トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
出発前に寄り道をした。
サク・ラギーチョが自身のガンシップを操縦し、向かったのは惑星ノグマの衛星軌道上を巡っているライドニウム工場だった。ドロイドによって全自動化されているため、ライドニウムの原料となるガスを収集して加工し、濃縮してタンクに詰め込んでいる。だが、それを出荷するための輸送船が来なくなったので、ライドニウムのタンクは放置されていた。
「それを持っていくの? 普通に泥棒じゃない」
ボブ・キャット号からサクのガンシップを遠巻きに見守りながら、セーヤが苦言を呈すると、テンノーは両手を上向けた。
「賞金稼ぎですからね」
「盗みは盗みだと思うけど……」
セーヤは腑に落ちなかったが、サクの行動を咎められないのだと自戒した。このボブ・キャット号にしても、ナザ・シーサイの所有物だったシャトルを盗んできたものだからだ。
しばらくすると、ライドニウムのタンクを積み込んだガンシップが浮上してきた。速度を落としていたボブ・キャット号と並走しながら、サクが通信を入れてきた。
『補給は済んだ。コーズに向かうぞ』
「こちらボブ・キャット、了解。ハイパースペース航路の座標をセット、いつでも飛べるよ」
セーヤが応答すると、サクが返した。
『了解、大気圏から脱すると同時にハイパードライブに突入する。セーヤ、どこかで訓練を受けたのか?』
「少しだけね」
『どんなことであれ、技術と経験だけは無駄にならないし、どこかで何かに役に立つ。いいことだ』
そう言ってから、サクのガンシップは機首を上げて上昇していった。セーヤは操縦桿を傾け、ガンシップに追従しながらテンノーを見やった。
「褒められたのかな」
「少なくとも馬鹿にされたわけではありませんね」
テンノーはスコンプ・リンクにシリンダーを接続し、回転させる。サクのガンシップがハイパースペースに突入すると同時にボブ・キャット号も突入し、星々が一瞬にして遠くに過ぎ去った。
惑星コーズに向かった。
惑星コーズは封鎖されていた。
ハイパースペースから脱出した途端、コーズの周辺に待機しているスターデストロイヤーと軽クルーザーの艦隊に遭遇した。あちらのレーダーに捉えられる前にコーズの衛星に回り込み、速度を落とし、エンジンの出力も最低限に下げた。
船内の明かりさえ落とした状態で、ボブ・キャット号とサクのガンシップはボーディング・ブリッジを接続させた。空気の充填は済んだが、人工重力が解除されているので、セーヤは壁に手を付いて移動した。
「サク、これからどうしよう」
「ほらな、俺の言った通りだ」
サクはボーディング・ブリッジを通り抜け、ボブ・キャット号に乗り込んできた。
「打開策はおありですか?」
テンノーが問うと、サクは腕を組む。
「何も思い付かないね。セーヤにもいい考えがないのであれば、俺はここで帰らせてもらう。危ない橋を渡るのはごめんだ」
「あのライドニウムは?」
セーヤがサクのガンシップを指すと、テンノーは手を打った。
「それです、あれを活用しましょう。熱反応がなければ、あまり警戒されませんからね。ライドニウムのタンクに時限式の爆弾をセットして、スターデストロイヤーの進路に浮かばせるんです。コーズの周回軌道に合わせて微速前進しているので、しばらく待てばライドニウムのタンクに接触します。そのタイミングは私が計算しますので、サクは爆弾を用意して下さいますか。賞金稼ぎですから、爆弾の在庫はありますよね?」
「あるにはあるが、ちょっと無謀じゃないのか」
サクが懸念するも、セーヤは提案した。
「それなら、コーズをぐるっと大回りして反対側にライドニウムのタンクを置いてきたらどうかな。そうすれば、すぐには見つからないだろうし」
「だとしても、タイミングが掴めない。相対速度を計算したとしても、かなり厳しいぞ」
