トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる   作:あるてみす@二次創作

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50.新しき時代へと

 ネゴス。

 生まれ故郷であり、忌まわしき星であり、ビーナ・エイを縛り付けていた鎖だ。それが、今、この下にある。だが、肝心のスターデストロイヤーが使い物にならない。操縦システムは辛うじて生きているが、それが止まるのも時間の問題だ。その前にネゴスから離脱しなければ、スターデストロイヤーと共にネゴスに墜落し、運命を共にしてしまう。

「……冗談じゃない」

 ビーナ・エイは黒いグローブを填めた左手で素顔を掴み、吐き捨てた。右足の義肢を切断されたせいでバランスが取りづらいが、フォースを併用すればまだ動ける。瓦礫に埋もれかけたライトセーバーと破損したマスクを取り戻してから、ビーナはブリッジを脱した。

 至るところから悲鳴が聞こえてくる。ストーム・トルーパー、帝国軍人、そしてネゴシアンのものだ。いつもそうだ。ビーナの秀でたフォースセンシティブは、感度が高すぎて却って使いづらい。

「黙れ!」

 ビーナは苛立ちと共にフォースを放ち、一度に数枚の隔壁と、その間に倒れていたストーム・トルーパーを吹き飛ばした。

 テンノーが細工をしていったようで、通路という通路に隔壁が下りている。そこでビーナは手近なアストロメク・ドロイドを拾い、カタパルトへの最短距離の通路を算出させてから、そのドロイドを伴って移動した。

 いくつかの通路を迂回した後にカタパルトに到着したが、離発着のためのゲートは破損したTIEファイターに塞がれていた。その周囲ではパイロット達が倒れていて、皆、身動き一つしなかった。

 ビーナはフォースでTIEファイターの残骸を押し退けると、破損も炎上もしていないTIEインターセプターに乗り込んだ。先程のアストロメク・ドロイドに航行システムをチェックさせてから、エンジンを始動させ、急発進した。

 TIEインターセプターがカタパルトから発進し、宇宙に向かうべく上昇し始めてから数十秒後、スターデストロイヤーは限界を迎えてネゴスの地表へと迫っていった。

「滅んでしまえ、こんな星なんて」

 ビーナは操縦桿を握り締め、肩を怒らせる。サウス、サウス・ギ・ハーラ。ソウ・テッセンのパダワンだった彼がこの星を訪れなければ、こんな思いをせずには済んだのに。ゴーラの吹雪の中でビーナを仕留めてくれれば、苦しみしかない銀河に取り残されなかったのに。サウスに向けるのはライトセーバーではなく、シスの矜持でもなく、ただ一人の女としての眼差しだけであれば、きっと。

「うっ、ぐぅ……」

 ビーナはきつく歯を食い縛り、込み上がってくる涙と激情を押さえ付けた。ここでフォースを暴発させれば、宇宙に放り出されて成す術もなくなってしまう。TIEインターセプターのハイパードライブを惑星モルルの座標へとセットしてから、ビーナは右頬の端の真新しい火傷に触れた。

 サウスはパダワンを得る前に死んだ。ビーナが殺したからだ。だが、あのトワイレックの少女はサウスのパダワンだと言った。実際、その太刀筋とフォースの使い方にはサウスに通じるものがあった。だとすれば、どこでサウスと出会い、通じ合ったのだろうか。ビーナと出会う以前は真っ当なジェダイだった彼のことだから、フォースに迎え入れられ、フォースゴーストと化しているのだろう。

「だが、それは……」

 シスである私には許されない。ハイパースペースの中、ビーナはツノの生えた額を押さえて目元を覆った。

 小さな火種が胸の奥で燻っていた。

 

 

 洞窟の手前には集落がある。

 いや、あった。内戦から逃れるために住民達が逃げ出した後、王家復興派が拠点を築いていたのだが、家という家が一つ残らず焼かれていた。黒煙が吹き上がり、王家復興派が隠していた武器が過熱されて爆発する。

 帝国軍のシャトルと兵員輸送車が集まっていて、ストーム・トルーパーの部隊がブラスターを手にして並んでいる。サクはガンシップを大きく旋回させて距離を取ったが、すぐに気付かれてしまい、対空砲が発射されたので回避行動を取った。

