トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる   作:あるてみす@二次創作

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26.目覚めの時

 座して心を鎮める。

 両手を組み、目を閉じ、呼吸を細くした。瞑想することで、セーヤはフォースとの繋がりを確かめる。ありとあらゆるものに宿る力であり、命の息吹であり、自分と他者を隔てる川であり、途方もなく広い宇宙への入り口だ。

 自分を見失わないためには、何をするべきなのかを忘れないためには、この力を向ける方向を間違えないためには、フォースの海に溺れないように心を定めなくてはならない。

 寺院のコーズクリスタルの輝きが増し、セーヤの影を濃くする。傍らに置いたライトセーバーは、カイバークリスタルから漏れる光が強まっていた。テンノーはセーヤの背後に片膝を突く。

「セーヤ」

「サクはもう行った?」

「はい。無事、コーズを離脱しました」

「テンノーも下がっていて。私はまだ、自分のことで精一杯だから」

 セーヤは瞼を上げ、ライトセーバーを握って立ち上がる。

「はい。御武運を」

 テンノーは胸に手を添え、深々と頭を下げた。彼の姿が寺院から去った後、セーヤは開け放たれた扉に向き直る。ゆっくりと足を進めながらライトセーバーを起動させ、緑色の光の刃がセーヤの半身を照らす。

 光を背にして闇が現れる。黒いマントを羽織った者もまた、ライトセーバーから赤い光の刃を伸ばし、禍々しくも鮮やかな色が影を薄らがせる。

「俺を待っていたのか」

 オード・キューだった。

「あなたもそうでしょ?」

 セーヤは両手でライトセーバーを握る。

「その通り!」

 オードは黒いマントを脱ぎ捨て、身を躍らせる。セーヤは両足を踏ん張り、最初の斬撃を防ぐ。赤と緑の光の刃が拮抗し、火花が散る。

「多少は出来るようになったようだな!」

 オードはフォースを伴う蹴りを放ち、セーヤを吹っ飛ばした。セーヤはコーズクリスタルに激突しそうになるも、フォースを放って身を転じる。コーズクリスタルを足掛かりにして直進し、オードに斬り掛かる。

「くうっ!」

 浅い。切っ先は届かずに空を切り、セーヤは歯噛みしながらも身を引き、柱を蹴る。オードは的確にセーヤの攻撃を受け、凌ぎ、大きく踏み込んで一太刀浴びせてこようとする。

 辛うじて回避出来るのは、オードが次にどんな手を繰り出すのかが見えているからだ。だが、それはオードも同じだ。互いにヴィジョンを通じ、先読みしながらライトセーバーを振るっている。それはジェダイとシスであれば、誰しもが身に付けている技術であり、セーヤもそこに至りつつあった。

 それでもやはり、経験と力量の差は埋められない。セーヤは正面からオードに挑むも、オードの太刀筋は力強かった。それ故に隙がなく、攻めきれない。

「シャイ=チョー……」

 セーヤが熱を帯び始めたライトセーバーを握り直すと、オードは爬虫類めいた尻尾を揺らす。

「そうとも、俺のセーバー剣術は基本に忠実だからな。だが、お前のセーバー剣術は定まっていない。動きはシャイ=チョーだが、中途半端にマカシの斬り方で動きはアタルだ。どれが自分に合うかも解らんまま、知識だけを集めたようだが、そんなもので強くなれるほど単純ではない!」

 オードは大股に踏み込み、一瞬でセーヤの懐に滑り込む。赤い光の刃がセーヤに迫り、首を刎ねる寸前で緑色の光の刃で遮った。しかし、フォースの気迫には勝てず、セーヤは再び吹っ飛ばされる。

「あぁっ」

 クリスタルを通り越して寺院の天井に激突しそうになり、セーヤは素早く身を転じ、天井の太い梁と板をライトセーバーで断ち切り、穴を作った。その先にある屋根も斬り、セーヤは空中に躍り出るも、オードのフォースが襲い掛かってきた。

 単なるテレキネシスの威力だけではない、精神も打ちのめされてしまう。セーヤは屋根の上を転がり、端に引っ掛かった。こんなの無理だ、勝てるわけがない、と怯みそうな心を奮い立てる。