サクが苦言を呈するも、セーヤは押し切った。
「大丈夫! だと、思う」
「余計に不安になるが」
サクの言い分は尤もだったが、セーヤには確信めいたものがあった。この作戦は成功する、という自信すら感じている。その一方で、こうも思う。上手くいきすぎるのはよくないことが起きる前兆ではないだろうか、と。
こんな時ほど、フォースは応えてくれない。自分自身で判断しろ、ということか。それなら、手を尽くして結果を出した後で判断を下せばいい。そう思いながら、セーヤはサクとテンノーの指示を受け、ライドニウムのタンクに時限式の爆弾をセットした。
それから、ボブ・キャット号とガンシップは大回りしてコーズの反対側に移動し、ライドニウムのタンクをスターデストロイヤーの進路に配置した。再び衛星の裏側に戻り、その時が来るのを待った。
「俺は自分の船に戻る」
そう言い残し、サクはガンシップに戻った。セーヤもボブ・キャット号で引き続き待機したが、なんだか落ち着かなかったので瞑想することにした。無重力で浮遊した状態でも集中出来てこそジェダイだ、と自分に言い聞かせて足を組んだ。
そうしていると、フォースを通じて別の意識がセーヤの意識に接してきた。サクの意識だ、と気付き、あの感覚は本物だったのだと察した。彼もまたフォースユーザーなのだ。
「フォース。いや、違う。俺の故郷ではアシュラと呼ばれていた」
セーヤの内側にサクの言葉が響き、セーヤもまた言葉を返す。
「アシュラ。初めて聞いた」
「古い言葉だからな。ライトサイドとダークサイドよりも馴染み深いのは、アシュラとボーガンだ」
「サクはジェダイなの?」
「まさか。ただ、俺達の種族はアシュラと通じ合う力を持って生まれてくる。それだけのことだ」
「それなら、あなたの故郷は……」
セーヤはサクの意識により深く接しようとしたが、遠ざけられ、瞼を開いた。途端に瞑想も途切れ、セーヤは天井にぶつかった。
「いたっ」
強かにぶつけた額を押さえながらも、セーヤはサクと通じ合っていた余韻に浸った。自分と他人の隔たりが消え失せたような、身も心も宇宙に委ねたような、肉体という枷から解き放たれたような、心地良さの一方で不安を伴うものだった。
アシュラ、ボーガン。
予定通り、ライドニウムは爆発した。
艦隊の主力であるスターデストロイヤーは艦体の底部に深刻なダメージを受け、航行を停止した。軽クルーザーもまた同等のダメージを受け、速度が低下した隙を見計らい、ボブ・キャット号とサクのガンシップは帝国艦隊の警戒網を擦り抜けた。
だが、惑星コーズの地表もまた帝国残党によって占領されていた。大規模な採掘を行っているらしく、山が丸ごと吹き飛ばされたようで爆発の痕跡があり、その爆心地で露天掘りをしていた。
「無茶苦茶な……」
ボブ・キャット号の操縦席から地上の惨状を目の当たりにしたセーヤが唖然とすると、サクから通信が入った。
『俺が来た時よりもひどくなっている』
「それで、何を採掘しているんです?」
テンノーが問うと、サクは答えた。
『現物を見せた方が早い。付いてこい』
ガンシップが旋回し、軌道を変えたので、セーヤはボブ・キャット号の針路をそちらに合わせた。帝国残党が各地に仕掛けた監視塔のレーダーに引っ掛からないように高度を下げ、山や岩場といった遮蔽物を利用し、海面すれすれを飛行していった。
繊細な操縦が要求されるため、テンノーには任せておけず、セーヤは操縦桿を握り締めてペダルを踏んでいた。宇宙と大気圏ではスピードの感覚もまるで違うため、スラスターの出力を下げすぎると失速して墜落しかねないが、少しでも上げすぎるとレーダーに感知されてしまう。幸い、サクが飛び方の手本を見せてくれているので凌げているが、セーヤとテンノーだけだったらすぐに帝国艦隊に撃墜されているだろう。
低空飛行の末に到着したのは、陸地からかなり離れている離島だった。それでもかつては住民がいたようで、集落や畑が見受けられたが、人の気配はない。島の中央にある山の一部が切り崩され、そこに寺院らしき古い建物が埋め込まれていた。
