トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
補給のついでに休息を取った。
アウターリムの外れにある惑星ゴーラは恒星から遠いので、地表では常に吹雪が吹き荒れていて、分厚い氷が海を覆っている。それでも人が集まり、街が出来ているのは、コアクシウムが採掘されるからだ。
コアクシウムはハイパードライブを行うために不可欠な物質で、微量でも高値で取引されるため、コアクシウムを採掘する海底鉱山には多くの労働者がいる。彼らが稼いだ給料を気持ち良く浪費してもらうために酒場やキャバレーなどがあり、毎晩賑わっていた。
輸送船の護送の任務を終えたオーク小隊は、Xウィングの補給とメンテナンスの合間、自由時間を与えられた。カミーノもその中の一人であり、ゴーラの寒さに辟易しつつも夜の街の眩しさに惹かれていた。
惑星ビッグシップの基地にも息抜きをするための酒場はあるが、そこに出入りするのは基地で見知った顔ばかりだ。多少酒を入れると気分は良くなるが、抜けないと飛べないので好んで口にしようとは思わない。
大人になったのに、大人の世界の楽しさが今一つ解らないままだったが、気分転換の必要性は理解していた。疲労が蓄積していると、集中力が落ちて些細なミスをしてしまうからだ。そのためにも、普段とは異なる環境に身を置くのがいい。
なので、カミーノはオーク小隊の仲間達に連れられてキャバレーに足を踏み入れた。最初の頃こそ緊張したが、今となっては肩の力を抜けるようになった。薄暗い照明と悩ましげな音楽、ステージで踊る薄着の女性に対しても、あまり意識しなくなった。そういうものだからだ。
「辺境の星のわりに店の質がいいな」
高い天井と座席を見渡して呟いたのは、スガ・ミノ中尉である。カミーノと同じくオーク小隊に所属するパイロットで、ヒューマンの男だ。
「稼ぎがいいんでしょうね、コアクシウムの鉱山なんて滅多にありませんから」
カミーノが当たり障りのないことを言うと、スガはステージを指した。
「あそこで誰が踊るんだ?」
「客引きのドロイドによれば、トワイレックのダンサーだとか」
「トワイレックなら外れがないな」
スガがにやついていると、女性型の接客ドロイドが歩み寄ってきた。
「お席にご案内いたします」
接客ドロイドに案内されてボックス席に腰を下ろすと、注文を取られた。カミーノは少しだけなら酒を入れたい気分だったので、スポチュカを頼み、仲間達もそれぞれの好みの酒を注文した。
接客ドロイドが去り、ステージにスポットライトが注ぐと、ざわついていた店内が静まり返った。カミーノもまた目をやると、暗がりの中で白く輝いた円形のステージに、しなやかな影が舞い降りた。
薄布を両手に握り、露出の高い衣装を纏い、細く頼りないチェーンのアクセサリーを身に着け、トワイレックの女性ダンサーは上体を逸らした。二本の長いレックがその動作に合わせてしなり、独特のシルエットを作る。
音楽に合わせ、女性ダンサーは緩急を付けてポーズを取る。片足を高く上げて仰け反り、一回転した後に着地して両足を前後に広げる。柔軟でありながらも筋力が抜群で、身体能力の高さを惜しみなく示しながら、二本のレックを靡かせる。
接客ドロイドがドリンクを運んできたが、カミーノはそれに手を付けずにダンスに見入っていた。ダンサーの艶めかしい眼差しと躍動するレックに、引き締まった手足の美しさは、トワイレックが奴隷として高値で取引される理由を充分に物語っていた。皆、あの美貌を手元に置きたくなるのだろう。
だったらセーヤは、とカミーノの脳裏にトワイレックの少女の顔が過ぎった。彼女はまだ14歳で体付きも未成熟だが、トワイレックの悩ましさは備わっていた。年相応に振舞っている時は可愛らしいが、ふとした瞬間に見せる表情や眼差しには、大人になりかけた少女にしか醸し出せない色気があった。セーヤがやがて大人になったら、セーヤの美貌は完成されるだろう。その時には。
「……は」
何を考えているんだ、俺は。カミーノはテーブルに置かれたスポチュカのグラスを掴み、流し込んだが、それだけでは紛れてくれなかった。
「あの子、今頃どうしているんだろうね」
オーク小隊のパイロットであるヤーヨ・ダインは、鮮やかな緑色のカクテル、フォトン・フィズルを飲んだ。ヤーヨはローディアンの女なので、その肌の色はフォトン・フィズルに似た緑色だ。
「将来有望だったよなぁ。でも、賞金稼ぎに追われてすぐに出ていって……。訳ありなんだろうが、そんなのはアウターリムじゃ珍しくもなんともない」
スガは細長いグラスを手に取り、琥珀色で泡の浮いた酒、トランドーシャン・エールを口にした。かなりきつい酒なので、カミーノはあまり好きではないが、スガはいつも注文している。
「連絡は入ったけど、俺達の基地には顔を出さないようだったし。セーヤの友達とその父親を匿ってくれ、って頼まれたから、それをスワンプ大佐に伝えたけど、その後でどうなったんだか。まあ、スワンプ大佐のことだから、突っぱねはしないだろうけど」
カミーノはスポチュカの空のグラスを置くと、すかさず給仕ドロイドがやってきた。
「お代わりをお持ちしましょうか?」
「いや、アルコールは抜きにしてくれ。メイルーランのジュースでもあれば、それで」
「かしこまりました」
