トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
ライトセーバーが閃く。
緑の光の刃が翻るたびに、多くの敵が薙ぎ払われ、壁が切られ、道が切り開かれていく。ほんの少し前の自分であれば、想像も付かなかったことが次々とやってくる。けれど、それを投げ出さず、一つ一つ向き合ってきた。だからこそ、今、セーヤはダース・シャハーに立ち向かえるだけの自信がある。
「ちょっと違うかな」
セーヤは独り言を零してから、通路を駆けてきたストーム・トルーパーの部隊をフォースで吹き飛ばした。
「どう違うのですか?」
テンノーはすかさず隔壁を下ろして通路を塞ぎ、新たにブリッジまでの最短ルートを割り出してから隔壁を開けていく。セーヤはそのルートに従い、足を進める。
「私は自信を付けたんじゃないよ。増して、自分が強くなったなんてちっとも思わない。今、こうやってスターデストロイヤーに乗り込めたのも、テンノーがいるからだし。少しだけ、世界が広くなったの」
「それはセーヤの主観ですか、それともフォースによるものですか?」
「どちらも、かな」
セーヤはレックの根元に巻き付けてあるマフラーに触れた。その端はサウスが千切ったので、ちょっとほつれている。後で縫い直さなくては。せっかくカミーノからもらったのだから。
行く手を阻むものを押し退け、進み続けると、ブリッジに上がるためのエレベーターに到達した。セーヤはそのボタンを押すと、エレベーターが降下してきた。テンノーは一歩身を引き、一礼する。
「じゃ、行ってくるね」
セーヤは振り返らずにエレベーターに乗り込んだ。ブリッジの階数ボタンを押し、エレベーターが上昇するにつれてダース・シャハーの気配が強くなってくる。フォースを通じて会った時とは比べ物にならないほど、圧倒的だった。これが本物のシスの暗黒卿だ。
ブリッジに到着し、ドアが開くと、ストーム・トルーパーと帝国の兵士が一斉に銃口を向けてくる。セーヤは彼らをフォースで薙ぎ払い、追いやってから、黒衣の人物の名を呼んだ。
「ダース・シャハー」
「来たな」
ダース・シャハーはセーヤを捉え、引きずるほど長い黒いマントを翻す。ライトセーバーを作動させ、赤い光の刃を伸ばす。その光は禍々しいマスクに濃い陰影を与え、ダース・シャハーの影をより深くしていた。
「あなたに会いに来たの」
「私もお前を待っていた。そのライトセーバーを差し出せ、であれば見逃す」
「それは出来ない。あなたを倒さないと、この艦隊は引き下がらないから」
セーヤはライトセーバーから緑の光の刃を灯し、輝かせる。二つの視線が交わり、フォースが拮抗する。電流のようにヴィジョンが次々に弾けては消え、煌めいては散り、泡のように浮かんでは潰える。
無数の未来が視える。セーヤとダース・シャハーの剣戟だが、勝ち筋となるヴィジョンが掴めない。どう手を尽くしても、ダース・シャハーは全てにおいてセーヤを上回っているからだ。経験も、セーバー剣術も、フォースも、覚悟も。
しかし、セーヤにも補えるものが一つだけある。ジェダイとしての矜持だ。それがどうした、と嘲られるかもしれないが、セーヤが持つもので最も重いのはそれなのだから。
二つの影が駆け出し、光を交える。思った通り、いや、それ以上にダース・シャハーの太刀筋は的確でひどく重たい。足捌きに無駄はなく、重心の据え方も完璧で、多少リーチを取ろうが後ろに回ろうが姿勢を崩せない。それどころか、セーヤのアタルよりも反撃が素早く、セーヤのヴィジョンが間に合わなければ首や手足を刎ねられていたのは一度や二度ではなかった。
間合いに近付くことすら出来ず、セーヤはライトセーバーを握り直す。いつのまにか手に汗が滲んでいたので、ライトセーバーのフックに結んだ布の切れ端を手首に結び、落とさないようにした。
「この程度か?」
ダース・シャハーは傷一つないマスクを傾け、その奥からセーヤを注視する。
「弱い、弱すぎる。太刀筋がブレている、踏み込みが浅い、攻め方に思い切りがない、何よりも私を殺そうという気概がない!」
ダース・シャハーは左手を掲げ、フォースを放つ。ブリッジの椅子や壁を強引に引き剝がすと、それらを一斉にセーヤの頭上に降り注がせた。セーヤはフォースで落下の勢いを凌ごうとするも、あちらのフォースの方が強かったので無意味だった。
「くうっ」
セーヤは身を転じて回避した途端、落下物が床に深く突き刺さり、配線や配管を切断する。セーヤが姿勢を戻そうとすると、ダース・シャハーはフォースを用いて舞い上がり、セーヤの目の前に現れる。
