トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
虹色の花を摘む。
小さな花、萎れた花、蕾が膨らまない花を剪定して、弱った葉も落としていく。ヴィシャムは剪定バサミを使い、整えていった。遺伝子操作されていても、やはり生き物なので無駄が多い。故に、適度に取り除いていかなければ、栄養が充分に行き渡らずに不格好な花しか咲かせなくなる。
花が開き切っていないせいで香りも弱いが、品種改良しても消えなかった棘がある。それに気を付けて摘んでいたつもりが、左手の人差し指が引っ掛かった。鋭い痛みの後に皮膚が浅く裂け、血の雫が膨らむ。
「おや」
痛みがある。ヴィシャムは剪定バサミを離し、左手の人差し指を掲げた。外界と離宮を隔てているドームを透かして差し込む日差しが、血の雫を輝かせる。
「殿下!」
鋭い声が飛び、ヴィシャムが振り返ると、ダース・シャハーが黒いマントを翻しながら大股に歩み寄ってきた。
「剪定などドロイドに任せればよろしい!」
「だが、余は時間が有り余っていてね」
「ヴィジョンで見た通りになってしまいました。すぐにバクタ・スプレーをお掛けしますので」
ダース・シャハーはマントを跳ねのけ、右腕の義肢でベルトに付けたポーチを開けようとした。ヴィシャムはそれを遮る。
「構わぬ。傷口を塞いでくれればいい」
「ですが……」
「出来るだろう、シャハー卿」
ヴィシャムが左手を差し伸べると、ダース・シャハーは片膝を突いて平伏する。黒いグローブに覆われた両手を差し伸べ、ヴィシャムの左手を包む。
「私はフォースヒーリングには長けておりませんが、殿下が御所望とあれば」
ダース・シャハーの両手から滲み出たフォースが、ヴィシャムの左手に染み込んでくる。激情を伴わないエネルギーの流れが、ヴィシャムの内側に入り込み、生命力を高ぶらせる。それにより、人差し指の僅かな切り傷が塞がり、血が止まった。痛みは少々残っていたが、それも程なくして失せた。
「殿下は大事な御身体なのです。あまり無理はなさらぬよう」
ダース・シャハーは立ち上がり、胸に手を添えて深々と頭を下げた。
「それなら、外の話をしてくれるかい? トルーパー達が詰所で話しているのを聞いたんだ、なんでもポッド・レースで最強を誇ったレーサーが引退して、流星のように新たなチャンピオンが現れたと」
ヴィシャムがダース・シャハーを覗き込むと、ダース・シャハーは姿勢を正す。
「ホロをご覧になりますか」
「それもいいが、例のコードシリンダーを回収するためにタトゥイーンに行っていた者もいるだろう? 直接、レースを聞かせてほしい」
「承知いたしました」
「それから、コードシリンダーの行方は?」
「マンダロリアンの賞金稼ぎが現れた、という情報を得たのでそちらを追っています。ですが、時を同じくしてトワイレックの女奴隷とランコアが逃げ出したのも気掛かりです」
「ジェダイだろうか」
「その可能性は極めて高いです。いずれにせよ、殿下の心を乱さぬように努めます。では、タトゥイーンから戻ってきたトルーパーを呼んでまいります」
ダース・シャハーは一歩身を引き、マントを翻して中庭から去っていった。左足は生身だが右足は義肢なので、左右の足音が異なっている。
「殿下、そちらをお預かりします」
園庭ドロイドがやってきたので、ヴィシャムは剪定した花と葉が入ったカゴを渡した。
「この花を絞って香料を作れるか?」
「可能ですが、いかがなさるおつもりで?」
「いい香りがするとよく眠れるんだ。だから、寝る時に使おうと思ってね」
「かしこまりました」
園庭ドロイドは一礼した後、中庭を後にした。ヴィシャムはダース・シャハーの帰りを待つ間、中庭のベンチに腰掛けた。いずれ消えるであろう傷跡が付いた左手の人差し指を気にしながら、手を翳し、呼吸を整えて意識を集中させる。
ダース・シャハーがそうしていたように、ヴィシャムもフォースに働きかけた。噴水から散る水滴を見定めたが、ほんの数滴が空中に静止しただけだった。
「ぶはっ」
無意識に息を止めていたようで、ヴィシャムは呼吸を取り戻したが疲労が押し寄せてきた。
「皆、当たり前のように使っているのになぁ……」
フォースも、ライトセーバーも。ヴィシャムは己の不甲斐ないフォースに恥じ入ったが、ダース・シャハーが戻ってくるまでには気持ちを持ち直そうと努めた。皆が求めているのは皇帝の後継者となる器であり、やがて再興する帝国の象徴たる皇太子なのだから。
せめて、それらしくしておかないと。
フォースの揺らぎを感じた。
けれど、大きな異変や不穏な未来を告げるほどのものではなかったので、ショーナ・ディノはやり過ごした。それよりも重要なのは、目の前に積まれたスターファイターと戦艦の残骸の山だ。ジャワからすると、文字通り宝の山である。
惑星シンシダーは、大規模な戦闘の痕跡が残されたままだった。帝国残党を退けるべく、新共和国軍と同盟軍による連合艦隊が攻撃を仕掛けてきたが、ダース・シャハーの活躍によって返り討ちにされた。それにより、シンシダーは以前にも増して帝国残党の支配が強まり、地表にも衛星軌道上にも新たな拠点が次々に造られていた。
