Fate/magi sister's 冬木の天秤 作:高島智明
ここからが、魔術師の英霊との交渉だ。
だがしかし衛宮切嗣は、あえて葛木宗一郎の方に向かい直した。
「葛木先生。改めて、先生が魔術師だとは知らなかった」
葛木は肩をすくめすらせず、平然と答える。
「当然ですよ、衛宮さん。私は魔術師では無い。
只、キャスターとも呼ばれる女性を愛しただけです」
「どう意味です」
キャスターは又、フードから覗(のぞ)く口角を上げた。
「私を最初に召喚した魔術師は、魔術師として私に及ばないことに嫉妬する様な、つまらないゴミの様なやつだったわ。
だから、私は「ルール・ブレイク」をしてやったのよ」
「まさか、お前は最初のマスターを殺したのか?」
「そして、この世界から消えかけた私は、聖杯に希望をかけて此の寺まで辿り着いたのよ。
その私を行き倒れと見た宗一郎様が助けてくれたの」
キャスターはウットリと自らのマスターに見惚(みと)れた。
そんなイチャツキを無視する様に切嗣は、葛木に向かい直す。
「葛木先生。最近連続するガス事故は、先生がキャスターにやらせたのですか?」
「私は知らない。私は只キャスターの希望を否定したことは在りません。
もしも、Yesと答えたらどうする積もりだったのです」
「魔術師殺し」は起源弾の銃を構えたままだった。
「私は「魔術師殺し」だ。魔術師の魔術回路を破壊出来る」
キャスターと切嗣の間に緊張が走った。
葛木が前に出た。
「衛宮さん。私は魔術師では無いが近接戦闘には自負がある。
キャスターに代わって接近戦を戦うことが出来る」
「魔術師殺し」はキャスターを捉えていた照準を外した。
「好いでしょう。ここは退散した方が好さそうだ」
踵(きびす)を返しかけた切嗣にキャスターが声を上げた。
「さっきは息子がサーヴァントを召喚した、と言っていたわよね。
息子に代わって私たちの陣地を偵察に来た、という処かしら」
今度は切嗣が口角を上げた。
「キャスター程の魔術師ならば分かっている筈だ。
今回の聖杯戦争はおかしい。
この山の地下にある聖杯には異常が起こっている筈だ」
キャスターはフードの中で、表情を変えたかも知れなかった。
寺の境内を迂回して立ち去りかけた切嗣は、今ひと度だけ参道の方を覗(うかが)った。
門前には剣豪のアサシンが佇(たたず)んでいた………。
……。
…帰宅すると、息子が下校して来ていた。
「親父、出かけていたのか」
「魔術師殺し」は息子の質問に、何時に無い真剣な態度をした。
「柳洞寺はキャスター陣営の陣地に成っていた。葛木先生がキャスターのマスターだった」
「…それじゃ、一成や零観さんは…」
「それに、キャスターはサーヴァントでありながらアサシンを従えている」
「アサシン?アサシンは間桐のサーヴァントじゃ無かったのか」
「どういうことだ?アサシンが2騎居るのか?僕が見たアサシンは門番をしている剣豪だったが」
「俺の見たアサシンは如何にも暗殺者らしい髑髏仮面だったよ。
やっぱり、慎二がアサシンのマスターだった」
切嗣は少し考えこんで、
「やっぱり、アサシンは2騎居るのか。
もしかして、遠坂姉妹が令呪を2分割して2騎のサーヴァントを召喚するなどという「ルール・ブレイク」をしたからか。
それにキャスターがサーヴァントの身でアサシンを召喚したのも「ルール・ブレイク」と言える。
これは…今回の聖杯戦争は、7騎以上のサーヴァントが召喚されているかも知れん」
士郎の後ろに控えるセイバーの表情には、
「敵が何騎居ようとも、私がシロウを守ります」
とでも書いて在りそうだった。
切嗣は父親の態度に成って、
「遠坂姉妹に間桐慎二そして葛木先生。こうもマスターだらけの学園は、やはり危険だ。
聖杯戦争が終わるまでは、学園には病気に成ったことにでもした方が安全かもな」
「親父、それじゃズル休みじゃ無いか」
「学園だけじゃ無い。セイバーを連れて行けない場所には近付かない方が好い」
「何でさ」
「正義の味方」に成りたかった息子は、納得し切れない様子だった。
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