Fate/magi sister's 冬木の天秤   作:高島智明

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Episode.17 姉妹の召喚

物語は、衛宮士郎が「運命の夜」に遭遇する、その数日前に遡(さかのぼ)る。

 

遠坂凛と桜の姉妹は、言峰綺礼神父に教会へと呼び出されていた。

 

教会の中は、如何にも教会らしくステンドグラスの光とオルガンの調べに包まれていた。

オルガンを披露していたのは修道女姿の、姉妹よりは幼気に見える少女。

カレン・オルテンシア、母方の姓を名乗っているが言峰綺礼の実子である。

先年天寿を全うした綺礼の父、言峰璃正の助言にしたがって綺礼の手元に居る。

 

その幼気な修道女が鍵盤の上の手を止めて、父親が待っている、と訪問者の姉妹に告げた。

その言葉通り、綺礼神父が姉妹の前に現れた。

 

開口1番、

「知っているかも知れんが、第5次聖杯戦争が早まった。

既に参戦する魔術師たちは、次々にサーヴァント召喚を届け出て来ている」

「分かっているわ」

姉が答え、妹ともども手の甲を示す。そこには、姉妹で2分割された令呪が刻まれていた。

 

「ほう、第3次のエーデルフェルトの様に、姉妹で令呪を分割したか。

それにしては、未だに召喚を届け出ていないが。

よもや、参戦の権利を放棄して保護を求めるならば、監督役として受け入れるが」

「心配ご無用よ。今夜にでも召喚は実行するわ」

凛は言い返し、それまで姉の陰に佇む様だった桜も続いた。

「私も姉さんと共に戦います」

 

そこへ、教会の奥から人影が現れた。

「男装の麗人」姉妹の目にも、そんな形容が似合いそうだった。

 

「神父。やはり私は此処を離れます。ここは戦いを放棄した脱落者を保護する場所です」

男装の麗人は、教会を出て行った。

 

「彼女も参戦者なの」

凛の問いに、監督役の神父は隠す積もりも無さそうだった。

「バゼット・フラガ・マクレミッツ。今回、時計塔から参戦する魔術師だ」

 

何時の間にか又、幼気な修道女はオルガンを響かせていた。

その傍らに、何時の間にか金髪の利発そうな少年が付き添っていた。

 

遠坂姉妹が辞去した後の教会で、あの金髪の少年が神父に語り掛けていた。

 

「好いんですか。バゼットを行かせて。ランサーと令呪を取り上げる計画は中止ですか」

「あのランサーは、場合によっては使い辛い駒に成る。

それに私のサーヴァントならば、大人の御前が居る」

それから、神父は如何にも愉悦(ゆえつ)そうな表情と態度に成った。

「遠坂の姉妹が些(いささ)か愉(たの)しそうなことに成って来た。

あのバゼット無しのランサー単独では、役に立たないかも知れん」

不穏そうな対話は、遠坂姉妹には届いて居なかった。

帰宅した姉妹は、遠坂邸の地下室に父時臣が描いていた魔法陣を確認していた………。

 

……。

 

…その日の夜は更けて、日付の変わった頃。

「始めるわよ、桜」

「姉さん、何故か今日は、ウチの時計が1時間進んでいます。未だ2時に成っていません」

凛の魔力が最高に成るのは午前2時。その時間を狙う予定だった。

「そうだったわね」

「うっかり」が遠坂家の密かな伝統だったりする………。

 

……。

 

…今度こそ、午前2時。

「始めるわよ、桜」

「はい、姉さん」

 

姉妹は魔法陣を前に手を取り合い、呪文を詠唱する声を合わせる。

「「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグー」」

 

ー降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

 

閉じよ、満たせ。閉じよ、満たせ。閉じよ、満たせ。閉じよ、満たせ。閉じよ、満たせ。

繰り返すつどに5度。只、満たされる刻を破却するー

 

―Anfang(セット)

 

呪文に魔法陣が反応し始めた。

 

―告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよー

 

次第に魔法陣の光り輝きは増して行く。

閉ざされた地下室なのに、風が姉妹の髪をはためかせる。

 

ー誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 

汝3大の言霊を纏う7天ー

 

「「ー抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」」

魔法陣に満ちた光り輝きが爆発し…そこには誰も居ない(?)

 

何が起こった(?)と思っている間に、屋敷の地上の方から物音と振動が伝わって来た。

地下室を飛び出し、2階のリビングの扉を破ってみるとー

天井に穴が開いて部屋の中はメチャクチャ、そしてソファーに赤い外套の白髪の丈夫が踏ん反り返っていた。

 

「あんた誰よ」

「ご挨拶だな。それに行き成り空中に放り出されるとは乱暴な召喚だ。

それでもラインは、どうやら繋がっているらしいから、君がマスターか」

 

「あの~」

天井の穴から、成人男性を喜ばせそうな服装の紫の長髪の美女が降りて来た。

「貴女がマスターですか?」

 

「姉さん。サーヴァントが2人居ます」

ようやっと、事態が理解され出した。

「やったわ!私たち姉妹で召喚したから、2騎のサーヴァントが呼べたのよ。

これで勝ったわ。他の5騎のサーヴァントを1騎ずつ2騎掛かりで潰してやる」

 

知らないが幸福だったかも知れない。

姉妹が2分割された令呪で2騎のサーヴァントを召喚するという「ルール・ブレイク」をしてしまった為、7人の魔術師が7騎のサーヴァントを召喚するという前提は既に壊れていた。

7人以上の魔術師が7騎以上の英霊を従える拡大された聖杯戦争に成ってしまっていたのだ。

したがって、5騎以上を相手にしなければ為らないのだったが。そんな事態とも知らずにー

 

「取り敢えず聞いておくけど、何のクラスなの」

「どうやら、この身はアーチャーの様だ。

そして、そちらの「姉さん」などと呼ばれている方が私のマスターなのかな」

「私の名は、遠坂凛よ。そして、妹の桜」

「私はライダーです。宜しく、桜」

 

取り敢えずは、遠坂陣営は2×2の布陣で参戦することに成った………。

 

……。

 

…その夜も明けて、さて冬木市内をサーヴァントたちに案内するついでに教会の監督役へと召喚を届け出た時に、知らされた。

 

第3次聖杯戦争の時に記録されていた。

エーデルフェルトの双子姉妹が2分割された令呪で2騎のサーヴァントを召喚するという「ルール・ブレイク」をしてしまった為、結果として計8騎のサーヴァントが召喚されていたと。




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