Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
「綺礼。君は此の冬木から、いや日本から脱出するべきだろう」
遠坂時臣は、魔術の弟子である言峰綺礼に告げた。
「ロンドンの時計塔に魔術の修行に行くのも好し。
教会の人に戻ってヴァチカンとかに行くのも好し。
けれども、君が此の上に私の元に居ては、監督役である君の父上の中立性も疑われる」
「師よ。おっしゃる通りです」
その頃、サーヴァント・アーチャーこと英雄王ギルガメッシュは退屈していた。
同時に、時臣に対する疑惑を持ち始めていた。
今は、自分を王と呼び、自らを臣と称している。
だがしかし、最後に聖杯を手にした時には、王にも反逆する積もりでは無いのか。
そもそも聖杯にかける願望が、サーヴァントとマスターで異なっていた時、何れを優先させる積もりなのだろうか。
この疑惑は疑惑に留まっていなかった。
遠坂時臣は最後には自らのサーヴァント・アーチャーすら聖杯の贄として、自らの願望、根源に至るという願望をかなえようとしていた。
時臣は綺礼の時計塔行きの手配を急いだ。
だがしかし、忙殺されている間にアーチャーいや英雄王と綺礼が時臣すら知らない屋敷内で接触していたことには気付いてはいなかった………。
……。
…時臣は綺礼を呼び出していた。
「君の時計塔留学は手配を進めている。これは私からの花向けだ」
そう言って、錬金術師パラケルススの短剣を模した魔術礼装であるアゾット剣を手渡した。
そして、何故か同室していたアーチャーの方を振り返った、その瞬間……
「何?!」
背後からアゾット剣が突き刺さっていた。
全くの油断、そして思いもかけない突然の裏切りだった。
その上、全てを目撃していたアーチャーは止めるどころか、綺礼を咎めようとも時臣に警告すらしなかった。
「王よ…何故」
「貴様は我をすら裏切る積もりだったであろう。
それに、もう貴様には退屈していた。
こ奴の求める愉悦の方が面白そうだ」
その言葉が終わるまで届いたか、遠坂時臣は崩れ落ちた。
「綺礼、我が限界し続ける為にはマスターは入り用ではある。貴様がマスターに成れ」
「王よ、謹んで」
時臣が保持し続けていた4画の令呪は綺礼に奪われた………。
……。
…遠坂時臣が聖杯戦争に倒れた。
その知らせは、隣町の妻の実家に疎開していた遠坂家の妻子にも届けられた。
だがしかし、聖杯戦争は続行中である。
時臣の魔術の弟子である言峰綺礼がマスター権を引き継ぎ、聖杯戦争に臨み続ける。
葬送も相続も、戦争終結の後だ。
そうとも告げられた。
誰にどの様にして倒されたのか、詳細は魔術師でも無い妻と未だ幼い姉妹には伝えられ無かった。