トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
惑星コーズを出発した。
ボブ・キャット号が向かった先は、惑星ビッグシップの同盟軍基地だった。帝国残党の艦隊が引き上げた後、セーヤとテンノーはコーズクリスタルの鉱山を訪れて採掘ドロイドを始末し、工場のラインを停止させてから、コーズクリスタルの出荷履歴と配送先に関する情報を収集した。その情報をセーヤとテンノーだけで握っていても大した意味はない、と判断し、同盟軍に知らせることにした。
同盟軍基地に着陸申請をした後、ボブ・キャット号を着陸させると、出迎えてくれたのはカミーノ・スターリバーだった。セーヤは彼の姿を見た途端に心が浮き立ち、駆け出しそうになったが、ジェダイらしくするために踏み止まった。
「セーヤ!」
だが、彼は違った。カミーノは少年のような笑顔を浮かべて駆け寄ってくると、セーヤを抱き上げてぐるぐると回した。
「よかった、また会えて! 元気だったか!」
「ちょっと、うわあっ」
セーヤはカミーノに振り回され、嬉しさよりも戸惑いが先に立った。そのせいで、地面に下ろされた時も文句が口を突いて出た。
「もうちょっと後先考えてから行動して!」
「悪い悪い、セーヤの顔を見たら思わず」
カミーノが照れ笑いすると、テンノーが大股に歩み寄ってきた。
「この分だと、ポッド・レースの余韻が抜けていないようですね?」
「それはもう終わったことだ。営倉にもぶちこまれたし、スワンプ大佐にもこってり絞られたし」
カミーノが笑顔を引きつらせると、セーヤは姿勢を直した。
「それで、そのスワンプ大佐はどちらに?」
「こっちだ。ブリーフィングルームにいる」
カミーノに促され、セーヤはテンノーを伴って歩き出した。セーヤと面識があるパイロットや職員は手を振ってくれたが、そうではない者達は不審そうな目を向けてきた。無理からぬことだ。もっと長居したかったが、そうもいかなくなったのだから。
自分の運命を知ってしまったから。
スワンプ大佐と面会した。
セーヤは自分がジェダイであると示し、帝国残党のコードシリンダーを手に入れるまでの一部始終と、そのためにカミーノの協力が不可欠だったことを説明してから、惑星コーズでの出来事を話した。
「これがコーズクリスタルです」
セーヤがクリスタルの破片をテーブルに置くと、スワンプ大佐はそれを手にした。
「ただの結晶にしか見えないが」
「フォースと反応させると増幅されるんです。ライトセーバーのカイバークリスタルよりも効果は弱いんですが、コーズクリスタルの方が大きくて数も多いので、それを組み合わせるとかなりのものになります」
セーヤが説明すると、スワンプ大佐はコーズクリスタルを置いた。
「帝国残党のデータと一緒に保管しておく。証拠となる物品がないと、新共和国を動かせないからな」
「それを使うとフォースを見られるのか?」
カミーノが興味を示すと、セーヤはコーズクリスタルに手を翳す。
「見られるというか、反応して光るの。ほら」
セーヤのフォースを浴び、コーズクリスタルは淡い光を発した。セーヤが手を下げると収まり、透き通った結晶に戻った。
「そこまで重要な代物であれば、我々ではなくジェダイ・オーダーに報告するのが筋じゃないのか? それが出来ない理由でもあるのか?」
スワンプ大佐からの問いに、テンノーが答えた。
「それに関しては私から説明いたします。我がマスターであったジェダイ、サウス・ギ・ハーラはシスとの戦いの末、ダークサイドへと至ったのです。故に、私はジェダイ・オーダーには頼れないのです」
「裏切り者の末路だな。それなら尚更、セーヤをジェダイ・オーダーに引き渡すべきだろう。ドロイドのくせに合理的な判断が出来ないのか?」
「ジェダイ・オーダーには……いえ、ジェダイ評議会にセーヤを委ねてはならないのです」
「その根拠は?」
「マスター・ギ・ハーラが仰っていたからです」
「何を理由に?」