給仕ドロイドは一礼し、去っていった。その間にもトワイレックのダンサーによるダンスは続いていて、指先にも表情が宿り、照明を帯びた二本のレックが揺れ動くと、光の粒子が飛び散るかのようだった。客席に視線を送り、目が合うと微笑んだ。日々の労働に疲れ切った男を骨抜きにする、魔性の笑みだ。
薄布を生き物のように操り、肢体に巻き付けては剥がし、想像力と下心を掻き立てる。場の雰囲気に吞まれた客がステージに引き寄せられ、クレジットを置くと、ダンサーはその客の頬をするりと撫でた。
音楽が止まった頃合いには、ステージには多数のクレジットが散らばり、星々の輝きにも似ていた。照明が暗転し、ダンサーが姿を消すとクレジットも綺麗に片付けられていた。給仕ドロイドが奥に引っ込んだので、おひねりを回収する仕事も任されているようだ。
『本日のダンサーはワンダ! ワンダのホロの購入はお近くの給仕ドロイドまで!』
店員のアナウンスに、カミーノはちょっとげんなりしたが、相手も商売だから仕方ないんだと思い直した。
ホロ一つに対して100クレジットは高すぎるので、カミーノは買うつもりはなかった。だが、こうも考えた。俺はトワイレックそのものに惹かれているのであって、セーヤに特別な感情を抱いているとは限らないのでは、と。
「ホロをくれ」
カミーノが先程の給仕ドロイドを呼び止め、クレジットを差し出すと、給仕ドロイドはホロコインを渡してきた。
「お買い上げありがとうございます」
「トワイレックの色気には勝てねぇもんなぁ」
スガに背中を引っぱたかれ、カミーノは曖昧に笑った。
「まあ、そんなところだよ」
「だったら、ノーズアートのデザインを考えてあげようか。すっごいやつを」
ヤーヨが大きな目を向けてきたので、カミーノは辟易した。
「そこまでしなくても」
「気に入らなかったら、描かなくてもいいからさ」
ヤーヨにそう言われると、カミーノは断りづらくなった。結局、トワイレックをモチーフにしたノーズアートのデザインを考えてもらうことになった。すっかり酒が回った二人にいいようにされながら、カミーノはキャバレーを後にしたが、凍えるほど冷たい夜風を浴びた途端に一瞬で酔いが冷めた。
俺は何をやっているんだ。
タトゥイーンは居心地がいい。
特に賞金稼ぎにとっては。酒場を後にしたマチルダは、賞金首のホロコインを手にして大股に歩いていた。海賊の残党を見つけ出して始末すれば、5000クレジット。悪くない報酬だ。
モス・アイズリーはポッド・レースで莫大な収入を得ているため、至るところにポッド・レースの看板が掲げられていた。レーサーを募集する広告もあれば、スポンサーを募集しているレーサーによる貼り紙もあり、ポッド・マシンの模型やレーサー達のホロも売られていた。中でも目立っていたのは、前回のレースで優勝した新進気鋭のレーサー、ブルース・ライナーだった。正体も経歴も不明だが、体形からしてヒューマンだろう。
「ふーん?」
マチルダはちょっとだけ興味を持った。ポッド・レース自体は心底馬鹿げているので関わりたくないが、ブルース・ライナーのレースには奇妙な点があった。
ホームストレートに戻る最中に地中からクレイトドラゴンが出現し、ブルース・ライナーのマシンはその寸前で回避したのだが、クレイトドラゴンが現れるのを予期していたかのような動作だったからだ。速度を落とさずに急旋回するには、ある程度距離が必要なのだが、ブルース・ライナーはそれだけの余裕を持った状態から回避動作に移っていた。
もしかしてフォースユーザーなのかも、あのアナキン・スカイウォーカーみたいに。マチルダはブルース・ライナーの看板から目を外し、歩き出そうとしたが、ふと妙な感覚が過ぎった。
マチルダは腰の後ろに仕込んだライトセーバーに手を伸ばしかけたが、躊躇した。フォースを通じて何かが接触してきたが、それにしては変な感触だった。今までに感じてきたフォースと近しいが、根本的な部分が異なる。似て非なるものだ。
「これって……」
何かは解らないが、いい予感はしない。マチルダはそれを振り払い、モス・アイズリーの市街地を出て宇宙港に向かった。すると、上空から大型の輸送船が降下してきた。それが接近するにつれ、マチルダは背筋が逆立ち、目を見開いた。
「うっ」
カイバークリスタルに似ているが、やはり違う。これは何なんだ。マチルダは輸送船を気にしながら自身のガンシップに戻り、発信準備を進める一方で輸送船を注視した。
輸送船から荷下ろしされているのは途中まで組み立てられた建材で、アンテナの形状からして遠距離通信用のタワーを建造するようだった。荷下ろしの最中、ブラスターを持った従業員が周囲を警戒していたが、その配置はストーム・トルーパーのそれだった。となれば、あれは帝国残党絡みだ。
あんなものに関わっちゃいけない、引き受けた仕事があるんだから、とマチルダはガンシップを飛び立たせようとしたが、腰の後ろにあるライトセーバーが熱を帯びた。
カイバークリスタルが反応している。マチルダのフォースにも、この妙な気配にも。マチルダは嘆息して操縦桿から手を離し、分解したライトセーバーを取り出した。
一見しただけではライトセーバーだと解らないように分解してあるので、上下のパーツを接続させると、増幅器の配線が繋がり、本来の機能を取り戻した。
「マスター、私はどうするべきでしょうか」
