバス以外の存在と。
エッチなことをした記憶がない。
だからそれで解決だ。
もちろん言わない。
マウントを取られたくない。
もとい弱みは見せる必要がない。
「私がどこを使ったか知れば」
「あなたの感染機会がすべて把握できると?」
「それは」
「私以外の女性とは一度も関係を持っていない場合」
「にしか成立しませんが」
「随分と自信を持って断言なさいますね」
「まさか」
「そのお歳まで一度も経験がない」
「ということではありませんよね?」
「でしたら」
「私が何をしたかだけ確認すれば十分」
「だという根拠を説明してください」
最低な編集だ。
お前なんて。
エロいだけしか取り柄のない。
馬鹿なサキュバスだぞ。
最悪だ。
こいつ本当デリカシーがない。
サキュバスがたくさんエッチしてるから。
偉いと思っているのか。
許さん。
それはこと現代的でない。
野生的だ。
所詮サキュバス。
知性も品性のかけらもないな!
●情報開示
「では言いましょう」
「最近はないです!」
期間は具体的には言わない。
「すべての性感染症がそういうわけではないでしょうが」
「これで短期間の影響については説明できますよね」
「さあ」
「早く言いなさい!」
さっさと答えやがれ。
「“最近”とは」
「具体的にいつからですか?」
「一週間」
「一年」
「それとも十年以上を」
「すべて同じ言葉で済ませるおつもりで?」
「過去の感染機会も」
「症状のないまま残っている可能性も」
「それでは何一つ否定できません」
「随分と都合よく期間をぼかしますね」
「まさか」
「生まれてから現在までを」
「最近と表現しているわけではありませんよね?」
ネチネチ言いやがって。
一言喋るたびに。
何言も返しやがって。
なんだこいつ!
「なんですか!」
「例えばその仮定の通りで」
「何か問題がありますか!」
「今は仮定の話です!」
勘違いすんなよ!
「何も問題はありませんよ」
「では仮定として」
「生まれてから一度も女性と関係を」
「持ったことのない男性が」
「唯一の感染機会になり得るサキュバスから」
「記憶を失うほど何度も生命力を吸われている」
「その状況で」
「検査を受けるべきなのは誰でしょうね?」
「少なくとも」
「その男性がサキュバスを怒鳴りつけている場合」
「ではないと思いますが」
「もちろん」
「すべて仮定の話ですよ」
もう許せん。
おっぱい揺らしてしゃべりやがって。
「なんですか!」
「経験が多い方が偉いっていうんですか!」
「所詮あなた達は」
「ほぼほぼ蛮族ですよ!」
「性につけ込んで男を狂わせて!」
「私は童貞ではありません!」
「めちゃくちゃ経験豊富です!」
まぁ。
このくらいの嘘はいいだろう。
だって腹立つし!
「経験が多い方が偉いなど」
「一言も言っていません」
「ですが」
「経験豊富なのでしたら」
「感染機会もそれだけ多いということですね」
「私がどこを使ったか判明しても」
「あなた自身の危険性は何一つ否定できなくなりました」
「やはり」
「先に検査を受けるべきなのはあなたです」
「それに」
「人間の女性を相手にどれだけ経験を重ねても」
「私たちの前では何の自慢にもなりませんよ」
「本気で奪われれば」
「経験者も未経験者も同じように壊れます」
「もっとも」
「本当に経験豊富なのであれば」
「ですが」
私が嘘をついてるっていうのか。
嘘をついているが。
それは置いといて。
こいつは許せない。
「経験豊富だと言ってるでしょう!」
「なめるなよ!」
●証明方法
「証明する方法があるのですか!?」
「あなたなんかに!」
怒りもヒートアップする。
「私に向かって」
「随分な口を利きますね」
「そこまでおっしゃるのでしたら」
「教えて差し上げます」
「サキュバスは生命力を吸えば」
「その相手が童貞かどうかなど」
「簡単に分かります」
「人間には区別できないのでしょうが」
「味がまるで違いますので」
「そして私は」
「あなたから何度も生命力を吸っています」
「ですから」
「証明するまでもありません」
「あなたは童貞です」
信じられない事を…。
言い切りやがった…。
嘘だろ…!
「嘘だといえ…」
「性格悪すぎるだろ!」
童貞までバレた上に。
辱められたのか!?
