トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
ポッド・レース開催当日。
モス・アイズリーは前日から賑やかだったが、当日ともなれば観客がどっと押し寄せ、ますます騒がしくなった。アナキン・スカイウォーカーの引退セレモニーがあるのでは、と期待したファンも多かったが、それらしいものは行われなかった。その一方で、今回のレースで新たなチャンピオンの誕生を待ち望む声が大きく、レーサーの世代交代を予感させた。
花火が上がり、ホロ・ボードでは出場チームが華々しく紹介されたが、ホーン・ゴーダのチームが紹介されたのは一番最後だった。レーサーとしてエントリーされているのはブルース・ライナーという名で、ヘルメットとレーシングスーツを着た姿の映像が添えられていた。
「あれは変更しなくてよかったの?」
セーヤがホロ・ボードを指すと、カミーノが舌を出す。
「全銀河に中継されているんだ、この方がいい」
「都合のいいことに、ブルース・ライナーのヘルメットとレーシングスーツが残っていたから、それを着てもらえればカミーノの顔も隠せる。死んだら死んだで粉々に吹っ飛ぶから、それはそれでバレない」
ケイがしれっと言い放つと、セーヤは眉を下げる。
「嫌なことを言わないでよ」
「それはスターリバー少尉の腕前次第ですね。私や整備ドロイドは最善を尽くしましたから」
テンノーがカミーノを窺うと、カミーノは軽く手を振った。
「それじゃ、後はよろしく。エンジンを暖気しておかないと」
「俺も野暮用を済ませてくる」
ケイもまた、セーヤの肩をぽんと叩いてから雑踏に消えていった。セーヤは二人を見送ってから、テンノーと共にパドックに向かった。事前に渡されていた関係者用パスを警備ドロイドに見せ、セキュリティを通過した。
多数のスポンサーに支えられて豊富な資金力を持つチームは、レーサーの他にピットクルーにオペレーターといった大勢のスタッフが出入りしていて、潤沢な予算を使って惜しみない改造を施したマシンでエントリーしていた。ポッド・レースを取材に来ている記者やドロイドも、こちらに群がっている。
それに対し、ホーン・ゴーダのチームは必要最低限で、整備ドロイドすら増やせなかった。テンノーのおかげでなんとか整備が終わり、カミーノの操縦に合わせた改造も施せたが、試運転をする間もなく予選に参加する羽目になった。そのおかげで新たな不具合と改良点が見つかったものの、それらを修正した状態での試運転をする暇もなかった。実質、ぶっつけ本番なのである。
「大丈夫かなぁ……」
スターティンググリッドに並んだ24機のマシンがエンジンを噴かし、轟音を立てて暖気する光景を見ながら、セーヤが不安に任せて呟いた。
「大丈夫だと信じるしかない」
ホーンは最後尾に位置しているマシンに目をやると、ブルース・ライナーのヘルメットとレーシングスーツを身に付けたカミーノが最終チェックを行っていた。表情が見えないせいか、ちょっと格好良い。
レースクイーンの衣装を強引に着たテンノーがカミーノの頭上にパラソルを差し掛け、声も掛けている。周囲が騒がしいので、カミーノはテンノーの頭部にヘルメットをがつんとぶつけ、至近距離で返事をしてからテンノーを離した。
「あ」
なんだ、あれ。セーヤはぎょっとしたが、相手はテンノーなのだと思い直した。驚くほどのことじゃない、周りがうるさいからああやっただけで、とセーヤは動揺を収めようとしたが、上手くいかなかった。
レースの直前だからだろうか。
カウントダウンの後、レースが始まった。
観客席の目の前のスターティンググリッドから一斉に24機が発進する、はずが、そのうちの数台が早々にエンジントラブルを起こしてリタイアした。カミーノのマシンはスピードが乗り切っていなかったので、ただの障害物と化したマシンを回避して進めたが、スピードが上がり始めていたマシンは追突した。
この時点で24機が17機まで減ってしまい、そのうちの一機は前年のレースで優勝した経験があるレーサーだったので雲行きが怪しくなってきた。スタートした時点で大荒れだが、更に荒れそうだ。
ケイは渓谷の間に身を伏せ、ホロ・ネットを通じてレースの状況を確認していた。タトゥイーンまで来たのに観戦出来ないのは物足りないが、セーヤに雇われているからには仕事を全うしなくては。
「さて……」
ケイはヘルメットの内側で独り言を零し、レンジファインダーを下ろした。思った通り、マシンを狙撃しやすいポイントに身を伏せている輩がいる。このために雇った賞金稼ぎか、犯罪組織の鉄砲玉か。その先に視線を向けると、落石に見せかけて岩を落とすための爆薬が仕込んである。センサーを切り替えると、中継用の撮影ドロイドが一瞬死角になる岩場の陰には複数の熱源が埋められている。地雷だ。
それは俺も予想の範疇だ、とケイはブラスター・ライフルを据えてから上空を仰ぎ見た。レースに勝つためにはどんな手段も厭わない奴らばかりだから、事故を装ってスターファイターも突っ込ませてくる。案の定、怪しげな機影が遠くに見える。優勝賞金も高額だが、それ以上にレースの勝敗によって大量の賭け金が動くからだ。自分のチームが勝てば大儲け出来るが、負けたら大損する。そして、賭けた金額が多い分だけ、ハット・カルテルへの借金が嵩む。
