トワイレックの奴隷少女、ジェダイになる 作:あるてみす@二次創作
海賊の首魁の名はヨギー・ウェバラー。
手練れのトランドーシャンで、これまでにも大勢の部下を率いて様々な星を荒らしてきた。そのやり口はいかにも海賊らしく、暴力による脅迫と略奪であり、いくつもの輸送船や軍隊の補給船が標的にされていた。
「そいつについて、私なりに調べてみたんだけどね」
閉店後のダイナーのカウンターで、ホープはホロを投影した。ヨギー・ウェバラーの顔だった。トランドーシャンはただでさえ厳ついのに、筋金入りの海賊らしく目付きが恐ろしく悪い。
「最初から海賊だったわけじゃなくて、輸送業者の従業員として働いていたけど、その船が海賊に鹵獲されて部下にされたのを切っ掛けにその道に引きずり込まれたみたい。まあ、よくあることだし。ヨギーの一味が幅を利かせているのは、パーレミアン交易ルートの他にもアウターリムのいくつかの惑星と、スパイスの密売ルートも握っているみたい。あれだけのことをするからには、とは思っていたけど、手広くやっているみたい」
ホープは星図のホロも投影し、拡大する。
「イズム坊ちゃまがドライブインに来てからも飲まず食わずだったのって、チェーンコードでインターギャラクティック銀行の口座を使ったら居場所がバレるから、と考えたからでしょ? 宇宙船を取引するからには莫大な金額が右から左に動くわけだし、別名義の口座を持っているか、銀行の関係者に海賊の仲間がいるって考えるのが筋だもの」
ホープがイズムを見やると、イズムは苦い顔をする。
「ああ、お察しの通りだ。近頃はホロ・ネットの通信状態も改善されているから、銀行口座にもアクセスしやすかったんだ。だから、クレジットを持ち歩かなくなっていたんだが、それがよくなかった。今後は改めるよ」
「ホロ・ネットってハイパースペースを利用したネットワークだから、安定しているんじゃないの?」
セーヤが不思議がると、テンノーが説明した。
「ハイパースペースも常に同じ状態であるとは限りませんよ。ホロ・ネットのネットワークは既に完成されていますが、だからといって過信してはいけません。コムリンクは別系統の通信網ですから、いざという時のために併用するべきですね」
「え、違うの?」
「その辺りについて細かく説明すると長くなるので割愛しますが、違います」
テンノーが言い切ったので、セーヤは納得しきれないながらも理解した。
「そうなんだ。てっきり似たようなものかと」
「話を戻すけど、海賊は執念深いの。些細なことで因縁を付けて、骨の髄まで搾り取ろうとしてくる。出来ることなら、ケンカを売らずに引き下がるべきね。イズム坊ちゃまの会社の社員は可哀想だけど」
ホープが冷淡に述べると、イズムは深いため息を吐いた。
「それについては僕も考えた。損得勘定すれば、ここで彼らを見捨てても会社にとっては大した損失じゃないんだ。でも、これまで一緒に過ごしてきたし、会社の内部情報も知っているし、彼らの商才が海賊に利用されるとなれば……」
「イズム坊ちゃまと共に旅をしていた社員のリストを拝見しましたけど、法務部の社員もいますね。ということは、会社経営や金銭の取引に不可欠な法律の知識も備えているでしょうし、そんな人材を海賊に譲り渡してしまえば目も当てられない事態に陥ります」
テンノーが割り込むと、ホープは少し冷めたカフを啜る。
「となると、うかうかしていられないかもね。訓練された軍人ならともかく、一般人の会社員じゃ海賊の拷問には耐えられないもの。或いは、スパイスでも嗅がされているか。どちらにせよ、早めに手を打つべきね」
「海賊の宇宙船を追い払えばいい、ってわけでもないか」
セーヤが零すと、イズムは悩む。
「物理的に遠ざけるのは有効かもしれないが、一時的な措置でしかないね。引き返せない場所に放り込めればいいんだが」
「ブラックホールの手前とか、恒星の重力圏内とか? やって出来ないことはないかもしれないけど、海賊の宇宙船にハイパースペースの座標を入力しないといけないから、あまり現実的な作戦じゃないね。乗り込むにしても、信用されないことには」
ホープは眉根を寄せてカフを飲み干すと、カザがホープのマグカップにお代わりを注いできた。
「腕の立つ賞金稼ぎでもいれば、金を搔き集めて雇うんだがなぁ」
「マンダロリアンでもいたらいいんだけど、ケイ以外には会ったことがないしなぁ」
セーヤがブルーミルクと砂糖の入ったカフを傾けると、イズムが目を丸める。
「セーヤはマンダロリアンに会ったことがあるのか?」
「はい、ございます。ケイ・ホークという名の賞金稼ぎで、射撃の腕が秀でておりますが、それ以外も申し分ありません。ですが、ケイの所在は存じ上げておりません。他にも賞金稼ぎと知り合っておりますが、一人は諸事情で故郷の惑星に戻りましたし、もう一人は……呼び出しに応じてくれるかどうか解りません。ご期待に沿えず、申し訳ありません」