「ダース・シャハーを討てるのはセーヤだけだ、と。シスの暗黒卿を制するために必要なのは、単純なフォースの強さでもセーバー剣術の腕前だけではありません。フォースの導きがなければならないのです」
テンノーが迷いなく言い切ると、セーヤはテンノーを見上げた。
「ジェダイ評議会?」
「要するにジェダイのお偉方が会議をして、若い連中にどんな任務を振るのかを決めているんだろう? 属すべき組織があるの指示も仰がず、単独行動を繰り返し、挙げ句の果てに帝国残党に殴り込んでケンカまで売る始末だ。お前達は反乱分子か? それならまだマシだ、大義がある。だが、フォースが間違っていたらどうする? セーヤが暗黒卿と戦うことで、結果的に帝国残党に利益をもたらすとしたら? 銀河の情勢が不安定だからよく解らんものを信じたくなる気持ちは解らなくもないが、ろくに考えずに妄信するな。お前達と違って、俺達は現実を生きているんだ」
スワンプ大佐は語気を強めたが、コードシリンダーとコーズクリスタルを手にした。
「情報提供には感謝するが、あまり長居はしない方がいい。それがお互いのためだ」
「はい」
セーヤが素直に応じると、スワンプ大佐はセーヤに目を向けた。
「それから、新共和国の市民権の件だが手続きの途中で弾かれた。その理由については、ここに書いてあるから目を通しておけ。文句があるなら、俺じゃなくて新共和国に言え」
ホロ・ペーパーをセーヤに渡してから、スワンプ大佐はブリーフィングルームを後にした。カミーノはセーヤに掛けるべき言葉を悩んでいたが、セーヤはカミーノの袖を引っ張った。
「大佐が言うことも間違いじゃないよ。でも、ちょっと、いや、結構、かなり……」
「悔しいんだな」
カミーノは身を屈め、セーヤと目線を合わせると、セーヤはカミーノの肩に額を当てて項垂れる。
「言い返せなかったのがもっと悔しい……」
スワンプ大佐の言葉はどれも正しい。大佐自身の経験に基づいているし、現実を見据えていなければ同盟軍の基地の指揮は取れない。あの口振りからして、スワンプ大佐はジェダイに対する不信感があるようなので、セーヤがああだこうだと言ったところで受け流されてしまう。
その上、新共和国の市民権が得られなかったと告げられてしまった。奴隷上がりなんだから仕方ない、と妥協する一方、私にはどこにも居場所がないんだ、という疎外感に襲われた。そのせいでホロ・ペーパーに目を通す気力が失せたが、カミーノはセーヤの丸まった背中に手を添えてきた。
「そのホロ・ペーパー、一緒に読んでもいいか」
「なんで?」
「セーヤのことを知りたいからだ」
カミーノはセーヤと目を合わせてきた。今までの彼らしからぬ真摯な態度に、セーヤはどぎまぎしながらも頷いた。
「いい、けど」
なんだろう、この変な感じは。見ちゃいられない、と言わんばかりにテンノーはぐるりと頭部を回転させた。カミーノは言った後で気恥ずかしくなったらしく、ぎくしゃくしながらブリーフィングルームを後にした。セーヤもそれに続いたが、落ち着かなかった。
そわそわしてしまう。
格納庫の裏に移動した。
Xウィングや他の機体が整備される物音や気配が感じられるので、セーヤはそちらを気にしながらも、野晒しになっている建材に腰を下ろした。カミーノはセーヤの隣に腰掛け、テンノーは二人の背後に控えた。セーヤは意を決し、ホロ・ペーパーを読んだ。
「あれ、これってどういう意味?」
セーヤがホロ・ペーパーの文字をスクロールさせると、カミーノは身を乗り出した。
「ああ、続柄か。親族のことだ」
「じゃ、こっちは?」
「父親だ」
「それなら、こっちは?」
「母親だ」
セーヤが指差すと、カミーノが教えてくれたので、セーヤは心臓が跳ねた。私にはお父さんとお母さんがいたんだ、という嬉しさだけでなく、私は銀河で一人きりじゃなかったんだ、という安心感もあった。
「セーヤのチェーンコードから辿ったのでしょうね、経歴も記載されています」
