勇者よ、風呂へ入れ   作:金谷 勇作

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第十話 王都を、守れ

 場所は王都の宿屋、人類の希望勇者ブレイブとその仲間、僧侶リリス。

 いま、勇者は新たな危機に直面していた!

 そう!リリスに付き纏う魔族フラムは…

 風呂に入っていなかった!

 

 

 突如、けたたましく警報音が鳴り響く。

 王都に魔物が襲来!

 戦闘員は直ちに魔物を撃退せよ!

 繰り返す…戦闘員は直ちに…

「あら、魔物ですか、珍しいですね」

「あぁ、ここは並の魔物なら滅多に寄り付かないはずだ。」

 王都に魔物が襲来することは、まれによくある程度である。

 王都の結界は魔物を消滅させるだけでなく、つよい魔物をレベルダウンさせる力もある。

 王都正門付近までたどり着く頃には、だいたいの魔物は虫の息だ。

「まぁ、今回も王様直属の騎士団がなんとかするでしょう。」

「そうだな、俺たちが前線に立たなくても…」

 敵勢力およそ…百!百です!

「なんだって!」

 百…?そんなに多くの魔物が襲来したことはない。

 騎士団だけで捌き切れるとは思えない…。

「リリス!俺は騎士団の援護に行く!」

聖剣を携え、ドアをに向かう勇者ブレイブ。

「私もお供します!」

リリスも武器を取り、勇者のあとに続く。

「リリス様!アタシも…ついて行き…」

 マズイ!フラムについて来られては、何が起こるかわからない…。

 何故ならこいつは…風呂に入っていない!

 たがどうする?

 どうやって、フラムを言い包める…?

 …そうだ、これしか…ない!

「ダメだ。」

「フラムは、ここで待っていてくれ。」

「どうしてだ!私はリリス様の従者になりたい!」

「仕えたい人が、知らない所で死んだかと思い悩みながら生きたくないんだ!」

 

 

 …フラム…リリスが消息を絶ってから…彼女なりに必死に探し回ったのだろう…。

 目に薄っすらと涙さえ滲んでいる。

 …だが…。

 ブレイブはフラムの目を真っ直ぐに見て話す。

「リリスは俺が必ず守る!」

「だから、フラムお前はリリスの帰る場所を…ここを守るんだ。」

 「ブレイブ…。」

 なんか、リリスの好感度が3上がる選択肢を、選んだ音がしたが…気のせいだろう。

 「…わかった。」

 「必ず無事に帰ってこい!必ずだぞ!」

 「あぁ!」

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 …いい感じにフラムを煙に巻いた。

 リリスを守るというのは本心だ。

 嘘ではない。

 俺は勇者だ、パーティーメンバーは必ず守る。

 

 

 王都正門前では、魔物の群れが溢れかえっていた。

 

 …百…どころではない…どうしてだ…?

 まぁいい、今はとりあえずこの場を収めなくては!

「みんな!加勢にきたぞ!」

 

 やや劣勢だった騎士団の曇った顔が晴れる。

「おお!勇者様だ!」

「勇者様!よろしくお願いします!」

「みんなもう安心だ!勇者が来たぞ!」

「勇者様!サインください!」

「あとで握手して!」

「キャーこっち見たわ!」

 

 …結構余裕そうじゃないか…。

 「行くぞリリス!」

 「はい!」

 襲い来る魔物を勇者の聖剣が一刀両断する。

 …今日はなんでか、身体が軽い…。

 僧侶のバフがあるとはいえ、大型の魔物を一撃で倒せるなんて…。

 気になったブレイブは、ステータス画面を開きながら戦闘を始める。

 すると、剣が魔物に当たる瞬間、魔物の名前の横に一瞬だけ何かが表示されている…。

 「これは…デバフ魔法か!」

 リリスは俺の剣が当たる一瞬だけ、敵が柔らかくなるようにデバフを入れている。

 目にも留まらぬ速さで…。

  

 「ありがとうリリス!」

 「いえ、そんな…。」

 

 リリスが一瞬俯いた瞬間、ガッ…と剣が魔物に引っ掛かる手応えがあった。

 だが、ブレイブは力を込めて敵を両断する。

 今のはちょっと硬かったな…。

 まぁいいや、次だ!

 大立ち回りで敵を薙ぎ払う勇者。

 魔物の群れが全滅するのに半時もかからなかった。

 怪我人は…居ないらしい。

 流石、ミーハーそうでも騎士団…。

 「ご協力感謝します、勇者様。」 

 「いや、勇者として当然のことだ。」

 「それそれとして、サインもらえませんか?」

 「こう鞘とか、内小手でもいいんで!」

 「…あぁ、かまわないぞ。」

 「みんなー!勇者がサインくれってよー!」

 押し寄せる騎士団…!

 「私は肩に!」

 「兜にしてください!家宝にします!」

 

 

 …ふと勇者に一抹の不安がよぎる。

 

 【激レア】勇者ブレイブ直筆サイン入り兜

 昔、知人から譲っていただいたものです。

 かなり前のものなので、いつ・どこで書いていただいたものかは覚えておりません。

 当方あまり詳しくないため、写真にてご判断ください。

 長期自宅保管のため、多少の傷や汚れ等ございます。

 神経質な方はご購入をお控えください。

 鑑定書等はございません。

 

 …などとならないだろうか…。

 …まぁいいか。

 サインの下に数字振ってこ…。

 闇市に流されたら、すぐにわかるだろう…。

 流したやつ…見かけたら、次のサインは似顔絵も添えてやろう…。

 

 この、王都正門の勇者サイン会は、勇者初のサイン会として騎士団で評判高く、後に伝説として語られる事になる…。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 魔物退治を終えて帰路につく、勇者ブレイブと僧侶リリス。

 「あの、ブレイブ。」

 「どうした?」

 「実は…。」

 この流れは、二人で夕食の誘い…だろうか?

 いや、まぁたしかに、だいたい戦闘のあとは食事の効果が切れる。

 攻撃力15%アップとかも切れてしまう。

 だから、戦闘後はだいたいレストランで食事が基本…。

 「今日の魔物のことで…。」

 あぁ、そっち、そっちね。

 …ちょっと期待しちゃったじゃない。

 俺も思春期だもの、親密度イベントとか、期待したっていいじゃない…。

 ちょっとがっかりしたが、それはそれとして…

「何か気づいたのか、リリス。」

「実は…今日の魔物は、なにか様子がおかしかったのです。」

「おかしい…?」

「何か…強大な魔力に惹かれるような…」

「魔物は大きな魔力に惹かれるのか?」

「えぇ、会話のできる魔族と違って、魔物は魔力の大きさがすべてですから。」

「魔力が大きいと、取り込んだときに力を増しやすいからか。」

「もしかして…この王都に…何かあるのか…?」

「恐らく…。発生源を絶たねば、また魔物が襲来するでしょう。」

「俺たちで、元凶を探し出そう。」

「はい、王都の平和のためにも!」

 

ーーーーーーーーーー

 宿に戻った勇者一行。

 

 フラムが二人を出迎える。

 「リリス様!よくぞご無事で!」

 「大げさですよ…。」

 …走り寄ってくるフラムから、相変わらず獣のような匂いがする…。

 

 宿に到着して一息つく間もなく、再び警報音が鳴り響く。

 魔物襲来、今度は…千!?

 

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