4月22日、金曜日の午後。
僕ら一年玄武組の生徒は、戸隠学園の演習林、その北端に集められていた。
鬱蒼と茂るそこは、学園の敷地とは思えないほど広い。
(涼と錬次は別の場所で待機しているんだよな。合流しないかって誘われたけど……)
僕、風見宙飛がそんなことを考えていると、担任の巌倉先生の重厚な声が、森の静寂を震わせた。
「これより、実戦演習『
巌倉先生の説明を、頭の中で整理する。
規則は、だいたいこうだった。
・制限時間は3時間。
・範囲は演習林内、直径約3キロメートル。
・逃げ子は一年生の全4組、84名。
・鬼役は三年生の志願者20名。
・逃げ子は開始10分前に演習林内の好きな場所へ移動する。
・鬼は逃げ子を見つけ次第、手錠を掛けにいく。
・手錠を掛けられた逃げ子は即脱落。開始地点に自分で戻る。
(要するに、見つからなければそれでいい。幸い、演習林には木々や茂みのような遮蔽物がいくらでもある)
鬼に見つかっても、手錠を掛けられなければいい。
だから、戦うという選択肢もある。
(でも、相手は三年生だ。正攻法では、まず敵わないだろう)
複数人で行動すれば、対抗できる可能性は上がる。
その代わり、発見される危険も増える。
僕のような人間は、たぶん一人で隠れていた方がいい。
「最後に、時間内にすべての生徒が捕まった組は、全員退学とする。覚悟して臨むように」
巌倉先生の言葉に、生徒たちがどよめいた。
(退学だって? そんな簡単に言うなんて……)
冗談だ、と誰かが笑うと思った。けれど、誰も笑わなかった。
この学園なら、本当にやりかねない。そう思わせるだけの空気があった。
「風見くん」
背後から声が掛かり、僕は振り返る。
「真神くん」
声を掛けてきたのは飴色の癖毛に、犬のような垂れ目の少年、
玄武寮
「ぼく達は一緒に行動することにしたんだ。風見くんも来ない?」
真神が示す方を見ると、そこには残りの虚宿室の面々、
真神の提案に、僕は少しだけ迷った。
彼らと行動すれば、確かに生存率は上がるかもしれない。
「断らせてもらうよ。足手まといにはなりたくないし、僕は独りの方が隠れやすい」
「……分かった。健闘を祈る」
傷代は、僕の答えを聞くとあっさり頷いた。
真神は残念そうな顔をし、鹿深は何を考えているのか分からない顔で同じく頷く。
そのまま三人は森の中へと消えていった。
次々に、他の生徒たちも森へ入っていく。
それぞれが、自分の隠れ場所を求めて散らばっていった。
(僕も早く移動しないと……)
周囲を警戒しつつ、僕も薄暗い木々の中へ足を踏み入れた。