トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
ダース・シャハー。
それがいずれ大きな災いをもたらす存在であり、帝国の再興を計り、銀河を脅かすシスの暗黒卿だというのはセーヤは感じ取った。しかし、それだけだ。
ダース・シャハーがどこで何をしているのか、帝国残党がどんな作戦を企てているのか、具体的にどんな行動を取れば効果的なのか、そもそもセーヤはどの星に向かって誰と出会うべきなのかが解らない。帝国残党の情報に通じている知り合いでもいればいいのだが、生憎、セーヤにもテンノーにもいない。
となれば、情報収集から始めなくてはならない。そのためには、人の出入りが激しく、帝国残党の情報を握っているであろう人々が立ち寄る場所に行くのが最適解である。だが、その条件が満たされている場合、おのずと治安が悪い。当然なのだが。
差し当たって思い付くのは、アウターリムの悪党の吹き溜まりと名高い惑星、タトゥイーンだった。セーヤは気が進まなかったが、じっとしては何も始まらないからだ。
「タトゥイーンか……」
ハイパースペースを航行中、セーヤはコクピットの操縦席に身を沈めた。
「そんなにお嫌ですか」
テンノーに案じられ、セーヤは盛大なため息を吐いた。
「だって、ハットの本拠地だよ?」
「ハット・カルテルについては私も存じておりますが、近付かなければ問題はないでしょう」
「こっちがその気じゃなくても、あっちがその気だとそうもいかないの。ちょっとしたことで因縁を付けられて大金を吹っ掛けられるか、無茶な仕事を押し付けられるか、奴隷にされていいようにされるか……」
セーヤがげんなりすると、テンノーは慰めた。
「考えすぎですよ」
「テンノーはハットと関わらなかったから、そんなことが言えるんだよ。ナザ・シーサイもハットと取引するのはなるべく避けてきたけど、裏社会で商売する以上はそうもいかないから、ハットとあれこれしていたんだけど、傍目に見ていても厄介で……」
「そんな時こそヴィジョンが役立つのでは?」
「どうだか。フォースは気まぐれだもの」
実際、セーヤが知りたい未来は見せてくれないのだから。タトゥイーンで情報収集を済ませたらすぐに移動しよう、砂にまみれるのも嫌だし、とセーヤが悶々としていると、ボブ・キャット号はハイパースペースを脱した。
砂の惑星が待ち構えていた。
だが、しかし。
タトゥイーンは、セーヤが懸念していたよりも鬱屈とした状況ではなかった。二重恒星によって絶え間なく日光が注がれることにより、気候は温暖を通り越して灼熱で、広大な砂漠から運ばれてきた砂で空気がざらついているのは困りものだが、意外と栄えていた。
宇宙港のあるモス・アイズリーには、ポッド・レースのホロ・ボードが掲げられていた。大企業のスポンサーの名を背負ったレーサー達が次々に紹介されたが、中でも目立っていたのがアナキン・スカイウォーカーだった。
「このレースってさぁ……」
セーヤが苦い顔をすると、テンノーもホロ・ボードを仰ぎ見る。
「レーサーの死亡率が非常に高いことが有名ですね。何せ、スターファイターの剥き出しのエンジンに操縦席を後付けしただけのマシンですので」
「それはスターファイターの撃ち合いと何が違うの?」
「スリルと臨場感ですね」
「それって別に面白いことではないよ」
セーヤの意見に、テンノーは理解した。
「セーヤからすると、それは日常の一部でしかありませんから、そんな感想を抱くのですね」
「他の人もそうでしょ? ついこの前まで戦争をしていたんだし、危険なことはいくらでもあるし」
「それはそれ、これはこれなんですよ。非日常的な快楽を得るには、この手のスポーツは最適なのです」
「スポーツねぇ……」
テンノーから説明を受けるも、セーヤはますます解せなくなった。Xウィングを自力で操縦する方が余程スリルに満ち溢れているのに、なんで人が死ぬ場面を見るんだろう、と思わずにはいられなかった。とはいえ、流行っているからには、それだけの需要があるのは確かなのだろう。
ボブ・キャット号を停泊させるための手続きを済ませてから、宇宙港を後にしてモス・アイズリーに入ったが、こちらもやはりポッド・レースの看板やレース関連の業者、ファン向けのグッズを扱ったショップ、観戦出来る酒場といった具合で、ありとあらゆる経済がポッド・レースで回されていた。
