トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
ダイナーの店内は冷え切っていた。
大勢の客でごった返しているはずの店内は無人で薄暗く、テーブルは空っぽで、熱々のカフで満たされているポットも同様だ。セーヤはなんだか物悲しくなったが、厨房に入った。
鉄板の前では調理ドロイドが立っていたが、シャットダウンされているのでぐったりと項垂れていた。カザは調理ドロイドの電源を入れるも、すぐにヒューズが飛んでまたしても動かなくなった。
「御覧の通りだ」
「ちょっと拝見しますね」
テンノーは調理ドロイドをじっくりと眺めると、ケーブルを接続した。
「一時的に私とバッテリーを共有し、プロトコルも同期させました。これでエラーチェックが可能となるはずです」
調理ドロイドは頭を起こし、バイナリー言語で手短に喋った。セーヤはその言葉を聞き取り、テンノーを見上げる。
「プロトコルと記憶回路には問題はないけど、メインシステムにソフトウェアが干渉しているせいで再起動が妨げられるんだって。ついでにギアとシャフトも交換しないと、作業効率が落ちちゃうって言っているけど」
「ああ……これですね。本社から一斉に送信される調理プロトコルのインストーラーが入っていますけど、それはこのドロイドにとっては新しすぎてバージョンエラーを起こしているんです。バトル・ドロイドのように一括で管理していると、そういうことが起きてしまうんですよね。となると、このインストーラーを一旦削除しまして……」
テンノーが作業を始めたので、カザは安堵の色を見せた。
「なんとかなりそうなんだな」
「はい、彼も協力してくれていますから。これで非協力的なドロイドであれば、私のアクセス自体を受け付けてくれませんからね。ダイナーにお客様が来てくれないのは寂しい、としきりに言っていますし」
テンノーががらんとした店内を見渡すと、セーヤはふと思った。
「給仕ドロイドは?」
「それも前はいたんだが、調理ドロイドよりも先に壊れちまって。客に持っていかせるようにしたんだが、それは評判悪くてな」
カザが嘆息すると、セーヤは手を打った。
「じゃ、私が給仕係をするよ。テンノーは調理ドロイドの手伝いをしてくれればいいし」
「だが、その格好のままじゃ締まらんな」
ちょっと待て、とカザがバックヤードに入っていた。しばらくしてカザが戻ってくると、その手にはウェイトレスの制服が携えられていた。白いエプロンと丈の短い真っ赤なワンピースのセットだった。
「なんでこんなのがあるの」
セーヤが不思議がると、カザは制服をセーヤに渡した。
「これも本社から寄越されたんだが、使う機会がなかったんだよ。一応着てみてくれ。更衣室とロッカーはこの奥にある」
「それじゃまあ、一応」
セーヤは制服一式を抱え、更衣室に入った。言うまでもなく大人用なので、本来は足が大胆に露出するはずのデザインでもセーヤには膝丈で丁度良かった。半袖なので余らないし、エプロンも元々小さめなので不都合はない。スカートはインナーにスコートを履いて膨らませるタイプだったので、ライトセーバーはその膨らみの間に隠せた。
ブーツも足のサイズ調整が可能だったのでフィットしたが、どういうわけだか靴底にリパルサー・リフトらしき機構が組み込まれていた。銀河で汎用されている反重力装置で、スピーダーなどの乗り物だけでなく、貨物も浮かせてくれるので非常に便利だ。
「なんだこれ?」
セーヤは疑問に思いつつ、床からほんの少しだけ浮いた状態で店内に戻った。
「このブーツ、何なの?」
「客の中には、店に入らずにスターファイターに届けてくれと注文する奴もいるから、それに合わせたサービスをするためのもの、だったかな。とはいえ、現場で事故が多発したから、早々に廃止されたんだ。だから、それは使わなくてもいい」
カザが苦笑すると、セーヤはフォースを併用して店内をぐるっと回ってみた。テーブルの間を擦り抜け、厨房と店内を素早く行き来してから、また厨房に戻る。
「おもしろーい!」
セーヤがはしゃぐと、テンノーが制した。
「セーヤ、気持ちは解りますが程々にしておいて下さいね? 営業再開して早々にお客様に迷惑を掛けたら、この店の評判は地の底に落ちてしまいますから」
「解ってるってぇ」
セーヤは上機嫌に返し、その場でぐるぐると回転した。フォースの出力はまだ上がらないが、だからこそ弱い力を作用させることに慣れなくては。微妙な強弱を付け、繊細にフォースを操りながら、セーヤは軽やかに踊りながら店内を巡った。
これも修行のうちだ。
ドライブインでは部品調達に困らない。
理由は至って簡単で、ここまで辿り着いたはいいが故障したスターファイターやシャトルが格安で売り飛ばされ、ジャンク屋が分解して商品にしているからだ。もちろん当たり外れも多いが、思わぬ掘り出し物も見つかるので、客も結構多い。
ジャンク屋の店主はジャワではなかったが、部品漁りに関してはジャワの右に出る者はいないので、数人のジャワが独特の言語を話しながらスターファイターに群がっていた。
「お、Xウィングの下の翼だ」