セーヤは深々と頭を下げた。サク・ラギーチョはネゴスからは当分離れないだろうし、マチルダ・グランベリーと会うのはあまり気が進まなかったからだ。パダワン止まりだったマチルダからすれば、今のセーヤを見るのは複雑だろうから。
「ですが、私に考えがございます」
セーヤが顔を上げると、イズムは促す。
「言ってみろ」
「イズム坊ちゃまが海賊に投降し、私とテンノーを手土産として持っていくのです。そうすれば敵は油断しますし、海賊船の懐に潜り込めます」
セーヤが笑顔を浮かべると、ホープは制止してきた。
「いやいや、それはさすがに……」
「確かに油断はするだろうが、その後は? まさか、本当にジェダイが現れるのを待とうってのか? 冗談言っちゃいけねぇ、ジェダイほど信用ならないものはねぇよ。いざという時にやられちまったんだから」
カザはゆっくりと首を横に振った。イズムは笑顔のセーヤとホロを見比べ、ひどく悩んでいたが、体の奥から絞り出すようなため息を吐いた。
「他にいい手はなさそうだ」
「では、それらしい衣装を見繕ってきます。この制服をダメにしたくありませんから」
セーヤはカフを飲み干すと、一礼してから厨房へと戻った。すぐさまセーヤを追ってきたテンノーは、セーヤの肩を掴む。
「セーヤの作戦は確かに有効でしょうが、セーヤのフォースはまだ戻っていません」
「でも、戦いようはあるよ」
セーヤは空になったマグカップを浮かばせると、皿洗いドロイドの前に移動させた。皿洗いドロイドはそれを受け取ると、洗剤を付けて洗い始める。
「キャバレーに行って、踊り子の衣装を譲ってもらえないか相談しないとね。あれ、油断させるにはもってこいだから」
セーヤはテンノーを小突き、バックヤードに入ってから制服を脱いだ。不安材料を数えればきりがないが、だからといって行動しないままではいられない。
セーヤは私服に着替えると、テンノーを伴ってキャバレーを訪ねた。キャバレーのダンサー達はダイナーを何度も利用していたため、セーヤと顔見知りになっていたので、交渉はすんなりと成立した。とはいえ、大人用の踊り子の衣装なのでサイズを調整する必要はあったのだが。
これで準備は整った。
イズムが海賊に連絡を入れた。
それから程なくして、海賊の宇宙船のシャトルがドライブインにやってきた。硬い表情のイズムと警戒心を隠そうとしていないテンノーとは裏腹に、踊り子の衣装の上にローブを羽織っているセーヤはにこにこしていた。もちろん演技だが。
ドライブインからシャトルが飛び立ち、交易ルートに向かうと、そこかしこで輸送船や旅客船が停留していた。下手に動けば撃墜する、とヨギー・ウェバラーは脅しているのだろう。戦艦やガンシップがないから、脅しに対抗しようがないのだ。ザ・スライスの造船所にはスターデストロイヤーに劣らぬ火力の戦艦があるかもしれないが、売り物を壊されれば損失は大きくなるだけだ。
最低限の行動で最大限の効果を出しているのか、海賊って意外と賢いんだなぁ、とセーヤは内心で思いながらも、トランドーシャンや他の種族が入り混じっている海賊達を横目に捉えた。
船内移動用のスピーダーに乗せられ、船長室に向かった。テンノーは頭をぐるぐると回転させ、海賊の宇宙船の構造や配線やドロイドの配置を記憶していた。セーヤは腰に巻いたパレオに隠したライトセーバーを確かめ、それからイズムのポケットに入っている中身のないライトセーバーにも目をやった。どうせなら、これも有効活用しなくては。
船長室の手前に到着したので、スピーダーから降ろされた。イズムは緊張した面持ちだったが、怯んでいなかった。ここに至るまでの経験がそうさせているのだろう。
ドアが開くと、悪趣味な内装が目に飛び込んできて、スパイスの刺激臭が鼻を突いた。略奪した宝飾品と武器に囲まれているのは、荒くれ者ばかりの海賊を束ねる男だった。ヨギー・ウェバラーは酒を呷ってから、悠長な足取りで近付いてくる。
「いい度胸してんじゃねぇか、お坊ちゃん」
「商談だからさ」
イズムは平静を保ち、ヨギーと対峙する。
「僕はタグマ商会の代表として、ここに来たんだ。ヨギー・ウェバラー、タグマ商会の宇宙船はそちらに譲る。今後、どう使おうとも自由だ。新造船でトランスポンダーもまだ付けていないから、船籍も好きなように偽装出来る。社員の身代金も払う。それから、これは賄賂だ」
イズムがセーヤを示すと、セーヤはローブを脱いで踊り子の衣装を露わにする。
「新しいご主人様ですね?」
セーヤが微笑むと、ヨギーの視線がセーヤの肢体をぬるりと舐めた。
「まだ子供だが、悪くねぇな。何年か待てばいい女になる。海賊の作法を仕込んでやるよ、楽しみにしていな」
「はい、ご主人様」