テンノーが口を挟むと、セーヤはホロ・ペーパーに視線を戻した。父親の名はウズワ・ダイ、ライロス出身のトワイレック、反乱者として帝国に対する反政府活動を行っていたために逮捕され、強制収容所に収監。母親の名はワンダ・ミットー、ライロス出身のトワイレック、職業についての記載はないが雇い主を転々としているので奴隷なのだろう。
「強制収容所……」
セーヤが零すと、カミーノは嘆息した。
「セーヤが市民権を得るための許可が下りなかったのは、そのせいだな。テロリストの身内だと見なされているんだ」
「でも、それは帝国時代の話でしょ? 強制収容所だって、新共和国がどうにかしているんじゃ」
セーヤが狼狽えると、カミーノは続けた。
「銀河は広いし、帝国残党も派閥が別々だから、強制収容所だけでもかなりの数がある。何らかの意図で隠蔽されたら、新共和国も見つけられない。たぶん、そういう場所にいるんだ」
「そんなに悪いことをしたの?」
「それは俺には解らないし、迂闊なことは言えない。だが、スワンプ大佐はセーヤについて調べる過程で知ったからには、何もしないはずはない。とはいえ、物事には順序も段取りもあるから、行動に出るのは今すぐじゃないだろうが」
「新共和国軍は何もしないの?」
「利害関係と背後の事情にもよる。同盟軍は反帝国で旧共和国寄りではあるんだが、元を正せば独立星系の軍隊を寄せ集めたものだから……。新共和国軍からすれば微妙な立場の案件でも、同盟軍であれば動けるかもしれない。それもまあ、場合によるんだが」
カミーノの説明を受け、セーヤは悩んだ。
「難しいね、それ」
「ええ、難しいのです。帝国による統治は圧政と暴力と搾取による支配でしたが、その一方で複雑化している力関係を押さえ付けるという役割もあったのです。それを是とするわけではありませんが」
テンノーが付け加えると、セーヤはホロ・ペーパーから目を上げた。
「いつかお父さんとお母さんに会えるかな」
「会えたらどうする?」
カミーノに肩を支えられ、セーヤは呟いた。
「解らない。どんな顔をして、何を話せばいいのか、考えたこともなかったから。それに、お父さんとお母さんは私のことを覚えているかな」
「忘れるはずがないさ」
カミーノの言葉は力強く、セーヤは不安と混乱が少しずつ落ち着いてきた。期待を持ちすぎてはいけないが、安易に諦めるのも間違いだ。きっとどこかで巡り合える、どんな形であったとしても。その時が来たら、フォースが伝えてくれるはずだ。
「おや」
テンノーが振り向くと、R2シリーズのアストロメク・ドロイドがやってきた。テンノーはそのドロイドとバイナリー言語で受け答えると、ドロイドはデータディスクを吐き出した。
「どうもありがとうございます」
テンノーはそのドロイドを見送ってから、セーヤにデータディスクを差し出した。
「スワンプ大佐からです。帝国残党の輸送船のリストで、目的地と貨物が不明なものをまとめてあります。その中にコーズクリスタルを取り扱っている輸送船もあるかもしれませんので、調べてみましょう」
「……うん、行こう」
セーヤが気を取り直すと、カミーノは残念がる。
「なんだ、もう行っちゃうのか」
「また来るよ」
セーヤも少し残念だったが、カミーノに向き直った。カミーノはセーヤが付けているマフラーを指す。
「その時には、ちゃんとしたヘッドカバーを用意してやるよ」
「いいよ、別に。これが気に入っているんだから」
セーヤは急に照れ臭くなり、カミーノに背を向けた。
「じゃ、またね!」
テンノーを伴ってボブ・キャット号に向かいながら、セーヤは感情を持て余していた。カミーノが相手だとなんか落ち着かないな、どうしてだろう、とセーヤは自問するも答えは出なかった。けれど、フォースの乱れはなく、成長しているのだと実感した。
そして、ボブ・キャット号は出発した。
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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