トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる   作:あるてみす@二次創作

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38.外の世界への一歩

 ズ・スィーでの日々が長引いた。

 セーヤとしては、帝国残党がコーズクリスタルを研究していることを新共和国軍に知らせた後、すぐに撤退するつもりだった。セーヤの素性を知られれば、ややこしいことになるのが目に見えていたからだ。だが、クリス・ハマーとの戦いで予想以上に消耗してしまい、心身の休養を余儀なくされた。

 つまり、未だに学生寮に留まっているというわけだ。情けないなぁ、とセーヤは苦々しく思いながらもベッドに横たわっていた。

「セーヤ、体調はいかがですか?」

 テンノーに案じられ、セーヤは額を押さえる。

「熱は下がったけど、なんかぼんやりしちゃって……」

「でしたら、まだ無理をなさらない方がよろしいでしょう。これまでの疲れが出たのでしょうね」

「私はそんなつもりはないんだけど」

「ストレスというものは、気付かぬうちに蓄積しているものですよ」

 テンノーの言葉は尤もだった。セーヤは寝返りを打ったが、体がひどく重たかった。コーズクリスタルの光を浴びたせいかな、だとしたらクリスにも影響があるのでは、だけど撤退しちゃったし、などと考え込んでいると、ドアがノックされた。

「テンノー」

 セーヤが促すと、テンノーはセーヤに変わって応対した。

「はい、どちらさまです?」

「えっと……」

 ドアを開け、遠慮がちに様子を窺ってきたのはキヌガとRE5だった。セーヤは起き上がろうとするも、それだけの動作すらも難しかった。

「セーヤ。まだ具合が悪い?」

「なんかよく解らないんだけど、そうなの」

 セーヤが力なく答えると、キヌガはドアをロックしてからベッドに近付いてきた。

「医療ドロイドには診てもらった?」

「それはもちろんです。ですが、外傷や感染症や何らかの疾患である可能性は極めて低く、疲労だと診断されました。処方されたのは解熱剤と栄養剤だけですね」

 テンノーが机を示すと、手つかずの薬が残っていた。セーヤは薬を一瞥する。

「だって、なんとなく解るんだよ。薬を飲んだところで意味はないって」

「でも、いつまでもここにはいられないでしょ? セーヤが身分を偽装して潜り込んでいたのがバレたら、新共和国に目を付けられてしまうわ」

 キヌガが案じると、テンノーはセーヤを見下ろした。

「その意見には同意します。ですが、この状態のセーヤを連れ出すのは賛同しかねます。充分な休養を取れる場所と安全を確保しなくてはなりませんから」

「それなんだけど……私に考えがあるわ」

 キヌガは制服の布地を握り締め、肩に力を入れる。

「セーヤのシャトルに乗って、お父さんに会いに行くのよ。ズ・スィーから抜け出すチャンスは二度とないわ。お父さんの所在を調べるのは難しくないのよ、ズ・スィーを運営している企業のラボに在籍しているから。そこに問い合わせて面会する許可をもらえれば、セーヤも連れていける。帝国残党とラボが繋がっていたことでゴタゴタしているだろうけど、そこはまあ……なんとかなる、んじゃないかしら?」

 最後だけ歯切れが悪くなり、キヌガは視線を彷徨わせた。

「ズ・スィーを出られたら、後はどうにでもなるよ。ありがとう、キヌガ」

 セーヤが礼を述べると、キヌガは照れた。

「私の方こそ。セーヤと一緒なら、一歩踏み出せそうな気がするの」

 また後でね、と手を振ってからキヌガは去っていった。セーヤはキヌガの父親がどんな人なのかと思い描いたが、私のお父さんはどうしているんだろう、とも思った。ウズワ・ダイという名の反乱者で収容所にいるそうだが、その収容所がどこなのかが解らない。一度会ってみたいな、と淡い気持ちを抱きながら、セーヤは瞼を閉ざした。

 眠くないが、起きられないからだ。

 

 

 キヌガは無事に面会許可を得た。

 しかし、その時が近付くにつれて落ち着きがなくなった。ズ・スィーでの暮らしに慣れすぎたから、期待と不安が入り混じっているからだ。なので、セーヤは今までの経験を話してやり、怖いことばかりじゃないと伝えた。

 それと並行して、テンノーはセーヤがミッカ・キョウという偽名で転入した痕跡を消すために奔走した。ズ・スィー内部のネットワークに残留しているデータを削除しても、セーヤと接したドロイドには映像や音声が残ってしまうからだ。そこで、テンノーはセーヤの存在を見聞きしたドロイドを割り出し、彼らの記憶回路にアクセスしてセーヤに関するデータを綺麗に消し去った。

 セーヤが寝込んでいる間に事態は大きく動いていて、新共和国は査察官をズ・スィーに送り込んでいた。シスであるクリス・ハマーがセーヤに負け、マンダロリアンの賞金稼ぎであるケイ・ホークが帝国残党の戦闘部隊を総じて倒してしまったので、帝国残党は引き上げる際に証拠を隠滅しきれなかった。

 なので、コーズクリスタルとそれを研究していたラボ、逃げ遅れた科学者と技術者、記憶をフォーマットされ損ねたドロイドが新共和国軍に回収されていった。

 ズ・スィーを運営しているのはムサカ・コンツェルンという複合企業であり、その役員の中に帝国残党と深い繋がりを持つ者がいた。当然ながら役員も逮捕され、新共和国軍に連行されていった。