『シンシダーに反乱者が潜んでいるって?』
ショーナはフォースを用いて、無残に潰れたスターファイターを浮かび上がらせた。
「付近の小惑星帯から離脱した後、シンシダーに向かった機影が複数観測されたんだ。それらは、この地点の裏側に向かっていた。流星にしては軌道が意図的だ、となれば反乱者に違いない」
オード・キューが地面を指すと、ショーナはフォースを使ってスターファイターの折れ曲がった翼を剥がし、歪んだフレームを分解し、レーザー砲を取り外す。
『よくやるねぇ、勝ち目もないのに』
「俺は手が空いている。手伝おうか」
オードの申し出に、ショーナはフォースを強めてレーザー砲の砲身を引っこ抜いた。
『余計なお世話だ、俺の取り分が減る』
「ガラクタを欲しがるのはお前ぐらいだし、誰も奪いはしない。そんなものはどうでもいい」
『そっちの方が価値を解っていないね』
ショーナはレーザー砲の砲身を回転させた後、空っぽの砲身に自身のライトセーバーを滑り込ませた。更にその中にレーザー砲のレンズを填め、ライトセーバーを作動させると、本来の赤い光の刀身よりも十倍以上の太さとなって伸びていった。
「そんな小細工が何の役に立つ」
オードが呆れると、ショーナはレーザー砲の砲身の中からライトセーバーを取り出し、手に収める。
『いくらでも』
「好きにしろ。反乱者の制圧はお前に任せた」
オードが黒いマントを翻して背を向けると、ショーナはライトセーバーをベルトに提げた。
『リーダー格は生かしておいた方がいいか?』
「それはダース・シャハーに指示を仰げ」
オードは背を向けたまま手を振り、去っていった。ショーナはオードに背を向けると、再びスターファイターの残骸にフォースを巡らせた。ケーブル、シャフト、ナット、基板といった部品を一つ一つ外し、浮かばせ、思いのままに組み合わせていった。
楽しくてたまらない。
監視ドロイドに偵察させた。
帝国残党が拠点を築いているのは首都だが、反乱者らしきものは惑星の裏側に位置する森林地帯に向かっていた。シンシダーの文明が発展途上だった頃に造られた都市の残骸で、現在は廃墟と化して建造物が森に飲み込まれていた。それ故、かなり入り組んでいるが、監視ドロイドで入念にスキャンすると多数の熱反応が地下や廃墟の中にあった。
帝国残党の勢力と行動を偵察するための先行部隊なのだろう、人数も戦力も限られている。シャトルが一基、輸送船が一基、スターファイターが三基、武装した兵士とドロイドが合わせて三十前後。
これなら特に問題はない。ショーナは監視ドロイドを引っ込めてから、シャトルに同乗してきたストーム・トルーパー達に命じた。
『お前達は待機していろ』
彼らはフォースを通じた念話は通じづらいので、ショーナはコムリンクを経て音声に変換した。
「了解しました」
ストーム・トルーパーの隊長は頷いたが、不可解そうだった。ショーナの戦い方では、部下を引き連れていると動きづらくなるからだ。
『終わり次第、また連絡する』
そう告げてから、ショーナはシャトルのハッチを開けた。眼下には森林地帯が広がり、深い夜に沈んでいる。ストーム・トルーパーがちょっと慌てたが、ショーナはそれを意に介さずに空中に身を投じた。
敵の監視ドロイドに感知されない程度の速度で落下し、木々の間を擦り抜け、フォースを放って軟着陸する。ショーナは小柄な体躯を生かし、夜目を利かせ、密かに反乱者達の拠点へと迫った。
廃墟の中に隠してあるスターファイターを見つけたので、ショーナはフォースジャンプを繰り返し、スターファイターへと接近する。歩哨の兵士が振り向きかけたが、ショーナはフォースを用いて歩哨の兵士を吹っ飛ばした。
スターファイターの翼の下に潜り込むと、ショーナは手始めにアストロメク・ドロイドをライトセーバーで切断して黙らせてから、フォースを機体に馴染ませた。そして、全ての部品を分離させる。
突如、スターファイターが分解されて崩れ落ちたため、異変に気付いた兵士やドロイドが近付いてきた。すかさずショーナはスターファイターの翼を操り、兵士とドロイドに叩き付ける。
「敵襲だ!」
攻撃を受けなかった兵士が駆け出し、増援を呼ぼうとしたが、ショーナは着陸脚と翼の一部を組み合わせた即席の槍を作り、それを掴んで投擲した。兵士の胴体を呆気なく貫通し、壁に突き刺さる。
ブラスターの銃撃が始まったが、ショーナはスターファイターの部品や外装を浮かばせて盾にする。角度を少し変えてやれば跳弾するが、一人ずつ相手にしていられるほど暇ではないので、ショーナはスターファイターに搭載されていたプロトン魚雷を発射した。
至近距離でプロトン魚雷が爆発し、兵士もドロイドも跡形もなく消し飛んだ。ショーナの足元に空っぽのヘルメットが転がってきたので、それをぽんと蹴り上げる。