「それでもお前はサウスのパダワンか?」
呆れと怒り、そして侮蔑を含んだ言葉を間近で囁かれる。赤い光の刃がセーヤの首を刎ねようと滑り込んできたので、セーヤはライトセーバーで弾き返し、自身の体をフォースで浮かばせて後退する。
「私は!」
ダース・シャハーが迫る中、セーヤが自身の中に宿るフォースを解き放つ。
「もうパダワンじゃない!」
一瞬にも満たない時間だったが、セーヤのフォースがダース・シャハーを戒める。セーヤはライトセーバーを振り翳して黒いマントの内側に飛び込み、そして。
黒いマスクを斬った。
軽クルーザーが着陸した。
艦隊の最大戦力であるスターデストロイヤーが、恐らくはセーヤが操るアシュラとボーガンによって引き寄せられて撃墜されたとあっては、早々に撤退するかと思っていた。だが、帝国軍は戦線離脱することは頭にはないようで、兵員輸送車やTIEファイターが発進し始めた。
サクはガンシップからその様子を捉えていたが、兵員輸送車とTIEファイターの編隊の向かった先は案の定王都だった。
「ヤナグ、TIEファイターの編隊が王都の東側から向かった。兵員輸送車もだ」
『了解した。対処する』
ヤナグからの返事があり、サクはレーダーで軽クルーザーの位置を確認する。七隻もあるので、ガンシップだけで落とすのは至難の業だが、ここはネゴスだ。
「ユイ、お前の出番だ。そのために連れてきたんだ」
「私は巫女様ではありませんし、アシュラの力で戦ったことなんてありませんが……」
ガンシップの座席に収まったユイは、不安げに目線を彷徨わせた。
「だが、俺達よりもアシュラの力の扱いには長けている。さっきのセーヤみたいな離れ業じゃなくてもいい、手助けしてくれ」
「ですが、敵の船の中には兵士がいるんですよね?」
「殺さなければ殺される。これまでもそうだった。この戦いも同じことだ」
「全てが終わったら、敵味方問わず弔います。その手伝いをしてくれますか?」
「ああ、約束する。時間は掛かるだろうが、最後の一人まで回収する」
サクが迷いなく答えると、ユイは膝の上で手を握り締めた。
「解りました」
ユイは両手を組んで目を閉じた。ジェダイが瞑想してフォースとの繋がりを確かめるように、ネゴシアンも瞑想することでアシュラと通じ合う。
ユイの真摯な祈りがアシュラに届いたのだろう、ガンシップがエンジンを始動させる前に浮き上がった。サクはユイのアシュラの力を借りてガンシップを発進させ、着陸した軽クルーザーへと向かった。
王都の方向から爆撃の音が聞こえてきたが、そちらはヤナグに任せておいた。サクはシチリーにも連絡を入れ、軽クルーザーの現在位置を伝えておいた。そこから先は、彼らの力を信じるだけだ。
まず向かったのは、王都付近に着陸した軽クルーザーだった。ガンシップは一旦エンジンを切り、サクはユイとアシュラの力を重ねてガンシップを浮かせ、速度を保った。サクの思惑通り、軽クルーザーは熱反応を探知しなかったようで迎撃してこなかった。
「よし、再起動!」
サクは一斉にスイッチを入れてガンシップの挙動を取り戻し、軽クルーザーを射程範囲内に入れると同時にレーザー砲を発射した。不意打ちを喰らった軽クルーザーは、反撃する間もなく艦橋が破壊され、続いてメインエンジンに追撃を受けて内側から膨張し、やがて爆散した。
サクはガンシップを急上昇させ、生き残りの兵士からの銃撃から遠ざかりながら、次の軽クルーザーの位置を確認した。ここから近い場所に降下中の軽クルーザーが二隻、スターデストロイヤーの墜落から逃れたために豪族派の領地に向かった軽クルーザーが三隻、今し方壊したのを含めると六隻。
最後の一隻がどこに向かったのかは気掛かりだったが、サクは降下中の軽クルーザーを迎撃することに集中した。
「次の船は引っ張ってくれ」
「はい」
ユイは静かに答えた。有視界で軽クルーザーを捉え、あちらもガンシップの位置を捉えたようでレーザー砲が向けられた。射線から逃れて回避行動を取りながら、ガンシップは軽クルーザーに突っ込んでいく。相手が大きい場合、下手に逃げ回るよりも接近した方が狙われづらくなるからだ。空中に投下されたプロトン魚雷も擦り抜けると、空振りに終わったプロトン魚雷が炸裂し、軽クルーザーの左舷を揺さぶった。
「今だ!」
サクはもう一隻の軽クルーザーに向けて振盪ミサイルを発射し、シールドを通過して着弾した瞬間に再加速する。ユイの操るアシュラが二つの軽クルーザー同士を引き寄せ、衝突すると、程なくして爆砕する。
