勇者よ、風呂へ入れ   作:金谷 勇作

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第二話 パーティーメンバーを、集え

「どうした!勇者よ!気は確かか!」

 

 勇者は我に返る。

 冷静に考えて、風呂にはいらないせいで敗走したなんて、誰も想像できるはずはない。

 勇者たちのメンツのためにも、適当なことを言わなくては…

 「歴戦の勇者たちの記憶が剣を通じて流れ込んできまして、その内容があまりにも非業の死ばかりでしたので…」

 話を聞いた王は、諸手を挙げて勇者に問う。

 「おお勇者よ!勇者たちの記憶を引き継いだのだな!」

 「であれば問いたい、十二回にわたる魔王征伐に失敗したその原因は一体何であったか…?」

 刹那、勇者に緊張が走る。

 まずい。

 この王様、思ってたよりしっかり対策するタイプの人だったか。

 どうする…風呂にはいらなかったせいで負けたと言うか…?

 いや、信じるか…?

 俺が気が触れたと思われて投獄されてはおしまいだ。

 ここは…。

 「実力を過信し、慢心したことであるかと。」

 半分くらい嘘はいっていない。

 前夜祭だの、感覚でパリィだのは慢心といえば慢心である。

 王は腕を組み深く頷いた。

 「そうか…敵は己自身、心の中に巣食う魔物であるということだな。」

 勇者は内心ガッツポーズである。

 よぉし、なんか深読みした。

 「では、勇者よ、世界を救うために出立するのだ!」

 

 そして、王城をあとにした勇者ブレイブ。

 彼が一番最初に困ったもの、それは…

 パーティーメンバーだ。

 

 …どうする。

 …どうする勇者俺。

 男のみで編成すれば簡単だ。

 皆直接風呂へ入れと言えば、とくに大きな問題にはならない。

 同性だからだ。

 昨今、厳しくなるセクハラ問題に頭を悩ませる必要はない。

 

 だがしかし、一つ大きな問題に直面する。

 勇者ブレイブの周囲は暗転し、思考が加速する。

 

 我々は人間である。

 モンスターを攻略する際、初見ノーダメプレイなんてのは、ほぼ間違いなくできない。

 俺が2週目とかなら全員フルアタ構成するだろう。

 レベルとか引き継いでるし、もう通常攻撃でワンパンよワンパン。

 コントローラーとかあったら連射で通常攻撃しちゃうね。 

 なんなら稼いだ金も引き継げるからポーション飲み放題、ドリンクバー付きの旅よ。

 

 …だがしかし、そんなもの。

 うちにはない。

 

 あるのは聖剣と、僅かな路銀だけである。

 …あの王様、めっちゃケチじゃない?

 魔王討伐事業費削りすぎじゃない?

 王宮の財政担当が

 「あぁ…魔王征伐費ねぇ、成果ないから削減で。」

 みたいなこと起こってない?

 

 さて、ここでとある問題が浮上する。

 

 「男に回復されたくない。」問題である。

 

 この、どっかの誰が有名な人が唱えた最終ファンタジーなその理論は、大きな波紋を呼んだ。

 

 心の中に理性的な勇者俺と心に従う俺が対立を始める。

 「…だがしかし、異世界、東のジャパンという国では、医療が発展していて、病院なるものが存在する。」

 「そこには医者というものが存在し、病人をことごとくヒールするそうだ。」

 「そして、医者には男はもちろん、おっさんも存在する。」

 

 勇者ブレイブに閃きが走る。

 「…あれ?実質これおっさんにヒールされてない?」

 「ファンタジーではヒーラーは女だが、ジャパンでは男のしかもおっさんにヒールされてない…?」

 「風邪のときとかもうしんどい時、男にヒール受けるかどうかよりも、いいから治してほしいが勝ってないか?」

 「ならそんなに女のヒーラーに拘る必要はあるのか…?」

 薄っすらと医者のおっさんがこちらに親指を立てていいねして微笑んでくるイメージが去来する。

 

 だがしかし!

 冷静に考えてみてほしい、もし俺が魔王を倒し、冒険譚が伝説になったとしよう。

 パーティーは男一色である。

 そして、もっとこう数百年とか時間が経って伝説になっちゃって、誰かが勇者俺の名前を使った二次創作とかに使われたとしよう。

 

 あぁこのパーティーなぁ…ムサいなぁ…1人くらい女の子にしてバランスとろう…となってしまう。

 

 傾城勇者ブレイブ伝とかそんな名前で。

 めっちゃ流行の浮世絵師とタッグ組んで。

 東のジャパンがEDOだった頃にそんな話があったらしい。

 それは、それは…!

 …男の沽券に関わる!!

 

 俺は出切れば、百倍くらいイケメンに描いて欲しい。

 なんかもう容姿端麗、品行方正な勇者として教科書に載るくらいになってほしい!

 なんでだ!今まで、結構頑張って勇者らしく振る舞ってきて、そしたら勇者になれたじゃん!

 困った人は助けてきたし!武芸の鍛錬も怠らなかった!いったい俺が何をしたんだ!

 ここで一手ミスるだけで、今まで築いた勇者イメージが崩れて、歴史書の俺の結びきっとこうなっちまう!

〜勇者ブレイブはメッチャ風呂に執着したと言われている、しかも風呂に入れと口煩かったそうだ〜

 

 嫌だあぁ…どうすれば…いいんだ…

 

 勇者ブレイブは頭を抱え、途方に暮れた。

 この悩みは 深淵より深い。

 

 「勇者様!」

 振り返ると、法衣を纏った少女が立っていた。

「私をぜひ、旅のお供にしていただけませんでしょうか!」

 

 




次回9月3日20時08分更新予定。
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