勇者よ、風呂へ入れ   作:金谷 勇作

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第五話 依頼を、捌け

「そっちにいったぞ!右だ右!」

「はい!」

息を切って走る勇者ブレイブと僧侶リリス。

彼らは今、追跡任務にあった。 

「リリス、マルタイの位置は?」

「感知魔法で調べます…でました!中央広場です!」

「よし、俺が詰める!リリスは退路を塞げ!」

「わかりました!」

 

瞬間、勇者は全速力で街を駆けた、風を切り、風圧が店の暖簾を巻き上げる。

…見えた!マルタイ!

「バインドッ…!」

黄金の輪が対象をつつみ、そして拘束した。

屋根から落ちるマルタイ、勇者は身を挺して下敷きになることで守った。

 

やりましたね勇者様!

煙は晴れていないが、作戦成功の様子を見てリリスが駆け寄ってくる。

 

勇者の腕に抱えられているのは一匹の猫。

王都で大きな派閥の、エレガンス家で飼育される高貴な顔猫様だ。

捕まったというのに相変わらず太々しい顔をしている。

 

「勇者様…怪我を…今治しますね…。」  

再生の光が勇者を包むと、擦り傷が全て塞がった。

相変わらずリリスの再生魔法は高レベルだ…。

 

俺たちは捕まえた猫を家まで届け、ひとしきりお礼を言われた後、教会へと向かった。

ーーーーーーーーーー

 

道中、リリスとブレイブが世間話をする。

「最近、勇者様との連携が上達してきている気がします!」

「あぁ、指示に対してすぐに作戦行動が取れるようになってきた。」 

「初日は退路につくのが遅れてしまって、まんまと犬に逃げられたね。」

「そりゃ、私だって初めてなら失敗しますよ…。」

ふくれっ面で反論する僧侶リリス。

やや、子どもらしい一面も持ち合わせているらしい。

 

ーーーーーーーーーー

この仕事を始めて3ヶ月、協会に舞い込む依頼ごとを解決し続けた。

町民からの評判はうなぎ上りだった。

伝説の勇者の再来、すべてを癒やす女神様の理想的なパーティーと評判がのぼり、連日依頼が舞い込んだ。

だが…肝心な調査について、まだ進捗が芳しく無かった。

 

【リリスが風呂に入ってない。】

俺は決して風呂を覗こうとか、そういう理由で気にしているのではない。

聖剣が見せた記憶、歴代勇者たちの敗因は、風呂に入らなかったことによる敗北だったのだ。

 

あら!ブレイブちゃん今日も元気?

この人はシスター・シャベクリーヌこの協会でもっとも歴が長く、そして話好きだ。

「でねぇ、この間パイプオルガンの演奏してたら間違えて別のキーおしちゃって、司教にこっぴどく叱られちゃったの。」

「でもねぇ、これくらいのミス誰でもすると思わない?」

特に意味のないマシンガントークに辟易する勇者。

だが、無視はできない、こういう御局の許しがたいランキング第2位くらいに「無視」がはいるからだ。

「…でね、シスターリリスだってね…」

来た!目当ての話だ…。

「シスターリリスに良くない噂でも?」

「そうそう、あのこ決して沐浴しないのよ。汚いったらないわ。」

「我々は神に使える身、常に身ぎれいにしておくべきだと思うの。」

「確かに、シャベクリーヌ、リリスが沐浴を拒否したのはいつから?」

「最初からよぉ。ある日突然別の街から教会にやってきてね。それで、そのまま僧侶になったの。」

「詳しい経緯はアタシも知らないわ…。」

「でもなんでか、あの子明るいからずっと一緒にいるような気になるのよ!」

シスターリリスの評判は非常に良いようだ。

なら…なぜ沐浴だけ本人は異様に嫌がるんだ…?

ーーーーーーーーーー

別の日、今度は海底に沈んでしまった結婚指輪を探してきてほしいという依頼を受ける。

なんでも妻がヤケで海に投げ入れ、後悔したからだそうだ。

しかもよりによって、海上に魔物が湧く危険な海へ。 

 

勇者ブレイブは閃く。

直接風呂に入るか聞けないなら、水に浸かることに抵抗があるか、調べられるいい機会ではないか。

 

「リリス!魔力探知でリングを探せるよな!」

「はい!私なら探せます!」

「なら、海中探索は任せていいか!」

「俺は海上のモンスターをやる!」

「海中の敵は少ないが油断するなよ!」

「わかりました!行ってきます!」

直後バリアをまとって海中に沈んでいくリリス。

…まぁそうするよな。濡れたくないもんな。

 

思惑と外れつつも、勇者ブレイブは地上の飛行型ワイバーンの相手をする。

振り被った剣から衝撃波が出てワイバーンが落ちていく。

勇者といえば剣から衝撃波だ。

魔神の力を借りたり、調子がもうすごい良かったりすると衝撃波がでたり、ビームをブッパする剣士もいるそうだ。

なぁ…剣士って…なんだ?

 

地上のワイバーンの掃討が終わった頃、海中のリリスはようやく指輪を発見した。

だが、探索用のライト魔法に惹かれてサメが近寄ってくる。

「きゃっ。」

ヒビのはいるバリア、水が少し侵入してきた。

水中で有効な攻撃はほとんどない。

海水に電気は分解されて通らない、火は論外、氷は巻き込まれる。

一度うえに上がって、勇者と合流しなくては。

海面まで上書した僧侶リリス、バリアを円形から水平に変え足場を作る。

「勇者様!サメです!」

リリスの声を聞いた勇者ブレイブは海岸線からリリスのいる場所に向けて跳躍する。

そしてサメの脳天に着地し、剣を突き立て一撃を食らわせる。

大きく怯むサメに勇者は振り落とされて陸地へ飛ばされた。

海上にのこったリリス。

「まずい、防御を固め…」

ドゴォン。

サメの腹に2つの衝撃波の輪ができる。

あまりの衝撃で、サメに行っていた視線をリリスに戻す。

正拳突きの構え…あまりにも卓越した技巧、あの境地に至るのは50年で足りるのだろうか。

俺、そんなに年取ってないから50年とか適当だけど。

直後足元のバリアが割れ、リリスが海に落ちる。

「まずい!」

リリスは沐浴を嫌っている、おそらくは金槌か水にトラウマが…。

「勇者様ー終わりましたよー!」

漫勉の笑みで海から顔だけだして、こちらに手を振るリリス。

どういうことだ、海に落ちたのに平然としている…。

水にトラウマがあるわけじゃない…?

なら一体なぜ沐浴をしたことがない…なんて言うんだ…?

突き止めるしかない、パーティーメンバーの弱点を知ることは重要だ。

弱点を突かれて転んでダウン、そして敵の攻撃もう1more入ってゲームオーバー…そんな死に方は恥ずかしくて仮面を被ってしまいそうだ。

 

ここは王都外縁の港場、近くに温泉宿がある。

彼女は服もずぶ濡れだ。

…真に風呂嫌いなのか…見極めねば。

魔王討伐と世界の平和のために!

 

非常に真面目な勇者ブレイブ、リリスの真相に迫れるのか。

次回へ続く!

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