Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
星P/すたーりん様よりは、温かく御許しを頂いております。
勝手ながら、星P/すたーりん様に応援のエールを送らせて頂きます。
ひと目見て、何時もの様な登校の朝。
だがしかし、衛宮士郎の内心は、どうしても何時もとは同じでは無かった。
登校前の父子の対話。
「遠坂姉妹は、俺がマスターだからって、学園でまで見境も無く襲い掛かっては来ないだろう」
「そうかも知れんが、確か学園には間桐の子も居たのだろう」
「慎二が?」
「間桐いやマキリは、アインツベルンや遠坂と共に聖杯戦争を始めた御3家だ。
その1人息子に油断は出来んよ」
そう言われていると、何時もの様に絡んで来る友人がアヤしい。
微妙な気分で授業を受けて、放課後。
殆(ほとん)どの在校生が下校した教室で、士郎と間桐慎二は2人対峙していた。
「何だ、衛宮」
「慎二、単刀直入に聞く。間桐いやマキリは今回の聖杯戦争に参戦しているのか?」
「へえ…どうして、そんなことを。まさか衛宮の家も魔術師だと言わないよな」
「俺の親父は前回、第4次聖杯戦争の参戦者だったんだ」
「へえ…それに好く見りゃ、そいつは令呪じゃ無いか。衛宮みたいなモグリ魔術師が参戦ねえ」
小馬鹿にする様な態度をした。
「だったら話は早い。衛宮、僕と組まないか」
「何でさ」
「モグリ魔術師のショボいサーヴァントでも、僕と組めば好い処まで行かせてやるぜ。どうだ」
「その前に聞きたい。最近、連続しているガス事故。あれは慎二のサーヴァントの仕業か」
「知らんな。それより返答はどうした」
「本当に慎二がマスターなのか?」
「いいさ。見せてやる。アサシン」
白い髑髏の仮面の黒ずくめが、霊体化を解いた。
「アサシン…暗殺者だって」
思わず後退る士郎だったが、
「こいつはアサシンだが、マスターを暗殺なんかする必要も無いよ。
何せ、アサシンのくせに右の素手1本で、槍を使ってくるランサーに負けなかったんだからな」
実の処、サーヴァント戦で埒が明かないとみたバゼットが慎二に襲いかかろうとした段階で、アサシンが慎二を抱えて離脱したのだが。
それも知らない士郎は、セイバーを同行して来れなかったことを後悔しない訳でも無かった。
アサシンを見せびらかしてマウントを取る慎二と、士郎が睨み合っている処へ、教室の扉が開いた。
「何をサーヴァントなんか見せびらかしているのよ」
遠坂凛だった。桜も姉に寄り添っている。
形勢不利と見たか、慎二はアサシンを霊体化させて下校して行った。
正直、命拾いした思いの士郎だった。
*
士郎を送り出した後の衛宮切嗣は、疑惑を巡らせていた。
60年周期の筈の聖杯戦争が、僅か10年の間隔で起こった。
何かが聖杯に起きている。
大聖杯の魔法陣が在る柳洞寺、というより寺の立っている山を探る必要が在るかも知れなかった………。
……。
…柳洞寺の山門と参道の石段の間に「門番」の様に剣豪が居た。
まるで宮本武蔵の伝説から出て来た佐々木小次郎の様な剣豪。
アサシンのサーヴァントの様に気配を消しているが、前回のマスターだった切嗣は其の存在を感じられた。
あの「門番」がサーヴァントなら、寺の内部には先ず間違い無くマスターが魔術師の陣地を構えているだろう。
そんな処に踏み込むまでも無い。
用が在るのは寺では無く、山の地下にある魔法陣だ。
切嗣は寺を迂回する様にして山中に踏み込んだ。
だがしかし、目指す洞窟に辿り着く前に、近づいて来る男女が居た。
男の方に見覚えが在った。父兄と教師としての面識が在ったのだ。
「葛木先生。そう言えば先生は此の寺に下宿されていましたな」
「衛宮君の御父様ですね。こんな山中で何を為さっているのです」
「その前に、そちらの女性は?」
「私のフィアンセですが」
「それは、お目出とう御座います…」
その時、女を油断無く観察していた「魔術師殺し」は、女の手の甲に紛れも無い令呪が刻まれているのを見た。
素早く起源弾を構える。
「女。お前はマスターだな。あの門番は御前のサーヴァントか」
瞬間、女の装いが普段着から変化した。
黒いローブを纏い、フードで顔を隠し、手に杖を構える。
その放出する魔力は隠しようも無い。
「キャスターのサーヴァント?!サーヴァントがサーヴァントを従えるのか?!」
キャスター(?)はフードから覗(のぞ)く朱い口角を上げた。
「不思議でも何でも無いわ。
私は此の時代の誰よりも優れた魔術師。
アサシンを手駒にしている位はね」
「アサシン?!ハサン・サッバーハでは無いのか」
「待て、キャスター」
葛木が口を挟んだ。その葛木にも令呪が存在することを切嗣は観察していた。
「葛木先生がキャスターのマスターなのですか。先生が魔術師だとは知らなかった」
「それはこちらもです。
衛宮さんこそ、マスターとかサーヴァントとかを知っているということは」
切嗣には隠す意味も無いと判断出来た。
「隠す意味も在りません。私は前回の第4次聖杯戦争に参戦しました」
「そう、だから令呪も無いのに聖杯戦争のことを知っているのね」
キャスターも納得した様だ。
「衛宮さん。前回の参加者だというのなら、何故今頃ここに来たのですか」
果たして何処まで情報を与えるべきか「魔術師殺し」は冷徹に計算した。
「士郎がサーヴァントを召喚してしまいました。火の粉の方から降り掛かって来たのです」
ここからが、魔術師の英霊との交渉だ。
未熟なマスターを息子に持つ「魔術師殺し」だった父親は冷徹な計算を繰り返していた。