トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
長い夢を見た。
銀河がまだ生まれて間もない頃、二つの力が生まれた。時代や惑星、文明によって呼び名は違うが、セーヤの生きる時代ではライトサイドとダークサイドと呼ばれるようになる。そう、フォースだ。
ミディクロリアンを介して知覚種族が授かる力は、とてつもなく大きな意思に似ている。大きすぎて、とてもじゃないが人の視点からでは理解が及ばない。彼らからすれば、時間も空間も物質も些末な問題だ。星の瞬きよりも儚い、一瞬のきらめきに過ぎないのだから。
それでも、人は授かった力を誇示し、競い、争わずにはいられない。けれど、それは宇宙の本質だと誰かが言う。
「あらゆるエネルギーの根源は何だと思う?」
誰かに問われ、セーヤは考える。
「なんだろう……?」
「分子の運動エネルギーだ」
「運動するとどうなるの?」
「やがて熱が生まれる。分子一つが生み出すエネルギーなんて些細なものだが、それが何百億と集まるとどうなる?」
「星になる?」
「そう。その星には何がいる?」
「色々な生き物」
「生き物もまた分子の集合体だ」
「つまり、私達が戦い続けることで何かが生まれるの?」
「秩序と停滞は等しいものだ」
「だからって、殺し合うのは……」
「終わりのない戦いの先に待つのは虚無だ」
「でも、それ以外のものもあるんじゃない?」
セーヤが虚空に疑問を投げかけると、水に波紋が広がるように空間が波打ち、人影の輪郭が浮かび上がった。それはゴクロ・ラクージに似ていた。
「そう思うのなら、答えを探すといい。だが、私達はその道筋は示さない。フォースも同様だ。仮に尤もらしいものを提示されたとしても、それは欺瞞に満ちた罠だ。己の足で歩き、手を伸ばし、心に映し、考え続けろ」
サウスのようでいて、ソウ・テッセンのようでもあり、それ以外の誰かでもある。
「はい、マスター」
セーヤが素直に応じると、姿のない誰かは銀河を背にした。
「ごらん、この銀河を」
「私達の銀河」
「だが、この銀河もまた宇宙の中の一つに過ぎない。遠くから見れば、ほんの小さな点でしかない。しかし、その中には数えきれないほどの命が溢れている。お前が守れるもの、救えるもの、導けるものはほんの少しでしかなく、苦しみの末に得られるものもなく、愛したものに裏切られるかもしれない。それでも、戦い続けるのか?」
「はい」
セーヤは静かに頷いた。姿のない誰かはそれ以上は言葉を発さず、銀河を眺めた。きっと、この人はネゴスなのだ。アシュラとボーガンが混じり合い、ライトサイドとダークサイドのどちらにも通じ、ジェダイとシスの行く末を見守ってきた。
だから、短い間だったが巫女を務めたセーヤを見送りに来てくれた。セーヤはネゴスと離れるのは名残惜しかったが、背を向けた。
目を覚ますために。
天井が見えた。
ボブ・キャット号の簡素な内装で、かすかにエンジン音が聞こえてくる。いつのまにネゴスから出発したんだっけ、とセーヤは記憶を辿ったが、ダース・シャハーとの戦闘を切り抜けてシャトルに乗り込み、脱出した後からさっぱり覚えていない。
「あれぇ……?」
もしかしてネゴスの出来事は全て夢だったのか、いやいやそんなはずは、とセーヤは枕元に置いてあるマフラーに触れた。端が千切られていて、切れ目がほつれた部分が綺麗に縫い合わせられている。それから、ライトセーバーのフックにはマフラーの切れ端が結び付けてある。ということは、やはり現実の出来事だったのだ。
だったらなんで私は宇宙にいるんだろうか、とセーヤは首を捻りながらも部屋を出て、洗面所で顔を洗い、用を足してからコクピットを覗いた。
「おはようございます、セーヤ」
テンノーが首をぐるりと回し、振り返る。セーヤはレックの根元を引っ掻きながら、テンノーに歩み寄る。
「私、いつのまにネゴスを出たの?」
「セーヤが寝落ちしてからすぐです。新共和国軍に色々と問い詰められると面倒ですし、ジェダイ・オーダーの誰かが派遣されると余計にややこしくなりますし」
「そりゃまあ……」
セーヤは椅子に腰掛け、残念がった。
「せめてユイさんとはお別れしたかったな」
「ユイさんもそう仰っていましたが、セーヤを起こすのが忍びない、と。せめてものお返しになれば、とマフラーのほつれた部分を縫い合わせて下さいました」
「うん、そんな気はしていた。サクは?」
「サクはネゴスに残りました」
「そっか。うん、それがいいよ」
セーヤは彼らの選択に納得しつつも、一抹の寂しさを覚えた。状況が落ち着いたらネゴスに顔を出したいな、いつになるのか解らないけど、と思っていたが、ふと気付いた。
「テンノー、ボブ・キャット号はどこに向かっているの?」
「目的地は決めていませんが、パーレミアン交易ルートのハイパースペースを通過している途中です。ネゴスから距離を取ることで、新共和国とも帝国残党とも一旦離れられると考えたからです。さすがに今回の戦いでセーヤは消耗してしまいましたから、休息が必要です」
「うーん……」
セーヤは手を翳して集中し、フォースを向けたが、普段よりも明らかにパワーが落ちていた。肉体的な疲労もさることながら、精神的な疲労も大きい。かといって、何もせずにだらだらしているのも落ち着かない。