セーヤが無造作に積まれたスターファイターの主翼を眺めていると、テンノーは調理ドロイドの規格に合う部品を探してきた。
「セーヤ、合うものを見つけてきました」
「意外とあるもんだね」
「純正品にこだわらなければ、いくらでもありますよ。サイズさえ合えば、微調整して填めることも出来ますし」
「ドロイドはその辺が便利だよねぇ」
「ついでにボブ・キャット号に合う部品も見つけてきますね」
「いってらっしゃーい」
セーヤはテンノーを見送ってから、ジャンク屋を見て回った。特に多いのがクローン戦争時代のバトル・ドロイドのパーツで、N-1バトル・ドロイドは格安で売られていた。
ちょっとした知識があれば簡単に組み立てられるだろう。しかし、彼らを迂闊に再起動すると分離主義勢力のバトル・ドロイドとして戦い始めてしまうので、プログラミングの知識があるか、それが可能なドロイドを持ち合わせていなければ買うべきではない。ドロイドは便利だが、便利だからこそ危なっかしい存在だ。
ライトセーバーに使う部品ってなんだっけ、カイバークリスタルのパワーを増幅するジェネレーターとエネルギー源のパワー・セル、レーザーを収束させるためのレンズ、それから、とセーヤは部品の山を見て回りながら考えていた。半ば無意識にフォースを放ち、代用出来そうな部品が手元に集まってきた。
「あっ」
それどころか勝手に組み上がっていき、円筒形の機械が出来上がっていく。
「あっ、わっ」
セーヤはその機械を掴んで引っ込めたが、分解しようにもかっちりと填まりすぎた。どうしようこれ、売り物なんだけどな、とセーヤが困惑していると、声を掛けられた。
「もしかして、あなたってビッグシップ基地にいたトワイレックの子?」
セーヤは咄嗟に中身のないライトセーバーをジャンクの山に放り込んでから、振り返ると、そこにいたのはホープ・ハイライトだった。
「ホープ? なんでここに?」
「私の方が聞きたいんだけど。ビッグシップはミッドリムにあるのに、ここはザ・スライスの方が近いじゃない。そんなところで知り合いに会うなんて、思いもしなかった」
ホープが肩を竦めると、セーヤは要点をぼかして話した。
「シャトルで旅をしているんだけど、燃料が切れちゃって。ついでにお金も尽きたから、しばらくはダイナーで働くことにしたの」
「まさか一人で? そんなわけないよね、せめて保護者はいるでしょ?」
「色々と事情があって、一緒にいるのはテンノーだけなんだけど、心配しなくてもいいから」
「……深くは追及しないけど、気を付けてね。いつ、何が起きるか解らないんだから」
ホープは眉根を寄せたが、それ以上は問い詰めてこなかった。セーヤは空っぽのライトセーバーがジャンク品の隙間を転げ落ち、埋もれたことを確かめてから、ホープを見上げた。
「ホープに似た人に会ったんだけど、もしかして親戚とか?」
「それはどこで?」
ホープはすぐさま反応した。だとするとあれは勘違いじゃなかったのか、とセーヤは自分の感覚の正しさを認めた。
「えっと、タトゥイーンで」
「その人は何をしていたの?」
「モス・アイズリーで見かけただけだから、詳しいことまでは解らないよ。街の中で擦れ違っただけだし」
「そう……。それが私の姉さんだっていう確証はないけど、もしも姉さんだとしたら、元気でいてくれるだけで充分だから」
「ホープにはお姉さんがいるの?」
「双子の姉よ。ユマといって、私よりも繊細だった。ちょっとしたことですぐ泣いて、怖い夢を見ることが多くて、驚いたり怯えたりすると周りのものが吹っ飛ぶの。どういう理屈かは解らないけど、いつもそうだった。私はそれもユマの個性だと捉えていたから、なんとも思わなかったんだけど、成長してもそんな調子だから友達が出来なくてね。だから、ユマは私にべったりで、少しでも離れると嫌がるぐらいだった。でも、ある日、家に帰るとユマがいなくなっていたの」
「なんで?」
「解らない。お父さんとお母さんが言うには、コルサントのお医者に診てもらうことになったから、だそうだけど、それにしては嬉しくなさそうだった。ユマがどこにいるのかも解らないから、連絡の取りようもなくて。私が船乗りになったのも、銀河を巡り続ければいつかユマに会えるかも、と思ったから。でも、うん、そうね。どこかにいるなら、それでいい」
ホープは笑みを浮かべたが、寂しさが滲んでいた。セーヤは背筋が冷え込む思いがしたが、顔には出さなかった。恐らく、ホープの姉のユマはジェダイに素質を見出されて連れていかれる途中でシスに攫われたのだ。あの三人の子供達のように。
そして、ユマは何らかの理由で子供の姿を留めたまま、シスとして悪事に手を染めている。クリス・ハマーという偽名でズ・スィーに潜入していたように、子供の外見を生かしたスパイ活動や暗殺を行っているのだろう。
こんなこと、ホープには絶対に言えやしない。セーヤは複雑な感情を胸の奥に収め、ホープと別れると、テンノーが部品を詰め込んだカートを引きずって戻ってきた。
探せばあるものだ。
ダイナーは営業再開した。
心待ちにしていた客がいたようで、客足は途切れなかった。調理ドロイドは復帰して早々にフル稼働し、テンノーは厨房で忙しく動き回り、セーヤはカザに命じられるがままに活気に満ちた店内を駆け巡った。