二つの機体は砂浜に着陸した。セーヤとテンノーが外に出ると、サクは二人を促した。簡素ながらも人々が生活を営んでいた家は放置されていて、畑の作物は枯れ、漁に使うための船が横転していた。
「この島に住んでいた人達はどこに行ったの?」
セーヤは腰に帯びたライトセーバーに手を添えながら問うと、サクはブラスターを手にした。
「帝国残党に強制収容された」
「その後は?」
「収容所で生かされているなら、まだマシかもな」
サクは突き放した言い方をしたが、そこまで踏み込めるほどの力もない、という諦観も滲んでいた。セーヤが目を伏せると、テンノーが呟いた。
「セーヤ。全てを救い、背負える者はおりません」
「それはそうだけど……」
セーヤは納得しながらも腑に落ちなかった。私が本物のジェダイなら、と思いはするが、ジェダイだって万能じゃないんだから、と冷静に捉えている自分もいた。フォースも同様だ。だから、信じることで力を引き出せるとしても、妄信すると視野が狭まって取り返しの付かないことになる。シスのように。
寺院に到着すると、セーヤは立ち止まった。ジェダイ寺院を訪れた時と似たような、強いフォースの流れを感じたからだ。
「これって……」
「やっぱり解るんだな」
サクは寺院の両開きの扉に手を翳すと、独りでに動き、開き始めた。セーヤも同じことをすると、扉は開き切り、寺院の中心から光が溢れた。祭壇に鎮座しているのは巨大なクリスタルで、光と共にフォースが滲み出している。
「あっ」
セーヤはライトセーバーに熱を感じ、ベルトから外して構えると、独りでに緑色の光の刃が伸びた。しかし、その輝きは普段よりも力強い。
「共鳴している」
セーヤが目を見開くと、サクはクリスタルに歩み寄っていく。
「これはこの星の鉱山でしか採掘されないコーズクリスタルで、カイバークリスタルほどじゃないが似た性質を持っているんだ。だが、アシュラの巫女……フォースユーザーでなければ使いこなせないし、その力も引き出せない。せいぜいレーザーのレンズにするのが精一杯だ」
「それを帝国残党が欲しがっているってことは」
セーヤは寺院に入り、コーズクリスタルに両手を翳す。セーヤのフォースに呼応し、光が高まる。
「シスの連中が妙なことを企んでいるに違いないと踏んだんだが、俺が調べられるのはここまでだった。コーズクリスタルの輸送ルートも割り出したが、俺一人だと返り討ちに遭うのがオチだ。だが、俺はまだ死ぬわけにはいかないんだ。だから、ここで手を引かせてもらう。それでいいな、セーヤ」
サクはセーヤに向き直る。
「でも、私は」
一人前のジェダイじゃない、とセーヤは言おうとしたが、テンノーがセーヤの言葉を遮った。
「偉大なるグランド・マスター、ヨーダはこう仰っておりました。やるか、やらないかであり、試すことはない、と」
「解った」
セーヤはライトセーバーの刃を消し、サクに手を差し伸べる。
「やるよ。私がやってみせる」
「アシュラよ、加護を与えたまえ。俺の故郷では、そう言うんだ」
サクはセーヤの手を握り、マスクの下で笑みを見せた。セーヤはサクと共に寺院の外に出ると、彼のガンシップが飛び去るのを見届けたが、強い気配を感じた。忘れもしない、シスの冷たくも燃えるようなフォースの高まりだ。
この星に戦うべき相手がいる。
好きな登場人物は?
-
セーヤ・ミットー
-
テンノー(NO-10)
-
カミーノ・スターリバー
-
ヒル・スワンプ
-
ホープ・ハイライト
-
ナザ・シーサイ
-
ケイ・ホーク
-
マチルダ・グランベリー
-
エア・キャビー
-
サウス・ギ・ハーラ
-
ソウ・テッセン
-
ダース・シャハー
-
オード・キュー
-
クレイン・ミーネ
-
ショーナ・ディノ
-
ユマ・ハイライト
-
ヴィシャム
-
フマガ
-
サク・ラギーチョ
-
その他