Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
冬木市の名家の当主だった遠坂時臣の葬送は、言峰璃正神父の司祭の元、粛々と執り行われた。
喪主の席には遠坂葵夫人が姉妹の幼い娘を従えて着いていた。
居並ぶ弔問者たちには、未亡人は夫を失った衝撃に撃たれながらも、娘たちの母としての使命感で自分を支えているかの様に見えた。
粛々と進行して、さて埋葬を前にして「近親者のみの最後の御別れを」と司祭は告げた。
弔問者たちは大して疑問にも思わず席を外した。
そう、これから不可欠な、だがしかし遠坂家が魔術師であることを知っている者のみの手順が待っていた。
遠坂家5代に受け継がれ、時臣の遺体の左腕に刻まれていた魔術刻印が移植され、長女凛の左腕と次女桜の右腕に分かち与えられた。
父親である司祭の補助として葬祭に立ち会い、この移植を時臣の魔術の弟子として執行した、言峰綺礼が姉妹に語り掛ける。
「これよりは姉妹で遠坂家の当主を受け継ぐことに成る。時臣師を失った後の後見だが…」
葵が母親として応えた。
「娘たちの保護者は私が勤めます。けれども、魔術のことは」
「その通りです。これからは私が時臣師の弟子として師に代わって魔術の師の役を勤めましょう」
そう言って、アゾット剣を姉妹に手渡す。
「これは、ひと時冬木を離れることに成るかも知れなかった私への、師からの花向けだった。
これからは御前たちが持つのが相応しいだろう」
その短剣が何に使用されたかは、この場では綺礼のみしか知らなかった。
改めて弔問者たちが招き入れられ、棺は先年に天寿を全うした時臣の祖母ルヴィアを初めとする遠坂家代々の傍らに葬られた。
*
衛宮切嗣はドイツに入国していた。
だがしかし、アインツベルンの森はまるで彼を迷わせるかの様に、アインツベルン城への道を開かなかった。
そして、迷いながらも城への道を探し求める切嗣の前に、メイド姿のアルビノが姿を現した。
イリヤスフィールの家庭教師と護衛として見覚えが在った。
彼女たちから拒絶の意志を告げられ、門前払いにすら成らずイリヤの元には辿り着けなかった。
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ウェイバー・ベルベットは時計塔に帰還して報告していた。
帰って来た祖国では、名門アーチボルト家の断絶で騒動と成った。
「ロード・エルメロイ」とまで呼ばれた当主と許嫁が魔術師としては死んだも同然に成ったのだ。
その断絶寸前の名家を建て直す責任がウェイバーに降り掛かって来た。
建て直しは達成したが、その結果として後年のウェイバーは「ロード・エルメロイⅡ世」と呼ばれることに成る。
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言峰璃正は息子に言い残そうとしていた。
第3次聖杯戦争でも監督役を務めた此の身、何時、寿命を迎えても可笑しくない。
「お前も父親の役目を疎かにするな」
父親として祖父として、息子と孫娘を案じるのみだった。
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久宇舞弥は衛宮屋敷を立ち去ろうとしていた。
衛宮切嗣が「魔術師殺し」としては引退同然の決意をしている以上、アシスタントとしての彼女の存在も終わった。
これからを、どう生きるか。
取り敢えず、生き別れの子供を探してみようか。
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ドイツから帰国した衛宮切嗣は、あの時に助けた少年を見舞っていた。
少年が天涯孤独だとは聞いた。
「どうだい。僕の子供に成るかい」
少年は衛宮士郎と成った。
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遠坂家では、幼い姉妹が新たな当主としての歩みを踏み出していた。
その其々の片腕には時臣の魔術刻印が静かに息づいていた………。
……。
…10年が過ぎた。
冬木の街は静かだった。
だがしかし、その静けさの何処かで聖杯が動き始めていた。
第5次聖杯戦争は、早くも近付こうとする。
そう「運命の夜」が始まろうとしていた。
今話にてZeroの章を終了させて頂きます。次話よりは新章stay nightを開始致します。
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