「まだだ……!」

 セーヤが両足を踏ん張って立ち上がると、フォースジャンプでオードが追ってきた。

「お前がシスの道を選ぶのであれば、俺は手を引こう。やがて築かれるシス帝国でも、相応の地位を約束しようじゃないか。だが、あくまでもジェダイで在ろうというのなら!」

 オードはライトセーバーを構え、踏み込む。セーヤはその斬撃を受ける前に屋根から飛び降り、僅かに重力に従って落下するも、フォースを放った。

 寺院の開け放した扉の先に、コーズクリスタルが見えた。セーヤは両手を向け、コーズクリスタルにフォースを注ぐと、クリスタルの内部でフォースが乱反射する。それは光を伴って増幅され、オードが振り返った瞬間には光の柱と化して空に突き刺さった。

 島が震え、海が逆立った。

 

 

 誰だ、これは。

 スターデストロイヤーのブリッジにて、ダース・シャハーは気配を感じ取った。今までにないほどのフォースの高まりが伝わってくる。真っ新で真っ直ぐで、それ故にとても危ういフォースの持ち主だ。

「これは……」

 ダース・シャハーは腰に帯びたライトセーバーに手を掛けた。オード・キューと戦っているのだと察したが、身構えずにはいられなかった。マスクの下で目を伏せると、ヴィジョンが過ぎる。いずれは刃を交える相手になるのだ、と。

「いかがなさいましたか、シャハー卿」

 帝国残党の提督に問われ、ダース・シャハーはライトセーバーから手を離した。

「いや、気にするな。我々は作戦を遂行するまでだ」

「心得ております」

 提督は一礼した後、艦隊の指揮に戻った。ダース・シャハーはブリッジを去り、ストーム・トルーパーの敬礼を受けながらも歩調を早めた。

 士官用の居室に入り、施錠してから、ダース・シャハーはライトセーバーを作動させた。鈍い唸りを上げて赤い光の刃が伸び、黒いマントが赤く輝く。

 構えもせずに虚空を斬る。熱した空気が黒いマントを泳がせ、義肢の右腕と右足から発するモーター音すらも叩き伏せるように舞う。動かずにはいられない、自分の力を確かめずにはいられない、焦燥感に苛まれている事実を認めたくないが、認めなければ太刀筋が濁ってしまう。

「私は……」

 まだ見ぬ敵を恐れている。いや、刃を交える瞬間を待ち侘びている。どちらでもあり、どちらでもない。けれど、これだけは確かだ。その瞬間が訪れるまでは生きなくてはならない。いかなる運命が待ち受けているとしても、力を尽くして挑まなくては。

 一人の戦士として。

 

 

 コーズクリスタルが静まった。

 セーヤは地面に降り立つと、熱を帯びたコーズクリスタルがごとりと倒れた。オードもまたフォースを用いて軟着陸するも、片膝を突きかけた。それでも彼は背筋を伸ばし、立ち上がる。

「そうか、カイバークリスタルと共鳴させたのか。だが、それがどうした。小手先の浅知恵だ!」

 オードはセーヤを真っ直ぐ見据え、駆け出す。セーヤはライトセーバーを握り直し、歯を食い縛る。見えているが、それだけでは至らないと解っている。だから、その先を捉えなくては。

 体に頼るな、フォースを信じろ。フォースの導きを疑うな、自分自身を疑うな。セーヤは己にそう言い聞かせながら、ライトセーバーを正面で構え、オードの斬撃を受ける。やはり一太刀が重たいが、受け流し方が少しずつ理解出来てきた。

 オードのライトセーバーが振り下ろされ、セーヤのライトセーバーと拮抗するが、セーヤは半身をずらしてオードの太刀筋を下に向かわせた。オードの構えこそ崩れなかったが、上半身に隙が生じる。

「ふっ!」

 拮抗するライトセーバーをそのままにセーヤは身を転じ、オードの胸に両足で蹴りを叩き込む。

「うぉあっ」

 不意を突かれたオードの上半身が逸れ、片足が浮く。セーヤはオードの顔面に更に膝を入れ、ライトセーバーを引いてから空中で身を転じる。しかし、オードもそれだけで倒れるほど容易くはなかった。

 セーヤの二度の不意打ちでも堪えておらず、それどころか踏み込みの力が増していた。赤い光の刃を横に薙ぎ払い、セーヤの胴体を両断しようとするも、セーヤは緑色の光の刃で受け止める。

 互いに斬撃を浴びせ、凌ぎ、更に浴びせていくうちにセーヤは自分の強みが解ってきた。身軽さと体格の小ささ、それからフォースを繰り出すまでの微妙な間隔だ。オードは体格も大きくてパワーもあるが、それ故にフォース自体も重みを伴う。マスター・フマガのそれに近い。だが、セーヤは違う。

