Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
「じゃあ、親父。学校に行って来る」
「そうか」
セイバー召喚から、ひと夜が明けて、衛宮士郎は穂群原高校へと登校しようとしていた。
「ですが、シロウ。私はサーヴァントであっても霊体化出来ません。同行出来ません」
セイバーは案じた。
「現在のシロウはマスターです。他のマスターからもサーヴァントからも狙われる身です。
特に、アサシンのサーヴァントは、マスターの暗殺に特化しています。
それに備えるならば、いっそ私は夜でもマスターの臥所に待機しなければ成らない程です」
士郎はこれに対しては、斜め上な反応をした。
「親父、まさか前回はセイバーにアレなことをして無いだろうな」
「何を言っているんだ。大体、あの時はセイバーはアイリに同行させていた」
それを聞かされて、今度はセイバーが連想をした。
「もしかして、私が今着せられている衣服は、イリヤスフィールの為に」
雄弁な沈黙だった。
*
数日前、遠坂姉妹が2騎のサーヴァントを召喚した夜が明けた日。
聖杯戦争の御3家の1つ、間桐家の邸宅。
「お爺様、僕を参戦させて下さい」
老当主、間桐臓硯に向かって”戸籍上の”孫ということに成っている間桐慎二が申し出ていた。
「慎二、何故じゃ。お主の父の代で魔術回路は絶えておる」
「ですが、僕は魔術師の家である間桐の跡取りです」
「じゃからじゃ。
お主の役目は、いずれ優れた魔術師を産む血筋の女でも娶って、間桐の血統を蘇らせることよ」
「だからこそ、僕は間桐の家に相応しいことを証明したいのです。
あの遠坂の姉妹なんかには負けたく無い」
「遠坂か…あの娘どもの1人でも養女にでも取れれば、お主の嫁に好かったかも知れんがの」
「今は、倒すべき相手です」
暫くして、臓硯は意味深とも言える笑いをした。
「好かろう。これをやろう」
1冊の書物の形をしたものを「孫」に手渡した。
「これは「偽臣の書」じゃ。
これに令呪を宿させれば、魔術回路の無いお主でもサーヴァントを使役出来よう」
「有り難う御座います!!」
「ただし、これを覚えておれよ。間桐の家の為には、お主を失いたくない。
これから儂が呼び出すサーヴァントを預けるが、それを失ったら直ちに教会へと逃げるのじゃ」
有頂天の「孫」の耳には、何処まで届いただろうか………。
……。
…その深夜。
間桐邸のひと部屋に現れた黒ずくめに髑髏の仮面だけが白い影。
左右の腕が非対称で、右腕が異常に大きい。
「何ですか。アサシンですか」
怖い「祖父」への礼儀は保ちながらも不満を口にしかけたが、
「ほっほ。アサシンだがの、この「呪腕のハサン」はサーヴァントと戦えん訳では無いぞ」
その言葉に不満を引っ込めた。
「それよりも、お主自身が他のマスターと戦おうとするなよ」
*
とある魔術師の陣地。
優れた魔術師である「魔女」が陣地を固める「門番」を呼び出していた。
何処かの姉妹が令呪を分割して2騎のサーヴァントを召喚する、という「ルール・ブレイク」をした為か、魔術師のサーヴァントが「山の翁」以外のアサシンを呼ぶ呪文を知っていたのか、間桐家のアサシンとダブって剣豪のアサシンが召喚されていた。
*
かつての「魔術師殺し」は懸念していた。
60年周期の筈の聖杯戦争が、第4次から僅か10年で第5次聖杯戦争が勃発した。
聖杯に何かが起こっている。
サーヴァント召喚の魔法陣である大聖杯の在る柳洞寺を偵察しなければ為らないかも知れない。
*
その息子の方は、何時も絡んでくる友人の1人がサーヴァント・アサシンを従えて、有頂天に成っているとも知らずに登校して行った。
その日の学園には、ちょっとした風雲が待っていたのだった。
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