途方もない達成感と勝利の快感を得たのはほんの一瞬で、サクは最後の一隻の行方を捜した。当初の作戦の通りには進まず、戦況が著しく変化したから離脱したのかと思ったが、それにしては挙動がおかしい。低空を低速で飛行している。まるで、何かを探しているかのような。
「まさかアレを?」
巫女の儀式で使う三角の箱を手に入れるつもりなのか。アレが何なのかはサクは知らないが、奪われるのはよくない気がする。サクは方向転換し、最後の一隻を追うべくガンシップの速度を上げた。機体に絡みついてきた力はガンシップの針路を妨げるものではなく、むしろ後押ししてくれた。
アシュラとボーガンだ。
切断面が赤く熱する。
ダース・シャハーのマスクが外れるとヘルメットも外れ、黒い金属の塊が固い床の上で転がる。長い黒髪が解き放たれて扇状に広がり、やがて黒いマントに触れる。あのマスクでもセーヤの一撃を防ぎきれなかったようで、色白な頬には真新しい火傷が刻まれていた。
ダース・シャハーはよろめき、後ずさる。義肢の右手で顔を覆い、肩を大きく上下させていたが、怒りに満ちた目でセーヤを睨んできた。額には一対のツノ、目元には菱形の模様。年齢を経ているが、その顔はやはり。
「ビーナ王女」
セーヤが呟くと、ダース・シャハーは素早く構え直す。
「その名で私を呼ぶな!」
動揺していながらも、彼女の太刀筋は全く乱れなかった。セーヤはそれを受け、凌ぎながらも、攻勢には転じられなかった。それほどまでに彼女は強いからだ。
火花が散り、空気が唸り、光が入り乱れる。セーヤが辛うじて死なずに済んでいるのは、ダース・シャハーよりも未来予知がほんの少しだけ上だから、というだけだ。その先読みを見誤れば一瞬で殺される。
互いのフォースを拮抗させるも、それもやはりダース・シャハーが上だった。セーヤは踏ん張ろうとしたが、結局は押し切られ、壁まで吹っ飛ばされた。
強かに背中が激突し、全身が痺れる。セーヤはそれでも立ち上がろうとするが、ダース・シャハーはフォースジャンプでセーヤの目の前に飛んできた。右足の義肢でセーヤの肩を強く押し、骨を軋ませてくる。その痛みに耐えかねてセーヤの右手が緩むと、ダース・シャハーはライトセーバーをフォースで引き寄せ、握り締めた。
「前言撤回だ」
サウスのライトセーバーを作動させ、ダース・シャハーは緑の光の切っ先をセーヤへと向けた。
「お前はここで始末する」
氷のように冷え切っているが、ひどく美しい瞳だった。素顔でありながらもダース・シャハーであることを貫くビーナを目の当たりにして、セーヤはようやく気付いた。氷と雪の惑星ゴーラで出会ったサウス・ギ・ハーラとビーナは、きっと。
だから、サウスの太刀筋が僅かに逸れた。彼女の右腕と右足が欠損しているのが何よりの証拠だ。サウスはビーナと出会い、愛してしまったから、恐るべきシスだと解っていながらも倒し切れなかった。ジェダイであることを捨ててまでも、ビーナを討とうとしたが、それはサウスなりの筋の通し方だったのだ。
「私のマスター、サウス・ギ・ハーラは……」
セーヤは顎を上げ、ダース・シャハーと目を合わせる。
「あなたの正体を私には明かさなかった」
セーヤはフォースを高める。
「けれど、テンノーにライトセーバーを預け、それを私に託してくれた。シスとしての最期を迎えることが、あなたを侮辱せずに済む方法だと信じていたからだ」
ダース・シャハーの足元が浮き、黒いマントが波打ち、セーヤの三本のレックが揺れる。フォースの奔流の中、ダース・シャハーは浅く息を呑んだ。
「だから、私もあなたには屈しない!」
ダース・シャハーの手からライトセーバーを奪い返し、セーヤは身を翻す。空中で転じ、ダース・シャハーの右腕と右足の義肢を切断してから、フォースを力一杯放ち、遠くまで吹き飛ばす。そして、ブリッジ内の機材を浮かせてダース・シャハーの上に積み重ねて動きを封じた。
最後に、セーヤはブリッジの機器を手当たり次第に破壊してからエレベーターに飛び乗った。帰りを待ってくれていたテンノーと合流し、着艦ゲートまで戻り、シャトルに乗って脱出した。
追撃はなかった。
好きな登場人物は?
-
セーヤ・ミットー
-
テンノー(NO-10)
-
カミーノ・スターリバー
-
ヒル・スワンプ
-
ホープ・ハイライト
-
ナザ・シーサイ
-
ケイ・ホーク
-
マチルダ・グランベリー
-
エア・キャビー
-
サウス・ギ・ハーラ
-
ソウ・テッセン
-
ダース・シャハー
-
オード・キュー
-
クレイン・ミーネ
-
ショーナ・ディノ
-
ユマ・ハイライト
-
ヴィシャム
-
フマガ
-
サク・ラギーチョ
-
その他