演習開始から二時間半が経った。
陽が落ち、森の闇が辺りを包み始め、空気も少しずつ冷え込んでいく。
「なんか、このまま終わっちゃいそうだね」
「油断するなよ。まだ30分もある」
雷哉が小さく呟くが、それを苅砥がたしなめる。
「退学もあり得るから、見つからないのが最適だけれど、これはこれで退屈だね」
「退屈でもいいよ。このまま誰にも見つかりませんように……」
つまらなそうな珪晶に、雷哉が気弱に応える。
「残念ながら、それは叶わないな」
その会話に、四人目の声が割り込んだ。
いつの間にか、すぐ傍に亜麻色の髪を持つ青年が立っていた。顔には、鬼の面を着けている。
「私の名は
笹舟の言葉に雷哉は身震いし、苅砥は舌打ちをし、珪晶は目を細める。
「隠れ方は悪くない。だが、生き物の内に流れる微弱な電気までは隠せていない」
「……生体電流を読んでいる?」
珪晶が呟く。
「そういうことだ。この力で何人も捕まえてきた。次は、貴様らだ」
笹舟が言い終わる前に、苅砥は動き出していた。
「良いぞ、判断が早い」
苅砥が鎌を振りかぶるが、その刃は笹舟の金色の十手に防がれる。
「真神くん、手前らも行くよ」
「あっ、うん」
珪晶の言葉に、雷哉も二振りの短剣を両手に構えた。
「影踏み!」
苅砥が笹舟の影を踏み、叫ぶ。次の瞬間、笹舟の動きが重くなる。
その隙に、珪晶と雷哉が挟撃を仕掛けた。
「「「がっ……!」」」
しかし、笹舟の周囲の空気が、白く弾ける。
電撃が走り、三人の体をまとめて貫く。
「良い連携だ。私も多少、本気を出さざるを得なかったぞ」
笹舟は手錠を取り出し、苅砥に掛けようとする。
その瞬間、雷哉の双剣が閃いた。二振りの短剣が、笹舟の手元を払う。
「ほう。あれを受けて、まだ動けるのか」
笹舟はとっさに後ろへ飛び退く。
「電気には、耐性があるんです!」
雷哉は左右の短剣を駆使し、追撃する。
「そうか。貴様も私と同じ属性なのだな」
笹舟の声に、わずかな興味が混じった。
「鹿深、動けそうか?」
「もう少し時間が必要だね」
雷哉と笹舟の剣戟を見ていた苅砥が問い、珪晶がそう返した。
「そうか。俺は真神に加勢する」
「手前も動けるようになったら、電撃の届かない位置から援護するよ」
「いや、この演習は、敵を倒すことが目的じゃない。誰か一人でも逃げ切ればいい。俺たちが時間を稼いでいる間に、鹿深はここから逃げろ」
「……了解したよ」
未だ痺れの残る珪晶を残し、苅砥は笹舟に向かって駆け出した。