 森の中の入り組んだ場所に強引に着地した後、サクは長年使いこんだブラスターと持てる限りの武器を持ち、ハッチを開けた。

「ユイ、逃げるんだ。ここから先は俺がなんとかする」

「いいえ。巫女様であれば、決して引き下がらないでしょう。儀式に使う箱を奪いに来たというのであれば、それを防ぐのもガハムの家の者の務めです」

 ユイは背筋を正し、サクを見据えてきた。サクはちょっと肩を竦めた。

「すっかり肝が据わりやがって。だが、俺の援護に徹するだけにしろ。前には出るな。アシュラの力で撹乱して、その間に箱を奪って逃げる」

「解りました」

 ユイが頷くと、サクはハッチの外に駆け出した。ユイはガンシップの屋根に上り、高い位置からサクの居場所を確認しつつ、祈りを捧げてアシュラを操った。

 スピーダーバイクに跨ったスカウト・トルーパーが集落から発進し、木々の間を擦り抜けながら迫ってくる。サクは木の位置を把握しているので、スピーダーバイクの視覚に入り込んだ。そこからスカウト・トルーパーをブラスターで撃ち、ハンドルを離して落下したところですかさず乗り込む。

 異変に気付いたスカウト・トルーパー達は方向転換し、サクを追い回しながらブラスターを撃ってきたが、サクは木々を遮蔽物にしながら回避し、充分に彼らを引き付けてから幹に沿って垂直に上昇した。

 直後、スカウト・トルーパー達は減速出来ずに木に激突し、スピーダーバイクも爆発する。サクはその爆発を背にして集落を目指し、速度を上げた。

 これまで賞金稼ぎとして生きてきたが、特に危険な仕事を請け負う前や、恐るべき敵との戦いから逃れられない時は、仮面に隠したツノが疼いていた。それもアシュラによるものであり、未来予知の一歩手前といった具合だったのだろう。

 今回はそれが顕著で、ツノの疼きどころか頭痛さえ感じている。脳裏に過ぎるのは、あの夜だ。ネゴスの運命が変わった日に、サクをマインドトリックで惑わし、王宮に潜り込み、王族を一人残らず殺したシスと遭遇した時だ。あの時、俺が対処していれば。異変に気付いていれば。シスを止められなかったとしても、王族を逃がすための時間稼ぎぐらいは出来たはずだ。

 サクはスピーダーバイクを最加速させ、集落へと突っ込んだ。ストーム・トルーパーが驚いた様子でブラスターを撃ってきたが、サクは彼らをスピーダーバイクで吹っ飛ばし、一直線に洞窟を目指した。

 だが、洞窟の手前に人影が現れた。黒いマントを纏った男はサクへと手を翳すと、フォースを放った。サクはスピーダーバイクごと煽られ、空中に投げ出されたが、アシュラの力を応用して軟着陸する。

「やはり見込みがあるな」

 黒いマントの裾から垣間見えているのは、忘れもしない尻尾だった。その男はライトセーバーを作動させ、赤い光の刃を伸ばす。

「お前だな、王族を殺したのは」

 サクはブラスターを抜き、尻尾の男に銃口を向ける。その男の隣に大柄なデヴァロニアンの女が現れ、こちらも赤いライトセーバーを構えたが、尻尾の男はそれを制した。

「そうだが? もう過ぎたことじゃないか」

「ビーナ王女も攫った」

「ああ、そうだ。ジェダイが先に目を付けていたようだが、何もせずに引き下がった。おかげで、シス帝国の再興を成し遂げてくれる暗黒卿を生み出せた」

「それがセーヤの言っていたダース・シャハーなのか」

「その通りだ、衛兵。俺の名はオード・キュー、銀河の運命を変えたシスだ!」

 オードは黒いマントを脱ぎ捨て、ライトセーバーを握って駆け出してきた。サクはブラスターを撃つも弾かれ、撃った場所に正確に弾き返してくる。サクはそれをなんとか避けたが、オードは一瞬で間を詰めた。

 これがシスか。確かにジェダイ以外では太刀打ち出来ない。サクは一際激しい頭痛を感じ、反射的にブラスターを振り上げると、その銃身がオードのライトセーバーの柄に当たった。それによって太刀筋が変化し、サクは後退出来たが、オードは尻尾を器用に使って転倒を免れる。

 俺の運命もここまでか、とサクは覚悟を決めたが、不意にオードの動きが止まった。いや、それ以外も。サクだけは体が動く。ということは、これはアシュラだ。

「ユイだ」

 サクはユイの祈りに応じたアシュラに感謝しながら、オードのライトセーバーを叩き落してからブラスターで撃ち、デヴァロニアンのシスのライトセーバーも同様に破壊してから、洞窟に駆け込んだ。

 サクは赤い光を滲ませる三角の箱に手を伸ばし、掴み取ろうとしたが、後方に引っ張られていった。まさか、と振り返るとオードが凄まじい形相でこちらを睨んでいた。その殺気がサクだけでなくユイにも伝わったのか、アシュラによる圧力が緩んだ。

「たかが衛兵が……」

 オードは三角の箱を握り締め、壊されたライトセーバーを拾うと、忌々しげに叫んだ。

「撤退だ!」

「オード、私達はまだ……」

 デヴァロニアンのシスは不満を零すも、オードは三角の箱を見せつける。

「シスのホロクロンを手に入れた、それならダース・シャハーも文句は言うまい。それに、この星では俺達のフォースが妨げられる。クレイン、お前もそれを感じているだろう?」