「私は!」

 セーヤは着地すると同時に寺院の残骸である木片を浮かばせ、オードの頭上から降り注がせる。オードはその木片を一つ残らず斬り捨て、セーヤへと迫ろうとするが、セーヤはそれよりも先に間を詰める。

「ジェダイだあっ!」

 赤と緑、二つの光の刃が互いの喉元を狙う。セーヤの三本のレックがゆらりと落ち、オードの尻尾が垂れ下がると、オードは歯噛みする。

 オードの首筋はライトセーバーの熱によって焼け、断ち切られる寸前だった。それに対し、セーヤの首筋には触れていなかった。その状態で両者は睨み合っていたが、オードが先にライトセーバーを停止させた。セーヤもまたライトセーバーを消し、一歩下がる。

「私の勝ちだよ」

「……ああ、そのようだ」

 オードは悔しさを滲ませながらも後退し、フォースを用いて黒いマントを回収した。

「俺の首を刎ねなかったことをいずれ後悔する」

「だとしても、私は戦うよ」

 セーヤが言い切ると、オードは背を向けた。

「好きにしろ。だが、強さを求めるのであればやはりシスを選ぶべきだ。そうは思わないか?」

 オードは黒いマントを翻しながら、離島の砂浜に向かった。その先に停めてあったTIEインターセプターに乗り込むと、飛び去っていった。セーヤはその機影を見送ったが、首を横に振った。

「思わない」

 清々しさよりも、勝利の達成感よりも、敵を上回れた充足感よりも、人を殺せる力を持った重みがセーヤを苛んでいた。ジェダイは戦うだけのものじゃないはずだ、と信じたい一方で、セーバー剣術を鍛えて戦い続けなくてはシスを止められないんだ、という事実も思い知らされた。

 ジェダイとは複雑だ。

 

 

 コーズクリスタルを寺院に戻した。

 さすがに破壊した建物までは修復出来なかったが、せめてもの償いとして、フォースで浮かばせて祭壇に乗せた。セーヤはその作業を終えた途端に心身の疲れに襲われ、座り込んだ。

「セーヤ。温かいものでも用意しましょう」

 テンノーに抱き上げられ、セーヤはテンノーにしがみついた。

「うん」

「ブルーミルクがまだ残っていましたから、それを温めて砂糖も入れましょう」

「うん」

「お腹は空きましたか?」

「全然」

「眠たいですか?」

「疲れているけど眠くないの」

「それなら、落ち着くまでここにいましょう。オード・キューが引き下がったことで、帝国艦隊も撤退するでしょうから。島の人達も、いずれは帰ってくるかもしれませんよ」

「ねえ、テンノー」

 セーヤはテンノーの頭部を抱え、顔を伏せる。

「私は上手くやれたかな?」

「たった一人でシスを退けたのです。セーヤは最早パダワンではありません、ジェダイ・ナイトと呼ぶに相応しい実力を備えています」

 テンノーの大きな手が、セーヤの丸まった背中をそっと撫でてきた。

「ですが、あまり急ぎすぎないで下さいね。マスター・ギ・ハーラがダークサイドに向かってしまったのも、焦りが原因でしたから」

「そうなんだ。マスターになっても、心の弱さには勝てなかったんだ」

「マスターになったからこそ、と言えるかもしれません。私はそう捉えております」

 テンノーに宥められるうちに、セーヤは少しずつ落ち着きを取り戻した。ボブ・キャット号のハッチを開けて腰掛け、セーヤは広大な海をぼんやりと眺めながら、テンノーが用意してくれた甘いブルーミルクを飲んだ。

 優しい味がした。

好きな登場人物は?

  • セーヤ・ミットー
  • テンノー(NO-10)
  • カミーノ・スターリバー
  • ヒル・スワンプ
  • ホープ・ハイライト
  • ナザ・シーサイ
  • ケイ・ホーク
  • マチルダ・グランベリー
  • エア・キャビー
  • サウス・ギ・ハーラ
  • ソウ・テッセン
  • ダース・シャハー
  • オード・キュー
  • クレイン・ミーネ
  • ショーナ・ディノ
  • ユマ・ハイライト
  • ヴィシャム
  • フマガ
  • サク・ラギーチョ
  • その他
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