「これはちょっと厳しいんじゃないの?」
セーヤが零すと、テンノーは肩を竦める。
「そうですねぇ。ここで得られる情報は、ポッド・レースのことばかりでしょうし」
「それに、私は酒場に入れないじゃない。賞金稼ぎが仕事を探すのは酒場なのがお決まりで、何らかの情報を握っている人物も酒場にいる場合が多いんだけど、さすがにそうもいかないじゃない」
「同意見です。セーヤはまだ背が低いですし」
「こういう時、マスターがいると便利なんだけど」
セーヤはこれまで出会ったジェダイ・マスターのことを思い出した。ソウ・テッセンが存命であれば、セーヤを待たせてそれとなく情報を得てくれるだろうし、フマガは見た目からして威圧感があるので情報を引き出すのも難しくないだろう。
カミーノとマチルダでもいいんだけど、だけど二人には迷惑を掛けられないし、どうしたもんかな、とセーヤが悩んでいると、声を掛けられた。
「ユー、一人で遊びに来たの?」
セーヤが振り返ると、身なりのいいグンガンの男が首を傾げていた。頭部から飛び出した目と長いヒレに横に広がった口が特徴的で、手にも水掻きが付いている。誰だろう、とセーヤが聞き返す前に、テンノーが挨拶した。
「お気遣いありがとうございます、議員。ええ、そうです。彼女はドロイドである私を連れて、ちょっとした冒険をしているのです」
「あらそうなの、お邪魔したならごめんね。でも、酒場の傍はちょっと危険よ。よかったら、ミーも途中まで一緒に行くから」
グンガンの申し出に、セーヤは迷った。一緒に中に入ってくれませんか、知り合いと待ち合わせしているので、と嘘を吐くのは簡単だ。だが、彼は身分が高い上に善良だ。なんだか気が引けてしまう。そこで、セーヤは言い訳を捻り出した。
「この星は乾燥しているので、喉が乾いちゃって。それから、初めて来たのでよく解らなくて……」
「そうだったの。それなら、あっちで一杯奢るね。ミーもそうよ、タトゥイーンは気温が高くて」
グンガンが酒場を離れ、別の店に向かったので、セーヤはテンノーと共に移動した。ドリンクスタンドでメイルーランのドリンクを買ってもらい、日除けのパラソルが付いたテーブルに座った。
「ありがとうございます」
セーヤが礼を述べると、グンガンは笑った。
「いいのよ、ミーもちょっと休みたかったし。視察に来たのはいいんだけど、自由時間がなくて。アニーの家に行きたかったんだけど、そんな暇もなくて」
「ご友人ですか?」
テンノーが問うと、グンガンは街の至るところにあるホロ・ボードを指した。ポッドレーサー、アナキン・スカイウォーカーを。
「うん、ミーの大事な友達。アニーが小さい頃にナブーで出会って、それ以来ずっと。オビ=ワンとクワイ=ガンも友達だけど、あっちも忙しいからずっと会えていないのよね。寂しいけど」
「それは……」
テンノーが察すると、グンガンは頷く。
「そうよ、とっても強くて偉いジェダイ・マスター。おかげでナブーも救われたし、ミーもグンガンの皆と上手くやれるようになったし」
「同族なのに?」
セーヤが不思議がると、グンガンは肩を竦める。
「ミーは戦うのがあんまり得意じゃなくて、グンガンの中だと浮いていたのね。グンガン、マンダロリアンみたいな感じだから。でも、皆の暮らしを良くするための話し合いや、色んな人に会って意見を聞いたりするのはミーは得意だと解ったから、新共和国の元老院でも議員をさせてもらっているんだけどね」
だったら私はどうなんだろう、とセーヤはふと思った。トワイレックだが、トワイレックの故郷であるライロスの記憶はない。チェーンコードによれば、ライロスで生まれたことになっているが、セーヤが育てられたのは別の星だ。だから私もトワイレックだけどトワイレックじゃないな、とセーヤは一抹の寂しさを覚えたが、口には出さなかった。
「視察と仰いましたが、どこに赴かれたのですか」
テンノーが問うと、グンガンは答えた。
「うーん、それは内緒。ミーにも立場があるから。でも、悪いことにはならないと思うの」
ドリンクを飲み終えると、グンガンは椅子から立ち上がりかけたが中断した。