どこかで手を引き、ハット・カルテルとは縁を切らなくては骨も残さずに喰い尽くされるだけだ。しかし、一発逆転出来るのではという期待を抱き、損した分だけ取り戻したいがために、ギャンブルの一瞬の快楽を忘れられないがために、皆、賭けてしまう。
「やだねぇ、どいつもこいつも」
ケイはヘルメットの下で口角を曲げたが、マシンの轟音が近付いてきたので気持ちを切り替えた。スタートしてから間もないが、先頭を走っているマシンはスタートした時点からは変わっていた。どうやら、ここに至るまでにもトラブルが起きたようだ。
ケイは岩の間に身を伏せてマントを被り、ベスカーアーマーの光沢を隠してからブラスター・ライフルの引き金に指を掛けた。先頭のマシンが視界の悪い渓谷を擦り抜け、突破しようとすると、例のスナイパーが構えた。ケイはそのスナイパーの頭部を一発で撃ち抜いた途端、砂埃が舞い上がって視界が塞がれた。
カミーノのマシンは後方に付いていたが、エンジン音からして不調は起こしていない。先行して飛ばし過ぎたマシンが燃料切れを起こすか、何らかのトラブルに見舞われるのを待っているのだろう。ポッド・レースでは定番の作戦だ。
「頼むぞ、色男」
ケイはジェットパックを作動させ、渓谷の上を移動していった。カミーノは小生意気でいけ好かない男だが、レースに勝って生き残ってくれなければ困る。
ホーン・ゴーダが大損すると、ケイのガンシップの燃料費さえも捻出出来ないからだ。セーヤから得た報酬だけでは足りるわけがない。賞金稼ぎは実入りも大きいが、出費も激しいのが難点だ。
いつものことではあるが。
渓谷が途切れ、砂漠を横切る。
その先にはまた新たな渓谷が現れ、先頭を行くマシンが次々に吸い込まれていく。カミーノは頭に叩き込んだコースレイアウトを思い出しながら、Xウィングのそれよりも軽い操縦桿を傾け、剥き出しのエンジンの出力を微調整してカーブした。
ここまでは順調だ。ケイの援護により、不都合も起きていない。テンノーがエンジンだけでなく操縦系統も整えてくれたから、余計な癖が抜けていてレスポンスも早くなっている。その分、速度も安定するので惜しみなくスピードも上げられる。どうせ、ブレーキなんて付いていないのだから。
すると、渓谷の前方で爆炎が起きた。ケイは咄嗟にマシンを傾け、渓谷の壁面に沿って上昇したが、そのタイミングが一瞬遅れたマシンは爆発の余波に巻き込まれ、岩石に激突して吹っ飛んだ。
巨大な岩が砕けたものが散乱し、粉塵と共に撒き散らされる中、カミーノはジェットパックのアフターバーナーを認めた。故意に落石を引き起こされる前に、ケイが岩そのものを吹き飛ばしたのだろう。
「やるじゃないか」
さすがマンダロリアンだ、抜け目がない。カミーノは感心するも、レースに集中した。二度目の渓谷を通過し終えると、見通しのいい砂漠に突入したが、またしてもコース上で爆発が起きた。しかし、いずれのマシンも到達する前だったので、粉塵に突っ込む程度で済んだ。これもまたケイの仕業だろう。
この先はひたすら砂漠で直進し、ゴールを目指すのだが、それ故にレーサーの真価が発揮される。燃料切れを起こして後退したマシンを追い抜き、カミーノは順位を上げていく。
今、自分の順位がどこなのかはよく解らない。監督でもあるホーン・ゴーダとのコムリンクが切れているからだ。だが、追い抜いていけば順位が上がる。優勝は難しくても、せめて表彰台に届けばいい。
そうすれば俺は、とカミーノは操縦桿を握る手に力を込めた。セーヤの笑顔が脳裏を過ぎるが、集中力を保つために払拭する。雑念が混じるとつまらないミスをする、とパイロットでもある父親に訓練で叩き込まれたからだ。
正面に小さく見えていたモス・アイズリーの街並みが、徐々に近付いてくる。もう少し、だからこそ油断は出来ない。カミーノは加速に伴うGに耐え、歯を食い縛っていたが、不意に通信が入った。
『上昇して! 真下から大きいのが来る!』
セーヤの声だった。カミーノは咄嗟に操縦桿を倒し、マシンを急上昇させると、突如として砂漠が膨張した。爆発かと思いきや、そうではなかった。恐ろしく巨大な生物が口を開け、迫ってきた。
「クレイト・ドラゴン!?」
カミーノは辛うじてクレイト・ドラゴンの牙から逃れたが、後続のマシンはそうもいかずに激突し、吹っ飛んでいった。どうにか難を逃れても食らい付かれ、放り投げられてしまう。その間にカミーノはコースに戻り、ホームストレートに突っ込んだ。
誰よりも速く。
正体を明かせないのが惜しかった。
ブルース・ライナーとしてレースに優勝し、表彰台にも上り、ありとあらゆる祝福の言葉を浴びせられたが、それはカミーノへのものではない。いっそのこと名乗り出たいが、そうすると同盟軍を除隊させられるのが目に見えている。
表彰式を終えたカミーノは、ずしりと重たいトロフィーを携え、散々浴びせられた酒で湿ったレーシングスーツに辟易しながらピットエリアに戻った。無茶な操縦に耐えてくれたマシンも引き上げていて、テンノーがエンジンのパネルを外していた。
「御無事で何よりです。そして、優勝おめでとうございます」
「セーヤのおかげだ」
カミーノはマシンの陰に隠れ、ヘルメットを外した。レーシングスーツを緩めると、汗と酒が混じったものが垂れ落ちていく。鬱陶しい。