「証明する方法があるのかと迫ったのは」
「あなたでしょう」
「ご希望どおり嘘だと言っても」
「事実は変わりませんよ」
「それから」
「誤解のないようにお伝えしますが」
「あなたから生命力を吸う際に」
「あなたが期待しているような方法は使っていません」
「ですから」
「記憶を失っている間に何かあったのでは」
「と期待していたのなら」
「残念でしたね」
「あなたは間違いなく」
「現在も童貞です」
童貞がバレた上に。
童貞が継続中だと!?
童貞に童貞を重ねただと!?
「ぐ!」
だが。
もはやバレたものは仕方ない。
「いいでしょう!」
「だから何ですか!」
開き直るしかない。
「童貞であること自体には」
「何の問題もありませんよ」
「人間同士の価値観など」
「私にはどうでもいいことです」
「ただし」
「サキュバスにとっては少し意味が違います」
「未経験のオスは」
「生命力に余計なものが混じっていないので」
「童貞のままの方が」
「美味しいのですよ」
「あなたが筆を折って作家でなくなったときには」
「食料としての価値が一つ増えましたね」
うそだろ。
こいつ。
マジか。
●解決方法
「童貞バレした上に」
「死刑宣告までされるんですか!?」
いや!
しかし!
だがこれは!
防げる!まだ!
覆せる!
「なるほど!」
「ただし」
「私が童貞なのは」
「現在までです!」
そう。
未来の私が卒業すれば。
こんな化物に殺される理由はない!
「何か勘違いをしていませんか?」
「今から卒業したところで」
「あなたが食料になることは防げませんよ」
「それに」
「一度でもサキュバスに生命力を吸われた身体が」
「今さら人間のメスで満足できると」
「本気で思っているのですか?」
「せいぜい頑張ってください」
な。
こいつ。
今さらっと。
「え?」
え。
殺されるルート回避できないの?
「いや」
「でも」
「え?」
「ほら」
「世の中には童貞もたくさんいるわけで」
「私を殺さなくても」
「ね?」
私は必死に愛想良く振る舞う。
編集さんの目つきは変わらない。
●理由
「他に食料がいることが」
「目の前の食料を見逃す理由になりますか?」
「あなたは私の正体を知っている」
「口が軽く」
「態度が悪く」
「放置すれば秘密を漏らす危険がある」
「それでも原稿を書くから」
「生かしておく価値があるのです」
「筆を折れば」
「その価値がなくなります」
「危険を消せて」
「ついでに食事にもなる」
「むしろ」
「私があなたを殺さない理由を」
「教えていただけますか?」
なんてことだ。
「ありません…」
だが。
「一生書き続けますので!」
「どうか!」
「見逃してください!」
とりあえず情に訴えておく。
サキュバスって物理的に殺せないのか!?
物書きを続けながら。
コイツとあの出版社のサキュバスを殺す方法を。
模索しなくてはならない。
「見逃す」
「という表現は正しくありませんね」
「今は」
「原稿を書くあなたを作家として」
「利用しているだけです」
「締切を破る」
「筆を折る」
「私たちの正体を口外する」
「そのどれも」
「あなたを作家から食料へ戻す理由としては十分です」
「一生書くという言葉ではなく」
「次の原稿で証明してください」
「さて」
「話を戻しますが」
「あなたはいつ検査を受けるのですか?」
この馬鹿おっぱいは。
人の感情がないのか。
わざと言ってるのか。
「もう」
「どうでも良くなりました…」
「どうせ感染機会がある時は」
「死ぬ時なので…」
諦めるつもりはない。
いつかぶっ殺す。
必死で調べてやるからな。
サキュバスの弱点。
「そうですか」
「ちなみに」
「あなたが死ぬ時」
「私は一言も」
「使ってやる」
「などとは」
「言ってません」
嘘だろ…。
童貞のまま殺すのかよ…。
●真相
「ちなみに」
「ここまでお話ししておいて何ですが」
「私たちは定期的に性感染症の検査を受けています」
「人間用の検査でも問題なく判定できますし」
「私はすべて陰性ですよ」
あ?
今までのは。
何だったんだ。
「お前…」
「いつかぶっ殺す…!」
やばい。
言葉に出てしまった。
「構いませんよ」
「殺せるものなら」
「ただし」
「その前に原稿を仕上げなさい」
編集さんが冷たい目のまま告げた。
まるで。
人間がサキュバスを殺せるなど信じていないかのように。
こうして私は童貞の上に童貞を重ね。
サキュバスから食料としての死刑宣告をされ。
いつか編集さんを討伐することを心に誓った。