 クレインと呼ばれたデヴァロニアンのシスは異論を唱えようとするも、オードが不愉快そうな足取りでシャトルに向かったので、クレインもその後を追った。生き残りのストーム・トルーパーも撤退し始め、シャトルと兵員輸送車は飛び去っていった。

 七隻目の軽クルーザーはサクとユイの攻撃を逃れたため、オード達を回収した後、艦首を上向けてネゴスから離脱していった。

 嵐のような一時が終わり、燃え尽きた家々に囲まれながらサクが立ち尽くしていると、コムリンクが鳴った。

 セーヤからの通信だった。

 

 

 シャトルが戻ってきた。

 疲れ切ったセーヤをテンノーが支え、降りてくると、ユイが真っ先に出迎えた。ユイが無事だと知ると安心したのか、セーヤはかくんと頭が下がった。寝落ちしたからだ。

「この子、いくつなんだ?」

 戦闘を終えて引き揚げてきたクガ・ヌームは、テンノーに抱えられたセーヤを見やる。

「セーヤは14歳です」

 テンノーが答えると、サクは首を横に振る。

「俺達の半分も生きちゃいないじゃないか」

「しかし、そんな彼女があれだけのことを成し遂げてしまった。ジェダイとは……」

 王都から戻ってきたヤナグが零すと、シチリーはセーヤを追うユイを眺める。

「でも、普通の女の子よ。過大評価しすぎてはいけないわ」

「だから、ジェダイは修行するのです。己を律し、力に溺れず、執着を捨て、多くを守ることを使命としております」

 テンノーが答えると、クガが首を捻る。

「そこまでしても見返りはないのか?」

「ありませんよ。ジェダイ・オーダーに属していれば生活は保障されますし、任務の際に必要な物資や資金は支給されますが、私財は得られません。原則的に禁止です」

 テンノーが事も無げに返すと、ヤナグが苦い顔をした。

「ジェダイはそこまで徹底するのか」

「ジェダイって……厳しい生き方なのね」

 シチリーがセーヤの寝顔を見つめると、ユイは姉に目をやる。

「巫女様は、いえ、セーヤがそうであったからこそ、私達とネゴスは生き延びられたのよ。私達の方こそ、生き方を改めるべきだわ」

 すると、ネゴス上空に複数の機影が現れた。テンノーはぐるりと首を回し、仰ぎ見る。

「新共和国軍の艦隊です。私がスターデストロイヤーの通信機から連絡し、ついでに一部始終のデータも送信しておいたんです。ですが、そこから先をどうなさるのかはあなた方の判断に委ねます」

 では失礼します、とテンノーは一礼し、一同の元から離れた。ユイはテンノーに続いた。サクはヤナグとクガとシチリーを見比べる。

「まずはネゴス全体の復興だが、スターデストロイヤーの残骸がいくつもあるから資源には困らない。だが、それを活用するには新共和国の協力が不可欠だ。俺がお前らに与えた技術なんて、今の銀河の科学技術のほんの少しでしかないんだよ。それから、俺はユイの仕事は手伝うが、お前らにはもう手を貸さない。セーヤがここまでやってくれたってのに、同じことを繰り返すのであれば容赦しないが」

「さすがに懲りたわ。だけど、私達の言い分もあるし、譲れないものもある。何もかも元通りとはいかないけど、ネゴスが少しでも良くなるように尽力するわ。でないと、今度こそユイに愛想を尽かされるもの」

 シチリーが妹の後ろ姿に目をやると、クガは太い顎をさする。

「あの手のお嬢ちゃんは、怒らせると後が怖いからな。解るぜ、俺の娘もそうだ」

「シスと戦うことを厭わない男を敵に回すほど、私も愚かじゃない。新共和国との交渉は私が受け持とう、それが本来の仕事でね」

 ヤナグはかすかに頬を緩めた。サクは仮面をつけていた時の癖で顔に触れようとしたが、もうその必要はないのだと思い直した。これからやることも考えることもいくらでもあるが、最初にするべきことは決まっている。

 星を救ったジェダイを労おう。

好きな登場人物は?

  • セーヤ・ミットー
  • テンノー(NO-10)
  • カミーノ・スターリバー
  • ヒル・スワンプ
  • ホープ・ハイライト
  • ナザ・シーサイ
  • ケイ・ホーク
  • マチルダ・グランベリー
  • エア・キャビー
  • サウス・ギ・ハーラ
  • ソウ・テッセン
  • ダース・シャハー
  • オード・キュー
  • クレイン・ミーネ
  • ショーナ・ディノ
  • ユマ・ハイライト
  • ヴィシャム
  • フマガ
  • サク・ラギーチョ
  • その他
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