トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
スターデストロイヤー。
それは銀河を圧政で支配しようと企んだ、帝国の代表的な宇宙戦艦だ。それを上回るクラスの戦艦もいくつもあるが、もっとも名が知れているのはやはりスターデストロイヤーだ。一目見てそれだと解るシルエットが衛星軌道上に浮かべば、惑星の地上の人々は逃げることすら出来ずに恐怖するしかない。
豪族派のシャトルのレーダーが観測したのは、ハイパージャンプの反応と多数の戦艦の熱反応だった。シャトルのコクピットから戻ってきたサクは、首を横に振る。
「こりゃダメだ」
「再起動したばかりでこんなことを言うのはなんですけど、勝ち目はありません。どう計算しても無理です」
テンノーはスコンプ・リンクに接続していたシリンダーを引き抜き、両手を上向けた。
「これは戦闘機ではないの?」
シチリーがシャトルを指すも、サクはレーザー砲を指す。
「多少の空中戦は出来るが、基本は輸送用だ。大体、お前らにそこまで高度なスターファイターを寄越したところで飛ばせないだろ」
「セーヤ、いかがなさいます?」
テンノーに問われ、セーヤはユイを窺った。豪族派の要塞が混乱し始めたのをいいことに、セーヤ達は早々に脱出を図り、テンノーを奪還して脱出用のシャトルも確保した。ユイも助け出して拘束を解いたが、ユイは青ざめて俯いていた。
「とても気分が悪いです。冷たくて重苦しいものが、私のアシュラを圧迫するような……」
「ユイ。あなたは敏感だから、何かを感じているのね」
シチリーが案じると、ユイは両腕を握り締めて背を丸める。
「姉さん、私、なんだか怖い。何が怖いのか解らないけど、怖くてたまらないの」
「サクのガンシップはどこにある?」
セーヤはユイを気にしながらも問うと、サクは王都の方向を指す。
「王都の外れに停めてある。今からシャトルをフルパワーで飛ばせば、スターデストロイヤーからTIEファイターが発進するまでの間に到着出来なくもないが、俺のガンシップで出来ることなんて限られている。セーヤのシャトルもそうだろ?」
「脱出を図るにしても、乗せられるのはごく少数ですし、そのメンバーを選抜している暇もありません。ネゴスの戦力も、帝国残党に張り合えるものではありませんし。いかがなさいますか、セーヤ」
テンノーが指示を乞うてきた。セーヤは少し考えたが、布の下で顔を上げる。
「私がスターデストロイヤーに潜り込んで、少しでも敵の戦力を削ぐ。テンノーはサポートをお願い、サクはネゴスの人達を助けてあげて」
「善処するが、あまり期待するなよ? 地上戦に持ち込まれれば、一巻の終わりだ。その前に蹴りを付けないと、ネゴスは焼き尽くされちまう」
サクは取り戻したブラスターをホルスターに入れ、仮面を付け直す。
「巫女様……。巫女様のお力でも、それは無理ではありませんか? 私はスターデストロイヤーがどんなものかは知りませんが、とても恐ろしいのは解ります。巫女様はアシュラの加護がありますが、それでも巫女様は私より年下の女の子なんです。どんな力があったとしても、無理なものは無理です」
ユイは青ざめながらも、セーヤを注視する。
「シチリー姉さんが王家復興派に加わるようになってから、私も自分なりに王族の方々のこととアシュラの巫女について調べました。ビーナ王女の人となりについても。調べれば調べるほど、歴代の巫女様もビーナ王女も普通の女の子だと解るんです。幼い頃に家族の元を離れた巫女様は寂しくて夜中に泣いていたり、甘いお菓子をもっと食べたかったと日記に書いていたり……。ビーナ王女のお世話をしていた侍女達の話によれば、ビーナ王女はアシュラの力でイタズラをして王を困らせたり、空を飛んで宮殿を抜け出そうとして叱られたり、重たいドレスが嫌いで、座学よりも剣術の練習がお好きで……」
ユイは姉の手を借り、立ち上がる。
「巫女様もそうですよね? だったら、なぜそのようなことを仰るのです? ネゴスと運命を共にしろとは言いません、私達の身勝手で振り回してしまったのですから。だからこそ、御自身の幸福を選んでほしいのです」
「ユイ、あなたはビーナ王女のことをそんなふうに考えていたの?」
シチリーが虚を突かれると、ユイはサクに目をやる。