セーヤはパレオの裾を持ち上げ、深々と頭を下げた。イズムは僅かに表情を曇らせたが、あの中身のないライトセーバーを取り出し、それをヨギーに差し出した。
「あと、こんなものを拾ったんだ」
「ライトセーバーだと!? そりゃすげぇ、中身のカイバークリスタルを帝国残党に売れば大儲けだ! お前んところの社員は三番カーゴにいる、勝手に連れ出せ。そのライトセーバーを俺に寄越したら、さっさと出ていくんだな」
ヨギーは口角を上げ、イズムが握る中身のないライトセーバーに手を伸ばしてきた。ヨギーの手がそれを掴み、イズムから奪い取った瞬間、セーヤはパレオを脱いでライトセーバーを抜いた。すかさず緑の光の刃を伸ばし、イズムの背を足掛かりにしてヨギーの頭上を飛び越え、一瞬で背後を取った。
「ふっ!」
目を剥いたヨギーの背を斬り、強かに後頭部を蹴って気絶させてから、セーヤは宙を舞ってイズムの元に戻った。
「トランドーシャンの皮膚は固いね」
「へ?」
イズムが呆然としていると、セーヤはフォースで船長室内の宝飾品と武器を浮かばせ、手近なブラスターをイズムへと投げた。
「イズム坊ちゃま、私に続いて。テンノー、三番カーゴのドアを開けておいて。社員のコムリンクにも通信を入れて、シャトルへと誘導して。合流出来なかったら、その時は助けに行くってことで」
「了解です、セーヤ」
テンノーはヨギーの服を探って端末を拾うと、スコンプ・リンクにシリンダーを差し込み、船内の管制システムにアクセスした。
「船長の権限をお借りして、ハイパードライブの設定を変更させて頂きました。交易ルートのハイパースペース航路を経由して行けるブラックホールがありましたので、そちらに出るようにしておきました。この船のアストロメク・ドロイドが賢ければ設定の変更は可能でしょうが、それは私には与り知らぬことですから。ついでに燃料を抜いて、船内の重力制御装置もカットしました」
テンノーがそう言った途端、人工重力が消えてセーヤ達は浮かび上がった。ヨギーもまた浮遊したので、セーヤはヨギーをもう一度蹴って壁に叩き付け、壁の内壁を剥がしてヨギーの四肢に巻き付けて固定した。
「これでよし」
「なんか、慣れてないか?」
イズムが呆気に取られると、セーヤはライトセーバーを振り回して低く唸らせ、中身のないライトセーバーを真っ二つに切った。
「だって私、ジェダイだもの」
その後は大して難しくなかった。もちろん油断は禁物だが、ネゴスの戦いやダース・シャハーとの斬り合いに比べれば、海賊の相手なんて造作もなかった。
テンノーが的確に案内してくれたので、自由を取り戻した社員達とは無事に合流し、シャトルに乗り込んで海賊の宇宙船から脱出した。それから程なくしてハイパードライブが作動し、ヨギー・ウェバラーとその部下達を乗せた宇宙船は飛び去った。
どこぞのブラックホールへと。
好きな登場人物は?
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セーヤ・ミットー
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テンノー(NO-10)
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カミーノ・スターリバー
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ヒル・スワンプ
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ホープ・ハイライト
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ナザ・シーサイ
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ケイ・ホーク
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マチルダ・グランベリー
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エア・キャビー
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サウス・ギ・ハーラ
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フマガ
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サク・ラギーチョ
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