「それと、ボブ・キャット号の燃料を買うためのクレジットが不足しています」
テンノーの指摘に、セーヤは嘆息した。
「それもあるよねぇ」
「コアクシウムも、このハイパージャンプを終えたら底を突きます」
「どっちも高いんだよなぁ。でも、買わないと移動出来なくなるし。輸送費とか関税の都合で値段もまちまちだしさぁ」
「食料と水も同様です」
「他には?」
「レーザー砲はほとんど使わないので部品の消耗はありませんが、スラスターや反重力装置はメンテナンスとシステムチェックが必要ですし、ハイパードライブのプロトコルも不具合を起こさないようにエラーを検出して修正しなくてはなりませんし、生命維持装置も一通り点検して整備しなければなりませんし、他にもまあ色々とあります。チェック項目を作成しますか?」
「いいよ、長くなりそうだから」
「了解しました。では、どこに向かいますか? コアクシウムの残量からして、ローシュ小惑星帯の手前で通常空間に出なくてはなりませんが」
「その小惑星帯にも補給出来る場所はあるんでしょ?」
「ありますが、資金を調達する手段も考えておきませんと」
「それはどうにかなるよ。このご時世、仕事は選ばなければなんでもあるんだから」
「だとしても、帝国残党に加担するのはご容赦願いますね」
などと軽口を叩き合いながら、テンノーはボブ・キャット号をハイパースペースから脱させた。見慣れた宇宙空間が広がり、前方には小惑星帯が伸びていた。その中を宇宙船が行き来していて、人工の光が灯っているので、宇宙ステーションが点在しているようだ。
さて、どこに向かおうか。
小規模なドライブインに入った。
理由は至って簡単だ、ボブ・キャット号の燃料がそこで尽きたからだ。辛うじて墜落はせずに着陸したが、飛び立つだけの余力は残っていなかった。
「ここにも燃料ステーションはあるよね?」
セーヤはハッチを開けてボブ・キャット号から降りると、テンノーは周囲を見回す。
「それはありますね」
「とはいえ、手持ちがこれだけかぁ」
セーヤは残り少ないクレジットを握り締めた。搔き集めても500クレジットにも届かないので、これでは燃料なんて買えない。とりあえず食事でも摂ろう、考えるのはそれからだ、とセーヤはテンノーを伴って移動した。
ドライブインにはスターファイターやシャトルが停泊していて、銀河の長旅の半ばで休憩を取る人々が目に付いた。大型宇宙船ならまだしも、スターファイターやシャトルでは窮屈だし、気が休まらないし、疲れが溜まってしまう。なので、気分転換のために休憩する施設が必要となる。
スパが併設したホテル、キャバレー、バーといった大人向けの店ばかりなので、セーヤは辟易した。しかも、パイロット達が眠気覚ましに使うスパイスの匂いが充満しているのも嫌だった。ただでさえ鼻に突くのに、ジェダイになってからは尚更だった。多くのフォースユーザーがそうであるように、セーヤもまた感覚過敏になっていたからだ。
「うー……」
まともな店はないかな、とセーヤはふらふらしながら歩いていくと、路地裏にダイナーを見つけた。メニューは一般的なもので、パンケーキ、ワッフル、オムレツ、ハンバーガーなど。これなら大丈夫だ、とセーヤは店のドアに手を掛けようとしたが、《休業中》の貼り紙があった。
「なぁんだ……」
セーヤは心底がっかりして踵を返そうとしたが、人の気配を感じた。誰かいるのかな、とダイナーの裏手に回ると、エプロン姿のモン・カラマリの男が箱に腰掛けて背を丸めていた。
「おじさん、この店の人?」
セーヤがダイナーを指すと、モン・カラマリの男は振り向いた。
「ああ、そうなんだが、すまんな。当分は営業出来ない。調理ドロイドが壊れちまって、メーカーに修理してもらおうにも、こっちにスタッフを寄越すのは何ヶ月も先になると言われちまって」
「ドロイドですか。それでしたら、私が修理いたしますよ」
テンノーが申し出ると、セーヤも乗っかる。
「それから、働かせてもらえない? シャトルに乗ってここまで来たら、燃料切れを起こしちゃって」
「お前さんを?」
モン・カラマリの男はセーヤを上から下まで眺めたが、首を捻った。
「もうちょっと大きくなってからの方が、客の食いつきはいいんだがなぁ」
「成人した女性のトワイレックは、それだけで需要がありますもんね」
テンノーが肩を竦めると、セーヤはむっとした。
「そりゃそうかもしれないけどさぁ」
「だが、まあ、そうだな。人手は多い方がいい、まずはこっちに来てくれ」
モン・カラマリの男は立ち上がり、ダイナーの裏口のドアを開けた。
「それから、俺はカザ・マツル。このダイナーの店長だ」
セーヤとテンノーは顔を見合わせた。懸念材料は多いが、なんとかなりそうだ。ネゴスに比べれば規模は小さいが、これもまた人助けなのでジェダイの教義の範疇だ。たぶん。
時には柔軟な解釈も必要だ。
好きな登場人物は?
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ヒル・スワンプ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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