マチルダはライトセーバーを握り、呟いた。だが、そのマスターはもういない。マチルダの師であるジェダイ・マスター、エア・キャビーは命を落としているのだから。
しかし、マチルダはその場には立ち会えなかった。エア・キャビーはフォースが伸び悩むパダワンに見切りを付け、ジェダイ聖堂から外の世界に放り出した。その判断は正しかったし、恨みはないが、いざという時にマスターの役に立てなかった悔しさは何十年経とうとも消えていない。
そんな自分に、フォースは応えてくれるだろうか。マチルダは両手でライトセーバーを握り締め、瞼を閉ざした。
フォースはそこにある。
ジェダイ聖堂は再建途中だった。
オーダー66が発令されてクローン・トルーパーがジェダイに襲い掛かったが、当然ながらジェダイも立ち向かったからだ。だが、一対多数の戦闘は優れたフォースの使い手であるほどに不得手であり、ほんの数秒前までは信頼のおける部下だったクローン兵を斬ることを躊躇ったがため、多くのジェダイが犠牲となった。
彼らの壮絶な戦闘によって破壊された部屋は元に戻ったが、ジェダイの数は大幅に減少した。かつては一万人を越えていたジェダイも、今となっては数えるほどだ。故に、次世代を担う子供達の存在は貴重だ。
「この子達を預かります、マスター・フマガ」
三人の幼子を前に、ジェダイ・マスターであるオビ=ワン・ケノービは一礼した。フマガもウォー・ヘルメットを外す。
「彼らはいずれパダワンとなり、やがてはジェダイ・オーダーを支える者となろう」
「そのためにも、やるべきことはいくらでもあります。クローン戦争のような悲劇を起こさないように手を尽くさなくてはなりませんが、我々にはかつてのような戦力は与えられていないのです」
オビ=ワンが首を横に振ると、フマガは不思議そうに辺りを見回しているブン・シーサイを見つめる。
「ならば、ジェダイ聖堂に迎え入れられなかった者達もジェダイとして認め、戦力に加えるというのは?」
「それは……手段としては有効でしょうが、あまり現実的な作戦ではありませんね。フォースを感じ取れるだけでは、ジェダイとして戦えるだけの力は得られませんから」
「左様。拙僧もまだまだ未熟だ、気が急いてしまったようだ」
フマガはウォー・ヘルメットを被り直す。
「では、失礼する」
オビ=ワンに背を向け、フマガは通路に出た。内装の修復は済んでいるが、そこかしこにクローン・トルーパーによって無念の死を遂げたジェダイの残留思念がある。彼らはフマガに気付かれていることに気付くも、その場から離れられないようだった。
「業が深い……」
フマガは彼らの無念がフォースに導かれるように祈りながら、ジェダイ聖堂を後にした。三人の子供達の中では、ブン・シーサイに何かを感じた。いずれは彼をパダワンとして迎える日が来るのかもしれない。となれば、今まで以上に修行を重ねなくては。師と仰がれるには、それだけの学びを得なくては。
ジェダイの道はまだ半ばだ。
好きな登場人物は?
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ヒル・スワンプ
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ホープ・ハイライト
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ナザ・シーサイ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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エア・キャビー
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サウス・ギ・ハーラ
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ソウ・テッセン
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ダース・シャハー
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オード・キュー
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クレイン・ミーネ
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ショーナ・ディノ
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ユマ・ハイライト
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ヴィシャム
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フマガ
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サク・ラギーチョ
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その他