Fate/magi sister's 冬木の天秤   作:高島智明

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Episode.11 急転

言峰璃正神父は聖杯戦争の監督役として、遠坂時臣の死とアーチャー陣営のマスター交代との報告を受けた。

時臣の密かな盟友として、そして言峰綺礼の父として、複雑な感慨を覚えていた。

 

サーヴァント・アサシンを失い聖杯戦争から脱落した筈の息子。

それが魔術の師である時臣の死と共に新たなるアーチャーのマスターとして参戦し続ける。

微かな疑惑も無いでは無かったが、父親としては息子を信じたかった。

 

何れにせよ、時臣の遺体は教会に安置された。

埋葬も相続も聖杯戦争が終了してから。

それまでの表向きの理由は、聖杯戦争の他の秘匿と同様、教会と魔術協会に因ってでっち上げられるだろう。

アサシンを失う直前、偵察に放っていたアサシンの分身から綺礼は情報を得ていた。

深山町のとある武家屋敷。そこがアヤしい。

魔術ないしはサーヴァントによる襲撃を警戒する結界が張られている。

逆にアヤしかった。

その屋敷では土蔵の魔法陣に横たわったアイリスフィール・フォン・アインツベルンが、セイバー召喚の触媒に使用した後、魔術礼装に変えて身の護りとして来た聖剣の鞘「全て遠き理想郷」を夫の衛宮切嗣に返還していた。

受け取った夫の方は、愛妻を犠牲とする痛みを内心に隠して、残る敵マスターとの戦いに備えて此の無限の防御力を秘めた秘宝から変わった魔術礼装を体内に秘した。

 

セイバーにはランサーから受けた手傷も癒えて無限の攻撃力を誇る「約束された勝利の剣」が在る。

これに加えて切嗣には、ある切り札の構想が在った………。

 

……。

 

…戦いの準備を進めながらも、他の陣営に関する情報の不足を覚えた「魔術師殺し」は、その夜はアシスタントの久宇舞弥を伴って偵察に出た。

後にはセイバーがアイリを守っていた。

 

突如として、屋敷の結界が警報を鳴らした。

宝具クラスの武器が雨あられと降り注いでくる。

流石のセイバーも防戦に追われていた。

その隙に、屋敷の土蔵を破った何者かがアイリを拉致した。

聖杯戦争の度に聖杯はアインツベルンが用意する。それだけは、どの陣営の知識にも在った。

ならば今回も、聖杯はアイリスフィール・フォン・アインツベルンが所有している筈。

そう目星を付けての拉致だった………。

 

……。

 

…拉致したアイリを乗せて冬木の上空を逃げる「天翔ける王の御座」

それを追うセイバーの怪物バイク。

セイバークラスの騎乗スキルは此の時代の乗り物にも通用した。

だがしかし、マシンの方がテクニックと酷使に附いて来れなかった。

 

マシントラブルに立ちつくすセイバーを置き去りに飛んで行く「天翔ける王の御座」

それを無念の思いで見送るセイバーの前に、これが何かの修正力でもあるかの様にトレイター陣営が出くわした。

 

サーヴァントとマスターのラインを通じてマスターが命令した。

「トレイターを斬れ。1つでも他の陣営を潰せるチャンスを見逃すな」

 

相も変わらず、セイバーに対してはトレイターは戦おうとしない。

そんな相手を斬るのは騎士道から躊躇われたが、逆らえば令呪を使われかねない。

セイバーは「不可視の剣」を構え、切り付けた。

トレイターは、結局は無抵抗のままセイバーに斬られ消失した。

 

「負けた、セイバー。マスターに伝えてくれ」

トレイターのマスター、オルレアン・ロングヴィルは、何故かすんなりと敗北を認めた。

「私は教会に行く。私は負けた」

そういう相手を斬るのは騎士王の騎士道に当たらない。

それに冷徹な「魔術師殺し」は直接には此の場から離れていた。

 

只、最後にトレイターのマスターは言い残した。

「セイバー、いや騎士王。トレイターは貴女とは戦えなかった」

その意味を、直後には思い知ることと成るのだった。

その頃、セイバーを引き離す様に冬木の上空を飛行していた「天翔ける王の御座」は、ライダー陣営を乗せた「神威の車輪」と出くわしていた。

 

戦いを避ける理由は、どちらの陣営にも無かった………。

 

……。

 

…王と王の激突は続く。

遂に征服王は切り札を斬った。固有結界を巡らし「王の軍勢」を召喚する。

召喚された1人1人が英霊クラスの軍勢は、英雄王に向かって行った。

 

これに対してアーチャーは「王の財宝」に蓄えた、全ての神話の原型と成った神秘の武器を雨あられと降り注がせた。

無限ともいえる攻撃に、流石の軍勢も次第に数を減らして行った。

 

遂にライダーは、マスターのウェイバー・ベルベットを戦車から地上に卸すと、アーチャーに向かって突撃した。

これに対して、アーチャーもこれが最後とばかりに攻撃する。その決着は……

 

ライダー陣営は敗れた。

だがしかし、ウェイバーは戦いを通して征服王イスカンダルの臣下として認められ、聖杯戦争に乱入してまで得ようとした「自分自身の、本当に正当な評価」を受けるに至ったのだった。

 

ウェイバーはライダー召喚の触媒でもあった形見を抱き締めて、教会の保護を求めて行った。

遠坂邸に代わったアーチャー陣営の新たな拠点。

言峰綺礼は拉致して来たアイリの身体を探っていた。

聖杯を求めて。

そして発見するに至る。

虚しく屋敷に戻ったセイバーをマスターは非難すらしなかった。

 

その屋敷に言峰綺礼の使い魔がメッセージを届けて来た。

自分が遠坂時臣に代わってアーチャーのマスターに成ったこと、聖杯は自分の手中に在ること、そして、もはや残る陣営はアーチャー陣営とセイバー陣営のみに成ったと通告し、最後の2陣営による決戦を申し込んでいた。

その決戦の場所は……

 

冷徹なる「魔術師殺し」も、あえて此の挑戦に乗る決断をした。

後1人、アーチャーのマスター、言峰綺礼を倒して聖杯を奪還すれば聖杯にかける願望はかなう。

 

そして、セイバーにはかねて使わせようとしていた切り札を切らせる為に、令呪を使用しようとしていた。

第1の令呪で服従させて以来の第2の令呪を。




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