「名乗り遅れちゃったけど、ミーはジャー・ジャー・ビンクス。ユー達は?」
「私はセーヤ・ミットー、彼はテンノーです」
セーヤが名乗り返すと、ジャー・ジャーはにこやかに手を振った。
「それじゃ、セーヤ。タトゥイーンを楽しんでね」
ジャー・ジャーは軽快な足取りで日差しの下に出ていくと、秘書らしきドロイドが飛んできた。どうやら、仕事の合間にこっそり抜け出してきたらしい。
「議員ってああいうものなの?」
セーヤがテンノーを見やると、テンノーは首を横に振った。
「いえ、例外です」
「だよねぇ……」
セーヤはドリンクの残りを啜りながら、思い出した。新共和国の元老院議員は、コルサントでもかなり身分が高く、余程のことがなければ上層区域から下には降りてこないし、下層区域を視察することもないし、通りすがりの子供に話しかけたりもしない。政治的なパフォーマンスでもなければ。
変わった人もいるもんだなぁ、銀河は広いから、と思いつつ、セーヤはドリンクを飲み終えた。空のカップをゴミ収集ドロイドに入れようとしたところ、見覚えのある人影が視界の端を過ぎった。
あれは確か。
タトゥイーンは居心地が悪くなった。
観光客には快適でも、賞金稼ぎからすればやりづらい。しかも暑い。ベスカーアーマーには温度調節機能があるとはいえ、直射日光を浴び続けると中身に熱が籠ってくる。とはいえ、マンダロリアンにとってのベスカーアーマーは体の一部であり、肌も同然だ。脱ぐわけにはいかない。
ろくな賞金首にありつけず、ケイ・ホークは酒場を抜け出した。別の街に移動して探し直そうか、それともギルドに顔を出して、とケイは考え込んでいたが、視線に気付いた。
「お?」
反射的にブラスターに手を添えながら振り向くと、見覚えのあるトワイレックの少女がこちらを見ていた。その隣には年代物のバトルドロイドがいる。
「あ、やっぱり」
セーヤはケイに気付き、駆け寄ってきた。
「今は誰かに雇われているの?」
「いや、別に」
ケイがブラスターから手を外し、ベルトに両手を掛けると、テンノーは懸念する。
「セーヤ。賞金稼ぎにみだりに近付くものではないですよ、危ないですから」
「でも、情報収集するには大人がいないと」
「それはそうですが……」
テンノーはケイを窺うも不審そうだった。
「俺にどうしてほしいんだ、お前らは」
ケイが首を傾げると、セーヤは説明した。
「帝国残党が何をしているのかを知りたいんだけど、どこから始めたらいいのか解らなくて。ケイは賞金稼ぎだから詳しいでしょ?」
「うーん、まあ……」
知らないこともない。だが、あまり気が進ます、ケイは言葉を濁した。以前は賞金首だったので依頼主に引き渡したが、セーヤはまだ子供だし、ジェダイとして独り立ちしているわけではないから尚更だ。
「いくら出す?」
値段次第では突っぱねよう、思いつつケイが要求すると、セーヤは新共和国のクレジットを出した。
「5000でどう?」
情報収集の報酬としては悪くない。むしろ高額だ。ケイは今の自分の懐具合と仕事の内容を比較し、検討した末、セーヤの依頼を受けることにした。
次の仕事までの繋ぎには丁度良い。
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ナザ・シーサイ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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サウス・ギ・ハーラ
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ソウ・テッセン
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ダース・シャハー
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ユマ・ハイライト
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サク・ラギーチョ
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