「私はサクから色々な話を聞きました。ネゴスの外の宇宙がどんなものなのか、知りたかったからです。内戦が終われば宇宙に旅立てるのではないかと、ずっと思い描いていたからです。だから、たとえビーナ王女が見つかったとしても、ネゴスの王位を継いで頂くべきではないんです。それこそ、ビーナ王女に対する侮辱です」
「ユイ!」
妹の不躾な言葉にシチリーは頭に血が上り、ユイの手を振り払う。手を振り上げるも、その手をセーヤのフォースが止めた。
「ありがとう、ユイさん。私のことをそこまで心配してくれて。でも、大丈夫だよ」
セーヤは素顔を覆う布を外し、巫女の衣装を脱ぎ、ライトセーバーのフックにスカーフの切れ端をしっかりと結んだ。
「私はジェダイだから」
サクはセーヤを制止するために手を伸ばそうとしたが下げ、シチリーは唖然としていて、ユイは薄々気付いていたのか表情を変えなかった。テンノーは一歩踏み出し、セーヤに手を差し伸べる。
「ご命令を」
「テンノー。このシャトルを全速力で飛ばしてネゴスの裏側まで移動してから、ハイパードライブで帝国艦隊の隙間に入り込ませて。ダース・シャハーがいるのは中央の旗艦だから、それにドッキングさせて、その後はハッキングして通路と隔壁を操作して進路を確保して。そこから先は自分でどうにかする。それから、他にもシスがいる。たぶんだけど、オード・キューとクレイン」
セーヤがテンノーを伴ってシャトルに向かうと、埃を落としたクガ・ヌームが現れる。
「それで、俺達はどうすればいい?」
「私の正体を知っても攻撃しないの?」
セーヤがクガを見上げると、クガは湿った髪を掻き上げる。
「俺はそこまで馬鹿じゃない。ジェダイについて思うところはあるが、それはそれだ」
「ありがとう、そう言ってくれて。あなた達のアシュラじゃシスには勝ち目はないけど、大勢で力を合わせれば押さえ付けることは出来るかも。サクのアシュラがジャワのシスに通用したのは、不意打ちを狙ったからでもあるけど、ほんの少しであれば対抗出来るんだと思う。だから、それを積み重ねれば」
「解った。やるだけやってみる」
クガはセーヤの背を押し、手を振った。
「今回だけは俺のシャトルを貸してやる」
クガの広い背中を見送ってから、セーヤはテンノーと共にシャトルに乗り込んだ。ユイは涙を溜めた目で見つめてきたので、セーヤは笑顔を返してからハッチを閉じた。
ここから先は戦場だ。
シャトルを低空飛行させた。
スターデストロイヤーのレーダーの圏内から逃れるためには、惑星を半周しなければならない。セーヤは久々に手にしたライトセーバーの重みを確かめながら、ネゴスの夜の側に突入した。
ダース・シャハーの気配はあるが、今のところはセーヤを見つけていない。だが、それも時間の問題だ。そして、戦力も圧倒的に足りていない。複数のシスを相手にするには、ベテランのジェダイが何人も必要だ。しかし、ここにいるのはセーヤだけだ。
だから、策を講じる。シャトルがネゴスの裏側の夜空を駆け抜け、テンノーがセーヤの無茶な注文に応えるべくハイパードライブの座標をセットする。セーヤはフォースを研ぎ澄ませて御社の存在を確認すると、アシュラとボーガンに働きかけた。
「動いて」
宇宙空間に出たシャトルがハイパードライブを作動させ、ごく短時間のハイパースペース航行を終えて通常空間に出現すると、そこは帝国艦隊の真っ只中だった。真上にはスターデストロイヤーの船腹があり、TIEファイターが今にも発進されそうになっていた。
突如、正体不明の機体が出現したことでTIEファイターの編隊は緊急発進し、十隻の軽クルーザーも砲口をこちらに向けてくる。だが、スターデストロイヤーのシールドのすれすれだったので、皆、躊躇していた。
その隙を見逃さず、テンノーは強引な操縦で着艦ゲートに突っ込んだ。カタパルトから射出される寸前だったTIEファイターを薙ぎ倒し、ストーム・トルーパーに迎撃されながらも横滑りしていく。生き残ったTIEファイターのレーザー砲がシャトルに向いたが、セーヤはシャトルから出ると同時にアシュラとボーガンを操った。
「来い!」
セーヤのフォースに導かれ、アシュラとボーガンがスターデストロイヤーに喰らい付く。それはTIEファイターを呆気なく潰したばかりか、巨大な艦体を重力とは異なる引力で傾け始めた。
「今の私は、まだ巫女だからね」
セーヤはアシュラとボーガンの流れを引き寄せ、ネゴスの地表から少しずつ伸ばしていく。だが、三隻のスターデストロイヤーを制圧することに気を割きすぎたからか、アシュラとボーガンの拘束を逃れた軽クルーザーはネゴスへと降下していく。