 今後、ズ・スィーがどうなるのかはまだ解らない。運営体制を一から見直して刷新し、帝国残党の痕跡を消して学園を維持し続けるのか。或いは、いずれ発生するであろう風評被害が運営側の企業に及ぶ前に解体し、生徒を放り出すのか。もしくは、有能な生徒達を帝国残党に売り渡し、帝国復興のために働かせるのか。

 そこまでひどいことにはならない、とセーヤは思いたかったが、こんな時に限ってヴィジョンは見えてこない。生徒達の人生がどうなるのかは個人の自由にして責任であり、セーヤがどうこう出来るものではない、という意味かもしれない。だとしたら、これ以上セーヤに出来ることはない。

 ジェダイであろうとも。

 

 

 ボブ・キャット号は宇宙に出た。

 セーヤは座っていられる程度には回復したのでコクピットの操縦席に収まったが、操縦自体はテンノーに任せておいた。つまらないミスでキヌガを危険に晒したくないからだ。

 セーヤの隣の席に座るキヌガは、神妙な面持ちで宇宙空間を見つめていた。ズ・スィーから充分遠ざかってから、テンノーはハイパードライブを作動させた。

「わっ」

 ハイパースペースに突入する瞬間、星々の群れが猛烈な速さで過ぎ去り、キヌガはぎょっとした。その様子に、セーヤはにんまりする。

「面白いでしょ?」

「普通の宇宙と全然違うわ」

 キヌガは身を乗り出し、ハイパースペースを眺めた。通り過ぎるだけの空間だが、星の光の代わりに青い霧のようなものが揺らめいているのは幻想的だ。それを見ていると眠気が襲ってきて、セーヤは瞼を閉ざしかけたが、ふと歌に似た鳴き声が聞こえてきた。

「あれ?」

 これはなんだろう。セーヤは反応したが、キヌガは聞こえていないようで、ハイパースペースに見入っていた。テンノーはボブ・キャット号の制御に集中している。

「気のせいかなぁ……」

 セーヤは眠気に身を委ねたが、鳴き声は聞こえ続けた。体の内側に響き、精神に染み渡り、フォースを宥めてくれた。

 浅い眠りの中、セーヤはフォースを通じてヴィジョンを見た。群れを成して宇宙を泳ぎ、ハイパースペースを越えていく、とても大きな体の生き物。彼らの歌はフォースの波に沿っていて、セーヤの疲れ切った心身を穏やかに慰めてくれた。そして、フォースによって彼らの名を知った。

 パーギル。

 

 

 惑星コレリアに到着した。

 工業化された惑星で、スターデストロイヤーやTIEファイターを絶えず製造していたが、帝国が倒れたことで巨大な造船所や工場が稼働停止していた。それによって惑星全体の経済が停滞し、治安も悪くなった、とテンノーは説明してくれた。

 そんな場所にキヌガの父親はいるのだろうか、とセーヤは危惧しながらも、指定された場所に向かった。建造途中で放置されたスターデストロイヤーを追い越し、作りかけのTIEファイターやTIEインターセプターの部品の山を越えていくと、造船所を管理していたコントロールタワーが見えてきた。キヌガの父親が乗っていたシャトルのトランスポンダーは、そのタワーから発せられていた。

 コントロールタワーの離発着場にボブ・キャット号を着陸させたが、警備システムも作動せず、作業ドロイドも現れなかった。本当に何もかも死んでいるんだな、とセーヤは若干不安を感じながらも、テンノーに背負われて外に出た。

「あっ」

 RE5が走り去っていったので、キヌガは慌ててそれを追った。アストロメク・ドロイドは通路に入り、ビギャビギャとバイナリー言語で喚き散らすと、同型のアストロメク・ドロイドが現れてRE5と激突した。

「キヌガ」

 RE5ともう一体のアストロメク・ドロイドを起こしたのは、トグルータの壮年の男性だった。キヌガは立ち止まり、呟いた。

「お父さん……」

「その子がお友達の?」

 キヌガの父親は、テンノーに担がれているセーヤを認めた。セーヤは下ろしてもらい、多少ふらつきながらも立った。

「はい。セーヤ・ミットーといいます」

「私はタウロ・スー、通信技術を研究している。出張を名目にしてラボを抜け出してきたんだが、コレリアにも長居は出来そうにない。私がムサカ・コンツェルンで働き続けていたのはキヌガを守るためだったが、それが裏目に出てしまったようだ。すまない、キヌガ」 タウロが謝ると、キヌガは俯く。

「私は……もう、どこでもいい。ズ・スィーに戻れというなら戻るわ、勉強は続けたいから。でも、お父さんと話したいの。今までは、何を話したらいいのか解らなかったから。だから、話したいことが思い付くまで、他のことを話してもいい?」

「もちろん。私もキヌガの話を聞きたい」

 タウロは優しい手つきで娘を撫でた。それを目にした途端、セーヤは胸の内が絞られるような感覚に苛まれた。お父さんってああいうものなんだ、と羨望が生じたが、それはキヌガのお父さんだからだ、と思い直した。ウズワ・ダイも同じ振る舞いをしてくれるとは限らないのだから。

 父と娘は長らく語り合っていた。

好きな登場人物は?

  • セーヤ・ミットー
  • テンノー(NO-10)
  • カミーノ・スターリバー
  • ヒル・スワンプ
  • ホープ・ハイライト
  • ナザ・シーサイ
  • ケイ・ホーク
  • マチルダ・グランベリー
  • エア・キャビー
  • サウス・ギ・ハーラ
  • ソウ・テッセン
  • ダース・シャハー
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  • ショーナ・ディノ
  • ユマ・ハイライト
  • ヴィシャム
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  • その他
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