熱々のカフのお代わりを絶え間なく注いで回り、焼き立てのワッフルやパンケーキを運び、ブルーミルクのシェイクを落としかけてフォースで受け止め、スクランブルエッグをひっくり返しそうになったがこちらもフォースで難を逃れ、バンサのハンバーガーとポーグのフライドステーキを間違えそうになったがテンノーが取り替えてくれたので事なきを得て、と息つく暇もなかった。
営業を終えた頃には、セーヤは疲れ果てていた。奴隷時代にも接客はしたことはあるが、ダイナーの忙しさはそれとは異なる。常に周囲に気を配らなくてはならないから、神経も高ぶったままだ。
「初日にしては上手くやってくれたよ」
ほれ、とカザはセーヤの前に皿を置いた。サンドイッチにたっぷりのチーズとミートローフが挟まっていて、山盛りのフライドポテトにはチリソースが惜しみなく掛けられている。炭酸が弾けるコーラもある。
「いただきます! おいしい!」
セーヤは即座に感想を述べた。疲れた体には、塩気の効いた濃い味がよく染みる。セーヤが満面の笑みを浮かべてサンドイッチを頬張っていると、テンノーがワッフルを乗せた皿を持ってきた。
「生地が余ったので焼いておきました」
「さっすがぁ、気が利くなぁ」
「シロップもどうぞ」
「わあっ、幸せの追い打ち!」
セーヤが目を輝かせると、テンノーはシロップをワッフルに掛けた。ワッフルの生地がシロップを吸い込み、光沢を帯びる。
「明日もその調子で頼む」
俺は後片付けをしてくる、とカザは厨房に戻っていった。セーヤは喉が焼けるほど甘いワッフルを噛み締め、この上ない幸福に浸っていたが、エプロンのポケットを探って中身を取り出した。
「チップも馬鹿に出来ないね」
セーヤがテーブルに広げたのは、新共和国と帝国のクレジットの他に、独立星系の独自通貨のコインも混じっていた。いずれもテーブルを回っていた際に、客からもらったものだ。テンノーはそれを手に取り、計算する。
「ダイナーの給料とチップの金額を合算すれば、予定よりも早めに出発出来そうですね。むしろ、その方がいいです。そのようにハイカロリーな食事を何度も摂るのは、体に悪いですから」
「疲れたから丁度良いんだよ」
「ダメです。そうやって自分を甘やかせば、ずるずると悪習慣が続いてしまいます。若いうちはそれでもよろしいでしょうが、大人になると取り返しが付かなくなります」
「たまの息抜きでもダメ?」
「程度に寄ります」
「ワッフルとシロップはテンノーが持ってきてくれたのに?」
「状況に適した行動を取ったまでです」
「そんなことを言って誤魔化さないでよ」
セーヤはむっとするも、テンノーは厨房に引き返していった。とはいえ、テンノーの意見は尤もだ。ジェダイ的ではないよね、次からは気を付けよう、と自戒する一方、セーヤはワッフルを平らげた。
コーラも一滴残らず飲み干した。
好きな登場人物は?
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ヒル・スワンプ
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ホープ・ハイライト
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ナザ・シーサイ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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エア・キャビー
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サウス・ギ・ハーラ
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ソウ・テッセン
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ダース・シャハー
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オード・キュー
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クレイン・ミーネ
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ショーナ・ディノ
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ユマ・ハイライト
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ヴィシャム
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フマガ
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サク・ラギーチョ
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その他