ヘルメットの中に手榴弾を仕込み、フォースで浮かばせてから森に突っ込ませると、接近してきたスピーダーバイクに命中して爆発する。途端に後続のスピーダーバイクが分散し、ブラスターで銃撃を始めたので、ショーナは身を低くして駆け抜ける。
いくつかのエネルギー弾をライトセーバーで弾きながら接近し、スピーダーバイクに飛び乗り、運転手の兵士の首を刎ねてから奪う。すぐさま別のスピーダーバイクの兵士に撃たれるも、ショーナはそのエネルギー弾をライトセーバーで跳ね返し、撃った本人に当てて黙らせた。
プロトン魚雷の残りを積んだスピーダーバイクを駆り、ショーナは反乱者のシャトルを目指した。分が悪いと踏んで逃げ出そうとしていたが、ショーナはプロトン魚雷を携えてフォースジャンプし、離陸して間もないシャトルの翼に飛び乗った。
プロトン魚雷をシャトルのエンジンに突っ込ませ、爆発させる。ショーナは素早く回避してスピーダーバイクに戻り、輸送船を目指す。
炎に包まれながら落下してきたシャトルを横目にショーナは加速し、輸送船を守ろうとする兵士とドロイドにプロトン魚雷を放り込んだ。彼らが逃げる間もなく爆発し、輸送船のレーザー砲がショーナを撃ち落とそうとするも、ショーナはその砲撃を擦り抜ける。そして、輸送船の外装に沿ってスピーダーバイクを上昇させ、最後のプロトン魚雷をブリッジに投げ込んだ。
大爆発が起きた。
二基のスターファイターは鹵獲した。
生き残りの反乱者はストーム・トルーパーが捉え、シャトルに連行していった。ショーナは輸送船の残骸を眺め、どの部品をもらおうかと考えているとコムリンクに通信が入った。
『ショーナ、守備はどうだ』
ダース・シャハーからだった。ショーナはフォースを交えた通信を返す。
『何も問題はない。反乱者は制圧したし、スターファイターは二基も鹵獲した。それから、一応リーダーは生かしておいた。だが、尋問するのは俺の仕事じゃないからな?』
『解っている。他の者に任せる』
『シャハー卿。フォースの揺らぎを感じたが、俺の思い過ごしか?』
ショーナが先程の感覚を思い出すと、少々間を置いてからダース・シャハーは返した。
『殿下が中庭の花を剪定している最中に、ほんの少し傷を負った。それだけのことだ』
『お加減は?』
『私のフォースで傷は塞いだ』
『それなら大丈夫だな』
ショーナが安堵すると、ダース・シャハーは釘を刺してきた。
『ガラクタで遊ぶのは結構だが、本来の任務を忘れるな。例の試作品の開発チームには、お前も加わっているのだから』
その言葉を最後に、通信が切れた。ショーナはコムリンクをポーチに戻し、小さく肩を竦めた。もちろん、任務のことを忘れたわけではない。だが、ジャワの本能には逆らえないのだ。なので、輸送船の残骸から使えそうな部品を拝借した後、引き上げた。
次は何を作ろうか。
好きな登場人物は?
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ヒル・スワンプ
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ホープ・ハイライト
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ナザ・シーサイ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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エア・キャビー
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サウス・ギ・ハーラ
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ソウ・テッセン
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ダース・シャハー
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オード・キュー
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クレイン・ミーネ
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ショーナ・ディノ
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ユマ・ハイライト
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ヴィシャム
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フマガ
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サク・ラギーチョ
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その他