「なんでクレイト・ドラゴンが出てくるって解ったんだ? それがセーヤのフォースなのか?」
「はい、セーヤのフォースは未来予知に特化しておりますから。当人によれば、それが的中する確率は七割程度、だそうですが」
テンノーが答えると、カミーノはグローブを外し、汗ばんで湿った髪を掻き上げた。
「んで、セーヤとマンダロリアンは?」
「セーヤはホーンと一緒に運営本部に行き、賞金を受け取りに行きました。ケイはその護衛です」
「で、受け取った傍から借金を返済するわけか」
「仰る通りです。レースが始まる前から借金取りがうろうろしていましたからね」
「足りなかったとしても、あんな飛び方は二度と出来ないからな」
カミーノは右側頭部の髪を後ろに撫で付けていると、テンノーが右側頭部の古傷に気付いた。
「それは……」
「ああ、気にするな。子供の頃になんかにぶつけて切ったんだ」
カミーノが髪を戻すと、三人の話し声が近付いてきた。カミーノは顔を出せないので隠れたまま待っていると、セーヤがエンジンをひょいっと飛び越え、カミーノの前に着地した。
「よかった、ちゃんと戻ってきてくれて」
「セーヤのフォースのおかげだ」
カミーノが頬を緩めると、セーヤはちょっと照れた。
「たまには役に立つね」
「喜べ、セーヤ。帝国残党に繋がる情報がどこにあるのか、ホーンが教えてくれる」
ケイがホーンの背を押すと、ホーンは借金を返済出来た高揚感に任せて言った。
「俺が帝国軍の基地から持ち出したコードシリンダーがあるんだが、そいつをハットの宮殿に落としたんだ。だが、中身は保証する。新兵器の図面の一部だ。大丈夫、あんた達なら盗み出せるさ」
「ケイ……」
セーヤがケイを窺うと、ケイはぼやいた。
「ダンク・ファリック。出来ればハットの宮殿には行きたくなかったが、もうちょっと付き合ってやるよ」
「俺は」
カミーノは腰を浮かせかけたが、コムリンクの端末から呼び出し音が鳴った。
「チャンピオン、同盟軍からお叱りを受けろ」
ケイが肩を揺すると、カミーノは不本意そうではあったがコムリンクを受信した。
「営倉入りで済めばいいんだけどな」
カミーノはレースの高揚感と優勝の快感が一気に冷め、現実に引き戻された。案の定、オーク小隊の隊長からは冷静ながらも厳しい言葉で叱責され、今すぐ引き上げて合流しろ、ときつく命じられた。
「じゃ、後はよろしく。セーヤも気を付けろよ、そのマンダロリアンは腕は立つが軽薄だ」
カミーノは借り物のヘルメットをセーヤの頭に軽く当てると、マシンの操縦席に放り込んだ。
「……うん、そうする」
セーヤはぶつけられた場所を押さえ、目を泳がせた。カミーノはその態度が気になったものの、任務に戻る方が最優先だったので、レーシングスーツも脱ぎ捨てて本来のパイロットスーツを着直した。お祭り騒ぎのモス・アイズリーを抜けて宇宙港を目指すうちに、カミーノは軍人に戻った。
そして、Xウィングで飛び立った。
好きな登場人物は?
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ヒル・スワンプ
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ホープ・ハイライト
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ナザ・シーサイ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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エア・キャビー
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サウス・ギ・ハーラ
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ソウ・テッセン
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ダース・シャハー
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オード・キュー
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クレイン・ミーネ
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ショーナ・ディノ
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ユマ・ハイライト
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ヴィシャム
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フマガ
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サク・ラギーチョ
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その他