そこから先は、ネゴスの人々を信じるしかない。セーヤは左右のスターデストロイヤーを大きく傾け、どちらの機関室にもアシュラとボーガンでダメージを与えてから、ネゴスの重力圏に囚われる高度でアシュラとボーガンから解き放った。
砲撃も受けずに墜落していく二隻のスターデストロイヤーを目の当たりにして、TIEファイターのパイロットやストーム・トルーパーは唖然としていたが、セーヤは自身のフォースで彼らを追いやった。
「道を開けて」
ダース・シャハーに会いに行かなければ。セーヤはライトセーバーを作動させ、緑の光の刃を伸ばすと、ストーム・トルーパーが放つブラスターのエネルギー弾を弾き返す。シャトルから脱したテンノーを伴いながら、セーヤは迷いなく進んだ。
ライトセーバーがいつになく眩しい。
巨大な戦艦が落ちてくる。
三角形の戦艦は艦首を地表に突き立てるかのように、真下に向かって直進していた。しかも、二隻も。アシュラとボーガンに底上げされているとはいえ、これが本物のジェダイの実力なのか。サクは仮面の下に嫌な汗が浮いてきて、頬を歪めた。
「ジェダイ……」
サクは賞金稼ぎとして銀河を飛び回ってきたが、本物のジェダイと接する機会は少なかった。クローン戦争の後ともなれば尚更で、生き残りのジェダイは帝国の粛清を逃れるために身を隠していたからだ。だから、賞金稼ぎ同士の噂話で耳にする程度だったが、それでも常識外れの強さを持つ戦士なのだと認識していた。
しかし、その噂よりも荒唐無稽だ。この銀河に神がいるとするなら、ジェダイは生きながらに神に近しい力を得た、選ばれた者達だ。サクは背筋が冷え込んだが、この荒業を成しているのがセーヤなのだと思い直し、ジェダイへの畏怖を拭い去った。
「ジェダイだが、あの子はあの子じゃないか」
サクはスピーダーバイクを加速させる。自分のガンシップの元に戻るべく、王都を目指していた。燃料の残りが若干心許なかったが、今はそんなことを気にしていられない。
スターデストロイヤーの墜落に巻き込まれた軽クルーザーは三隻あり、いずれも空中で爆散したが、残りの七隻は健在だ。それをどうにかするには、ヤナグの力も必要だ。
世界が滅びる悪夢のような光景は、一瞬のようでいて永遠のようでもあったが、ネゴスの重力は巨大な異物を捉えて離さなかった。手前のスターデストロイヤーの船首が地表に突き刺さり、炎が吹き上がって内部から膨れ上がり、爆砕する。続いて奥のスターデストロイヤーは完全に裏返っていて、ブリッジが地面にめり込んで潰された途端、爆砕した。
凄まじい爆風と衝撃波をやり過ごしてから、サクは横転しかけたスピーダーバイクを立て直し、ガンシップを目指した。
王都の外れの森林地帯に入り、木々を擦り抜けながら進んでいくと、サクの長年の相棒が待っていてくれた。だが、その手前にはスピーダーが停まっていて、ヤナグとその部下達が揃っていた。
「俺のガンシップを奪って逃げるつもりか?」
サクはスピーダーバイクを降りてブラスターを抜いたが、ヤナグはブラスターの銃口を上げかけた部下達を制した。
「そこまで腰抜けではないよ。あの戦艦を落としたのは巫女様なのか?」
「巫女だが、ジェダイだ。俺が連れてきたんだ、責任は俺にある」
サクがブラスターの銃口を上向けると、ヤナグは轟々と燃え盛る炎と黒煙に焦がされる空を仰ぎ見た。
「ジェダイは王族を殺した」
「そういうことにしたのは、あんたの父親だろ?」
「そうだ、その方が何かと都合が良かったからだ。だから、今後も都合良く利用させてもらう。我々がジェダイの力になるには、どうすればいい? サク、お前はそれを知っているんじゃないのか?」
「力を合わせてアシュラで対抗しろ、と言われたよ。ネゴスで散々な目に遭わされたってのに、あの子はネゴシアンを信じてくれているんだ。優しいんだよ、セーヤは」
「ならば、そうしよう。私達のアシュラを重ねれば、少しは役に立つはずだ」
「異論はないのか?」
「議論は後回しだ。今は生存する確率を少しでも上げるべきだ」
邪魔をした、と言い残し、ヤナグと部下達はスピーダーに乗って去っていった。サクは撃たずに済んだブラスターをホルスターに戻すと、ガンシップに乗り込んだ。僅かに迷ったが、サクは仮面を外してガンシップのエンジンに点火した。
若きジェダイの力となろう。
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